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2004/05/29

あなたが読んでいる書籍について、政府はもっと深く知りたい・・・

Democracy Now!2004/05/06付放送より。

アマゾンドットコムは購入履歴を蓄積して顧客の読書嗜好を探り、お返しに、お薦めの本を教えてくれる。では、政府が、オンライン書店と同じようにあなたの読書嗜好を探っているとしたら、彼等はあなたに何をしてくれるだろう?

2000年3月、米麻薬取締局(DEA)の捜査官が、覚せい剤製造をしていた4人の容疑者の住居を捜索したところ、覚せい剤製造ノウハウを記した2冊の本「Advanced Techniques of Clandestine Psychedelic and Amphetamine Manufacture by Uncle Fester」「The Construction and Operation of Clandestine Drug Laboratories, by Jack B. Nimble」を発見した。

それらの書籍を販売したのが、コロラド州デンバーの個人書店Tattered Cover Bookstore」であることが判明すると、DEA捜査官は同書店に捜査令状を持って来店し、同書籍の30日分の販売記録や、全ての顧客リストを提出するよう要求した。しかし、書店の女性オーナー、ジョイス・メスキスは、合衆国憲法で保障されている基本的人権、プライバシーの侵害を盾に、DEAへの捜査協力を拒否した。

すると、地方裁判所の判事は書店側に、捜査官から要求された情報をDEAに引き渡すよう命令した。ジョイスは再び命令を拒否し、この「Tattered Cover事件」はコロラド州最高裁判所で争われることとなった。

2002年春、コロラド州最高裁判所は書店側の主張を認め、合衆国憲法の基本的人権として「政府の干渉なしに書籍を購入し、読む自由」を認めた。ケネス・スター検察官がモニカ・ルインスキーの書籍購入記録を要求したときから増加したといわれる、捜査当局による書店の顧客プライバシーの侵害という悪弊は、終わりを迎えたかに見えた。

しかし実際には、新たなプライバシーの危機が始まっていたのである。

テロ対策の大義の下、ブッシュ政権と議会により制定された愛国者法(Patriot Act)によって、アメリカ市民の基本的人権はあらゆる面で制限されることになったが、それは読書習慣にまで及んでいたのだ。愛国者法の第215条により、連邦捜査員は、令状を提示することなく、書店と図書館から顧客情報、購入・利用情報を極秘裏に入手する権限が認められる可能性があるというのである。

愛国者法によって、再びTattered Cover bookstoreは窮地に立たされることになる。オーナーのジョイスはどう対処したのだろうか?Democracy Now!でのインタビューを以下に引用してみよう。

エイミー・グッドマン(番組ホスト):
FBIはTattered Cover書店に接触してきましたか?

ジョイス・メスキス(書店オーナー):
それはありません。もしそうだとしたら(FBIが顧客情報を要求したとしたら)あなたに教えられないと思いますよ。

エイミー・グッドマン:
では、現在あなたは(FBIによって)包囲されていると感じますか?不安ですか?顧客に、監視されている可能性について知らせていますか?

ジョイス・メスキス:
そうですね、今は書店内で顧客に、愛国者法そのものと215条への反対嘆願書への署名をお願いしています。法が改訂されることを願いますが、我々書店オーナーや図書館員たちが、大統領や議員たちに、(愛国者法が)アメリカにふさわしくないということを伝える役割を果たすには、大勢の読者の動員が必要とされていることを強く感じます。
書籍どころか、毎朝の大統領宛て報告書すら一切読まないといわれるブッシュ大統領に、読書家たちの願いが届くかどうかは定かではない。

ともあれ、米国政府は、オンライン書店と同じように、市民の読書嗜好を探ることができるようになった。書店はあなたにお薦め書籍を教えてくれるが、政府はあなたに、焼かれるべき書籍について教えてくれることだろう。

2004/05/28

エジプトの危険な最新ヒット曲「同じコインの表と裏、アメリカとイスラエル♪」

IsraelNationalNews2004/05/06付け記事より。

エジプトの歌手、シャーバン・アブダル・ラヒム(Shaaban Abdul Rahim)氏の最新曲「Hey Arabs Leaders」がアラブ世界の間でヒットしているというニュース。そのプロモーションビデオはポップで楽しいが、歌詞内容はあまりにも過激だ。イスラエルメディアが翻訳したという同曲の歌詞を以下に引用する。
(プロモーションビデオ(WMV):56kモデム用ADSL回線用

「同じコインの表と裏、アメリカとイスラエル♪
連中は世界をジャングルに変えて、導火線に火を点けた♪
アメリカは羽を広げて、全く気に留めていない♪
誰も連中を止められない、誰も捕まえられない♪
そのうち(ブッシュは)イラン、それからシリアについて言うだろう♪
しかし北朝鮮については沈黙する♪
あの(ツイン)タワーはな、皆さん♪
間違いない!アメリカの友人(イスラエル)が破壊したんだよ♪
何がテロリズムだ!
あと何年続くのだろう、アメリカとイスラエルの暴力は♪(以下略)・・・」

ラヒム氏には他に「I hate Israel(イスラエルは嫌い)」というタイトルのヒット曲があるらしい。まあ、なんというか、ストレートな性格の人である。

2004/05/26

「特殊任務あります」イスラエル情報機関モサド、公式サイトで人材募集

英BBC2004/05/24付記事より。

イスラエルの情報機関モサド(ISIS:Israel Secret Intelligence Service)が、公式サイトをリニューアルして人材募集を開始しているというニュース。モサドの情報収集能力がイスラエル国内で叩かれているというから、組織改革が始まったというわけだ。

技術職からドライバー、ウェイターまで幅広く募集中ということだが、圧巻なのはその公式サイト。トップページのデザインは独特のムード(?)を醸し出しているが、例えば「about us」のページにはこんなことが書いてある。


「諜報と特殊作戦の機関として、あるいはモサドとして知られる当機関は、イスラエル政府によって任命され、情報収集と解析、国境を越えた隠密活動の実行を任務としている。」
(The Institute for Intelligence and Special Operations, otherwise known as 'Mossad' has been appointed by the State of Israel to collect information, analyze intelligence and perform special covert operations beyond its borders.)

ここまで堂々と書かれると、なにやら普通の政府機関のように見えてくるが、イラクシリアニュージーランドで活動している同僚達を見ると、やはり普通の就職活動とは違う覚悟が必要だろう。

なにはともあれ、お申し込みされる方はモサド申し込みフォームまでどうぞ。

2004/05/25

イラク人虐待事件再発防止策:「駐留軍はカメラ付き携帯使用禁止!」

News.com.au2004/05/23付け記事より。

ラムズフェルド国防長官の要求により、イラク駐留米軍ではカメラ付き携帯電話の使用が全面禁止されたというニュース。アブグレイブ刑務所囚人虐待事件の流出写真はワシントンポスト紙はじめ各紙で大量に流通しているが、それらの一部は兵士のカメラ付き携帯電話で撮影されたことが判明したそうで、さっそく「再発防止」に乗り出したわけらしい。

2004/05/23

マイケル・ムーア「華氏911」の見どころは・・・

英ミラー紙2004/05/20の記事より。

カンヌ映画祭でパルムドール賞を獲得してしまったマイケル・ムーアの最新作「華氏911(Fahrenheit 911)」の見どころを、一般公開に先駆けて早速英ミラー紙が紹介している。「ブッシュがムーア作品を禁止したい10の理由」と紹介されている、同作品が提示するポイントを以下に引用してみよう。

  1. 911同時多発テロの直後、なぜオサマ・ビン・ラディンの近親者24人が搭乗した航空機は唯一飛ぶことを許され、米国を脱出できたのか?

    攻撃直後、米国は国内での航空機の飛行を全面禁止にした。ムーアは問いかける:「なぜブッシュは、FBIの調査もさせずに、テロ発生直後にサウジアラビアの個人ジェットが米国内を飛び回ってビン・ラディン近親者を搭乗させ、米国を脱出させることを許可したのか?24人の近親者のうち、1人ぐらいは事件について何か知っていることもあるだろうに」


  2. メディアはイラク人囚人虐待事件とアメリカ兵の幻滅を隠蔽したのか?

    作品中では、イラク人囚人に袋をかぶせて、虐待を加えるシーンから、酔っ払った兵士が交代で性的虐待を行うシーンも登場する。ムーアは言う:「これはアブグレイブ刑務所の壁の外で起こったことだ。メディアは毎日そこに待機していた。彼等がこうした事実を目にすることはなかったのか?作品中では、戦場の米兵士が、目の前で起きていることに関して幻滅と失望を感じていることを話しているが、アメリカ国民はそうした(幻滅する兵士達のことを)全く知らされていない


  3. ブッシュは意図的に恐怖の文化を作り出し、アメリカの貧困層の若者を戦争に駆り出しているのか?

    ムーアは、ブッシュ政権が意図的に恐怖の風土を作りだし、特に国土安全省の創設によって恐怖を扇動し、軍部へ入隊する若者を増やしていることを、「嘘に基づいて子供達を戦場に送り出す不道徳な行為」と批判している。


  4. ブッシュファミリーとビン・ラディン・ファミリーはどこまで深く関係しているのか?

    ムーアはビン・ラディン家とブッシュ家の25年に及ぶビジネス関係について暴露している。ブッシュ父は高給取りのコンサルタントとして、国内最大の軍事企業のひとつであるカーライルグループに雇われていた。カーライルグループの出資者の1人(少なくとも200万ドルを出している)のは、ビン・ラディン家である。

  5. ブッシュの軍歴を改ざんするホワイトハウスはどこまで腹黒くなるのか?

    テキサス航空隊に在籍していた事実を証明することを困難にしてしまっただけでなく、ホワイトハウスはブッシュとその仲間がサウジアラビアの石油企業と関係していた事実まで隠蔽している。またムーアによれば、ブッシュの軍隊仲間のジェームズ・R・ベイスはビン・ラディン・ファミリーに航空機を販売していたという。

  6. タリバンとの話し合いの最中、ブッシュはビン・ラディン逮捕の機会を逃したのか?

