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2005/07/31

カナダを知らない米国人と、金で買えるアメリカ大使

フロリダの地方新聞The Ledger紙の2005/06/30付社説を全文翻訳して以下に掲載。この記事には2つのポイントがある。カナダとアメリカの関係悪化と、海外駐在アメリカ大使という役職の問題である。

アメリカよりもカナダへの帰属を希望する人が多いといわれるヴァーモント州を除外すれば、アメリカ国民は総じて隣国カナダについてあまり関心を持っていないが、そうした米国側の事情がカナダ国民をしばしば困惑させている。

タイム誌特集アンカルター

タイム誌の表紙を飾った極右アイドルのアン・カルター。ちなみに、彼女が書いた最新コラムは盗作であった事実が暴露されている。こんな怪しい『政治批評家』の書いた書物が次々とベストセラーになってしまうのだから、アメリカの右傾化は相当奥が深いのである。ところで、一連のカナダに対する攻撃の成果として、彼女は昨年トップのブッシュ大統領を抑えて、カナダ喜劇人の主催する『世界一の愚か者』大賞に選ばれた。

特に、米国内のブッシュ支持層はカナダを常に敵国扱いしている。例えば「同じ大陸に居られるだけでも有難く思いなさい!等のカナダ攻撃で知られるアメリカ極右のトップアイドル、アン・カルター(コールター)は、イラク侵攻に同意しないカナダを批判し、カナダのテレビで以下の発言をしたビデオ

「昔のカナダは我が国にとってサイコーの同盟国だったのよ。だってカナダはベトナム戦争に派兵したでしょう?ベトナムはサダム・フセインよりも危険でまとめ難い国だったかしら?」
もちろん、のちに彼女も誤りを認めたとおり、カナダ政府はベトナム戦争に戦闘員を派兵したことはない。(とはいえ、ベトナム戦争当時、血気盛んなカナダ人3万人ほどが、自ら志願して国境を渡り米国兵士としてベトナムに行ったのは事実である。ベトナム戦争当時、脱走兵に悩むアメリカ政府は、カナダ人志願兵達に社会保障番号まで与えたが、カナダ人兵士への医療保障は拒否した。戦傷を負ったカナダ人兵士は、ベトナムからカナダへ悲痛な状態で帰還し、その後公に語られることもなかった。こうした歴史事実を元に、アンは「カナダ人がベトナムで戦ったのは事実でしょ!」と苦しい言い訳をしているが・・・)

総じて穏健・寛容で知られるカナダ国民も、アン・カルターやビル・オライリーに代表される米保守層の、誤解に基づくカナダ批判に対しては辟易しているらしく、例えば在米カナダ大使フランク・マッケンナ氏は、米保守派放送網フォックス・ニュースのカナダ攻撃に対して必死の対抗PR活動を展開している。


金で買えるアメリカ大使


駐カナダ米大使に限らず、ブッシュが任命する在外米国大使達は、外交官としての資質がほとんどないということで評判だ。例えばブッシュが2001年に任命した駐フランス米大使ハワード・リーチ氏フランス語が全く話せなかったが、フロリダで投資ビジネスを行うこの億万長者は、2000年度に37万6,859ドルを個人名義でブッシュ選挙チームに寄付した。ブッシュ任命の合衆国大使としては、それで充分な資質となるわけである。

今年初旬に、新たにブッシュ大統領から駐ドイツ米大使に任命されたオハイオ州の実業家ウィリアム・ティムケン・ジュニアは、外交経験がなくドイツ語も全く話せないが、2004年のブッシュ再選キャンペーンに個人名義で20万ドル寄付し、さらに彼の経営する会社は悪名高きブッシュ大統領2期目就任イベント25万ドルを寄付している。これまた合衆国大使の資質充分である。

先週、駐ポルトガル米大使に任命されたアル・ホフマンはフロリダの実業家で、ブッシュに30万ドル寄付した人物。先月新たに駐イギリス米大使に任命されたロバート・タトル氏は、カリフォルニア州で自動車販売業を営む人物で、無名で売れない俳優レーガンが失業中に同氏から中古車を買った縁で、レーガン政権時に大統領補佐官となった有名人だ。

同じくカリフォルニア州で金融業を営むロナルド・スポグリは、新たに駐イタリア米大使に任命されたが、彼はハーバード・ビジネス・スクール時代のブッシュの級友であった。タトルとスポグリの両氏は、共にブッシュ再選キャンペーンに10万ドル以上寄付している。

合衆国大使のポジションが金で買える?まあ、驚くには値しない。大統領選挙の際、共和党陣営はブッシュ再選キャンペーンへの寄付を募るため「ブッシュに個人献金すれば大使の座を約束する」と堂々宣伝しているし、ブッシュほど露骨でないにしろ、クリントン政権時代にも同様の「政府ポジション大売出し」が行われている。

日本の投資家達も、面倒な国内企業買収よりは、アメリカ政府ポジションの買収を考えたほうが投資効率が良いと気づく日がくるかもしれない。

え?カナダ?(Uh-Oh, Canada?)

