「The Best Democracy Money Can Buy」最新エディションが発売
今世紀を代表する調査報道記者、グレッグ・パラスト氏のベストセラー「The Best Democracy Money Can Buy」(旧版は翻訳もあり:金で買えるアメリカ民主主義)の最新エディションが、2004/04/26に発売された。さっそく、ウェブで公開されているサンプルページを急いで翻訳して以下に掲載する。(稚拙な訳でもうしわけない)
「石油イカサマ師、ジム(ジェームズ・ベイカー)の介入」
(「The Best Democracy Money Can Buy」最新エディションより)
ニューヨークタイムズは読まないことにしてきたが、最近、衝動に駆られ、「亡くなった方」というタイトルの新しいコラムに目を通してみた。今日のリストにあるのは:“アービン・ダービッシュ、21歳、陸軍上等兵、フォートワース基地”
私は、ブッシュが石油のためにイラクへ国民を送り込んだなどという、ひねくれた人々とは違う。私にとって、サダム・フセインはいつもクルド人を虐殺したヒットラー髭のゴキブリ野郎だった。私はあの男は好きになれなかった---たとえ父ブッシュのために働いた時代があったとしても。
バグダッドの屠殺者が、テキサスのパトロンに雇われていた頃に、彼等のためにやってきた仕事を振り返ってみるのも悪くない。
- 1979:
- 米国の承認の元、権力を握る。冷戦時代にソビエトからアメリカに忠誠心を変えた。
- 1980:
- 米国の武器支援の下、当時「悪の一輪車」とされていたイランに侵攻。(公正を期するなら、この件の登場人物にはノーベル賞受賞者のジェームズ・カーター氏も加えられるだろう)
- 1982:
- ブッシュ=レーガン政権は、米国のテロリスト支援国家認定リストからサダム政権を削除。
- 1983:
- サダムがドナルド・ラムズフェルドをバグダッドに迎える。米国の軍事企業との協力関係に合意。
- 1984:
- 米商務省が、イラクに生物化学兵器として利用するためのアフラトキシン輸出ライセンスを問題視。
- 1988:
- イラク、ハラブジャ地区のクルド人を毒ガスで虐殺。
- 1987-88:
- 米国戦艦がペルシャ湾のイラン石油施設を破壊、イランによるイラク船舶航路封鎖を解除させて、サダムのために戦争の下地をつくる。
- 1990:
- 米国の承認の下、クウェートに侵攻。
米国の承認?1990年7月25日、勢いに乗る独裁者は、米外交官で駐イラク大使のエイプリル・グラスピーとバグダッドで会談。サダムがグラスピーに、イラク石油のちょっとした首長権限をめぐってクウェートに攻撃を仕掛ける際に、アメリカが反対するかどうか確認したところ、このアメリカの使者はこう語った:「私たちに意見などありません。(国務長官の)ジェームズ・ベイカーが私を寄越したのは、指示を確認するためだけです。それはつまり、クウェートはアメリカと連合関係にないということです。」サダムは彼女の発言を録音していた。グラスピーは、1991年の議会証言で、父ブッシュがイラクのクウェート侵攻を承認したと世界中の外交官が見なすことになる録音について、その信憑性を否認できなかった。
ところで、国務長官だったベイカー氏は今どこに?逃げ出して、恥ずかしくて身を隠している?湾岸戦争症候群の犠牲者の看護をしながら、贖罪の日々を送っている?いいや。ベイカー氏は弁護士として大成し、ヒューストン、リヤド、カザフスタンにオフィスを持つ弁護士事務所、ベイカー・ボッツの創業者となった。彼のきらめく顧客リストには、エクソンモービル石油、サウジアラビアの国防相も名を連ねているのだ。ベイカー氏の事務所は、サウジアラビアからテロリストに送金されていたことを示す証拠を巡り、911同時多発テロの被害者遺族によって起こされた訴訟で、サウジアラビアの王族を弁護することになっている。