    ムーアによれば、ブッシュはテキサス州知事時代に、タリバンの指導者と親しくなっていたという。彼等はテキサスで会見し、トルクメニスタンからタリバン支配下のアフガニスタンを経由してパキスタンへ到達する天然ガスパイプライン建造について議論していた。ブッシュ政権の代理人は2001年夏にタリバンと会見している。ムーアによれば、彼等はビン・ラディン問題を無視し、石油問題に夢中だったとのこと。「ブッシュはビン・ラディン引渡しを要求したのだろうか?武力でタリバンを脅しただろうか?あるいは新しいパイプラインについて話し合っていたのか?」


  7. なぜブッシュ家はサウジ王家と特別な関係を持っているのか?

    米国では毎日150万バレル以上の石油をサウジアラビアに依存しているが、サウジ王家の気まぐれですぐ消滅してしまうことも考えられる。ブッシュだけでなく、アメリカ人全てが、いかにサウジ政府に依存しているか知っておくべきだ。これは国土防衛上も由々しき事態なんだ」さらにムーアはブッシュとの深い関係からバンダル・ブッシュというニックネームを持ち、サウジ外交を務めるバンダル王子についても言及。911テロの残虐行為とサウジ過激派との関係を示す証拠が続々と明らかになっているにも関わらず、ブッシュはバンダル王子とテロの二日後にディナーを楽しんでいる。


  8. ブッシュは休暇が多すぎてテロに集中できなかった?

    ブッシュは大統領就任から911同時多発テロまでの8ヶ月間の内、42%の時間を休暇として過ごしているので、防衛戦略に遅れをとることになったと、ムーアは批判する。911テロ調査委員会の公聴会で、CIA長官のジョージ・テネットは、2001年8月の時点で、ザカリアス・ムザウイ(911テロとの関係を告発された唯一のテロリスト)がアメリカン航空747機の操縦レッスンを受けていることを知っていたことを認めている。テネットがブッシュにその事実を伝えられなかったのは「大統領が休暇中だったから」と説明している。


  9. ブッシュは貿易センタービルが攻撃を受けていることを知らされたとき、パニックに陥った?

    9月11日の朝、ブッシュ大統領はフロリダで子供の読書イベントに出席していた際にカメラ前でポーズをとっていた。ムーアは、二つ目の旅客機がビルに突入した事実を告げられ、ブッシュが奇妙な表情をした場面を公開している。画面の下にはストップウォッチを表示して、ブッシュ大統領が絵本を読み続けて、補佐官がどうすべきかアドバイスするまで何をすべきか分からなかった様子が映し出されている。ムーアは言う:「ブッシュは、前の月にCIAから報告を受けていた事実についてもっと真剣に取り組むべきだったと考えていたのだろうか?その報告では、アルカイダが米国攻撃を計画中で、航空機を使う可能性があることが書かれていたんだ。それとも、ブッシュは怖くて気が動転していたのか?」


  10. ブッシュは大手メディアを操作して2000年大統領選挙での勝利をでっちあげたのか?

    ブッシュのいとこ、ジョン・エリスはフォックスニュースチャンネルの役員で、投票日の夜に早々とブッシュ/チェイニー勝利宣言を流し、他のメディアにも追随させるように脅した。この混乱により、アル・ゴアが得票数で勝っていたにも関わらず、ゴア敗北の論調を作り出した。

この作品が米国で公開されるようなことになれば、ブッシュ政権は文字どおりひっくり返ることになるだろう。しかし、ムーアがこれから気をつけなければならないのは、ブッシュチームによる公開禁止圧力よりも、サウジ王家による圧力である。ディズニーが配給を拒んだ本当の理由は、主要株主であるサウジ王家関係者による圧力を恐れたためという見方もあるのだ。しかも今後は、単なる「公開禁止の圧力」で済むのかどうかすら定かではない。

2004/05/22

「詩の授業で得られた厳しい教訓:政府を批判しなければ、言論は自由」

The News-JournalOnline2004/05/15付コラムより。全文を以下に翻訳掲載しました。(文中リンクはDeepthroatによる)


詩の授業で得られた厳しい教訓:
政府を批判しなければ、言論は自由


by ビル・ヒル


ニューメキシコの高校教師で、私の友人であるビル・ネビンスは、昨年解雇され、彼の主催するリオ・ランチョ高校の詩の授業と詩の朗読クラブは永久に閉鎖されました。いかがわしい事件があったわけではありません。全ては過激な政治施策に関わることでした。

10代の詩人グループが、ネビンスに彼等のクラブの指導教官になってもらうよう依頼しました。ネビンスは、その内気な若者達に、自分の詩を聴衆の面前で、大きな声で読むように指導しました。リオ・ランチョ高校はそのクラブを、週一回校内放送に出演させることにし、詩の朗読は成果をあげていました。

2003年3月、コートニーという名の女の子が、アルバカーキのバーンズアンドノーブル書店に集まった聴衆の前で、自作の詩を披露しました。それから校内放送に出演し、その詩を朗読しました。

程なくして、高校の米軍連絡委員と校長が、彼女のことを「反アメリカ的」と非難しました。彼女の詩はイラク戦争と、ブッシュ政権の「落ちこぼれゼロ」教育政策を非難する内容だったからです。

校長は、教師をしている少女の母親に、娘の詩を破棄するように命令しました。母親は命令を拒否した結果、職を失うことになりそうです。

ビル・ネビンスは、生徒の詩の内容を検閲しなかったという理由で停職処分となりました。言っておきますが、いかがわしい詩などひとつも存在していなかったのです。後日、校長はビルを解雇しました。

ビル・ネビンスが解雇され、学校内で詩の朗読と指導が停止されてから、校長と米軍連絡委員は、校舎に国旗を掲げて、自分たちが書いた詩を読み上げました。校長は国旗を拡げながら、米軍連絡委員との協調関係を自画自賛しました。

そして、校長と政治的に相反する全ての生徒と教員に、校長は「黙れ」と怒鳴りつけたのです。ニューメキシコで最大の公立高校で、3,000人の生徒に向かって、校長はなんと素晴らしい授業を実施したことでしょう。校長の心の中では、特定の意見しか許されないわけです。

しかし事態はこれだけで収まりませんでした。美術部の生徒が描いたポスターは、いかがわしい点は全くないにも関わらず、戦争政策を風刺した内容ということで、破り捨てられることになりました。教室に張られたポスターを剥がすように命令され、拒否した美術の先生は、学期内に教室に戻ることを許されませんでした。

そのメッセージはとてもわかりやすいものです。批判的な考えや、公的政策への疑問、言論の自由は、校長と意見が合わない人間に対しては一切許可されないということなのです。

ニューヨークに本拠を構える全米記者組合(NWU)は、この学校を相手取って訴訟を起こし、教員組合がこれに加わりました。NWUの全州代表、サマンサ・クラークはアルバカーキに居住しています。

アメリカ自由人権協会(The American Civil Liberties Union)も連邦政府で係争中の同訴訟に加わりました。

一方、ネビンスは他校での教員の仕事に申し込み、働き口を紹介されましたが、リオ・ランチョ高校の校長が信任状を送付しない限り、働くことができません。校長は信任状を書くことを拒否しており、その件でも新たな訴訟案件として裁判の日を待つことになりました。

生徒たちは詩の朗読、詩のクラブと授業を禁じられているので、ネビンスは他の場所で自身の詩を書いています。

イランや北朝鮮、スーダンの書き手のエッセイ、映画、詩、科学記事、著作などを長年翻訳してきた作家や編集者は、米国財務省から活動を止めるよう警告を受けており、違反者は罰金、あるいは収監される恐れがあります。出版社や映画プロデューサーは、そうした国の作家の作品を編集することを禁止されています。1988年の法令により、出版物は貿易制裁措置から除外されているにも関わらず、ブッシュ政権は、そうした編集翻訳活動が敵国との取引に影響を与えると主張しているのです。

米国化学会出版部門部長のロバート・ボウェンシュルト氏(Robert Bovenschulte)は、イランの科学資料を英文翻訳することにより、この法解釈問題に挑戦しています。

次は、禁書ということになるのでしょうか?


2004/05/21

米国テロ対策事情:2件の最新事例

勤勉な?シークレットサービスの捜査事例

St. Louis Independent Media Center 2004/05/18付け記事より。

ハキム・アジズ氏は、42歳になるアフリカ系アメリカ人のイスラム教徒。妻と二人の子供と共に、ミズーリ州セントルイスに住み、個人で会計サービス事業を運営している。

2004年4月7日の午後10時過ぎ、誰かが執拗にドアを叩き呼び鈴を鳴らすのを不審に思ったアジズ氏は、3階の仕事場から階段を下りて訪問者に対応した。ドアを叩いていたのは二人のシークレットサービスエージェントと4人の警察署員だった。住所の確認に答えたアジズは、銃を所持しているかを尋ねられたので、空のポケットを見せようとすると、署員は銃を抜いて構えた。アジズ氏は手を揚げてポケットナイフを持っていることを署員に告げた。訪問者たちはアジズ氏を立たせたまま、捜査員章を見せてから質問を始めた。

エージェント:
「我々の職務についてはご存知かね?」

アジズ氏:
「もちろん。大統領を守るんだろ?」

エージェント:
「結構。我々がここに来た理由について思い当たることは?」

アジズ氏:
「わからん」

エージェント:
「電子メールを送ったのを憶えてるか?」

その時点で、アジズ氏ははじめてエージェントが何について話したいのか理解したという。
エージェント:
「我々がここに来た理由は、あんたの電子メールを傍受したからだ。その電子メールには“ブッシュ”と“ビン・ラディン”が同じ文章中に記述されていたということだ。そうしたメールを送った覚えは?」

アジズは近所の住人へ送ったメールを思い出した。その相手とはイラク占領体制についてメールで議論していたという。エージェントが指摘したメールの文章はこんな感じだ:「マヌケなブッシュは嫌いだから、シェイク・ビン・ラディン閣下が(ブッシュの)悪党連中を地球上から撲滅したらお祝いしたいものだ。(I hate that imbecile bush so much that I would celebrate if the Honorable Sheik bin Laden succeeded in ridding the earth of his filth.)」
アジズ:
「それがどうしたというんだ?誰かが死んでお祝いしたとしても犯罪じゃないだろ?私が子供の頃は、警官が殺される度にお祝いしたもんだ。警官を憎むのがアタリマエの場所で育ったんだよ」

