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2004/10/29

判事と弁護士が決める大統領選挙

選挙を目前に控え、アメリカの地方新聞を見れば、投票トラブルに関する報道がテンコ盛である。今回大統領選挙の重要州であるフロリダ、オハイオ、ペンシルバニアから最新トラブル事例のほんの一部を以下に挙げておこう。

フロリダ州:
大統領の弟ジェブ・ブッシュ知事の指揮の下、ありとあらゆる差別と不正が行われている。新規採用の電子投票システムは正常動作せず、何でもブッシュ支持票にしてしまう。無実の人々が、肌の色によって犯罪者とされ、投票権を剥奪されるのも毎年恒例。華氏911の影響を受けた新規の選挙人登録は基本的に却下される。地元の大学生は自分の知らないうちに共和党支持にされてしまう・・・フロリダ州では選挙不正の事例が多すぎて報道が追いつかない状態である。

オハイオ州:
ケネス・ブラックウェル州務長官は、極めて厳密な有権者登録規定(登録用紙の重さと厚さの規定!)を持ち出して、新規の有権者登録を最小化する努力をしている。またブラックウェル州務長官率いるオハイオ州選挙管理当局は、投票所の設置場所を大幅に変更しておきながら有権者に知らせずに居ると批判されている。共和党員であるケネス・ブラックウェル州務長官は、偶然にもブッシュ大統領再選委員会のオハイオ州共同議長である。
また、共和党オハイオ支部は州法を利用して、オハイオ州第二の都市カイヤホガ地区の住民(大半が黒人で民主党支持者)35,427人分の選挙人登録の忌避を要求している
さらに、共和党オハイオ支部は、オハイオ州の各投票所で有権者を監視するために、3,600人の監視官を日当100ドルで雇い入れた。投票に来た人に対して、投票権の正当性を個別に確認するという共和党の監視官計画に、民主党は「黒人有権者に対する威圧行為であり、投票を遅らせる常套手段」と批判している。(同じような監視官問題はフロリダでも派生している)地元の裁判で共和党の試みは禁止されたが、他の州で共和党は探偵を使って同様の有権者監視行動を実行しているので、オハイオでも実行されるだろう。
ちなみにオハイオ州の選挙では、黒人居住区の住民の投票が数えられない(無効票)確率は、白人居住区のそれに比較して3倍とのこと。

ペンシルバニア州:
州内の大学に勧誘員がやってきて、「自動車保険料の負担低減と医療用マリワナの合法化、レイプ対策の厳密化に協力してほしい」と学生達を次々と説得、請願書への署名を求めつつ選挙人登録用紙にも署名させ、署名者の同意なしに共和党員の登録として書き換えられていた事件が発覚。勧誘員達の雇い主は地元共和党支部だった。

ところで、国際選挙監視団の件を憶えている読者の方も居ることだろう。アメリカ合衆国大統領選挙投票プロセス監視のために世界各国から米国に派遣された---アルゼンチン、オーストラリア、イギリス、カナダ、チリ、ガーナ、インド、アイルランド、メキシコ、ニカラグア、フィリピン、南アフリカ、タイ、ウェールズ、ザンビアからやってきた専門家達---は、フロリダ、アリゾナ、ジョージア、ミズーリ、オハイオの各州を視察した後、さっそくアメリカの選挙システムの問題点(特に電子投票システム)を指摘、「法律改正すべき」と提言している。民主主義のリーダーシップをとっているつもりの合衆国専門家にとっては、面目まるつぶれといった感じだ。

国際選挙監視団だけでなく、アメリカ国民自身、今回の大統領選挙を不安に感じている。AP通信の調査によれば、アメリカ人の60%が、開票結果では勝者が確定しないと予測し、48%が「大統領は(前回同様)裁判で選ばれる」と見ているという。

前回選挙でブッシュを最終的に大統領と認めたのは---つまり、合衆国憲法は全ての投票が数えられることを保障するわけではないという判例を作ったのは---連邦最高裁だった。今回もまた大統領選択の大役を担うことになる連邦最高裁判事の1人、ブッシュ支持派のウィリアム・ランクイスト判事(80歳)は、甲状腺ガンに侵された病床の身をおして、引退前の最後の大仕事である大統領選挙後の裁判に備えている。

ブッシュを熱烈に支持しているもうひとりの判事、アントニン・スカリアは、4年前の大統領選挙裁判において、親友ディック・チェイニーの依頼により、フロリダ州の票の再集計を拒否する判決に手を貸した見返りに、弁護士である自分の息子(企業弁護士)が出世できるようブッシュ家に助けてもらった。キリスト教右派を公言するスカリア判事は、数々のスキャンダルにも関わらず、ブッシュが再選されれば判事を続けることができると期待しているだろう。

というわけで、大統領選挙が裁判に持ち込まれた場合、ブッシュ有利となる可能性は高いが、ケリー陣営はこれを座視しているわけではない。これから始まる米国最大規模の連続訴訟に備え、ケリー陣営は少なくとも1万人以上の弁護士を全米に派遣することを計画している。その内2,000人は、前回問題のあったフロリダに派遣されるとのことだ。このあたりはエドワーズ候補の面目躍如といった形だが、果たして民主党弁護士軍団は、ブッシュの秘密兵器ジミー・ベイカー率いる世界戦争謀略弁護士企業ベイカーボッツに対抗できるだろうか?

また、裁判で大統領が決定されることが慣例となった場合、国民にとって選挙参加にどれほどの意義があるのだろうか。

アメリカでは現在、国民は民主党支持派と共和党支持派でほぼ真っ二つに分かれている。民主主義の重要プロセスであるはずの大統領選挙は、米国民を統治ではなく分裂へと導いたわけだ。選挙が終わっても、こうした分断が修復される可能性は低い。おまけに投票はカウントされず、選挙結果は曖昧なまま、国の代表は法廷で、弁護士と判事により決定される。選ばれた大統領は、大口献金者である大企業の意向に沿って政策を決定する。がっかりした国民は「仕事時間を削って投票に行くのは無駄」と感じるようになる。

このようにして、北米大陸に新国家、アメリカ合衆国(USA:Ununited States of America)が建設されていくわけである。

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