ニューヨーク・デイリーニュース2004/09/29付け記事より。以下に全文翻訳して掲載。(文中リンクは訳者による)
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戦争が生んだ最も幼い犠牲者(The War's Littlest Victim)
兵士は劣化ウランに被曝した。兵士の娘までが、その代償を支払う羽目に陥っている。
by ホアン・ゴンザレス
2003年9月初旬、陸軍州兵のジェラルド・ダレン・マシューは、突然の体調不良によりイラクから帰還を許された。
マシューの顔面の半分は毎朝腫れるようになった。偏頭痛に襲われ、目は霞み、意識がはっきりせず、排尿の度に焼けるような痛みを感じるようになった。
米陸軍は、詳細な検査をするために、マシューをワシントンにあるウォルターリード陸軍病院へ移送した。しかし担当医は障害の原因を説明できなかった。
帰還してまもなく、マシューの妻ジャニスは妊娠した。今年6月29日、彼女は女の子を出産した。女の子はビクトリア・クローデットと名づけられた。
生まれたばかりの女の子は指が三本欠けており、右手はほとんど失われていた。
マシューと彼の妻は、娘の衝撃的な奇形と父親の症状、そして従軍経験の間に何か関係があるのではと考えた。夫妻の家系には先天的欠損症の記録はなかったからだ。
夫妻はイラクで生まれた奇形児の写真を見ていた。状況は不気味なほど似通っている。
6月に、マシューはデイリーニュース紙に連絡を寄越し、研究所での独自の尿検査の手配を依頼した。デイリーニュース紙が、他の州兵部隊である第442憲兵隊の兵士7人の内、4人から劣化ウランの放射線を確認したという記事を掲載した後の出来事である。
独自検査の結果、マシューの尿からも劣化ウランの放射線が確認された。天然ウランの濃縮時に派生する低レベルの残留放射線だ。
鉛の2倍の質量を持つことから、劣化ウランは湾岸戦争時から対戦車砲の弾丸として用いられ、エイブラムス戦車などに搭載されている。
放射線に被曝することと、被曝した両親から生まれた子供の奇形には、多くの研究により関連性が認められている。
「夫は祖国のためにイラクで闘ったんです」ジャニス・マシューは言う。「軍部は事態に責任を負うべきだと思います」
マシュー夫妻は、レノックス・ヒル病院で行われた4月の超音波診断器による定期検査で、初めて胎児の指が欠損していることを知ったという。
ニューヨークのハーレムから出征したマシューは、イラクでは第719輸送部隊のトラック運転手だった。彼の部隊はクウェートの陸軍基地からバクダッドの最前線まで補給品を運んでいた。マシューの話によれば、被弾した戦車や破壊された車両の部品をトラックの荷台に乗せてクウェートまで運ぶこともあったという。
出産前に胎児の奇形を知ってから、マシューはすぐに軍部に連絡し、尿の劣化ウラン被曝検査を求めた。4月には、ニュージャージーのフォートディックス基地で除隊を待つ間に、24時間分の尿サンプルを医者に提供していた。
5月、米陸軍は、マシューの抱える偏頭痛と、突発性血管浮腫(原因不明の慢性的なむくみ)の症状に対して、障害年金の40%支給を認可した。
しかしマシューは、陸軍での劣化ウラン被曝検査の結果を知らされることがなかった。検査から5ヶ月経過した先週、フォートディックスに連絡してみると、マシューが提供したはずの尿サンプルに関する記録は存在しないと伝えられた。
幸いなことに、マシューは陸軍の官僚主義のみを信頼するつもりはなかった。彼はデイリーニュース紙に頼ることになったのである。
今年始めに、本紙は第442部隊から提供された尿サンプルの検査を、元陸軍医アサフ・ドラコビッチ氏と、ドイツ・フランクフルトのゲーテ大学地質学者のアクセル・ゲルデス教授に依頼した。ドイツの研究所は、微量のウラン検査技術に優れているが、複雑なプロセスを必要とする検査は、1件あたり最大1,000ドル程度の費用がかかる。
依頼先は、世界におよそ50箇所あるといわれる、フェントグラム単位(1京分の1)で物質を検知する技術を保持する研究所のひとつである。
2ヶ月程前、本紙はマシューから24時間分の尿サンプルを受け取り、ゲルデス教授に検査依頼した。比較検証のために、本紙記者二人分の尿サンプルも一緒に検査依頼をした。
3つのサンプルはA、B、Cとだけラベルをつけられていたので、研究所側にはどのサンプルが兵士のものかは知ることができない。
3つのサンプルを解析してみて、ゲルデス教授はサンプルAのみが---マシューの尿であるが---劣化ウラン被曝を確認できたという。教授の話では、他のサンプルに比較して、サンプルAの総ウラン濃度は4倍から8倍高い数値を示していたとのことであった。
「この数値によれば、兵士は明らかに劣化ウランに被曝したと断定できる」レオナルド・ディエズ氏は説明している。彼はウラン検知器の一つを発明した元科学者である。
米陸軍のガイドラインによれば、ゲルデス教授がマシューの件で発見した程度の総ウラン濃度は、ほとんどのアメリカ人にとって許容範囲とされている。
しかしゲルデス教授は陸軍の基準に疑問を呈し、極微量の劣化ウランであっても懸念材料となると指摘する。
「マシューの尿で検出されたウラン濃度が低いとしても」ゲルデス教授は言う。「肺に残るウランの濃度は尿で検出した量の1000倍は高い可能性がある」
劣化ウランは、通常環境にある天然ウランとはまるで性質が違う。天然ウランは、食事や飲み物から摂取されることがあっても、24時間以内に体外に排出される。
劣化ウランで汚染された塵は、肺に吸収されると何年も残留し、低レベルの放射線を継続的に放出する。
「私は怒り困惑してる」マシューは言う。「私はただ答えが欲しいだけだ。連中は(陸軍は)私の子供の面倒を見てくれるのか?」
兵士の傷病を追求する
この5ヶ月間、デイリー・ニュース紙コラムニストのホアン・ゴンザレスは、奇怪な病気を背負ってイラクから帰還した兵士達の苦境を記録してきた。
彼の独占的な驚天動地の調査報道は、今年4月の本紙トップ記事から始まり、劣化ウラン汚染は国防総省が認めるよりもはるかに拡大していることを伝えてきた。
本紙の要求により、ニューヨーク州兵部隊のうちイラクで任務についた9人の兵士が放射線検査を受けて、療養中の4人は被曝が確認された。
ゴンザレスの記事が配信されてから、陸軍当局者はロックランド郡の第442憲兵部隊の全ての兵士の検査を急ぎ行った。
記事配信後の週末までに、騒動はニューヨーク・アルバニー全体に拡大し、国防総省に対してイラクから帰還した傷病兵士の対応改善を求める政治家達のリストには、パタキ知事も加わっている。
ゴンザレスの暴露記事は、検査拡大のきっかけとなった。4月中旬までに、800人の陸軍兵士が尿サンプルを軍部に提供し、検査を待つ兵士は何百人にも及んだ。
2週間後、国防総省は、第442部隊のうち劣化ウラン被曝が確認された者は1人もいないと宣言した。しかし本紙の依頼した専門家によれば、国防総省の検査手法には重大な問題があるとのことである。