エージェント:
「1994年にミズーリ州ペリー郡において軽犯罪違反の容疑があるとのことだが、憶えてるな?」

アジズ氏:
「ああ憶えてるとも」

エージェント:
「その容疑に対して召喚状が出てることも知ってるか?」

アジズ氏:
「それは知らない。でもそういうこともあるだろうな」

エージェント:
「その件であんたを引っ張ることもできるんだが、今はやめとこう。我々に感謝してほしいもんだな

そうしたやりとりの後で、エージェントたちはアジズ氏の同意を得て、彼の自宅を(捜査令状なしで)チェックし始めたという。特にエージェントが念入りに検証したのは、アジズ氏の仕事場にある書籍、CD、書類の類だった。アジズ氏はイスラム関係の書籍を多く所有していたのである。また、警官たちは、地元の反戦団体から配布された反戦メッセージのプラカードをアジズ氏が所有しているのを見つけて、「週末に開催予定の反戦集会に参加するのか?」と問われたという。しかし、アジズ氏は地元で反戦集会が行われるということを知らなかった

アジズ氏の見方によれば、エージェント達は、実際には彼の電子メールを専用の監視システムで傍受したのではなく、メール送信相手のタレコミを元に捜索に来たのではないかと考えているという。イラク占領をめぐりメールで議論した相手は地元の共和党員で、前市長選に立候補した人物だった。シークレットサービスの広報担当者トム・カナヴィ氏によれば、エージェントは市民からのタレコミに対しても「傍受」と説明することがあるとのこと。

寛容な?FBIの捜査事例

The Ledger-Enquirer紙2004/05/18付け記事より。

ジョージア州アトランタの貨物駅近くで、発射された後の軍用ロケットランチャーが発見された。FBI広報官のスティーブ・ラザラス氏の説明によれば、発見された武器は、普段は兵士の訓練用に使われるモデルで、航空機を撃墜したり列車を破壊するほどのパワーはないという。

もし訓練用のモデルだとすれば、国内の銃火器店ならどこでも手に入るよ。」彼は付け加えた。

ラザラス広報官の説明によれば、今回の件は一般市民に警報を出すほどのことでもなかったので、市内の列車運行に影響がでることもなかったとのこと。

発見されたのはM136 AT4 というモデルのロケットランチャーで、軽戦車を攻撃する際に使われることもあるという。尚、発見された現場から北に8マイル行った先には、ハートフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港がある

2004/05/20

「ボーンズメンが闘う時」byトム・ハイデン

イエールポリティック紙2004/05/18付けコラムより(Alternet転載)。

こんなタイトルのコラムがイエール大学新聞に掲載されているところを見ると、学内においてスカルアンドボーンズは批判されはじめているのかもしれない。以下に全文を翻訳掲載する。(文中リンクと写真掲載はDeepthroatによる)



ボーンズメンが闘う時


by トム・ハイデン


ジョン・ケリー(スカルアンドボーンズ1965年会員)とジョージ・ブッシュ(スカルアンドボーンズ1967年会員)に、大学時代からの秘密結社所属について良心の呵責を感じないか、と尋ねるようなガッツのあるジャーナリストはいないものだろうか。ケリーが予備選挙で勝利を収めた際、ブッシュがお祝いの電話をした時に、彼等はスカルアンドボーンズについて暗号で話し合っただろうか?デモステニの誕生日とスカルアンドボーンズ創立を表す暗号「322」をうっかりレポーターが口走ったとしたら、ブッシュとケリーは部屋から外に出ない旨の同意をするだろうか?

もう黒板を消しても良いかな?読者諸君。それともこんな質問は誇大妄想的で野暮ったいと、気取って片付けてしまうつもりかな?

私は陰謀論信者になったわけではない。しかし、平等主義の60年代から40年の月日が過ぎて、さらにいえば独立宣言から225年も経過したのに、2004年の選挙においてアメリカの有権者が選択したのは本当に2人のボーンズメンなのか?

学ぶべきことは、貴族制は民主主義社会にあっても生き延びているという事実なのである。

私自身、ブッシュやケリーと同じ年代に、ミシガン大学の秘密結社の会員だったので、それがとてつもない経験であったことを証言できる。新入生として、ドルイド(ケルト人系組織)に誘われた私は、2日間の宗教儀式の中で、下着一枚だけにされて、生卵をぶつけられ、赤い染料を浴びせられて、大学キャンパス内の木に縛り付けられた。こうした屈辱を受け入れることで、卑しい学生ジャーナリストだった私は、キャンパスの重要人物に生まれ変わることになったのだ。

しかしながら、程なく私は疎外された。組織に属しているという実感をどうしても得られることはなかったのである。たぶん、アイリッシュ系カソリック信者の移民出身で、大学に進学したのも家族で最初だった私は、元々アウトサイダーだったのだ。組織構成員達の目的はただひとつ、アレクサンドラ・ロビンスのスカルアンドボーンズに関する著作の中で情報源が言うように、「組織に属していない人間に嫌な思いをさせる」ことなのだ。しかし組織内に居た時でさえ、私は嫌な気分で、所在なくて、憤慨していた。

最も上級の秘密結社であるミシガムア(Michigamua)に誘われたとき、私は入会する代わりにガールフレンドのアパートに隠れ住むことにしたので、私はミシガムアにとって歴史上最初の入会拒否者になった。何かがおかしいと思っていたし、資格もないと思っていたし、将来を棒に振るかもしれないと感じたのである。

ミシガン大学の秘密結社ミシガムア

ミシガン大学の秘密結社ミシガムア(source

1960年の夏、全米学生協会(U.S. National Student Association)の全体会議の時に、同じような違和感を感じた。その頃の連盟は、「領主の生まれ」と自ら表現するという年長の学生リーダー派閥が運営していたのである。一方では、野心家だった私はその年長者たちに挑戦するべく、結局20年後まで続くことになる学生人事副委員長の座に立候補したが、他方で、SDS(Students for a Democratic Society:民主学生連盟)などの過激な学生運動に強く惹かれていた。権威の中で働くべきか、新しく危険な何かを求めるべきか?

ある夜、私は偶然にも、全米学生協会の机の上に置かれた黄色いメモを見つけた。そこに書かれたチャートの最上段には「管理グループ」と書かれていた。左側には私の名前があり、SDS創立者アラン・ハーバーの名前もあった。右側には「YAF(Young Americans for Freedom:アメリカ青年自由連合、ボーンズマン1950年会員のウィリアム・F・バックレーによりイエール大学で設立された保守系グループ)」と書かれた枠があった。

7年後に、CIAが密かに全米学生協会を管理・支援していたことが暴露され、ミシガンデイリー紙の前編集者がCIAに雇われたスパイであることが判明した。私はフリーダムライダー(人種差別を訴えるためにバス旅行をする)として南部に赴き、ポートヒューロン宣言の草稿を書いた。

その頃には、ジョージ・ブッシュはイエール大学のチアリーダーで、ビールに夢中だった。ジョン・ケリーは海軍中尉になってメコンデルタで撃ちまくっていた。ブッシュは権威に何の疑いも抱かなかったが、ケリーの忠誠心は戦争で揺らぎ始めていた。しかし彼等は共に巨大で、安全な、秘密裏に行われる少数民族優遇システムに所属していたのである。

あの頃から随分と時間が流れたが、私たちは今でも特権階級に根ざした様々な格差に苦しんでいる。政治システムは民主主義を隠れ蓑にした金権寡頭政治となってしまった。有権者の大部分は、野球場のファンのようなものだ。安い席からゲームに参加して、現状に安住したまま、どっちか好みのボーンズメンに投票する。私たちの税金は、彼等が用意した企業向けの特等席に化けてしまう。

ボーンズメンは、時々権力争いをする。例えば、75年前、米陸軍長官ドワイト・デイビスがデイビスカップ(テニスイベント)を主催すれば、現大統領の祖父の兄ジョージ・H・ウォーカーはウォーカーカップを主催して対抗した。今日のブッシュとケリーの違いは、彼等自身感じるとおり真剣なものかもしれないが、決闘するというわけではない。カール・マークス(ロンドン経済学校)が述べているとおり、階級支配において両者は対照的に相反するという。ブッシュは単独帝国主義だが、ケリーは長い間ボーンズメン達が支持している多面的提携主義である。1人はカウボーイ、1人はインテリなので、両者とも、同じクラブ会員同士で口論するかもしれないが、外部の人間にとって彼等の相違点は現実の問題となる。

ラルフ・ネイダー氏はこのことがわかっていない。その代わりに、彼は二つの党派が共に同じ金権政治に陥っていると主張している。もしかしたら、ネイダー氏は党派に加われないことで憤慨を蓄えているかもしれないが、危険な無知に陥っているともいえる。最高裁判事の指名、宗教的原理主義、市民の権利、環境問題、ジョン・アッシュクロフトとイラクの未来などの課題をめぐり、ブッシュとケリーの違いは、二つの党の支持基盤レベルで大きく分断しているのだ。ケリーがKumbayaを歌っている間、ブッシュはキリスト教右派に追従している。ブッシュ支持者は恐ろしく、危険だが、それがCIA系の連中がケリーを好む理由となるらしい(もちろん密かに)。念のために書いておくと、この11月に私はCIAと共に投票するつもりである。彼等はより小さい災いの選択を私たちに示してくれることであろう。

しかし本当は、ボーンズメンや大型献金者によって選出された候補者のどちらかを選択するよりは、ラルフ・ネイダーのように、民主主義を意義あるものにしたいのである。

私はいまでも参加型民主主義を支持する。それは1962年当時の民主学生連盟の元々の理想であったし、ディープサウスから平和部隊までの除外者を組織した我々の世代の経験を通して、育まれたものなのだ。当時の学生には戦争徴兵があったが、投票するにはあまりにも未熟と見なされていた。南部の黒人やメキシコ人移民は分益小作人になることができたが、投票箱の前では平等ではなかった。我々の世代にとって、民主主義とは誰が多くの投票を獲得するかであり、誰がお金を操作するかということではなかった。情報は自由に流れ、企業の広告やメディア活動によって阻まれることもなかったのである。

私たちはいつも、すでに支配者によって審査済みの二人の候補者のどちらかを選択する以上の権利を求めている。私たちは自らの生活に影響を及ぼす決定に際して、より直接的な意見を求めている。私たちは、秘密結社によって制限された民主主義ではなく、誰もが参加できる民主主義を求めている。押入れには何も隠して欲しくないのだ。