さらに、ベイカー氏は新しくオフィスを構えることになった---ペンシルバニアアベニュー1600番地で。これはホワイトハウスにとって最初の事例である---石油企業のロビイストが大統領の隣にデスクを並べることになったのだ。ベイカー氏の業務は、イラクの抱える債務の「再構成」だ。サウジアラビアに居る彼の顧客はなんとも幸運である。なにしろ、サウジ王族はイラクに3,070億ドルも貸しているのだ。その債権の中には、サダムが爆弾を作るためにサウジから送金された7億ドルも含まれていることはいうまでもない。(第2章を見よ)
一体どうやって、ベイカー氏は、サウジ王族とエクソンと我等が大統領に同時に仕えることができるのだろう?2003年に、ヘンリー・キッシンジャー氏が911調査委員会に指名された際、議会が彼のコンサルティング事務所の顧客リストを公開することを要求した結果、キッシンジャー氏は逃げ出してしまった。ベイカー氏の場合、我等が議会は、彼の事務所に誰がお金を出しているのか聞く事もせず、相反する利益から足を洗うよう要求することもしなかった。
ちっぽけな利益問題とうまく折り合うために、ホワイトハウスはステキな言い逃れをでっちあげた。公式発表では、大統領はベイカー氏を指名したことになっていない。そのかわり、ブッシュは「イラク統治評議会からの要求に」従ったことになっている。それはまさしく、ブッシュがイラク人に銃を突きつけて、人形使いよろしく演じているにすぎないことだ。
なぜ大統領はベイカー氏の顧客に対してそんなに気を使う必要があるのか?ブッシュはベイカーにどんな恩義があるというのか?
ブッシュ家の相談役として、2000年大統領選挙のフロリダ州再集計騒動を最高裁に持ち込んだ人物こそ、ベイカー氏であった。
何年もの間、ジェームズ・ベイカー氏はブッシュ家の食卓にパンを運ぶ責任を担ってきたのだ。軍事産業向け投資企業、カーライル信託銀行の首席弁護士として、ベイカー氏はホワイトハウスから叩き出された後の元41代大統領と、父ブッシュがまだオフィスに居た頃に息子で現43代大統領の両者をカーライルグループに雇い入れてあげたのである。
ベイカー氏がホワイトハウスに居る理由は知ることが出来た。しかしイラクの危険な状況の中で、ダービッシュ上等兵は何をしていたのだろう?サダムはすでに牢獄の中だし、イラクは「自由化」されて1年あまりも経過しているというのに。
その答えは、米国国務省から漏れ出した極秘書類、100ページに及ぶ「イラク戦略」書類に隠されていた。そこにはアメリカ人たちがイラクとの衝突について教えられる以前に、「紛争発生後」のイラク経済について、実に詳しく書かれていたのである。
「イラク戦略」の中には、民主主義や投票に関する記述などなにもない。そのかわり、イラク国土の資産を使ってメソポタミアに「自由市場のディズニーランド」を建設することについての詳細が書かれている。国家についての全てはそれだけ---企業に全てを売り渡すこと。ブッシュチームの極秘計画では「資産の販売、譲歩、リースと管理契約、特に石油と補給企業向けに」が要求されているのだ。
「戦略」には、270日間の資産獲得スケジュールについても展開されている。そしてそれが、ダービッシュ上等兵がイラクから出られなかった理由なのだ。つまり、選挙の防止とその予防措置。民主的な選挙で選ばれたイラク政府なら、決して石油を売り渡すことなどしないだろう。ブッシュの企業仲間のための「資産の販売、譲歩、リース」が完了するまで、民主主義は、銃を突きつけられたまま、じっと待たねばならないのである。
もうおわかりだろう。もしブッシュが石油のためにイラクに侵攻しなかったとしても、石油抜きで撤退することはありえないことを、秘密の「戦略」は教えてくれているのである。
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