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2004/06/22

ビッグブラザーがアメリカ人を24時間監視する場所

Capitol Hill Blue2004/06/07付けコラムより。記事全文を以下に翻訳掲載しました。(文中リンクは訳者による)


ビッグブラザーがアメリカ人を24時間監視する場所(Where Big Brother Snoops on Americans 24/7)

by テレサ・ハンプトン & ダグ・トンプソン

バージニア州アーリントン、フェアファックス通り3625にあるバンク・オブ・アメリカ支店の客たちは、隣のブロックにいつも駐車しているアーリントン警察の車両を不審に思っていた。客たちは、キャントウェル・セキュリティ・サービスの二人のガードマンが、武装して銀行の前の通りをパトロールし、用心深く通行人を監視しているのも気づいていた。

「通りの向こうで何かあるの?」ある婦人が、前の週に振り込まれた給与を出金するために、銀行窓口の列に並びながら、尋ねた。

「さあね」彼女の前に並ぶ男性が答えた。「何か政府に関連してるらしいよ。警察もガードマンも911テロの後からずっとあそこに居るんだ」

「そう」彼女は答えた。「たいしたことじゃないのね」

もしもご婦人が、フェアファックス通り3625の、その特徴のないビルの中で何が行われているかを実際に知ったなら、おおいに問題があると感じるだろう。そのビルは、ペンタゴンの国防高等研究所計画局(DARPA)の「全情報認知」(Total Information Awareness: TIA)計画---議会が却下したはずの「ビッグ・ブラザー・プログラム」を収容しているのだ。

列に並ぶご婦人が、バンク・オブ・アメリカ支店でお金を引き出すと、通りの向こうにあるオフィスのコンピューターには、瞬時に出金内容が表示される仕組みだ。口座内容も、旅行記録も、他のアメリカ人が日に何百万回も行う個人的な取引内容も同様の仕組みで記録されている。

議会が資金拠出を却下し、計画の中心人物である悪名高き退役司令官、ジョン・ポインデクスターが辞任したにも関わらず、DARPAのTIA計画は未だ実施されており、毎日24時間休みなく、アメリカ国民の個人取引を覗いている。

「議会が資金拠出を却下したとき、国防総省は、長官の承認の下で、単に計画を“秘密勘定”にまわしただけだったんです」DARPAの元職員は明かした。「“秘密勘定”扱いのプログラムは議会の承認を必要としないので、通常の監督体制から除外されているんです」

DARPAはまた、計画を実施するために、私企業を使い、議会の監視を逃れることに一役買わせている。連邦防護局の協力を求める代わりに、キャントウェル社のようなセキュリティ企業と契約し、TIA計画を監視の目から逃れさせているのである。

911テロ事件の直後、ブッシュ政権の要請と愛国法の下にTIA計画は承認され、DARPAはアーリントン郡のビルに移転した。

TIA計画の使命は、銀行取引記録やクレジットカード企業のデータ、航空企業や他の旅行会社データ、信用機関他監視が必要なデータ、金融取引や外国人旅行者のデータを関係機関からリアルタイムで取得することを可能とする巨大なコンピューターデータベースを確立することである。

米国愛国法の規定によれば、銀行や他企業は、通常ならプライバシー違反で退けられるような、DARPAによるデータ参照への協力を強制されている。

2002年、TIA計画が表面化してから、イラン・コントラ事件の中心人物であるポインデクスター氏が責任者として着任すると、市民監視グループや他の議員たちは計画内容を見直し始めた。そして、イラン・コントラ事件の際に議会に嘘をついたポインデクスター氏の辞任を求める騒動から、TIA計画への資金拠出は打ち切られていた。

しかし議会は、TIAの代わりにデータ蓄積を認める調査費用をDARPAに拠出できる抜け道を残しておいたので、ブッシュ政権は国防総省にTIA計画を秘密勘定に移行するよう指導し、議会は計画から締め出されることになったのである。

DARPAの計画管理者であるダグ・ダイヤー中佐は、TIA計画はテロとの戦争における必要な犠牲と擁護している。

「アメリカ国民はプライバシーと安全を秤にかけるべきだ」中佐は語る。「911テロで3,000人が死んでいるんだ。テロ攻撃によって国民全体のプライバシーが影響を受けることを懸念しているのなら、妥協も必要だろう」

その妥協とは、実質的にすべてのアメリカ国民のあらゆる金銭取引が記録され、連邦政府によって監視される社会を意味している。あらゆる銀行取引、クレジットカードの支払いから通話記録、信用調査、旅行記録から健康診断記録までリアルタイムにDARPAのコンピューターに捕捉されることになるのである。

「基本的には、TIAは、銀行に口座を持ち、クレジットカードを使い信用情報を保持するあらゆるアメリカ人をプロファイリングしている」セキュリティ専門家のアラン・バンクス氏は指摘する。「プロファイリングにより、普通の個人の支出と旅行習慣のパターンが解析される。そうすると次にシステムは、通常と違うやり取りを探す出すのだ。例えば、テロ活動に用いられる懸念がある物品の購入や、特定地域への渡航や支出パターンの変化とか」

あらかじめ定義された基準に合致するパターンが発見されれば調査警告が発信され、その個人は司法省と国土安全保障省が言う「要注意人物」と見なされることになると、バンク氏は説明してくれた。

このようなデータ蓄積は「データベースプロファイリング」とも呼ばれ、合衆国憲法修正第4条で保障される個人のプライバシーを侵害するとして禁止されているはず---米国自由人権協会・テクノロジーと自由部門の責任者であるバリー・シュタインハルト氏は指摘する。