60年代とそれ以前の世代の過激な活動の結果、私たちの国はより開かれた民主主義国家となった。リンカーンだけでなく、差別廃止論者達のお陰で、奴隷制度を廃止することができたのであり、選挙権確立は婦人参政権論者のお陰であり、ウォールストリートの規制は大衆主義者のお陰、正しい交渉は工場スト参加者のお陰、より良い空気と水は環境運動家に負う所が大きい。今回の選挙では、反戦活動と世界の司法運動がイラクと貿易の課題を明確にしてくれている。そして同性愛コミュニティは結婚制度を市民的不服従へと導くのである。

しかし、権力ピラミッドの頂点に居る間は、アメリカ風エリートたちはまだ奇妙な性質のままで、下層からの改革を受け入れることもない。大多数のアメリカ人がアイビーリーガー候補者に劣等感を抱いたり、彼らのドラマに自己投影しているようでは、心理的にも我々は民主主義に生きることはできないだろう。やがては変えていくべきなのだ。隠し事をする支配者達は、民主主義社会の道徳的妥当性を獲得できない。それ故に彼等は次第に秘密主義に陥っていったのである。

2年前、ミシガン大学に学生達が忍び込み、ミシガムアの秘密の場所を占領して暴露し、そこに隠されていた盗品のインディアン遺物を見つけた。ミシガムアはキャンパスを離れた。そのニュースを聞いたとき私は、個人的な、漠然とした抵抗を続ける代わりに、もっと昔にそれをやれたらよかったのにと思った。古い偶像を破壊するには新しい世代が必要なのだ。レナード・コーエンは正しかったのかもしれない。民主主義はアメリカに近づきつつある。



(参考資料)
フリーダムライダー(Freedom Rides
ポートヒューロン宣言(SDS - Port Huron Statement (1962))

2004/05/19

「ブッシュのアメリカを継ぐ若者達」byナオミ・クライン

英ガーディアンの2004/05/18付け記事より。

No Logo: No Space No Choice No Jobs 」(翻訳版:「ブランドなんかいらない」)の著者で、ジャーナリストのナオミ・クラインが寄稿したコメントを以下に全訳掲載。(文中リンク、注はDeepthroatによる)



「ブッシュのアメリカを継ぐ若者達」
(Children of Bush's America)


by ナオミ・クライン

1968年、アメリカの伝説的な組合主宰者、セサール・チャベス氏が25日間のハンガーストライキを敢行した。食事を絶っている間、チャベスは農場労働者たちが直面した劣悪な生活環境を非難した。彼の歴史的な組合活動のスローガンは「Si se puede!(我々にはできる:Yes, we can!)」だった。

先週、ジョージ・ブッシュは4日間のバス遊説に出かけた。あちこちの街でパンケーキの朝食をとりながら、ブッシュは自身の減税政策を褒め称え、世界経済時代においても労働者に対する保護政策が必要と主張する人々を非難していた。彼がその自由放任主義経済を強調する際のスローガンは?「アメリカならやれる!(Yes, America can)」である。

おそらく、そうした呼びかけは意図的なものだろう。ブッシュはヒスパニック系アメリカ人の票集めのために、オハイオ州での遊説では「Vamos a ganar! We're going to win!(我々が勝つ!)」と叫び続けている。

しかし、「Yes, America can」バスツアーの本当の目的は、もちろん、有権者達の関心を、イラク刑務所スキャンダルから国内雇用再生の話題へと逸らすためのものである。米労働省の報告によれば、今年4月に288,000人の雇用が創出されたとのことだ。ブッシュの選挙キャンペーンはこの数字を取り上げて、ジョン・ケリーを、陰気なニューイングランドの悲観主義者で、いつも悪いニュースについて単調な語り口で話す人物という役回りに仕立て上げている。一方のブッシュは、元気なテキサスの楽観主義者で、いつも気楽なスマイルとサムアップ(親指を立てるサイン)が売りというわけだ。アイオワ州ドゥビュークで、ブッシュは観衆に向かってこう話している。「大統領というものは、国民が楽観的で、雇用創出に自信をもっていることを明確にするべきなのだ」

しかしながら、創出された雇用の内実をいくつかみれば、ポジティブな大統領のパワーの影響を伺うことができる。今年4月に派生した雇用のうち82%以上は、レストランや小売り店といった、サービス業分野の雇用なのである。そして最も新規雇用を増加させた雇用主は、派遣会社であるという。そして過去1年間で、製造業の分野では272,000人が職を失っている。大統領が2月に報告した経済レポートで、ファーストフード店舗を生産工場として分類し直すというアイデアが登場したことも当然であろう。レポートはこう問いかけている。「ファーストフード店でハンバーガーが売れたとき、それはサービスが提供されたというべきか、それとも製品が製造されたと見なすべきか?」

しかし、米国内の雇用上昇率の全てが、ハンバーガーをひっくり返すことや派遣社員の増加から成立しているわけではない。200万人以上のアメリカ人が収監されている状況にあっては、刑務所護衛官の数も急増している。2000年には270,317人だった刑務所護衛官は、2002年には476,000人となった。

悲惨な経済状況に直面しながら、ブッシュが親指を立てる姿を見るにつけ、私の頭は、イラクで撮影され、広く出回っている写真のほうに思いをめぐらせてしまう。チャールズ・グレイナーとリンディ・イングランドというその道の専門家が、幸福なカップルとして、拷問されたイラク人囚人が積まれた山を前に、ニコヤカな表情で両手の親指を立てている写真。万事が順調とでも言いたげな彼等の視線は、足元に注がれることはない。

米国の悲惨な雇用情勢と、アブグレイブ刑務所から登場したイメージはどこかで繋がっている。刑務所スキャンダルに関わった若い兵士達は、低賃金労働者(McWorkers)であり、刑務所護衛官であり、「景気回復」とブッシュが言うところの、レイオフされた工場労働者たちなのである。虐待の責任を負う兵士達のレジュメは、まさしく4月の米国労働省の報告の内実そのものだ。

サブリナ・ハーマン技術兵は、バージニア州ロートン出身で、地元のパパ・ジョンピザ店の副店長である。グレイナー技術兵はペンシルバニア州から来た刑務所護衛官だ。もうひとりの刑務所護衛官、アイヴァン・フレデリック軍曹はバージニア州の田舎出身である。

「アメリカの収容所経済」と囚人側弁護士のヴァン・ジョーンズ氏が表現したとおり、イラク刑務所に勤務する前のフレデリックには、メリーランド州マウンテンレイクでボシュロム社の工場にきちんとした仕事があったのである。しかし、ニューヨークタイムズ紙によれば、その工場は閉鎖され、メキシコに移転した---経済政策研究所の見積りによると、1994年に北米自由貿易協定(NAFTA)が効果を発揮してから、米国内で900,000人分の雇用(大部分は製造業)が失われたというが、これはその一つの例である。

自由貿易は米国雇用市場を砂時計に変えた。多くの仕事は底に向かい、上にもかなりの仕事はあるが、中間層にはほとんど何もない。同時に、底から頂点を目指すのはとても困難になっている。大学の授業料は1990年以来50%も上昇しているからだ。

そこで米軍の登場である。陸軍はアメリカで拡大しつつある階級格差に架ける橋の役割を担っている。軍隊勤務と引き換えに大学の授業料が負担されるのだ。自由貿易徴兵システム(the Nafta draft)とでも呼ぶべきかもしれない。

アブグレイブ刑務所スキャンダルで非難の先頭に立たされているリンディ・イングランドもそのシステムを活用した1人である。彼女は大学に行くために、憲兵隊に入隊した。彼女の同僚のサブリナ・ハーマンも、同じ理由で入隊している。

もちろん、刑務所での虐待に加担した兵士が貧しいからといって、彼等の罪の軽重には関係ない。しかし彼等について調べれば調べるほど、米国での良い仕事の減少と社会的不公平さが、まさしく彼等をイラクの最前線に追いやったという事実が、より一層明確になるのである。イラク問題から国民の目を逸らすために経済問題を持ち出し、兵士達の行為を反アメリカ的な社会逸脱者として孤立させることに執心するブッシュの意図にも関わらず、低賃金の仕事(McJobs)、虐待刑務所、不充分な教育、閉鎖された工場等に追いやられている若者たちは実在するのである。

そして、他の意味でも、彼等はブッシュが生み出した若者たちなのだ:足元に災難が迫っているのもお構いなしに、あちこちで親指を立てて見せびらかしている。これこそジョージ・ブッシュの真髄なのである。米国の有権者たちがポジティブな大統領を求めていることを確信して、ブッシュの選挙チームは楽天主義を武器として使うことを学んでいる。どんなに破滅的な危機が迫っていても、どんなに多くの命が失われるとしても、ブッシュとそのチームは世界に向けて親指を立て続けるつもりなのである。

ドナルド・ラムズフェルド?最高“楽天”司令官の言葉によれば、「素晴らしい仕事をしている」らしい。イラク作戦?大失敗だった「任務完了」演説から1年経って「もちろん、進展している」とブッシュはレポーターに話している。大勢を貧困に追いやった米国雇用市場は?「アメリカならやれる!」というわけだ。

若い兵士達に囚人を拷問するよう指導したのは誰なのか、私たちにはまだ知らされていない。しかし途方もない苦痛に直面した際に能天気な状態を保つ方法を教えた人物については、私たちは実によく知っている。その教えは、上のほうから直接伝えられていたのである。




(注)McJob, McWork, McWorkers
元々はマクドナルドの仕事という意味。いつの間にか低賃金で退屈な労働の代名詞となり、今では英和辞書にも掲載されているが、米マクドナルド社は、Mcjob の定義は侮蔑的であるとして、辞書で有名な Merriam-Webster 社を非難している。McWorkersとは低賃金労働者を表している。

2004/05/17

ニューヨークタイムズコラム:「我々を信用してくれ(Just Trust Us)」byポール・クルーグマン

ニューヨークタイムズ2004/05/11付記事より。いつの間にか政治批評で人気者になってしまっている経済学者ポール・クルーグマンの人気連載コラムのひとつを以下に全訳掲載。(文中リンクはDeepthroatによる)


「我々を信用してくれ(Just Trust Us)」

by ポール・クルーグマン


アブグレイブ刑務所のような事件が明るみに出ることは、誰もが予感していたことではなかったのか?

