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2005/03/19

イラクでの戦闘で撮影した殺戮ビデオを、娯楽映像作品として楽しむ米駐留軍の兵士達

「理性の言うことに必ず従うという力は、我々に備わっておらぬ。」

---ラ・ロシュフコー『箴言集』---

ロスアンゼルスタイムズ紙2005/03/14付け記事より。以下に記事全文を翻訳して掲載。

行き過ぎたシネマ・ヴェリエ(Extreme Cinema Verite)

イラクに駐留する米兵達は自分達の戦闘をビデオ撮影し、死と破壊にまみれたミュージックビデオを制作している。しかも彼等はそれを娯楽作品として人に紹介している。(GIs shoot Iraq battle footage and edit it into music videos filled with death and destruction. And they display their work as entertainment. )

by ルイス・ローグ記者:ロスアンゼルスタイムズ紙2005/03/14付け記事

バクーバ、イラク:昨年11月、海兵隊員のチェイス・マッコロウがイラクから帰還した時、彼はイラクで同僚たちと撮影した映画を持参していた。テキサスの実家に戻って両親と過ごす最初の夜、チェイスは自作ビデオを婚約者、家族、友人らに披露した。

映画の内容はこんな感じ:ナイト・ビジョンのゴーグルを通してグリーンに染まった視界に、少数のアメリカ兵達が映し出される。二人の兵士の無線での会話が、BGMのヘヴィ・メタル音楽にかき消されていく。

“Don't need your forgiveness,”バンド『Dope』の歌が始まると、イメージが展開する:ブラッドリー先頭車輌の前でポーズを決める武装兵達、黒いアバーヤ(アラビア女性の着用するコート)を着た二人の女性が埃の舞う道路を歩く姿、青いドームのモスク、ムクタダ・サドル氏のポスター・・・“死ね、抵抗は止めろ 死ね、祈る必要などない(Die, don't need your resistance. Die, don't need your prayers)”そして、BGMのビートがいよいよ高まり、黒く焦げたり、首を斬られたり、血まみれになった死体の数々が画面を覆いつくす。

「戦勝記念みたいなもんだから」バクーバ近郊の軍馬野営場の窮屈な住まいを背景に、20歳のマッコロウは言った。「俺はあそこに居たんだ。俺がやったんだよ」



第二次大戦中から、撮影機材は戦線に持ち込まれていたが、ベトナム戦争以前には、兵士達が自らの戦闘経験を実際に記録することはなかった。(スーパー8カメラが開発される以前、撮影機材は技術的にもアマチュアの手に負えないシロモノだった)

現在では、ビデオカメラは軽くなり、デジタル技術によって編集も容易になった。、戦闘をビデオに収めた兵士達は、映画を作って電子メールで配布することも可能で、軍部の検閲も受けることがない。Avidなどの編集ソフトとインターネットアクセスが可能な基地では、実際の戦闘や殺戮シーンを使ってMTVスタイルの音楽ビデオを制作することが米国兵士達の間で急速に広まっている。

兵士達はしばしば個人用カメラやビデオ機材を戦闘現場に持ち込んでいる。時折、米軍の公式撮影チームである“コンバットカメラ”隊が、捜査やパトロールの兵士の後につづくこともある。米軍はそうした映像を訓練や広報業務で使用しているが、個人のコンピューターや商用Webサイトに流出することもある。

その結果、虐殺や死、破壊を捕捉した写真やビデオ映像はカットされるが、兵士達はそれを集めて野球カードのように交換しているのだ。

「イラク人達の死体写真はたくさん持ってるよ・・・誰でも持ってるだろ」バクーバ近郊に駐留する22歳の海兵隊員ジャック・ベンソンは言った。彼は他の兵士達から5つのビデオを入手し、自分でもビデオを撮影している。

BGM音楽を入れて、兵士達は戦争に関する自作のドキュメンタリー風映画を制作している。多くはユーモラスもしくは愛国風であるが、マッコロウ一等兵が好むような血みどろ風のものもある。

