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2004/02/02

アメリカ大統領選挙とベトナム戦争

民主党大統領候補ウェズリー・クラークの支持者集会で、応援演説に登場したマイケル・ムーアは「司令官VS脱走兵のディベートが見たい!」とまくしたてた。言うまでもなく、脱走兵とはブッシュ現大統領のことである。

この発言に(愚かにも)噛み付いたのはABCネットワークのピーター・ジェニングスだ。ニューハンプシャーの民主党ディベート大会後、彼は以下のようなインタビューをして、クラーク候補を困惑させている。

「クラーク司令官、問題の多い映像作家のマイケル・ムーア氏があなたを前にして、司令官であるあなたと、彼言うところの“脱走兵”ブッシュ大統領のディベートが見たいと発言しました。この、大統領に対する、事実に基づいていない誹謗中傷に関して、あなたが反論しない理由をお聞かせください。反論されるかどうかはともかくこれは倫理的に憂慮すべき事だと思いますよ」

このインタビューのオンエアを観てムーアは激怒し、早々に自分のウェブサイトで大々的に抗議した
「ピーター・ジェニングスの質問は、メディアが本来の問題から国民の目を逸らすべく、いいかげんな仕事をしていることの象徴だ

図らずも、ジェニングス氏はジャーナリストとして致命的な無知をさらけ出しただけでなく、この時期最も触れて欲しくない話題にブッシュ大統領を巻き込むことになったのである。

ベトナム戦争の時、現大統領とライバル達は何をしていたか?

幼い頃に父親を亡くし、貧しい家庭に育ったウェズリー・クラーク氏は苦学の末に奨学金を手に入れ、英オクスフォード大に進学した途中で陸軍に入隊し、歩兵隊としてベトナムのジャングル戦で4度撃たれて銀星章他勲章を授与され、ベトナム戦争後も軍に残り軍人としてキャリアを重ねている。

民主党大統領候補として首位を独走中のジョン・ケリー氏は、財閥家系にも関わらず海軍に入隊し、ベトナム戦争では最も危険な戦闘地域のひとつ、メコンデルタ地帯でCIA、グリーンベレー隊員と共に、小型高速艇を操縦して危険な任務に就き、激戦を生き抜いた。青銅星章、銀星章、3つのパープル・ハート勲章を授与され、英雄と讃えられたが、多くの戦友の死に心を痛めたケリー氏はやがて反戦運動に傾倒し、戦後は退役軍人の権利保障に大きく貢献している。

民主党の反ブッシュ第一人者ハワード・ディーン氏ベトナム徴兵検査で脊椎損傷の為、従軍不適格とされた。従ってディーン自身はベトナムを知らないが、実弟の死をきっかけに、反戦志向、民主党支持へと方向付けられたと語っている。ディーン氏の2歳年下の実弟チャーリー・ディーンは、ノースカロライナ大学を卒業後、ヒッピー時代にふさわしく日本を始めアジア各国を旅していた。1974年、ラオス・メコン川沿岸のバンガローに友人と滞在していたチャーリーはパテト・ラオ(ラオス愛国戦線)の部隊に拉致され、行方不明になる。一般旅行者であったにも関わらず、POW-MIA(戦争捕虜/行方不明兵)に認定されたチャーリー・ディーンは、CIAと米軍の捜索の結果、処刑され、埋められていたことが判明した。2003年、ラオスで発見された遺骸は棺に納められ、遺族が静かに迎える中、米国に帰還した。(ディーン氏自ら語るように、滞在地と捜索の過程から、チャーリー・ディーンはCIA工作員であったことが伺える)

さて、ジョージ・W・ブッシュにスポットをあてよう。イエール大学を卒業したばかりのジョージは、テキサス州兵航空隊に入隊を果たしたので、ベトナム行きを免除された。州兵航空隊の入隊試験におけるジョージ君の得点は100点満点中25点。ベトナム行きを避けるため、入隊待ちの志願者が何百人もいた州兵航空隊に、こんな落第点にも関わらず特急入隊できた(そしてベトナムに行かずに済んだ)理由は、父ブッシュである。当時、下院議員であった父ブッシュは、友人でテキサスの有力石油商シドニー・エドガーに、息子がベトナム徴兵を避けられるよう依頼した。エドガー氏は当時の友人でテキサス州副知事だったベン・バーンズ氏にブッシュ息子の件を依頼し、バーンズ氏はテキサス州兵隊のローズ准将に入隊を依頼したのである。しかもジョージは、テキサス州兵航空隊の訓練が嫌で途中で抜け出し1年ほど勤務をサボっていたことが明らかになっている(だから脱走兵)。

ブッシュ現大統領が父親の権力を使ってベトナム徴兵を逃れた件はともかく、州兵勤務をサボっていた件は米国内ですでに何度も報道されている。米軍の退役軍人達は、「イラク戦闘終結宣言」の際の派手な「トップガン大統領」演出に激怒しているはずである。ピーター・ジェニングスはなぜ、わざわざ問題をむしかえしたりしたのだろう?

さて、メディアの怠惰を批判するマイケル・ムーアの主張は立派かもしれない。しかし一方で、「司令官」「ベトナムの英雄」が大統領選の目玉になり、一貫して反戦を訴えるクシニッチ候補が変人扱いされる米国の現状を見ると、何か釈然としないのである。

戦争に参加したことをリーダーシップの基準にする社会は、何かが狂っているのではないか。普通の人々や社会にとっては、戦争をしないと決めるリーダーシップのほうが、はるかに価値あることだと思われるのだ。

例えば「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」を観て欲しい。この長大な物語においても、武器を持たない非力な小人族が、世界を滅ぼす兵器となる「指輪」を捨てるために闘う勇気を讃えているではないか。

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コメント

>戦争に参加したことをリーダーシップの基準にする社会は、何かが狂っているのではないか。普通の人々や社会にとっては、戦争をしないと決めるリーダーシップのほうが、はるかに価値あることだと思われるのだ。

「平和を欲するのならば、戦いに備えよ」
これから転じて、
「平和を欲するのならば、戦争を知らなければならない」

今現在のアメリカが欲しているのは、そういうことの理解できる人物なのかもしれませんよ。

ピーター・ジェニングス氏の事を検索していて、偶然見つけました。
平和は武力で守るものであるというポリシーが明確なのは、アメリカの美点です。
でも、日本がそれに追随するかどうかは、日本自身の責任において判断しましょう。
そして、その結果は、日本人が甘んじて受けるべきです。

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