囚人の虐待事件が世界中に知れ渡ってから、ブッシュ大統領は言った。「(事件は)アメリカ人本来の性質を反映したものではない。」もちろん、彼は正しい。大多数のアメリカ人は礼儀正しくて、愛想がいい。しかし世界の大多数の人々も、同じように礼儀正しいのである。もしもアメリカ人のほうが他国より良い成績があるというなら---実際そうなのだが---それはそのようなシステムがあるからだ:公開性、検証、バランスという伝統のことである。

しかしブッシュ氏は、善悪についてさんざん話したがるにも関わらず、そうした伝統あるシステムを信じていない。彼の政権がスタートしてから登場したスローガンは「我々を信用してくれ」というものだ。ニクソン時代以降、監査も説明責任もないまま政策が実行されることに固執する政権は存在しなかったし、ニクソン時代以降こんなにも信頼性に欠ける政権は存在していない。愛国の意味を取り違えたまま、議会はひたすらブッシュ政権の要求に従ってきた。遅かれ早かれ、モラルの破滅は避けられなかったのである。

「我々を信用してくれ」そう言ったアッシュクロフト司法長官は、議会に愛国法を承認することを要求し、誰からも質問されることはなかった。それから2年半が経過して、千人以上の人々を密かに逮捕・拘束したあげくに、アッシュクロフトは未だに1人として有罪のテロ実行犯を見つけていないのである。(ダリア・リスウィックがスレイト誌上で言うところの「古臭いトレーニングビデオを見て不満一杯の悪党」に関する実際の裁判を見れば、私の言いたいことがわかるだろう)

「我々を信用してくれ」ジョージ・ブッシュはそう言って、明白な脅威でもなく、我が国へ直接攻撃すらしていないイラクを、テロとの戦争の場にすることに固執した。実際に戦争をしてみると、大量破壊兵器は見つからず、アル・カイダとの関係を示す新たな証拠もなかったのである。

「我々を信用してくれ」ポール・ブレマーはそう言って、イラク統治を引き継いだ。ところでブレマー氏が統治する資格があるという法的根拠は?連合軍暫定当局は政府機関だが、米国法の統治下にある。しかし、実際には法律だけでなく大統領の指令も、ブレマー氏の権限の裏付けにはなっていないのだ。我々が伝えられる範囲では、ブレマー氏は、大統領以外の誰にも報告義務がないので、イラクを個人的な領地ぐらいに考えているようである。その領地の中では、アメリカ人が適法と認めるような行為はなにひとつ行われていない。例えば、国防総省の古い友人であるアーマッド・チャラビは、サダムの記録を管理する権限を与えられているが、それは個人的な政敵の脅迫にも使えるものだ。

そしてあげくはこれである。「我々を信用してくれ」ドナルド・ラムズフェルドは2002年初頭にそう言って、「敵国の戦闘員」---結局のところ、ブッシュ政権がそのように指定したアメリカ市民を含む全ての人々を意味するのだが、そうした人々はジュネーブ条約で定められた権利を認められないと宣言した。今では世界中の人々が「アメリカの強制収容所」について話し、シーモア・ハーシュが「ソンミ村虐殺」を暴露したときと同じことになっている。

政府高官が拷問を命令したのだろうか?それは「命令」と「拷問」という言葉の定義次第であろう。昨年8月に、ラムズフェルド配下の上級情報部高官が、グアンタナモ収容所の司令官、ジェフリー・ミラー少将をイラクに送り込んだ。ミラー少将は、警備員に尋問者を手伝うように促し、民間の請負業者も含めて、囚人たちを「尋問と虐待がうまくいく」ように「条件を整える」ために協力させた。少将やその上官は、一体何が起こることを期待していたのだろう?

彼等の名誉のために、いくらかの政権高官は口を開き始めている。「これはシステムの不具合によって引き起こされたのである」と言っているのはサウスカロライナの共和党議員、リンゼー・グラハム氏だ。しかし、グラハム氏や、ジョン・マケイン議員や他の与党議員達は、その不具合について彼等が果たした役割を理解しているのだろうか?彼等は政府を信頼に足る組織にするための努力を妨害しながら、国家を災難へ導くためのお膳立てをしてきたのである。ジョージ・ブッシュが、実在しない大量破壊兵器を壊滅させるため、アルカイダと想像上の関係しかないサダムフセインを退治するために、我々を戦争へと巻き込んでおきながら、ブッシュ政権が他の場面でルールに従わなかったからといってショックを表明するとは、何ともおかしなことではないか。

ところで、アブグレイブ刑務所はまだ利用されつづけており、新しい司令官の指揮下にあるという。つまり、グアンタナモ収容所のミラー少将のことである。ドナルド・ラムズフェルドは「責任を受け止め」たというが、それは代償を支払うという意味では全くないのだ。

「ドン・ラムズフェルド氏は米国の歴史上最高の国防長官である・・・国民は今回の事件に関わることを止めて、彼を仕事に戻すべきなのだ」とはディック・チェイニーの言葉である。つまり彼はこう言いたいのだ:「我々を信用してくれ」。



2004/05/14

米国内で名物風刺漫画「Doonesbury」に議論沸騰

カナダのトロントスター紙2004/05/11付け記事より。

日本では、風刺漫画は国会で評価されることもあるが、アメリカでは神経をとがらせる人が大勢いるらしい。

アメリカで36年間続いている有名な風刺漫画「The Doonesbury」で、イラクでの戦闘で深刻に負傷した登場人物のエピソードが掲載された。その内容を巡って、米国内で論議と反発が沸き起こり、いくつかの新聞は登場人物が治療の痛みに耐えて言うセリフ「Son of a Bitch!」に問題があるとして連載を中止したという。(CBSの記事Newsdayの記事MSNBCの記事英ガーディアンの記事

現代アメリカ社会の日常風景を描いている同作品は、合衆国内の多くの新聞に掲載されているが、問題のあったエピソードは以下のようなストーリー展開である。(掲載日のリンク先で実際の漫画が参照できます)

  • フットボールのコーチから兵士になった登場人物B.D.(ブライアン・ダウリング)が、イラクでの戦闘で負傷した結果、左足を失う。(2004/04/26掲載
  • B.D.が怪我の報告のために故郷に電話すると、最初に電話で事情を聞いた友人が一言:
    ワオ!B.D.がパープルハート勲章を貰ったぞ!
    (パープル・ハート勲章は戦傷した米国軍人に授与される)(2004/04/28掲載
  • 電話に出た妻に事情を説明するB.D.:
    「何があったかよく憶えてないんだ。ファルージャでRPGにやられたらしい・・・ひどい怪我をしちまった・・・(中略)いいニュースもあるぞ。ようやく目標まで体重を減らせたよ」
    2004/04/29掲載
  • 夫から負傷を伝えられた妻は、ベッドに寝そべる息子サムにそれを伝える。以下はその会話シーン。

    妻:
    「サム、パパについて知らせることがあるの・・・パパは戦争で怪我をして、足を失くしたのよ。でも大丈夫だから心配しないで。もうすぐ帰ってくるはずよ」

    サム:
    「ママ、冗談言ってるの?」

    妻:
    「いいえ・・」

    サム:
    「やったあ!パパが帰ってくる!」

    妻:
    「・・・」

    2004/05/01掲載

漫画の作者ギャリー・トルデュー(Garry Trudeau)氏はこの連載漫画の功績により、1975年度には漫画家として初めてピューリッツア賞を受賞している。(カナダ元首相ピエール・トルデューはこの漫画家の遠縁にあたるとのこと)
作者自身による今回の騒動へのコメントは以下のとおり:
「このストーリー展開は、犠牲について、人生を完全に変えてしまう深刻な喪失などについて描いています(中略)今月(4月)だけでも、600人以上が戦闘で負傷しています。(中略)イラク駐留に賛成であろうと反対であろうと、忘れてはいけません。我々の名の下に、兵士たちが恐ろしい喪失に苦しんでいることを心に留めておくべきです。」

一方、フォックスニュースチャンネルに出演している保守系名物コメンテイター、ビル・オライリー氏の同作品へのコメントは以下のとおり:
「(作者は)熱心な左翼だ。(中略)過激な反ブッシュ連中だ」
「戦時において反対意見を述べるのは高潔なことかもしれないが、無責任な行為でもある」

(さらに熱のこもったオライリー氏の批判はスタートリビューン紙への寄稿文「Doonesbury作者は一線を越えた」で読むことができる)

ところでこの「the Doonesbury」という漫画は、イエール大学の学生新聞からスタートしたということである。

ここはひとつ、同じイエール大学出身者で、オライリー氏と同じくベトナム戦争を逃れた人物の書いた以下の記事を読んで、オライリー氏に気を静めてもらうとしよう。

私はまとめ役であって、分裂のもとではありません。(I'm a uniter, not a divider.)」

---ジョージ・W・ブッシュがUSAトゥデイ2000/11/07に寄稿したコラム「あなたが私に投票すべき理由」より


2004/05/12

ビル・モイヤーズ:「メディア、政治、検閲」

PBS(Public Broadcasting Service:公共放送サービス)のテレビ番組「NOW with Bill Moyers」のホスト、ビル・モイヤーズがAlternetに寄稿した2004/05/07付けコラムを以下に全訳掲載。(文中リンクはDeepthroatによる)



「メディア、政治、検閲」


ビル・モイヤーズ

イラク戦争はイメージ戦争でもある。今週、アメリカ国民は拷問されたイラク人囚人の写真に騒然となった。それは、先週現地の刑務所にいるアメリカ兵によって撮影されたものだった。

1週間前の金曜日、「ナイトライン」で、テッド・コッペルがイラクで死んだ駐留軍兵士の名前と顔写真を放映した。しかし彼等の顔と名前はシンクレア・ブロードキャスティンググループ所有のABC放送系列局では放送されなかった。シンクレア社はコッペル氏を「政治的主張以外の何ものでもない」と批判した。

しかし、シンクレア社自身の政治的主張はどうなのか?62もの系列局を抱える同社は合衆国内でも最大クラスのネットワークで、ワシントンにうまくロビー活動をしたおかげで、さらにネットワークを拡大できる許可を得ている。そして同社の幹部は気前のいい共和党献金者である。

9/11テロ以降、シンクレア系列局の放送に登場するタレントは、現大統領を100%支持する旨の約束を記した契約書への同意を要求されるという報告がある。同社の広報部門副社長のマーク・ハイマンは、シンクレア・ニュース・チャンネル放送網を通じて国内中に毎日放送されている番組「ザ・ポイント」内にコメンテイターとして登場する割合が2倍に増えている。ハイマン氏は、「クリントンは(女性の)スカートを追いかけるのに夢中で、テロリストを追跡できなかったのだ」などと頻繁に公開討論の場で発言している人物だ。