The Ledger紙2005/06/30付社説

今週水曜日のオタワにて、新任の駐カナダ米大使デビッド・ウィルキンス氏は、ポール・マーティン首相の下に挨拶に訪れた。カナダ国民もウィルキンス氏との再会を喜んでいるかもしれない。ウィルキンス氏にとって、カナダに来るのは30年ぶりのことであるという。

数週間前に、カナダCBCテレビのインタビューで、ウィルキンス氏はカナダに一度だけ、1970年代の中期に来た事があると回答した。その際にはナイアガラの滝周辺を訪問したと、同氏はインタビュアーに答えていた。

カナダの他の都市に行ったことはと問われたウィルキンス氏は、一箇所も具体的な地名を挙げなかった。さらに促されると、陸軍基地勤務時代に「インディアナ州の奥の方」に行ったことがあると答えたあと、「インディアナ州の上だったかな」と答えた。

CBCニュースは、58歳のウィルキンス氏が、サウスカロライナ州での集会でスタンディング・オベイションを受けたと報道していた。ウィルキンス氏は同州で25年勤務し、最後の10年は下院議員として過ごしている。報道によれば、ウィルキンス氏は聴衆に対して、「友人であり隣国であるカナダに駐在する合衆国の大使として」推薦されたと話した。

CBCニュースの記者は「5分間の演説で、ウィルキンス氏がカナダについて触れた部分はそれだけでした」と加えた。

合衆国にとって最大の貿易相手国へ大使として赴く人物にとって、あまり有望な始まり方とはいえないだろう。ウィルキンス氏は外交の経験は全くなく、彼の故郷であるサウスカロライナ州に対するカナダの影響力も、彼自身にはピンとこなかったらしい。

しかし、カナダ大使館の2003年度の統計によれば、カナダとサウスカロライナ州間の貿易活動は、同州の6万9,000人の雇用を支えているのである。

2003年だけをみても、毎日1,000万ドル相当の製品がサウスカロライナ州とカナダの間で取引されている。同年、サウスカロライナ州は海外向け商品の22%をカナダに輸出しているが、これはカナダが同州にとって2番目に大きい貿易市場であることを示している。

フロリダ州にとっても、カナダは重要である。大使館によれば、フロリダ州とカナダの貿易によりフロリダ州で28万9000人分の雇用が維持されている。2003年度に、カナダはフロリダ産農産物を5億2,800万ドル分購入しており、さらにフロリダ産オレンジジュースと濃縮果汁製品を1億2,600万ドル分購入している。

他にも、2003年度にフロリダ州に訪問したカナダ国民は180万人を超え、14億ドルの経済効果を同州にもたらしている。

国務省で2週間のブリーフィングを受けたウィルキンス氏が、カナダの報道陣に対し「知れば知るほど感心させられる」と語ったのも無理はないのである。

カナダ国民は、ウィルキンス氏がカナダの軟材業界を「不公正貿易を行っている」と批判した件を注視している。(サウスカロライナ州は軟材業が盛ん)また、ウィルキンス氏が2003年度の「レンジャー」、つまりブッシュ大統領再選キャンペーンに20万ドル以上の個人献金を行った人物であることも指摘されている。80年代から90年代にかけて、同氏はジョージ・H・W・ブッシュ氏の代理人として活躍している。昨年度は、ブッシュ再選キャンペーンの州代表を務め、2000年度にはサウスカロライナ州ブッシュ選挙チームの共同委員長を務めていた。

カナダ全般に関する知識不足は明白であるにしても、まだ希望はある。例えば、ウィルキンス氏はおおらかな人物で、南部特有の魅力の持ち主だ。前駐カナダ米大使のポール・セルッチ氏とは好対照であろう。セルッチ氏は、カナダが合衆国のイラク侵攻に反対し、ミサイル防衛システムに加盟しなかった件でカナダを批判していた。

