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2005/05/23

「チャイニーズ・コネクション」byクルーグマン

経済学者ポール・クルーグマンがニューヨークタイムズ紙に連載中の人気コラム最新号を以下に全文翻訳して掲載。

チャイニーズ・コネクション(The Chinese Connection)

by ポール・クルーグマン:ニューヨークタイムズ紙2005/05/20付けコラム

新たに発表された報告書の中で、財務省が中国の通貨政策を非難しているという話題を聞いて、ほとんどの読者の皆さんは「なんで??」と不思議に思うことだろう。率直に言って、この問題には経済の専門家ですら混乱することもある。しかし、何が起こっているかちょっと説明してみたい。

過去数年間、中国は、自国の事情により、米国の無責任な財政政策とナスダック式の理論マニアの両方に対して鍵を握ってきたが、今回の課題はアメリカの住宅市場が関わっている。今になって、合衆国政府はついに問題があることを認めた。ただし、我が国ではなく、中国が問題だと宣言したのだ。

そして、政府内の誰一人として、喜ばしくない現実を直視しようとする姿勢は未だみられない。今や、合衆国の経済は中国や諸外国からの低利融資に依存しており、その限度が近づくにつれて大きな問題に膨れ上がっているのである。

合衆国と中国の経済がどのように関係しているか示そう。

貿易黒字の急増と西側及び日本企業からの投資急増により、中国にはお金が流れ込んでいる。通常は、この資金の流れは自国で補正される:中国の貿易黒字と海外からの投資額は中国の貨幣である人民元の価値を押し上げ、中国の輸出品は国際競争力を削がれて貿易黒字は縮小していく。

しかし、中国政府は、そうした展開を防ぐために、人民元の価値を低く抑えるために流入する資金をそのまま外国への融資に回しており、大量のドル資産を買いあさっている。2004年度には2,000億ドル、今年はおそらく3,000億ドルほどになるだろう。これは経済的にはひねくれたやり方だ。西側諸国の基準からみると資本に乏しい国家である中国は、巨額の資金を低金利でアメリカ合衆国に融資している。

しかし、合衆国もまた、その歪んだやり方に依存することになってしまった。中国や諸外国によるドル買いにより、米国経済は巨額の財政赤字の影響からなんとか自立性を保っている。こうした海外からの資金の流れにより、財政赤字を補填するために政府が巨額の借り入れをしているにも関わらず、合衆国内の金利は低く抑えられているのである。

低金利は、翻って、アメリカ国内の住宅ブームの鍵を握っている。そして、急騰する住宅価格は単に建設業界の雇用を創造するだけでなく、多くの住宅所有者が、上昇する住宅価値を抵当債務借り換えによって現金化しており、結果として個人消費をも支えているのだ。

ではなぜ、合衆国政府は文句を言っているのだろう?財務省の報告は中国の通貨政策が合衆国にどう影響しているか全く触れていない。国内政策に関しては、いつも通り、ブッシュ政権へのゴマすりしか提示していない。一方で、中国自身のために、中国の政策の不当性について注目しているというのだ。いつからそれが合衆国の心配事になったのだろう?

もちろん現実には、合衆国政府は中国の経済など気にかけていない。ただ単に、中国の貿易黒字に怒る米国内の製造業界からの圧力から、中国の人民元に文句を言っているだけなのだ。全ては政治的動機なのである。そして、それこそが問題なのだ。政策決定が純粋に政治的動機だけで行われると、誰も現実世界の状況に応じた判断をしなくなってしまう。

もし中国政府が通貨政策を変更して、低金利の融資が行われなくなった際にはどうなるか、私の考えを述べよう。合衆国内の金利は上昇する。住宅バブルはおそらく弾けるだろう。建設業界の雇用と個人消費は共に落ち込む。住宅価格が下落するにつれて、自己破産も急増する。そして突然、国民は財政赤字の状態で資金繰りが簡単と誰が考えたのかを不思議がることになる。

言い換えれば、我が国は中国によるドル買い政策の中毒に陥り、それがなくなると禁断症状に苦しむようになってしまったのだ。

私は現状維持しろといいたいのではない。中毒は治療されるべきだし、早いほど良い。結局、近日中に中国はドル買いを控えるだろう。そして国民が何をしようと、やがて住宅バブルは弾けることになる。加えて、長期的に見れば、諸外国のドル買い依存からの脱却により、もっと健全な国内経済がもたらされるだろう。特に、人民元や他のアジア通貨の上昇は、2000年からこれまでに300万人の雇用を失ってきた米国製造業の競争力を、最終的にはより高めることになるだろう。

しかし、中国の通貨政策変更による悪影響はすぐに現れるが、良い影響が実感されるのは何年も先のことになる。私に言えることは、中国が合衆国の要求に応えて人民元の価値を上昇させた場合に、米国民がどうやって状況に対応するかについて、権力の座にある者達が全く考えていないということだ。(以上)


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予め言っておきますが、私は日経の回し者ではありませんので…w 2005年5月23日付けの日本経済新聞 [続きを読む]

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