「ポイントは押さえてるよ」彼は言う。「これはひどく陽気な平和維持活動とはワケが違うんだ」


司令官達は基地での写真を規制することについては慎重な姿勢をとっているが、常識的な規則づけは必要だろう、と米軍広報担当者は言う。作戦行動の安全を脅かす映像、軍用施設や装備などの撮影は、禁止されている。

イラクに派遣される以前、海兵隊員は拘束された者や死体、負傷したイラク人、死亡したアメリカ兵などを撮影してはいけないと指導されていた。しかし、イラク人の死体や、不具になったイラク人達の写真やビデオは蔓延している。

「こっちに向かって撃ってくる奴等の写真を撮影するくらい、なんでもないだろう」マッコロウは言う。彼はまた、死んだ米兵の死体写真は見たことがないと付け加えた。「そりゃいくらなんでも気分悪いだろうし、身近すぎる」

ベンソンやマッコロウの駐留する基地において、米軍は定期的に兵士の宿舎を検査し、ドラッグ、アルコール、ポルノ写真の有無を、健康安全管理の一貫として取り調べる。しかし、第三戦闘部隊付きの軍法務官ダグラス・ムーア大尉の説明によれば、個人のノートパソコンを調べることは兵士のプライバシー侵害になるという。映画制作が規定違反ということであれば、それはまた別の話となる。

「悪趣味ですよ」ムーア大尉は言う。「気分が悪くなる」


マッコロウは、自分の好きなビデオがテキサスの親類たちの気分を害したことに驚いている。

「家に持ち帰って、いかにあれが気味悪いものか分かったよ」マッコロウは言う。彼の使うスクリーンセイバーはビデオよりもはるかに温和で、自分の結婚式を映したものだ。

かつての婚約者で現在の妻であるブランディ・マッコロウの話では、夫がビデオを友人に見せているときに部屋に入っていくと、友人たちは飛び上がって悲鳴を上げていたという。

18歳だったブランディは、“体の一部が失くなったり、爆弾が爆発したり人が銃撃されたり”という映像に驚愕した。

「怖かったわ」テキサスからの電話で彼女は答えた。「チェイスはイラクのことを何も話してくれなかったし、私はニュースを見るけど、いつも見てるわけじゃないもの。あんなに暴力的なんて思いもしなかった」

彼女はまた、なぜ皆が戦闘を撮影しているのか不思議に思っている。

「異様に思うわ・・・だって、ホームビデオなのよ」彼女は言う。「人が目の前で撃たれてるのに、傍でカメラを持って座ってるなんて」

マッコロウの話によると、海軍予備役兵隊長の父親は、息子にこう言ったという:「おまえ、これは正常なことじゃないぞ」

「皆は本当にショックだったみたいだ」マッコロウは言う。「俺たちが見てきたものが信じられないらしい」

シンシナティ医科大学精神学科教授のダニエル・ネルソンは、そうした意識のすれ違いを理解できるという。

「驚くことではありません・・・この先、我々が経験することになる新たな感情です」教授はそう言いながら、ビデオ映像をアブグレイブ刑務所での虐待写真と比較して見せた。「この状況で起きているのは、米国本土において禁止されている行為を、推奨する土壌があるということです」

罰当たりなことが平凡化されるというのは、兵士達がトラウマから距離を置くための一つの方法なのだと教授は言う。つまり“自分が実行したり経験した事を現実と受け止めたくない”ということなのである。

ビデオ制作については、ネルソン教授が研究の中で見てきたような、トラウマを負った子供やベトナム帰還兵達にも似たものがあるという。

「我々は自身の人生の物語をどのように創造するでしょう?」教授は問いかける。「治療の過程の一部では、自らに体験を語らせ、感情的な物語を体系化することにより、自分で問題に対処できるようになるのです」

ブランダイス大学で映像研究プログラムの委員長を務め、書籍『Projections of War: Hollywood, American Culture and World War II』の著者でもあるトーマス・ドハーティ氏は、そうしたビデオを、正真正銘の戦場日記と呼んでいる。