一方で、カナダ政府関係者の一部は、ウィルキンス氏がホワイトハウスに近い人物であり、大統領が耳を貸す相手であると見なしている。前ミシガン州知事で、クリントン政権時には駐カナダ米大使を務めたジェイムズ・ブランチャード氏によれば、ウィルキンス氏の政治的背景には「カナダ側の必要とする資質があるよ」とのことである。最も重要なことは、「大統領と通じている」ことであろう。

ウィルキンス氏にとって、前途にある任務は決して易しいものではない。ピュー・リサーチセンターが最近行った世論調査によれば、カナダ国民の59%は合衆国に対して肯定的な見方をしている。しかし2002年度には、その数字は72%だったのだ。

2002年当時、カナダ国民の5人中4人が、アメリカ主導のテロとの戦いを支持していた。今では、それを支持するカナダ国民は半分以下である。

たぶん、ウィルキンス氏はそうしたカナダ世論を変えられるだろう。あるいは、指名直後のウィルキンス氏がカナダCBCラジオ放送で話した内容に、カナダ国民は執着するかもしれない。インタビュアーはこう聞いた:「愉快な事が好きそうな方ですね。カナダに関するあなたの知識をちょっと聞いていいですか?・・・メープル・シロップの原産地は何処でしょう?」

ウィルキンス氏は答えた:「上院で指名が承認され次第、その質問に回答できると期待していますよ。」

かくして、ウィルキンス氏は議会承認された。もしかしたら米国務省は、彼に回答を教えている最中かもしれない。
(以上)

2005/07/26

ストレスから薬物依存に陥る駐留米軍兵士達

英デイリー・テレグラフ紙2005年7月23日付け記事を以下に全文翻訳して掲載。米軍兵士の薬物問題は日本国内にも影響を及ぼし始めている。(参照投稿:米軍兵士と合成麻薬MDMA


ストレスから薬物依存に陥る駐留米軍兵士達(Stressed US troops in Iraq 'turning to drugs')

by トーマス・ハーディング記者:バグダッド (英デイリー・テレグラフ紙2005年7月23日付け記事

イラク占領から2年が経過し、薬物乱用の脅威がアメリカ兵士を苦しめ始めている。

ベトナム戦争時代から、米軍兵士における薬物の効果による衰弱はモラルの低下と実行力欠如に繋がることが知られており、米軍当局はイラクで同じことが繰り返されないよう事態の抑制を試みている。

抜き打ちの尿検査や兵舎の調査に加えて、司令官達は兵士達に戦友同士気をつけるよう促している。

これまでに、1人の兵士がコカイン密売で逮捕されており、大部隊の2%ほどがドラッグとアルコールの乱用に陥っているとみられている。

米陸軍の調査によれば、第256戦闘師団の兵士4000人中、53人がアルコールに関わる罪で、48人が薬物犯罪に問われている。

サダム体制の崩壊以降、国境地帯が武装勢力にとって抜け穴だらけになるにつれて、アフガニスタンやイランからヘロインや大麻等の密売業者も流入するようになり、兵士達の市場に安価な薬物を提供している。同僚達の戦死・戦傷を日常的に経験するにつれて、一部の兵士達は武装勢力との闘争の恐怖から逃れるために薬物に依存するようになっている。

一例を挙げると、米軍の新聞スターズ&ストライプスの報道によれば、マイケル・ボルドーという軍曹が、ドラッグと4本のウィスキーボトル、22本のイラク製ポルノビデオを所持していることが発覚し、7ヶ月間の監禁の後に降格され、懲戒除隊となっている。

別の事例では、エミリー・ハミルトンという名の兵士が軍法会議で語ったところによると、彼女は同僚の大麻パイプを「ぐっすり眠れる」という理由で日常使用していたという。彼女もまた、1年間の監禁の後に懲戒除隊となった。

「若い兵士の中には、ストレスに耐えられない者もいます」米軍弁護士クリストファー・クラフチェック隊長は言う。

薬物を使用する者の大半は、10代から20代前半で、しばしばバグダッドをパトロールする際に、地元イラク人から薬物を手に入れるという。

米軍兵士が違法に薬物を所持していた場合は収監されるか、降格、もしくは除隊される決まりとなっている。
(以上)

2005/07/22

英ガーディアン紙:「さてブレマーさん、イラクのお金は何処に行っちゃったの?」

イラク復興費用の内実を露呈した7月7日付け英ガーディアン紙の記事以下に全文翻訳して掲載。記事で言及されている事実のポイントは以下のとおり。(CPA統治時期のイラク資産持ち逃げ疑惑については主権移譲当時から報道されていた

