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2004/05/17

ニューヨークタイムズコラム:「我々を信用してくれ(Just Trust Us)」byポール・クルーグマン

ニューヨークタイムズ2004/05/11付記事より。いつの間にか政治批評で人気者になってしまっている経済学者ポール・クルーグマンの人気連載コラムのひとつを以下に全訳掲載。(文中リンクはDeepthroatによる)


「我々を信用してくれ(Just Trust Us)」

by ポール・クルーグマン


アブグレイブ刑務所のような事件が明るみに出ることは、誰もが予感していたことではなかったのか?

囚人の虐待事件が世界中に知れ渡ってから、ブッシュ大統領は言った。「(事件は)アメリカ人本来の性質を反映したものではない。」もちろん、彼は正しい。大多数のアメリカ人は礼儀正しくて、愛想がいい。しかし世界の大多数の人々も、同じように礼儀正しいのである。もしもアメリカ人のほうが他国より良い成績があるというなら---実際そうなのだが---それはそのようなシステムがあるからだ:公開性、検証、バランスという伝統のことである。

しかしブッシュ氏は、善悪についてさんざん話したがるにも関わらず、そうした伝統あるシステムを信じていない。彼の政権がスタートしてから登場したスローガンは「我々を信用してくれ」というものだ。ニクソン時代以降、監査も説明責任もないまま政策が実行されることに固執する政権は存在しなかったし、ニクソン時代以降こんなにも信頼性に欠ける政権は存在していない。愛国の意味を取り違えたまま、議会はひたすらブッシュ政権の要求に従ってきた。遅かれ早かれ、モラルの破滅は避けられなかったのである。

「我々を信用してくれ」そう言ったアッシュクロフト司法長官は、議会に愛国法を承認することを要求し、誰からも質問されることはなかった。それから2年半が経過して、千人以上の人々を密かに逮捕・拘束したあげくに、アッシュクロフトは未だに1人として有罪のテロ実行犯を見つけていないのである。(ダリア・リスウィックがスレイト誌上で言うところの「古臭いトレーニングビデオを見て不満一杯の悪党」に関する実際の裁判を見れば、私の言いたいことがわかるだろう)

「我々を信用してくれ」ジョージ・ブッシュはそう言って、明白な脅威でもなく、我が国へ直接攻撃すらしていないイラクを、テロとの戦争の場にすることに固執した。実際に戦争をしてみると、大量破壊兵器は見つからず、アル・カイダとの関係を示す新たな証拠もなかったのである。

「我々を信用してくれ」ポール・ブレマーはそう言って、イラク統治を引き継いだ。ところでブレマー氏が統治する資格があるという法的根拠は?連合軍暫定当局は政府機関だが、米国法の統治下にある。しかし、実際には法律だけでなく大統領の指令も、ブレマー氏の権限の裏付けにはなっていないのだ。我々が伝えられる範囲では、ブレマー氏は、大統領以外の誰にも報告義務がないので、イラクを個人的な領地ぐらいに考えているようである。その領地の中では、アメリカ人が適法と認めるような行為はなにひとつ行われていない。例えば、国防総省の古い友人であるアーマッド・チャラビは、サダムの記録を管理する権限を与えられているが、それは個人的な政敵の脅迫にも使えるものだ。

そしてあげくはこれである。「我々を信用してくれ」ドナルド・ラムズフェルドは2002年初頭にそう言って、「敵国の戦闘員」---結局のところ、ブッシュ政権がそのように指定したアメリカ市民を含む全ての人々を意味するのだが、そうした人々はジュネーブ条約で定められた権利を認められないと宣言した。今では世界中の人々が「アメリカの強制収容所」について話し、シーモア・ハーシュが「ソンミ村虐殺」を暴露したときと同じことになっている。

政府高官が拷問を命令したのだろうか?それは「命令」と「拷問」という言葉の定義次第であろう。昨年8月に、ラムズフェルド配下の上級情報部高官が、グアンタナモ収容所の司令官、ジェフリー・ミラー少将をイラクに送り込んだ。ミラー少将は、警備員に尋問者を手伝うように促し、民間の請負業者も含めて、囚人たちを「尋問と虐待がうまくいく」ように「条件を整える」ために協力させた。少将やその上官は、一体何が起こることを期待していたのだろう?

彼等の名誉のために、いくらかの政権高官は口を開き始めている。「これはシステムの不具合によって引き起こされたのである」と言っているのはサウスカロライナの共和党議員、リンゼー・グラハム氏だ。しかし、グラハム氏や、ジョン・マケイン議員や他の与党議員達は、その不具合について彼等が果たした役割を理解しているのだろうか?彼等は政府を信頼に足る組織にするための努力を妨害しながら、国家を災難へ導くためのお膳立てをしてきたのである。ジョージ・ブッシュが、実在しない大量破壊兵器を壊滅させるため、アルカイダと想像上の関係しかないサダムフセインを退治するために、我々を戦争へと巻き込んでおきながら、ブッシュ政権が他の場面でルールに従わなかったからといってショックを表明するとは、何ともおかしなことではないか。

ところで、アブグレイブ刑務所はまだ利用されつづけており、新しい司令官の指揮下にあるという。つまり、グアンタナモ収容所のミラー少将のことである。ドナルド・ラムズフェルドは「責任を受け止め」たというが、それは代償を支払うという意味では全くないのだ。

「ドン・ラムズフェルド氏は米国の歴史上最高の国防長官である・・・国民は今回の事件に関わることを止めて、彼を仕事に戻すべきなのだ」とはディック・チェイニーの言葉である。つまり彼はこう言いたいのだ:「我々を信用してくれ」。



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コメント

リンクしました…一応。情報鎖国の日本では翻訳は貴重。

アブグレイブやグアンタナモでの虐待の発覚を機に、連邦最高裁でブッシュ政権が運用する軍事裁判所について違憲判断が出されたことはご存知かと思います。
これに関連して米国議会は軍法裁判所設置法を改正・可決したのですが、その内容の重大な問題点をワシントンタイムズのコラムニストが指摘しています。ディープスロートさんならキャッチしている情報だと思ったのですが。あいにく全訳している時間がないので、ご関心があれば記事にしていただけると助かります。

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