シュタインハルト氏によれば、蓄積された情報はすでに「搭乗拒否リスト」として活用されているが、情報内容の正確性に関する保障措置が未整備のままであるという。

「搭乗拒否リストに登録されたら、どうやって削除を依頼したらいい?」シュタインハルト氏は問いかける。

下院の政府技術情報政策政府間関係改革小委員会の少数派に属するミズーリ州議員ウィリアム・クレイ氏は、DARPAが私企業にデータ管理を任せていることにより、法律問題を回避していると疑っている。

「データ管理に属する組織は、プライバシー保護法を回避するために、データを保有していないと主張する」クレイ氏は説明した。その代わりに、組織は私企業にデータを移行し、管理を委託していると彼は指摘している。

「技術的には、そのやり方ならプライバシー保護法には抵触していない」彼は答えた。「もちろん、倫理上は違反しているがね」

2003年に、TIA計画への資金拠出の却下を支持したとき、オレゴン州議員ロン・ワイデン氏のような議員は問題は解決されたと思っていたという。

「法を遵守するアメリカ国民を監視するような仕組みが存在しないように議会は念を押したのだ」ワイデン氏は投票後に言った。

しかしそれは間違いだった。ブッシュ政権は---すでに近代でもっとも秘密を好む政権と広く認知されているが---単に計画をラップに包んだだけで、継続させたのだ。

議会が資金拠出を停止したとき、フェアファックス通り3625の作業は停止され、アーリントン郡は職員を通常業務に戻すはずだった。しかしながら、警官たちはその場所にとどまり、警備は一層強化されることになったのである。

アーリントン郡のビルと地域事務所の建設記録によれば、18ヶ月間で20以上の高速回線が設置されたという。マイクロ波通信アンテナも屋根に設置された。

国防総省の広報官は、「国土の安全に関わる」という理由から、ビルで何が行われているかについて説明を避けている。

TIA計画が問題にされた初期の頃、DARPA幹部はデータ被害に対する防護策があることを主張したが、記録は別の事実を伝えている。

「軍部によるプライバシー侵害の名残があるから、そんな曖昧な保障はさっぱり慰めにならない」ワシントン・ケイト研究所の上級編集者ジーン・ヒーリーは語る。

「第一次大戦時代、ドイツの破壊工作員への懸念から、米陸軍情報部は国内監視を無制限に拡大してきた」ヒーリー氏は語る。「陸軍スパイは破壊分子の可能性がある個人の情報の集めることに支配権を持ち、特別警察官として逮捕権も与えられることがあった。場合によっては、公的機関の職員を装うための偽職員証を持ち、西部情報局員がそれを手配することもあった。標的の居るオフィスや住居に入り、データを取得するためだった」

著作「Army Surveillance in America」の中で、歴史家のジョアン・M・ジェンセンは強調している。「敵側工作員から政府を保護するためのシステムとしてスタートした仕組みは、法を遵守しながら戦時政策や戦争そのものに反対する市民を監視する諜報システムに変化したのだ」

陸軍の最近の大失策であるイラクでの囚人の扱いは、アメリカの軍事システムが、自身を監督する能力も制限もないことを露呈している。

「この国には長きにわたる軍部諜報問題の歴史がある」ヒーリーは付け加えた。「歴史は私たちに、国防総省が個人情報にアクセスすることを嫌悪すべきであると教えてくれている」

TIA計画が政府にアメリカ市民の監視を許している状況にあって、データ管理の専門家は、それがテロ対策には役に立たないと言っている。

「テロリズムは順応性がある」データ管理会社Two Crows社の社長ハーブ・エデルシュタイン氏は語る。「次のテロ攻撃でも(以前と同じ)航空機ハイジャックとビル突入が起こる可能性は低い」

「Database Nation: The Death of Privacy in the 21st Century」の著者、サイモン・ガーファンクル氏もそれに同意する。

「データの蓄積は、売り上げ増進や売り場管理目的には威力を発揮するが、その効果はテロリストの行動分析とは全く異なる」ガーファンクル氏は言う。

他の専門家も失敗の可能性が高いことを指摘している。

「有意なパターン分析をもってしても、推測から生じる失敗の規模は大きい」情報企業グロクス社役員で「The Ecology of Commerce」著者のポール・ホークン氏は語る。「たったひとつの正しい予測のために、間違い情報を何千も監視することで莫大な犠牲が生じるだろう」

DARPAはグロクス社にTIA計画への参加を促したが、計画の実効性と倫理性の欠如を考え、同社は申し出を辞退した。ホークン氏によれば、倫理上の懸念から、NSA職員でさえTIA計画への参加を拒否した人物も居るという。

TIA計画の危険性は思わぬ副産物も生み出している。米国自由人権協会は、保守派のフィリス・シュラッフリー氏が主催するイーグル評議会やヘリテージ基金と協力して、TIA計画以外にも、愛国法による他の人権侵害に対抗している。保守派の扇動者であるボブ・バー元議員も活動に参加している。

しかし、これらの注意にもかかわらず、TIA計画は今でも存在し、アーリントンのフェアファックス通りのビルから、24時間365日、アメリカ国民を監視している。そのビル内に勤務する職員は、勤務事実を秘密にしているはずだが、DARPAのID証を誇らしげに首からぶら下げながら、ビル近所のレストランで日常的に食事を楽しんでいる。バッジをぶら下げる紐にも「DARPA」の文字は大きくプリントされているのだ。

「ああ、連中はそこのビルで働いているスパイだよ。」フェアファックス通り3701傍の食料品店の店員、アーニーが教えてくれた。「連中はあれで秘密を守ってるつもりなんだから、オレたちは心底不安になるよ」


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