  • CPA(連合軍暫定当局)責任者ポール・ブレマーはイラク復興基金から6億ドルほどを裏金として現金化し、帳簿にもその記録を残さなかった。その内2億ドル分の現金が、サダムの宮殿の一室に保管されていた。
  • イラクの新札で190億ディナール(約125億7,411万円)を積んだ飛行機が、レバノンで発見された。飛行機を飛ばしたのは、新任のイラク内相であった。
  • 或る閣僚は警備員8,206人を雇っていると申告していたが、実際には602人だった。
  • 或るCPA(連合軍暫定当局)のアメリカ人職員は、建設費用として2,300万ドルをイラク復興基金から手に入れた。業者に支払われた金額は600万ドルだった。

元駐イラク連合軍暫定当局責任者ポール・ブレマーとブッシュ

名誉ある「ブッシュ大統領自由勲章」を授与される元駐イラク連合軍暫定当局責任者ポール・ブレマー氏。ブッシュ政権では、何か悪いことをしでかした人物ほど、出世したり表彰されたりする風変わりな習慣がある。


このまま会計監査が無事進行すれば、連合軍暫定当局責任者でブッシュの個人的な友人でもあるポール・ブレマー氏は、確実に告発されるだろう。ダウニングストリートメモ事件、カール・ローブ事件に加えて、ホワイトハウスはさらに忙しくなるはずだ。(誰が最初に被告人席に座ることになる?)

さて、連合軍暫定当局の略奪期間が終了した現在でも、イラク資産の無駄使いは止まらない。例えばイラク国防省は、米国側の軍事コンサルタントの指導により、無駄な武器を高額料金で買わされており、例えば一丁200ドルで買えるMP5マシンガンの偽物(エジプト製)を3,500ドルで買わされたりして、3億ドルを無駄にしている。こうした状況では、イラク国内の水道設備の復旧作業は、治安悪化以前に資金不足でますます遅延することになるだろう。

イラク資産以外の復興資金の無駄使いについては、チェイニー副大統領の古巣ハリバートン社が俄然張り切っている。昨年の調査で判明した同社の不正請求の一部を以下に挙げておこう。

  • 国防総省はハリバートン社員に兵士と同じテント(一泊の費用合計139ドル)に宿泊するように依頼していたが、ハリバートン側は社員100名をクウェートの五ツ星ホテル(一泊の費用合計1万ドル)に宿泊させ、費用を請求していた。
  • タイヤが磨り減ったのを理由に、8万5000ドルの貨物トラックを廃棄した。
  • 衣類洗濯サービスをクウェート側の業者に15ポンドあたり100ドルの超高級料金で下請けさせた。イラク国内の洗濯サービスでは同じボリュームを28ドルで提供している。この洗濯費用は月間100万ドルを超えたが、全て米国民の税金で賄われた。
  • 1缶あたり1.5ドルの高額な炭酸飲料を32,700缶もクウェートから仕入れた。これは契約時の見積より24倍も高い。

一方で、7月18日付のニューヨークタイムズ紙によれば、ヨルダンの首都アンマンで、イラク政府関係者による復興資金会議が行われ、日本政府は新たにイラク復興資金(水道、下水、道路建設費用他)として35億ドルの低利融資を行うことで大筋合意したとのこと。世銀は、イラク向け低利融資として5億ドルの拠出を提示している。

同記事によると、イラク復興世界基金には、これまでに世界各国から11億ドルが入金されているが、予想どおり拠出額トップは日本で、すでに3億5,000万ドルを支払い完了しており、その後に欧州連合、カナダが続いている。(アレ?アメリカは?)

さて、これら復興資金が、当初の目的達成のために使われるのかどうか、今のところイラク国民すら知ることも出来ない。いっその事、日本政府は、迷彩服を着て重い銃を担ぐ自衛隊員の代わりに、半そでシャツ姿で電卓と帳簿を手にする会計士を派遣したほうが、イラクの人々の支持を得られるのではないか。

さて、ブレマーさん、イラクのお金は何処に行っちゃったの?(So, Mr Bremer, where did all the money go?)