「最前線の兵士と安全な故郷の間には、常に断絶があるものです」ドハーティ氏は言う。「第二次大戦の規範にもあります:故郷に持ち帰らないこと」

ビデオを観た後で、ドハーティ氏は言った。「もちろん大虐殺の恐ろしさに度肝を抜かれますが、しかし映像には幅がありますね」

ドハーティ氏は賞賛もした。「対照性編集の手法ですね・・・楽曲のリズムとイメージの点滅ですな、とても器用な仕事だ」

「MTV世代が戦争に行ってるんですな」ドハーティ氏は言う。「サンダンス映画際にでも出品すればいい」

他にも、フロリダ州兵が作ったビデオには、兵士達が負傷した囚人の顔面を蹴り、死体の腕を弄んでいる様子が収められていた。3月初旬には、米国自由人権協会(ACLU)が情報公開法により入手した書類によって、“ずるい奴等”“いつもの1日、いつもの任務、いつものクソ”等のタイトルのついた映像を含む“ラマディの狂気”という名のついたDVDの所在が明らかになっている。

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの法務アドバイザーを務めるジェイムズ・ロス氏は、「兵士達がそうしたビデオを制作してことは問題である」としている。しかし彼はこうつけ加えた。「しかしそれがただちにジュネーブ協定に違反しているとはいえない」

ジュネーブ協定では、死者の遺骸は大切にされるべきで、“公衆の好奇の目にさらされるべきでない”と記している。ロス氏の話では、「明確な禁止行為を規定しているわけではないのです。死体を撮影してはいけないというのなら、少し拡大解釈されることになるでしょう」

戦場のビデオを販売しているウェブサイトもある。

efootage.comのサイト上には「バグダッド路上での戦闘、略奪、無法」という広告文が見受けられる。ラスベガスを拠点にした企業Gotfootage.comは、50ドルから100ドルの料金設定で、過去のサダム・フセインの映像、ジェシカ・リンチ、空爆や爆破シーンの映像を販売している。同サイトでは、2003年3月の侵攻時にイラク軍の燃料トラックが米軍の爆撃により破壊される映像の広告も行っている。

他のウェブサイト上でも“GrouchyMedia.comなら、巷で話題の、悪い-奴等を-殺せ型ビデオが見つかります”という広告が見受けられた。

海兵隊2-63特別部隊射撃手スコット・シュローダー軍曹は、彼が言うところの“悪魔的な、汚れた殺人ビデオ”を家族に見せたくはないという。

「仲間達なら喜ぶだろうが」彼は言う。「自分の母親が気に入るとは思えないね」

他の特殊部隊隊員も、匿名で語ったところでは、そうした血まみれビデオに吐き気を感じると言った。

「観るつもりはないね。俺の部隊の仲間も観る奴はいないだろう」イラク北部のモスルに駐留する特殊部隊員は語った。「マトモな神経じゃない」

その特殊部隊員は、そうしたビデオを、武装集団によって公開された斬首映像と比較している。

「連中と同じレベルに落ちてるじゃないか」彼は言った。「なんでそんなことをやりたがる?」


駐留基地にあるマッコロウの部屋のドアには、“Grand Theft Auto(重窃盗車)”というビデオゲームのポスターが貼られている。

ビデオゲームを観ていると、マッコロウは戦闘に対して別の視点を得られると言う。戦闘の最中には詳細部分を忘れてしまうので、軍部はそうしたゲームを“高校のフットボールのように、教育ツールとして”導入すべきであると彼は言う。訳注

マッコロウのルームメイト、インディアナ州ラファイエット出身で30歳になるベンジャミン・ブロンクマは、制作した戦闘ビデオを誰も売りに出さないことに驚いていると話した。

「もし手元にビデオがあって、MTVから申し出があれば、すぐ売るね」彼は言った。ベンジャミンの話では、兵士が制作したビデオは映画館で放映されているような、暴力を売り物にした作品と対して違いはないという。

「“プライベート・ライアン”ほどナマナマしいものでもないよ」ベンジャミンは言った。「俺たちにとっては、映画を観てるのと変わらないね」
(以上)


訳注):実のところ、米国陸軍は戦闘ビデオゲームを実際に新兵採用に利用しており、公式ビデオゲームも世界中で販売している。また米海兵隊は、イラク赴任前に戦闘ビデオゲーム「Operation Flashpoint」による戦闘シミュレーション教育を受けている

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