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2004/07/02

アッシュクロフト司法長官は「スパイだーマン」

「市民の自由が失われるかのように錯覚させ、平和を愛する人々を怖がらせている者に対して、申し上げておきたい。 そのような考えはテロリストを助けるだけだ」 ---2001年12月6日、上院司法委員会におけるアッシュクロフト司法長官の発言---

市民団体「Alliance for Justice」が、アッシュクロフト司法長官の辞任を求める運動の中で、「アッシュクロフトはスパイだーマン」(注:苦しい訳で申し訳ない)という楽しいアニメ広告を掲載している。映画「華氏911」で自慢のノドを披露しているアッシュクロフト氏が嫌われる理由のほんの一部をちょっと解説してみよう。

熱心な聖書原理主義者であり、「史上最悪の司法長官」と評判のジョン・アッシュクロフト氏は、史上最大の権力を許された司法長官でもある。全ては911テロ直後のドサクサに紛れて成立した、米愛国者法のおかげである。(the USA PATRIOT Act:正式な法案名はUniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism)

米上院議会での同法案可決時に、反対票を投じたのはウィスコンシン州のラス・フェインゴールド議員だけだったということで、「議会の誰も法案書類を読まずに賛成した」と映画「華氏911」作品内で揶揄されている米愛国者法。この法律が実際に効果を発揮した事例は限りないが、例えば以下の事件がある:



2003年2月15日、ニューヨーク大学は、同校で開催される「哲学と政治」講演会での記念スピーチのために、ギリシャのアテネ国立工科大学のユージーン・アンゲロプロス教授を招待した

アンゲロプロス教授は、米ケネディ空港に到着するとすぐに、ニューヨーク大学の出迎え挨拶の代わりに、米捜査当局によって手錠をかけられ、身柄を5時間に渡り拘束された。教授と捜査官の間ではこんな会話が交わされたという:

教授:
「私に手錠をかけるとは、何か容疑があるんでしょうな」

捜査官:
「いちおう規則なので、悪く思わないでください。あなたは戦争に反対ですか?

教授:
「それが手錠をかける理由なのかね?」

捜査官:
「質問に答えろ!戦争に反対なのか?」

教授:
「もちろん反対だよ」

捜査官:
あなたは反アメリカ主義ですか?

教授:
「なんだって??何が言いたいんだ?私は戦争には反対だよ、他の人だって反対だろう。それが反アメリカ的かね?」

捜査官:
「(メモを書きながら)“教授はイラク戦争に反対している”・・・」

アンゲロプロス教授が、独立系放送局デモクラシー・ナウ!で、この馬鹿げたやりとりを暴露してから、ニューヨークのホテルに戻ると、FBIから電話メッセージがあった。「“邪魔が入らない環境で”もう一度会見したい」という申し出だった。アンゲロプロス教授はギリシャ大使館に連絡し、大使館はFBIに教授の無実を訴えた。ニューヨークでの講演を終えた教授は、大使館の専用車に守られながら、早々に米国を離れたという。

上記の事件でギリシャ政府を怒らせてから、アメリカ政府は何を学んだだろうか?

2004年6月21日、米最高裁は、路上で捜査官が米国市民に名前を名乗るよう要求した場合、米国市民はこれを拒否してはならないという判断を下した。この決定により、刑事映画でよく見られるような「あなたには黙秘権がある(You have the right to remain silent.)」という逮捕シーンの決まり文句は省略できることになったわけである

ところで、アッシュクロフト司法長官とブッシュ政権の見解では、国家に対する最大の脅威はテロリズムであるが、テロ行為の定義には何が含まれるのだろうか?この質問には、カレン・ヒューズ---ブッシュ選挙チームの広報担当顧問を務める女性で、911テロ直後に、ブッシュ大統領が最初に相談した相手---が丁寧な回答を用意していた。

2004年4月25日、ワシントンで115万人ほどの男女が妊娠中絶の権利を求めてデモを行った際、「ホワイトハウスでのブッシュの母親役」と呼ばれるカレン・ヒューズは、CNNのインタビューで以下のように話している。(注:ブッシュ政権は、母体が危険になる場合を除き、全ての妊娠中絶手術(レイプによる妊娠を含む)を原則禁止する法の制定を目指している)

「911テロ以降、アメリカ国民はより一層生命を重んじるようになり、全ての生命の尊厳を重んじる政策が必要であると悟ることになりました。

ブッシュ大統領が仰るように、分別ある行動を心がけましょう。生命を大切にしましょう。中絶を減らすために努力しましょう。養子縁組を増やしましょう。そうした考えこそ、アメリカ国民が支持すべき政策だと思いますね、特に敵と戦っている時代にあっては・・・

それに、私たちと(敵である)テロリスト組織との基本的な違いは、私たちは全ての生命を重んじるということです。それはわが国の基本信念であり、創造主によって与えられた不可分の権利であり、人生と自由と幸福を追求する権利なのです。

あいにく、我々の敵であるテロリスト組織においては、ニュースでもご覧のとおり、無実の者だけでなく、自分たち自身に対しても生命が重んじられていないのです。」


つまり、カレン・ヒューズはこう言いたいのである:ブッシュ政権は妊娠中絶をテロリズムとして認識している

彼女の発言に女性団体が抗議したのはいうまでもない。しかし、アッシュクロフト長官はこの「テロリズム」の捜査のために、米国内の病院の妊娠中絶患者のリストを入手し、蓄積しようとしている。この目論見は医師側の提訴によって一端は止められたが、愛国者法の下では、FBIは捜査令状なしで監視、盗聴、個人情報へのアクセスが認められ、捜査情報は非公開にできるので、その後の展開は明らかでない

合衆国が世界に誇る情報公開法も、司法省相手には役にたたない。アッシュクロフト氏は、かつて公開されていた政府文書を極秘扱いに変更して「公開したくない」とダダをこねているし、市民団体が司法省に対して情報公開を求めた最新事例では、「データを引き出せばコンピューターが壊れる」という珍妙な言い訳で拒否されているのだ

「アメリカはより安全になった」とブッシュは言う。しかし、スピーチが苦手な大統領の言葉よりも、NBCの人気司会者ジェイ・レノのジョークのほうが、傾聴に値すると感じるアメリカ人は多い。以下にその最高傑作を引用しておこう。

「イラクの憲法策定の話ばかりだけど、わが国の憲法をまるごと譲っちゃえばいいんじゃないか?大勢の賢い連中が書いたんだし、200年もうまく機能してきたんだからね。それに、もう使われてないわけだし。」
"They keep talking about drafting a Constitution for Iraq. Why don't we just give them ours? It was written by a lot of really smart guys, it's worked for over 200 years, and well, we're not using it anymore"
---「トゥナイト・ショー」2004年3月28日放送分でのジェイ・レノのジョーク---

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