イラク戦争終了直後、イラク復興資金の大半は、ポール・ブレマー氏率いる米国主導の連合軍暫定当局(Coalition Provisional Authority:CPA)に託された。8ヵ月後にブレマー氏がそのポストを去ると、復興資金から88億ドルが消失していた。失われたイラク復興資金を巡る驚愕のスキャンダルをエド・ハリマンが伝える。

英ガーディアン紙2005/07/07付記事

イラクでの戦闘終了が公式に宣言されて後、連合軍暫定当局(CPA)責任者ブレマー氏が到着した頃のバグダッドには、国連石油食料交換プログラムの収益残金60億ドル、その他凍結されていた資産に加えて、再開されたばかりのイラク石油輸出分の売上金が少なくとも100億ドル残されていた。2003年5月22日に発効された国連安保理決議1483により、残された資産の全額はニューヨーク連邦準備銀行の口座に移され、イラク復興基金(Development Fund for Iraq:DFI)と命名されて、『業務の透明性を保ち、イラク国民の利益となるように』連合軍暫定当局によって支出が管理されているはずだった。

米議会も、米国民の税金184億ドルをイラク復興に支出すると決定していた。しかしながら、昨年6月28日までの時点で、空港までの移動中に攻撃されるのを避けるために予定より2日早くバグダッドから脱出したブレマー氏の連合軍暫定当局は、イラク復興基金から最大で200億ドルを引き出し、米国の資金からは3億ドルを支出していた。イラク『復興』計画は、米国主導の占領計画としてはマーシャル計画以来の大きなものであった・・・もっとも、マーシャル計画の時は米政府が基金を拠出したのだが。ドナルド・ラムズフェルド国防長官とポール・ブレマー氏は、イラク復興費用が、『自由化された』イラクにより、イラク国民自身によって使われることを強調した。

連合軍暫定当局は、イラク復興基金の内6億ドルを現金で保管し、その会計記録を一切残していなかった。現金2億ドル分が、サダムの宮殿内の部屋に保存されていた。警備担当の米軍兵士はその部屋の鍵を背嚢に入れて管理していたが、ランチに出かけるときは机の上に置いたままだった。繰り返すが、その金はイラクのお金であり、米国のお金ではないのである。

米国政府と国際社会で活躍する監査官により実施された監査報告の中で説明された『財務上の不正』には、米国占領当局者達の精神構造とそのやり方について、詳細な見識を与えてくれる。山積のドル札をばら蒔きながら、占領当局者の誰一人としてその責任を感じなかったというわけであった。

監査官達は、米国の企業に支払われた数十億ドル分を含めて、捜査と告発に向けて今のところ100件以上の契約に目を通している。ブレマー氏の管理下において、88億ドルがバグダッドの新イラク政府に渡された事実も発覚したが、その金が何処に行ったのかほとんどわかっていない。さらに、米国議会はイラク復興資金として34億ドルを追加支出したが、もっぱらその資金は『治安維持』費用に転用されている。

イラク復興基金の管理にあたって、ブレマー氏には業務の透明性が期待されていたが、連合国暫定当局(CPA)の支出を監査するための国際諮問監視理事会(International Advisory and Monitoring Board:IAMB)が設置されたのは、サダム体制崩壊から6ヶ月後の2003年10月だった。(この理事会には、国連、世銀、IMF、アラブ経済社会開発基金の代表者も参加している)。

国際諮問監視理事会は、当初の1ヶ月間で、米国政府が承認できる監査企業を選定した。最終的に、2004年4月にKPMGバーレン支社が選出された。それから妨害が始まった。

「経過報告を完了するために必要な情報の提出を求めたKPMGは、CPAスタッフから抵抗に遭った」内部報告書にはそう書かれている。「KPMGの取り組みへの協力は優先順位が低い、とCPAスタッフは説明した。」KPMGはイラク財務省内で一度だけ会議を開催したが、他の省庁での会議は何度も延期された。監査担当者達は米軍占領地区への入退出すら困るほどだった。

アメリカ側の妨害行為には充分な理由があった。2004年6月末に、CPAは解散してブレマーはイラクを離れることになっていた。CPAが活動中でブレマー氏が責任者として記者の前に立つ可能性がある時期に、イラク資産の財務状況について独立監査報告が公表されることを、ブッシュ政権が望むはずもなかったのである。そんなわけで、報告書の公表は7月にずれ込んだ。

監査官達が発見したのは、CPAが、金庫にあった数百万ドル分の現金の支出を記帳しておらず、数十億ドル分の契約を入札無しで米企業に与え、暫定イラク政府省庁により支出される予定だったイラク復興基金については何ら関知していなかったという事実だった。