今年始めに、ハイマン氏はイラクに派遣され、現地での良い出来事についてのニュースを編集する役割を引き受けた。

それはもちろん、シンクレア社の独占だった。ニュース放送網ならどこでも米国憲法修正第1条が適用されることは、私が今実行しているとおり。しかし、自由に話せることと、その声が他の誰かに届けられることは別の話だ。シンクレア社はコッペル氏を検閲した。

そして、民主党全国委員会がスポット広告枠をブッシュ批判スポット広告放映のために買おうとしたところ、シンクレア系列のマジソン局(ウィスコンシン州)は枠の販売を拒否した。

シンクレア社のような、ワシントンにべったりの関係は珍しくない。クリア・チャンネル・ネットワーク---国内最大のラジオ放送網(200以上の局を所有)は1996年の規制緩和の恩恵を受けた最大の勝利者だろう。昨年、クリア・チャンネルはイラク侵攻に関して戦争賞賛集会を開催するチアリーダー的存在だった。

ルパート・マードック氏もワシントンでの勝利者の1人だ。議会と共和党管理下の連邦通信委員会は、彼が所有するニューズ・コーポレーションが法律で許可されているよりも多くの放送局を買収しているにもかかわらず、マードック氏に罪を問うことはなかった。

マードック氏は他にも、イラク戦争翼賛企業であるフォックスニュースとニューヨーク・ポスト紙を所有している。ここ1週間ほど、ニューヨーク・ポスト紙は、現地で体を張っている兵士の実像を「充分に反映していない」として、イラク人囚人の拷問写真の掲載を拒否した。

もういちど言うが、それは彼等の権利である。報道の自由とは、周知されているとおり、放送網を所有する者にのみ保障されているものである。

ポイントはそこなのだ。これらメディアジャイアントは、間違った行動をとっているとしても、権利によって擁護されている。それがシステムなのだ、ブルータスよ、そのシステム---カルテルは、大企業と政府がお互い助け合えるように効果を発揮している。

そんなことはできないはずだった。我等が政府の創始者たちは、報道と政府が団結して公的意見を表明することを快く思わなかったのだ。それゆえ、創始者たちは、憲法に権利章典を明記し、その米国憲法修正第1項によって、権力を持つ政治家と、権力に責任を課す報道の間に壁をつくったのである。初期のアメリカ国内新聞はたった三項程度で、その編集者は「嘘をつく魂を救済したい」と語った。政府は彼が州の許可証を持っていないという件で、すぐさま彼を黙らせた。

近ごろでは、巨大メディア複合企業は政府が検閲を必要とするときには、自らその役を引き受けるようになっている。だから、我々はもういちど思い知らされることになるのだ。ジャーナリズムの最高の瞬間は、ジャーナリスト達が政府と利害を共有している時にではなく、恐れることなく独立しているときにやってくる。自由な報道は、自由社会に全てを託しているのである。



2004/05/09

ディズニーVSマイケル・ムーア騒動から派生した誤解と解説

ニューヨークタイムズが2004/05/05に伝えた「ディズニーによるブッシュ批判映画配給禁止」騒動は、一部のメディアにおいて事実誤認により思わぬ方向にミスリードされているようなので、ちょっと解説してみたい。(ムーア自身もミスリードを懸念して、5月7日付けメッセージで事実関係について説明している。日本語版公式サイトにも同メッセージが掲載中

今回の騒動をめぐるミスリードとは、要約すればおよそ次のようなものである。

マイケル・ムーアは、2004年5月4日にディズニーから配給禁止の要求を知ったと言ったが、ディズニーは配給禁止を1年前に決定しており、ムーア監督自らPR目的のために今回の騒動を起こしたことを認めた。つまり、カンヌ映画祭出品直前に配給禁止騒動をひきおこし、宣伝に利用するために、ムーア監督は事実関係を隠していた


このようなミスリードを含んでいる例として、国内においても、例えば以下のようなブログ記事がある。

この両ブログが、その論拠としてリンクしているのは、英インディペンデント紙に掲載されたアンドリュー・ギャンベル記者の記事で、引用の際に両ブログ上に記述されている記事タイトルは「Moore admits Disney 'ban' was a stunt(ムーアがディズニーの配給禁止騒動を演出(stunt)と認めた)」となっている。

しかしこの、リンク時に掲載された記事見出しを鵜呑みにしてはいけない。リンク先の記事の中にそんな事実は存在しないし、同記事の実際の見出しは「Moore accused of publicity stunt over Disney 'ban'(ディズニー検閲をめぐり宣伝行為と批判されたムーア監督) 」である。つまり、マイケル・ムーアが演出(stunt)を認めたなどとは全く書かれていない。「Moore admits Disney 'ban' was a stunt」という記事見出しは事実と違うだけでなく、元記事には実在していないのである

アンドリュー・ギャンベル記者は、(悪意がないと仮定すれば)どうやら誤解に基づいてこの記事を書いているようだ。記事を読む限り、ギャンベル氏は「ムーア監督は1年前から配給禁止の報告を受けていたのに、今週になって突然ディズニーが配給禁止を決定したかのように振舞った」と思い込んでいる。例えば、記事中の第4-5パラグラフ部分では、以下のように書かれている。(強調とリンクはDeepthroatによる)


In an indignant letter to his supporters, Moore said he had learnt only on Monday that Disney had put the kibosh on distributing the film, which has been financed by the semi-independent Disney subsidiary Miramax.

But in the CNN interview he said: "Almost a year ago, after we'd started making the film, the chairman of Disney, Michael Eisner, told my agent he was upset Miramax had made the film and he will not distribute it."

翻訳:
ファンに宛てた怒りあふれる手紙の中で、ムーアは月曜日(5/4)になってはじめて、ディズニーが子会社であるミラマックスによって支援された作品の配給を阻止することを知ったと言っている。

しかしCNNのインタビューでは、ムーアはこう言っている:「1年ぐらい前、映画を撮り始めてからすぐに、ディズニーのCEOであるマイケル・アイズナーが、私のエージェントに対して、作品を支援したミラマックスに怒り、配給するつもりがないことを話した」



ファンに宛てた怒りあふれる手紙というのは、ニューヨークタイムズで第一報が報じられた際の公式サイト上の5月5日付けメッセージのことである。

そして、このメッセージをよーく読んでみれば、ギャンベル記者の解釈が間違っていることがわかる。手紙の第二パラグラフのこの部分である。(強調はDeepthroatによる)


Yesterday I was told that Disney, the studio that owns Miramax, has officially decided to prohibit our producer, Miramax, from distributing my new film, "Fahrenheit 9/11."

つまりムーアは、「昨日ディズニーが“公式に”配給を禁止したことを知らされた」と書いているのであり、非公式には配給禁止をめぐるやりとりがあったことを否定していない。(さらに手紙を読み進めれば、一年前からトラブルがあったことが言及されている

だいいち、今回のディズニーの配給禁止を最初に伝えたニューヨークタイムズの記事の中で、ムーアが1年前にディズニーから配給しない旨を「非公式に」知らされていたことはすでに言及されているのだ。(ギャンベル氏はこの記事を読んでいないのだろうか?騒動の第一報なのに・・・)同記事の該当場所は第9パラグラフである。以下に引用する。(強調はDeepthroatによる)

Mr. Moore's agent, Ari Emanuel, said Michael D. Eisner, Disney's chief executive, asked him last spring to pull out of the deal with Miramax.

翻訳:
ムーア氏のエージェントであるアリ・マニュエル氏によれば、昨春、ディズニー社CEOのマイケル・アイスナーはマニュエル氏に、ミラマックス社との関係を取りやめるように依頼していたとのこと。

そして、ギャンベル氏自身、ムーアが宣伝のために工作をしたとは断言できないことを意識して、自分の記事中でそのように書いている。それは第7パラグラフから引用した次の文章である。(強調はDeepthroatによる)


But Moore's publicity stunt, if that is what is, appears to be working.
翻訳:
しかしムーア氏の演出は、まさしくそのとおりであったとしたら、うまく作用しているようである。

さらに、ギャンベル氏の記事で引用されていたCNNのインタビューにおいても、ムーアの説明は一貫しているので、CNNの記者もムーアが(配給禁止を)いつ知ったかについては追求されていない。同インタビューから該当部分を以下に引用する。(強調はDeeptroatによる)

ゴラーニ記者:
ディズニーとのやりとりはどういうものだったのですか?

ムーア:
1年ぐらい前、映画を撮り始めてからすぐに、ディズニーのCEOであるマイケル・アイズナーが、私のエージェントに対して、作品を支援したミラマックスに怒り、---ディズニーはミラマックスを所有しているね---そして、私の作品を配給するつもりがないことを話したんだ。

ミラマックスの話では、心配はいらない、映画を撮り続けろ、金は出すという話だった。ディズニーのお金は昨年ずっと私たちの元に振り込まれたんだ。先週作品を完成させたので、来週にはカンヌ映画祭に出品するつもりだ。

今週月曜日に、ディズニーから、作品を配給するつもりがないという最終通告があった。連中は私のエージェントに、ブッシュファミリーの機嫌を損ねたくないと説明した。特にフロリダ州知事のジェブ・ブッシュの機嫌をね---なぜなら、ディズニーは税制面で優遇されていたからだ。(以下略)

ムーアに配給禁止をいつ知ったかを聞くかわりに、CNN記者が質問したのは以下のとおりである。(いかにもCNNらしい質問である)(強調はDeepthroatによる)


ゴラーニ記者:
ディズニー側から見れば、マイケル・アイズナー氏が言うように、“選挙前に党派寄りの作品に巻き込まれたくない”というわけで、公平に見て、もし最終損益に影響する可能性があれば、配給したくないと表明する権利があるのでは

この質問に対するムーアの回答は以下のとおり。


ムーア:
メディア企業は国民の信頼の上に築かれている。その信頼は、全ての意見が耳を傾けられることを許されていることにある。私たちは自由で開かれた社会に生きているのだから、体制に反対する意見であっても口を封じられたり、沈黙させられたりされてはいけない。ディズニーはその信頼を傷つけているんです

まさしくこれこそ、ディズニー騒動で議論されるべきポイントである。つまり、メディア企業は企業収益と公益が葛藤した場合に、どちらを優先すべきか?

