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2005/04/03

フレッド・コレマツ氏が世界に学んで欲しかった事

2005年3月30日、第二次大戦中の米政府による日系人強制収容の不当性を訴えた権利擁護活動家、フレッド・コレマツ氏がサンフランシスコの家族宅で亡くなった(享年86歳)。

近年のコレマツ氏は、米国で進行するアラブ系アメリカ人への差別、グンタナモ刑務所の不当性を訴え、ブッシュ政権との闘いに臨んでいた。今回はコレマツ氏追悼の意を込めて、サンフランシスコクロニクル紙に2004年9月16日付けで掲載されたコレマツ氏自身による文章を、以下に全文翻訳して掲載する。(文中リンクと脚注は訳者による)

コレマツ氏の鳴らした警鐘は、日米両国に届いているだろうか?


我々は日系アメリカ人強制収容の教訓を再び学ぶべきなのか(Do we really need to relearn the lessons of Japanese American internment?)

by フレッド・コレマツ:サンフランシスコクロニクル紙2004/09/16付け寄稿文

大統領自由勲章を授与されるフレッド・コレマツ氏

「我が国の正義を希求する長い歴史の中で、多くの魂のために闘った市民の名が輝いています---その栄光の人々の列に、今日、フレッド・コレマツという名が新たに刻まれたのです」1998年、大統領自由勲章を授与したクリントン大統領はコレマツ氏を讃えた。しかし、それから僅か6年後、グアンタナモ刑務所の存在にコレマツ氏は愕然とすることになる。収容事件当時からコレマツ氏の裁判を支え続けた市民団体ACLU(American Civil Liberties Union)は、米政府が隠し続けたイラク駐留米軍による囚人虐待の実態を独自調査によって明るみにし、現在も政府の責任を追及しつづけている。

1942年、湾岸地区に住んでいた私は、日系アメリカ人ということで逮捕され、有罪を宣告された。私が逮捕された当日、新聞は見出しで大々的にこう報じた。

「ジャップのスパイ、サン・リアンドロで逮捕」

もちろん、私はスパイではなかった。当時の政府も私をスパイ容疑で逮捕したのではない。私は生まれも育ちもオークランドで、米国市民である。沿岸警備隊に志願したこともあるくらいだ(人種を理由に、私は不採用となった)。しかし、私の市民権も忠誠心も、当時の連邦政府にとってはたいした問題ではなかった。1942年2月19日、日本人の血を引く市民は全て、西海岸から退去するよう命じられた。日系アメリカ人である私は告発され、有罪宣告を受けたが、同じ土地に住んでいた日系人もまた全員強制収容所行きを命じられた。

当時の私はその有罪宣告を巡り闘争した。私の主張は米最高裁まで持ち込まれたが、憲法の下で保護を訴える私の努力は1944年に否決された。

1945年に釈放されてからも、私の犯罪歴は人生に影を落とした。仕事を見つけることも困難だった。私は犯罪者として扱われていた。40年もの月日と多くの人々の協力により、私の事件の再審が認められた。1983年、連邦裁判所判事は、米国政府が証拠隠しを行い、最高裁で偽証していたことを見出した。判事は、日系アメリカ人が、政府が主張するような脅威ではなかったことを認めた。私の犯罪歴は抹消された。

多くの人々の助力により、私の処分が裁判で撤回されたことに伴い、米国議会は日系アメリカ人の排除と拘禁に関する研究委員会を開設した。委員会の調査により、当時の日系アメリカ人による諜報活動や破壊行為が行われたことはなく、軍事上も強制収容する正当性がないと結論づけた。議会の調査結果と、戦史研究家による戦争記録の再調査により、議会は1988年度に人権擁護法案を採択し、日系アメリカ人の強制収容が不当なものであったと宣言した。長い間両肩に圧し掛かっていた“敵性人種”という非難の苦しみから、私達はついに解放されたかに見えた。

しかし、今になって、そうした過去の非難がよみがえっている。フォックス・ニュースのパーソナリティ、ミッシェル・マルキンは、第二次大戦中に一部の日系アメリカ人がスパイをしていたと主張している。彼女は自身の疑念を元に、全ての日系アメリカ人を強制収容することは結局悪い考えではなかったと主張している。さらに彼女は、アラブ系アメリカ人を人種的に選別することはテロとの闘いにおいて正当化されるとまで言っている。マルキンによれば、特定民族に属する個人が怪しいとなれば、特定民族全体の市民権を剥奪することは問題なしということだ。マルキンは古い罪の概念を復活させることに賛成している。訳注

第二次大戦中の日系アメリカ人強制収容が正当化されるかどうかについて、再び真剣に討論されることになろうとは、なんとも悲しいことだ。人種や民族がスケープゴートにされることの危険性を考える際に、私の裁判や、日系アメリカ人強制収容問題が想起されることを、私は望んでいたのだが。

少数民族に対する恐怖や先入観は、あまりにも容易に想起・誇張され、それら恐怖を促進させる人々の政治課題に貢献する。スケープゴートがどのような事態を引き起こすか、不当な容疑が政府により事実と承認された後、疑いを晴らすのがいかに困難であるかを、私はよく知っている。もし誰かをスパイやテロリストとして告発するなら、その行為に対して行われるべきである。ただ単に同じ人種とか民族であるとか、宗教とかを理由に、スパイやテロリスト扱いするなどあってはならない。日系アメリカ人強制収容問題により、そうした教訓が学ばれていないとしたら、私達の民主主義にとって極めて危険な時代を迎えたといわざるをえない。(以上)


(訳注):ミッシェル・マルキン
主に米フォックスニュースで活躍し、極右の若手政治評論家としてアン・カルターと並ぶ人気を博している。日系アメリカ人の強制収容を賞賛するマルキンの著作「In Defense Of Internment: The Case for "Racial Profiling" in World War II and the War on Terror」は全米ベストセラーとなっている。マルキンは本作で、強制収容所体験者である米運輸長官ノーマン・ミネタ氏について、「収容体験者は思考が歪んでいる」と批判し、ミネタ氏の更迭をブッシュ大統領に要求している。ところで、マルキンの主張するような人種によるプロファイリングを米政府が推進すれば、フィリピン系アメリカ人である彼女自身、不快な目にあうと思われるが・・・

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