業務の透明性の欠如は不正疑惑へと繋がる。或るイラク人の病院管理担当者が私に話してくれた内容によれば、彼が契約書に署名するためCPAに来た際、米軍のCPA窓口担当者は、契約書にある金額を取り消して、契約金額を2倍に増額したという。そのイラク人は、元の金額で充分だと主張したが、米軍の担当者は、その増額分(100万ドル以上)は自分の退職金にすると説明したという。

サマラのセメント工場の修繕費用が当初の契約金額である2,000万ドルから6,000万ドルに増額された件について、イラク統治評議会がブレマー氏に説明を求めたところ、そのアメリカ人責任者(ブレマー)は「サダムから解放されたのは連合軍のおかげなのだから感謝してくれ」と言ったと伝えられている。アメリカ側に顔の利くイラク人達は、米軍占領地区に出入りを許され、新政府でも有利なポストに就任し、個人的に大きな利益を得ることになった。イラク人ビジネスマンたちは、CPAから仕事を受注するために、仲介するイラク人に大量の賄賂を払わねばならないと、いつも愚痴をこぼしていた。イラク人閣僚の親戚達は、最高の仕事と法外な契約を手に入れていた。

透明性の欠如を示すさらなる証拠は、CPA内部監査官事務所(CPA's inspector general's office:CPAIG)が実施した監査報告書に記されていた。同監査は2004年1月から開始され、米下院に報告された。会計担当者と犯罪捜査官からなる監査官達によれば、CPAの同胞から敬遠された監査官達は、占領地区内のカフェでしばしば孤立していたという。2004年7月に公表された報告では、CPAとイラク省庁に雇われたアメリカ人の契約職員達は、「契約ファイルに必要な書類が揃っていることや、業務契約において公正でマトモな価格が設定されているかどうか、請負業者に予定どおり仕事を行う能力があるかどうか、請負業者が契約どおり業務を遂行しているかどうか等を、確認しなかった。」

横領も日常茶飯事だ。イラク中央銀行からは数百万ドルが消失した。CPAによって隔離されていた、1,100万ドルから2,600万ドル相当の価値があるイラク資産は行方不明。何百人分もの幽霊職員によって給料は水増し請求された。実体なき業務契約によって数百万ドルが請負業者に支払われた。例えば、石油パイプラインの修理作業一件のために、「実務経験のない作業者」と「その他不適切な請負業者」に、337万9,505ドルが支払われている。

CPA監査官が手がける69件の犯罪捜査のうちほとんどが、盗み、詐欺、無駄遣い、強盗の類である。それ以外にもCPA監査官は「他にも多くの事件があるが、慎重を要する事例であるため報告書には含めていない」事件も捜査中である。そうした事例には、イラク新札で190億ディナール(約125億7,411万円)を詰め込んだ飛行機がレバノンで発見されたが、その飛行機の持ち主がアメリカ側によって指名されたイラク内相であった事件も含まれている。

同じ時期に、IAMBは、イラクの石油輸出高が計量されていないことを発見した。イラク石油販売機構もアメリカ側の責任者も、その件について説明をしていない。「計量されていない唯一の理由は、どれだけ横流ししたか知られたくないからだ」或る石油専門家は説明してくれた。

公的には、アメリカ占領後の初年度イラク石油輸出高は100億ドル分とされている。 英国のNGOクリスチャン・エイドによれば、実際にはそれよりおよそ40億ドル分ほど多く輸出されているが、記帳されていないとのことだ。もしそれが事実なら、アメリカ側とそのイラク人仲間の両方にとって、秘密にしておきたい費用---ブッシュ政権が議会と国際社会になんとか受け入れてもらえる額をはるかに超え始めている占領費用に転用も可能な、帳簿外の資金源が出来上がっていることになる。

ブレマー氏がイラクを離れる数週間前に、CPAは、新規契約のためにイラク復興基金から30億ドル以上を支出し、バグダッドの米大使館に管理を委譲していた。今ではイラク復興特別監査官という肩書きのCPA監査官は、米大使館の業務遂行状況について報告を公表した。監査官達は、総額3億2,700万ドルに及ぶ225件の契約ファイルを調べて、米大使館が「現在の支払い状況と未払い分の契約内容がどうなっているか」を特定できるかどうかを検証した。

特定は無理だった。「財務記録を検証した結果、支払済み額は1億825万5,875ドル、水増し分の未支払い額は1億1,936万1,286ドル」だった。監査官達は、さらに総額3億3,290万ドルに及ぶ300件の契約書類も見直した。「198件の契約ファイルを見直したが、その内154件については、商品やサービス受領の確証が存在せず、169件については納品書がなく、14件については支払いの確証がなかった。」