いうまでもなく、メディア業界であろうとなかろうと、公益性を軽視した企業活動は認められるべきではない。企業収益のために人命を軽視した自動車企業の腐敗を今まさに目の当たりにしている日本の人々には、すぐにご理解いただけると思う。

念のために言っておくと、私自身(Deepthroat)はマイケル・ムーアが今回の騒動を宣伝に利用するためにマスコミにネタをリークしたという見方を、完全に否定するつもりはない。ただムーア氏が、手の込んだ演出を意図して事実関係を捻じ曲げているわけではないことを強調したいのである。また、スキャンダルや騒動をプロモーションに利用することが常に不道徳な行為であるとも思えない。例えば、ポール・オニールやリチャード・クラークや、ボブ・ウッドワードの著作が世に知られなければ、政府によって隠蔽された重大な事実を、アメリカ国民は永遠に知らされなかったかもしれない。全ては問題の焦点と公益性次第であると思う。

実際、ディズニーとマイケル・ムーアのモメゴトが公開されることによって、(ムーアが自身の作品と同じくらい国民に知らせたかった)以下の事実がスポットを浴びる機会が生まれたのである。(情報源はアメリカンプログレスの記事Fairness & Accuracy In Reportingより)

  • フロリダ州知事ジェブ・ブッシュは自身が理事を務める州公務員年金基金を通して約730万ドル分のディズニー株を保有している。前回のディズニー株主総会において、フロリダ州年金基金の役員とジェブ・ブッシュは株主としてアイズナーCEOの続投に反対しており、アイズナーは自身の支配が揺らぐことを懸念している。
  • アイズナーはブッシュ家の選挙キャンペーンに個人献金している有力支持者のひとりである。
  • 「あらゆる政治的意向を持つファミリーの要求を満たす」というディズニーの主張に反して、同社のメディアネットワークは極端に保守系に傾倒している。ディズニー系トークラジオ局はラッシュ・リンボー、ショーン・ハニティ、ビル・オライリー、マット・ドラッジなど極右タレントがレギュラーを務めている。またディズニー所有のファミリーチャンネルは、パット・ロバートソンの聖書原理主義番組700クラブ」を放送している。

ところで、今回のミスリードの元となった「Moore admits Disney 'ban' was a stunt」という間違った見出しを、現在でも堂々と掲載している大手メディアのひとつにニュージーランド・ヘラルド紙がある。その親会社はAPN News & Media 社。オーストラリア、ニュージランドをテリトリーとする大手メディア企業で、同社のオーストラリアでのラジオ部門であるthe Australian Radio Network は、アメリカで地方ラジオ局を買収しまくり、(ブッシュ批判の件で)ディクシー・チックスをボイコットするキャンペーンを仕掛けた超保守系企業のクリアチャンネル関連企業である。

ニュージーランド・ヘラルド紙が仕事仲間のために読者をミスリードしているなどと言うつもりはないが、奇妙な偶然はあるものだ。

2004/05/08

ジョン・ケリー、芸能界から支持者総動員

フォックスニュース2004/05/06付け記事より。

ジョン・ケリーが大統領選キャンペーンで、リベラル系芸能人を総動員する予定とのこと。以下に予定を抜粋。

  • バーブラ・ストライザンドニール・ダイアモンドが6月7日にジョン・ケリー支援集会でミニコンサートを開催。ストライザンドは2000年にアル・ゴア支持のコンサートでも活躍している。
  • 6月10日には、ニューヨークのラジオシティミュージックホールで、ケリー支持者向けイベントが開催される。ベティ・ミドラー、ジョン・メレンキャンプ、シェリル・クロウ、ロビン・ウィリアムス、ウーピー・ゴールドバーグ、スティービー・ワンダーらが出演予定。同じ時期にソングライター殿堂ディナーも開催されることから、アル・グリーン、ホール&オーツ、マッチボックス20らも加わり、特別コンサートとしてイーグルス登場も噂されている。

ところで、極右メディアのフォックスニュースがわざわざこうした「ケリー支持芸能人」ニュースを掲載している意味は・・・考えないほうがよいかもしれない。

2004/05/07

ラッシュ・リンボー、虐待事件に迷コメント

Media Matters for Americaの記事より。

アブグレイブ刑務所の虐待事件が全世界に波紋を広げる中で、アメリカ国内の保守層に圧倒的人気を誇るパーソナリティ、ラッシュ・リンボーが自身のラジオショーでまたまた奇妙な発言。以下にラジオ番組「Rush Limbaugh Show」の5月4日のトークをMedia Matters for Americaサイトの記録から引用。(録音あり:MP3ファイル


リスナー:
「裸の囚人を積み上げてるのは、まるで大学のクラブの悪ふざけみたいな・・・」

リンボー:
「全くそのとおり!それこそ俺の言いたいことなんだよ。スカルアンドボーンズの入会儀式と変わらないことなのに、こんなことで人々の人生を台無しにして、米軍の努力の邪魔をして、ちょっと楽しんだというだけで、兵士たちをこき下ろそうとしてるんだ。兵隊たちは毎日狙撃されてるんだぞ。俺は連中がお楽しみしただけだといってるんだ。息抜きしただけさ。鬱憤を晴らさなきゃいけないこともあるだろ?」

その前日には、リンボー氏はこんなことも言っているという。同じくMedia Matters for Americaの記録より。


「ところで、よーく見てみなよ、(虐待)写真を。俺だけの考えかもしれないが、こんなのはマドンナとかブリトニー・スピアーズとかがステージでやってることと同じ程度のことだよ。こんなのは、米教育協会(NEA)が承認すればいいんだよ。だって、NEA承認のリンカーン・センターのステージでも“Sex in the City”でも見れる類のもんだよ。」

ところでこの米メディア観察のための新サイト、Media Matters for Americaを主宰するのは、ベストセラー本「ネオコンの陰謀:アメリカ右翼のメディア操作」で有名になった元共和党工作員のデビッド・ブロック氏である。共和党によるクリントンバッシング工作の秘密を暴露した結果、共和党からも民主党からも嫌われることになったが、プロによるメディア操作解説は特筆ものである。昨日はアルフランケンのラジオショーにも出演して、愉快なトークを展開していた。

2004/05/05

ディズニーがマイケル・ムーア新作の配給を妨害

ニューヨークタイムズ2004/05/05付記事より。以下に記事の一部を翻訳し引用する。
(05/10追記:この話題について「ムーア氏が自作自演を認める」というウソが流通しているらしいので、追加記事を書きました


ウォルト・ディズニー社は、その子会社であるミラマックス社の映画配給部門に対して、辛辣なブッシュ批判を展開しているマイケル・ムーア監督の新作ドキュメンタリー「Fahrenheit 911」の配給を阻止するつもりであることを、ディズニー社とミラマックス社の重役が明らかにした。

「Fahrenheit 911(華氏911)」は、ブッシュ氏とサウジ王族の関係、オサマ・ビン・ラディンとの関係を描き、ブッシュ氏の911テロ前後の対応を批判する内容となっている。

10年以上前にミラマックス社を買収したディズニー社は、ミラマックス社の配給作品とレイティングに関して決定権を握っている。

昨春にムーア作品への主要投資企業となっていたミラマックス社重役達の話では、今回のケースはいつもあるような、映画作品に口をつっこむような類のことではないとしている。妥協案が提示されなければ、この件は調停裁判に持ち込まれることになるが、両社首脳ともにそれを望んでいないとも話している。

ミラマックス社広報のマシュー・ヒルツニック氏は、今回のプレスリリースの中で、「この件ではディズニー社と協議中であり、なんとか穏便に事態を収拾すべくあらゆるオプションを考えている」と説明している。

しかしディズニー社重役達の話では、ミラマックス社にムーア作品の北米での配給を許可するつもりは全くないとのこと。海外での配給に関しては、すでに数社に権利を販売済みであるという。

「2003年5月の時点で、我々はすでにムーア監督のエージェントとミラマックス社に、作品配給の予定がないことを説明している」ディズニー社の広報担当官、ゼニア・ムッカ氏はそう話している。「決定を変えるつもりはない」

昨年5月に、メル・ギブソンのアイコンプロダクション社が出資を降りてから、ミラマックス社がムーア作品への出資決定を報じると、ディズニー社は保守層から強い批判にさらされてきた。

ムーア氏のエージェントであるアリ・マニュエル氏によれば、ディズニー社CEOのマイケル・アイスナーはマニュエル氏に、昨春、ミラマックス社との関係を取りやめるように依頼されていたという。マニュエル氏の話では、アイスナー氏はフロリダにある巨大テーマパーク、ディズニーランドの各種税金を巡り、フロリダ州知事のジェブ・ブッシュに大きな便宜を図ってもらっている件が危険に晒される可能性を危惧しているとのこと。

「マイケル・アイスナーは、この作品をハーベイ・ウェインスタイン(訳注:著名なプロデューサー)に売るなと私に懇願していた。もちろんそんな頼みを聞くつもりはありません」マニュエル氏は話した。「アイスナー氏は、ディズニー社の税金面での優遇について明示し、それがミラマックス社に作品を販売することを止めさせる動機だと話していた。彼はディズニー社をこの件に巻き込みたくなかったんです」

ディズニー社重役側はマニュエル氏の批判を否定したが、ミラマックス社とマニュエル氏に、取引に関して不満であることを明らかにしている。

ディズニー社上級役員の話によれば、同社はミラマックス社が社の意向に反する作品の配給をすることに対して、決定を無効にする権利を有するとのこと。同役員の話では、ムーア氏の作品について、ディズニー社と米政府とのビジネス契約に関する意向に反するのではなくて、あらゆる政治的意向を持つファミリーの要求を満たすというディズニー社の意向に背いているのであり、(リリース日が未定となった)ムーア氏の作品は多くの面で政治的孤立を招くとしている。

「高い緊張状態にある政策論争に巻き込まれることは、メジャーな企業にとって利益にならない」同重役は語った。

ミラマックス社は、北米での作品配給に関して他の企業を探すことになるが、そうした取引は利益低下を招き、民主党への巨額寄付者であるハーベイ・ウェインスタイン氏にとって打撃になる可能性がある。

今月にカンヌ映画祭への作品出品が決定しているムーア氏は、火曜日のインタビューにおいてディズニー社の決定を批判し、「然るべき質問をしてみよう。“自由で開かれた社会にあって、一般市民が観ることを許されている情報に対して、お金持ちの投資家が基本的な支配権を握るということがあっていいのか?”」
(以下略)



