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2004/01/13

映画「ブラックホークダウン」に追加された悲しい結末

1993年10月3日、米国陸軍レンジャー部隊が、二人のソマリア軍司令官補佐役を拘束する任務により、民族紛争の最中、ソマリアの首都モガディシュ上空を戦闘ヘリ「ブラックホーク」で旋回していた。ほどなくヘリはゲリラのRPG(ロケット榴弾)による急襲を受け、もう一機のヘリとともに墜落。レンジャー部隊はモガディシュのゲリラ地帯に放り出され、悪夢の地上戦に遭遇した。

米国陸軍レンジャー部隊所属の兵士、アーロン・A・ウィーバーは、地上部隊としてモガディシュを走行中、「ブラックホークダウン」の連絡を受け、ゲリラに包囲された戦友の救出に向かった。彼の乗る車両も直後にRPGによるゲリラ攻撃を受け、大破。最終的にこの地上戦で米軍兵18人、ソマリア人300人以上が死亡、80人以上の米軍兵が負傷したが、アーロンは幸いにもかすり傷だけでこの地獄を生き延びた。1994年、負傷した戦友の救出という「極度の勇気」という功績により、米軍からアーロン・A・ウィーバーにブロンズスター勲章が授与された。

米国の軍事作戦史上もっとも悪評高いもののひとつになったこの戦闘は、フィラデルフィアの新聞記者によって書籍化され、ベストセラーになり、映画「ブラックホークダウン」として広く世界に知られることになった。原作では、アーロンは傷ついた兵士にコーヒーを手渡す役で登場している。

2004年1月8日、イラクのファルージャで米軍ヘリがゲリラ攻撃により墜落、死亡した9人の兵士の中にアーロン・A・ウィーバーの名前があった。彼は精巣ガンに侵されていたが、志願してイラク駐留軍に参加し、ガンの進行具合を診察するために、赤十字の標識のついた医療用ヘリに乗っていたところを撃墜された。アーロンはまだ32歳だった。

アーロンの弟、ライアンは今もイラクのバグダッドで、ヘリのパイロットとして駐留している。アーロンの兄、スティーブもまた、パイロットとして一週間後にはアフガニスタン行きの予定であるという。海軍出身の父親は、これ以上家族が戦死することを恐れ、二人の兄弟の赴任先を変更するよう軍に申請しているが、軍がその要求を受け入れる可能性は極めて少ない。なにしろ、米国政府は、戦力不足を補うために、現在でも米軍兵士7,000人以上の除隊願いを無理やり「保留」にしているのだ

英ガーディアン紙の記事が指摘するとおり、映画「プライベート・ライアン」はホワイトハウスにとってありがたくない話なのだろう。

アーロン・A・ウィーバーはソマリアで戦友のために闘い、フロリダの家族のためにガンと闘い、家族愛と名誉を手にした。しかし彼は、なぜイラクで、8人の兵士と共に医療用ヘリの中で死なねばならなかったのか?そもそも彼らは何のためにイラクで「勤務」しなければならなかったのか?

悲嘆に暮れる遺族はその答えを知っているかもしれないが、今はただアーロンの思い出を語るのみである。


(参照:アーロンの悲劇を伝える地元新聞St. Petersburg Times2004/01/10付け記事より:
日本人はこの家族の姿を果たして正視できるだろうか?)

(注:以前書いたように、イラク駐留軍の兵士の死についての米国内での報道はホワイトハウスによる規制がある

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コメント

この映画はこれまでの感傷的な映画とは一線を画す、逆にいえば一番残酷な内容ともいえます。
最初の新兵の落下死からハマーの銃座で狙い撃ちにされて行く歩兵、クライマックスの現地民によるリンチまで一切感傷の省いたカメラワークは強烈な印象が残りました。

昨今の事件で命の尊さが盛んにいわれてますが、命を実感させるには対象である死を実感させなければならないと思うのです。
また、“命”の重さと“死”の重さは比例しないことも。

初めまして。この映画、淡々と現場の混乱、不正規戦の恐怖が書いてあってすごいですよね。
生き残った人のことがこのブログに書いてあったのでびっくりしました。
日本ではこういう事はあんまり報道されないのが問題だったりする。

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