明らかに、アメリカ人達は、イラクの国家収入の使い道について、ブレマー氏の監督下にあった頃以上の会計の必要性を感じていない。米大使館責任者も、米軍司令官も、監査官の質問には何の返答もしていない。その代わり、米軍の業務契約監督者は、「初期に想定されていた治安状態の確保のために復興の取り組みが遅れている」と弱々しく説明した。これは著しく控えめな表現である。他人のお金を戦争につぎ込んでいる最中のアメリカ人達に、お金の勘定など到底期待してはいけないというわけだ。

無責任といえば、アメリカ人だけの話ではない。今年1月、イラク復興特別監査官は、ブレマー監督下のイラク内務省における詐欺、不正、無駄使いについて報告をした。それによれば、88億ドル---2003年10月から2004年6月までにイラク暫定政権が費やした全額が、正しく記帳されていなかったのである。イラク予算管理局では、6人しかスタッフがおらず、全員が会計業務の経験がなく、省庁のほとんどには予算部門がなかった。イラクの新任閣僚とその高官達は、アメリカ側『顧問団』の監督の下、数百万ドルの現金を、好きなだけ自由に手にすることができたのである。

「CPAの職員達は、財務、予算、実行状況等を計画もしくは期待された結果と比較検証することがなかった」監査官は説明した。或る閣僚は、CPA職員の書類作成なしで、4億3,000万ドルを支出していた。他にも、8,206人の警備員の給与を支払うという名目の支出では、実際には602人しか警備員がいなかった。端的に言って、88億ドルからどれほどの金額が傭兵の給与や個人のポケットに渡ったのか、全く知る術もない。

「監査官のオフィスは、誤解と不正確さに満ちた報告をする前に、草稿を作っておくべきだった」イラク復興特別監査官の報告に対して、ブレマー氏は答えた。「解放されたばかりのイラク経済は死んだも同然だった。CPAの最優先事項は、経済を成立させることだったのだ」

ブレマー氏の言葉に対応した特別監査官は、ブレマー氏の監督下にあったCPAが、ヒラー周辺地区向けの支出をどう管理したかについて調査し、今年4月に新たな報告を公表した。「監査の課程で、現金の管理が行われていないことが判明した・・・巨額なのでただちに気がつくはずだった。重大な欠損なので、監査の当初目標達成は不可能である」監査官によれば、バグダッドのCPA本部は、「およそ1億1,990万ドルほどの会計管理を怠り、記帳しなかった」現地のCPA職員は「966万ドル分の現金について正しく記帳できていない」イラクにいたCPA職員のほとんどは、臨時雇用のアメリカ人であった。或る職員の会計報告では、「282万5,755ドル分が水増し請求であり、その不正は発覚しなかった」他の職員は2,500万ドルを現金で手渡され、ブレマー氏のオフィスからは「書類を残さないように」と念押しされていた。もう1人の職員は2,300万ドル以上を手渡されたが、業者に支払われたのは630万6,836ドルだけだった。

アメリカ人職員の多くは、出国のため空港に向かう寸前に会計書類を提出していた。職員2人はそれぞれ75万ドル分を会計処理せずにイラクを脱出し、二人が手にしたお金は見つかっていない。CPA本部では、複数職員に対し25万ドルから1,200万ドルほどの精算金を支払ったが、受け取り確証はなし。領収書を提出した或る職員は、187万8,870ドル分の報告が足りないと言われて、3日後に金額ピッタリの領収書を持ってきた。監査官達は、「この事例は、職員が現金を備蓄していることを示している」と考え、もし当該職員の元の申請が正しいなら、この職員は当初受け取るべき金額よりもおよそ380万ドル以上余分に受け取っていることになるといい、「イラク復興基金会計担当者に渡された領収書類は信頼できない」とのことだった。

では、お金は一体何処に?ヒラー地区では見つからないだろう。学校、病院、水道設備、電気設備など、復興基金で賄われたはずの設備は、破壊されたままだ。避けがたい結論としては、支出を担当したアメリカ側職員の多くが、莫大な量の札束を自分の懐に入れて、イラク人の業者達とうまい取引をしたということである。

しかも、それはまだ続いている。国際諮問監視理事会のイラク政府支出に関する最新報告で登場する話題は「不完全な会計」「イラク閣僚内部の限定入札を正当化する書類の不足」「石油売り上げ横領の可能性」「イラク国家予算と支出管理の完全性確保は著しく困難」そして、「国連安保理決議に反して、石油製品輸出の収益に伴う適切な口座への入金不足。」