ちなみにムーアの新作タイトルはフランソワ・トリュフォー作品の巧みなパロディになっている。

2004/05/03

「消えていく投票」by グレッグ・パラスト

ネーション2004/04/29の記事より。またまたヘタな訳で申し訳ないが、以下に全訳を掲載する。



「消えていく投票」by グレッグ・パラスト

2002年10月29日、ジョージ・W・ブッシュは投票支援法(the Help America Vote Act, HAVA)に署名した。ママの手作りアップルパイを思わせる優しい名称の背後には、公民権の時限爆弾という、むかつく事実が隠れている。

まず最初に、公民権剥奪について話そう。2000年11月の大統領選挙に先駆けて、フロリダ州務長官キャサリン・ハリスは、州知事ジェブ・ブッシュと申し合わせながら、地元の選挙スーパバイザーに、選挙人名簿から57,700人分の名前---フロリダ州での投票を禁止されている前科者と見なされていた----を削除するように命じた。公民権が剥奪されることを予定されたその「ろくでなし名簿」リストの少なくとも90.2%は、実際には無実だった。驚いたことに、その半数以上---約54%は黒人もしくはヒスパニックであった。削除された人数について一晩中かけて議論してもよさそうなものなのに、自分の兄にホワイトハウスを譲るためにジェブ・ブッシュが命じたこの電気的人種虐殺行為について、議論が沸き起こることはなかった。投票支援法は、そうした公民権剥奪を祝福するだけでなく、同じような索敵殲滅作戦(サーチ&ディストロイ)をアメリカの50の州全ての脆弱な選挙民に対して導入させるものだ。具体的には、全ての州は、2004年選挙までに、フロリダ州と同じ選挙民リストのコンピューター管理システムを導入しなければならない。投票支援法は、50の州の州務長官---50人分のキャサリン・ハリス---に対して、「被疑者」から公民権を剥奪する権限を与えることになるのだ。

公民権剥奪だ。大変である。2000年12月、黒人有権者の公民権剥奪が英オブザーバー紙によって暴露されてから、全米有色人種向上協会(NAACP)の弁護士はフロリダ州を訴えた。市民権グループは、ジェブ・ブッシュ州知事とキャサリン・ハリス州務長官の後継者に、間違って選挙民リストから削除された市民の復帰を約束する書類を書かせることに成功した。チョイスポイント社(選挙民リストを管理している企業)によって法廷に提出されたデータによると、前科者とされたフロリダ市民の人数は91,000人に及んでいた。ウィリー・スティーン氏もその1人だ。最近、タンパ病院にあるスティーン氏のオフィスの外で、本人に会うことができた。彼の事例はわかりやすいものだった。前科のある者は病院に勤めることはできないからである。(私の手元にあるキャサリン・ハリス作成のリストによれば、オスティーンという前科者に名前が似ているという理由でウィリー・スティーン氏の投票権を剥奪していた)全米有色人種向上協会は、おぞましい投票権剥奪行為のもっとも顕著な事例として、スティーン氏の件を法廷に持ち込んだ。

州側は、スティーン氏の無実を認めた。しかし、全米有色人種向上協会が勝利した裁判から1年が経過しても、スティーン氏は投票することができなかった。なぜ彼は今になっても被疑者扱いされているのか?スティーン氏のことを「重罪犯罪者の可能性がある」とジェブは呼んだが、我々は彼について何を知っているだろう?我等が大統領と違い、スティーン氏は米軍で4年間兵役を経験している。正直なところ、彼が被疑者扱いされる理由はこれしかない:スティーン氏はアフリカ系アメリカ人なのだ。

黒人にとっては、アメリカで選挙に参加することは大きな賭けである。第一段階では、投票申し込みカードがあっさりと投げ捨てられる可能性がある。何百万人ものマイノリティ市民が「ドライバー投票者フォーム」によって投票申し込みをしている。(訳注:「ドライバー投票者法」と呼ばれ、忙しい労働者がきちんと投票する機会を得られるための法律)共和党員もそれは承知している。それら投票者たちが選挙民にカウントされていないという失敗が拡大しているという事実を、市民権委員会が発見したとしても、驚くことはない。私の情報源の報告によれば、選挙事務所には、そうした申し込み用紙がゴミと一緒に山積されているという。

第二段階では、投票申し込みをしたら、重犯罪者扱いされる可能性がある。フロリダ州では、キャサリン・ハリスのインチキな犯罪者リストに加えて、60万人もの住民が、同州での犯罪の前科があるという理由で、合法的に選挙権を剥奪されている。これは一つの州での話。合衆国全体では、有罪判決を受けた140万人の黒人男性は、投票することができない。これは国内の黒人男性全体の13%である。

第三段階になると、本当のギャンブルが始まる。1965年制定の投票権法により、アフリカ系アメリカ人には投票する権利が保障されている---しかし、その投票が数えられる権利については保障されていない。現実には、7件の投票のうち1件は数えられていないのだ。

ガズデン郡の例を見てみよう。ガズデン郡は黒人住民比率が58%で、フロリダ州の67の郡の中では最大の比率である。そしてガズデン郡は最大の「除外率」を誇っている。つまり、投票用紙は技術的理由によりはじかれるのだ。同郡では8人に1人の割合で投票はカウントから除外された。ガズデン郡の隣、レオン郡は大多数の住民が白人で、ほとんどの投票用紙はカウントされている(除外率は1/500)。

どうやって投票が除外されるのか?外見上、投票用紙に余分な記入がある場合はカウントから除外される。ガズデン郡では、名前にチェックを入れる代わりに、アル・ゴアと記入する人がいた。その投票はカウントされなかった。

ハーバード法律学校の教授で市民権委員会の会員、クリストファー・エドリー・ジュニア氏は、そうした除外の匂いがキライだった。そこで彼は、使用済みの投票用紙を掘り起こし、委員会の見つけた公式証拠を調べて、こう報告した:黒人票の14.4%---7人に1人---は「無効」、つまりカウントされなかった。対照的に、黒人以外の票の除外率は1.6%だった。

フロリダ州の選挙民の11%はアフリカ系アメリカ人である。フロリダ州は179,855人分の除外された票をカウントすることを拒否した。中学生レベルの代数学を駆使した結果、「除外」された票のうち、54%(97,000人分)は黒人の投票で、その90%以上はゴア支持者だった。黒人以外の票はゴアとブッシュで均等に割れていた。それゆえ、キャサリン・ハリスが票のカウントを許可すれば、アル・ゴアはおよそ87,000の得票差でフロリダ州を制していたのである。なんと、ブッシュがゴアを破った公式得票差の162倍だ。

フロリダの話はそこまで。ではアメリカ全体の話をしよう。2000年大統領選挙では、190万人分の票がカウントされなかった。ゴアと記入されていたり、投票機械の故障などなど、技術的な理由で「除外」されたのである。票がカウントされなかった理由はいろいろあるだろうが、ゴミ箱に廃棄された投票用紙には疑惑の影がある。ハーバードの専門家、エドリー氏のチームが、フロリダ州と同じように発見したことは---郡という郡、管区という管区ごとに---除外された投票用紙の数は、その地域の黒人住民数に正比例しているということだった。

フロリダ州の人種プロファイリングは国全体のそれに酷似している---黒人有権者の比率と、カウントされなかった投票の人種比率の両方において。「2000年のフロリダ州では、白人の投票に比較して、黒人の投票は10倍もカウントから除外される傾向にあった。」こう説明してくれるのは、エドリー氏の報告書を共著した、政治科学学者のフィリップ・クリナー氏だ。「国全体のデータから見ると、フロリダ州の事例は、驚いたことに、典型例なのです。白人有権者と非白人有権者の比率から、米国内でカウントされなかった投票のうち、およそ半数の100万人分が、非白人の投票とみられています。」

もうおわかりだろう。前回の大統領選挙では、黒人やマイノリティが投票したおよそ100万人分の投票用紙は捨てられたのである。2004年11月にも、同じように除外されるだろう。より効果的に、コンピューターによって---投票支援法と、その他インチキ改革施策は、複雑なIT化によって、説明されることもなく、カウントされない投票の人種バイアスをより悪化させているのである。

100万人の投票がどす黒い煙の中で消失していく。煙が晴れたら、ブッシュ一味は自らの政治生命を投票用紙の焚き火で暖めるのだろう。それではごきげんよう。(HAVA nice day)


2004/05/02

アメリカ刑務所合衆国

ニューヨークタイムズ2004/04/30付け記事より。

先日発表された「The New Landscape of Imprisonment: Mapping America's Prison Expansion」という調査報告書によると、アメリカ合衆国では、1980年から2000年の間に刑務所が急増し、住民の30%が囚人という市/郡もいくつかあるという。

調査を担当したThe Urban Institute のジェレミー・トラビスの言葉を引用すると:

「アメリカンライフと刑務所は深く絡み合っており、物質的にも経済的にも多くの地域と融合している。」

「刑務所運営は地域の雇用を生み、囚人は収監された刑務所のある地域の住民としてカウントされるため、連邦と州の助成金に大きな意味を持ち、政治的にも影響力を持っている」


また、トラビス氏の調査によれば、刑務所は都市部から遠く離れて建設される傾向にあるため、囚人と家族の面会をより一層困難にし、結果として囚人の社会復帰の機会を奪うことになっているという。

州別の刑務所
増加率ランキング
1テキサス
2フロリダ
3カリフォルニア
4ニューヨーク
5ミシガン
6ジョージア
7イリノイ
8オハイオ
9コロラド
10ミズーリ

1923年のアメリカには、刑務所は61ヶ所だけだった。しかし1974年には592ヶ所となり、2000年には1,023ヶ所に増加。

全米でもっとも刑務所建設に熱心なのは(ブッシュが州知事を務めた)テキサス州で、過去20年間に120の刑務所を増設、今日では137ヶ所の刑務所を稼動させている。2番目に刑務所が多いのは(ブッシュ弟のジェブが州知事を務める)フロリダ州で、(20年間に84ヶ所増設)カリフォルニア(83ヶ所)、ニューヨーク(65ヶ所)がそれに続いている。

合衆国全体でもっとも囚人の割合が多い地域はテキサス州コンチョ郡で、4,000人弱の住民のうち、33%は刑務所に居るとのこと。

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