有意な説明責任の欠如により、イラク国民は自国の資産からどれだけの金額が復興に支出され、どれほどの金額がイラク政府閣僚や職員、その友人と家族の懐に入るのか、あるいは海外の秘密口座に送金されているのか、知る由もない。多くのバース党員が政府に復帰しており、資産の一部は武装勢力に支払われているのかもしれない。

サダム体制時代には、サダムと米国の両者とも、気前よく利益を得ていた。サダムはイラク資産を管理し、イラク石油の大部分はカリフォルニアの精油所に届き、米国の有権者に安い石油を供給してきたのだ。訳注サダム体制を謳歌した米国企業は大金持ちになった。現在でも、そのシステムは変わっていない。石油はカリフォルニアへ、そして新生イラク政府は、国家資産を何のお咎めもなく費やすことができることになった。

(この記事はロンドン・レビュー・オブ・ブックス(London Review of Books )の最新記事を再編集したものです)

(以上)


(訳注:この部分の記述で言及されているのは、おそらく国連石油食料交換プログラム不正疑惑の最新報告の事例であろう。現在、国連と米政府議会の調査委員会が、それぞれイラク戦争前の国連によるイラク経済制裁時代の不正取引を継続調査しているが、国連の経済制裁実施時期に、サダム・フセインとの秘密の石油取引で最大の利益を得ていたのはアメリカの石油業界であり、(サダム・フセインが国連経済制裁当時に世界中の企業から手にした賄賂の内、52%は米石油企業からのキックバックであった。その石油密輸は米国政府機関の了解の下で行われていた証拠が発覚している。しかも国連石油食料交換プログラムの影でサダムと取引を行っていた米企業の多くはブッシュ政権の支援企業であることが、米議会側の調査で判明している。

2005/07/18

セイモア・ハーシュ:「ブッシュ政権はイラク国民選挙で秘密工作を実行」

現代米国を代表するフリージャーナリストの1人、セイモア・ハーシュがニューヨーカー誌に掲載した最新スクープによれば、イラク国民選挙において、シーア派の影響力を抑えるために、ブッシュ政権が議会の承認抜きで秘密工作---アラウィ他米国寄りの候補者と政党を密かに援助する作戦---を行ったとのこと。今のところ米政府側は、秘密工作が実際に実行された疑惑については否定しているが、イラク国民選挙に介入する計画があったことは認めている(これだけでも大問題!)

ハーシュの記事によれば、秘密工作は元CIA工作員と民間諜報部員によって実行され、議会の承認を必要としない資金源から必要費用が提供されたとのこと。(この資金の出所は・・・ひょっとして暫定当局時代にブレマーが紛失させたイラク石油売上金?しかし、実際の選挙結果はブッシュ政権の思い通りとはいえず、ハーシュの情報源によれば「秘密工作の効果は不充分だった」とのこと。

さらに、米情報部が関わる同様の秘密工作が、現在も北アフリカや中央アジア各地で行われているとしている。ウクライナフィリピン?)

結局のところブッシュのイラク戦争は、開戦の口実から民主化のプロセスまで、全てウソだったことになる。ブッシュの言う同盟国---もちろん日本も含まれる---は、充分な調査・検討も行わずに、この未曾有の戦争犯罪に易々と加担してしまった。

2005/07/14

CIA工作員名漏洩事件:カール・ローブ暗躍中

ブッシュの後ろに控えるカール・ローブ大統領顧問

『ブッシュの頭脳』カール・ローブは今でもホワイトハウスを支配している

CIA諜報員の情報を記者に漏らし、国家機密漏洩の罪に問われようとしているカール・ローブ大統領上級顧問を擁護すべく、また事件の重大性を誤魔化すために、ホワイトハウスと共和党は新たなブッシュ政権擁護キャンペーンをスタートさせた。

かつてクリントン大統領は、青年時代のマリファナ使用疑惑について「(マリファナタバコを)口にしたが、吸い込んだわけではない」と珍妙な自己弁護をした。今、ブッシュ政権は、クリントン以上に間抜けな弁護に追われている。


「悪いのは民主党だ!奴等を撃ち殺せ!」


「仮に今が民主党政権だったなら、すぐに議会で調査委員会が立ち上がってるだろうな」

---或る共和党議員が匿名でティム・ラセール(NBCの名物キャスター)に語った言葉

カール・ローブ問題の他にも大量のスキャンダルを抱えている共和党は、民主党側からの攻撃に対抗するために、カール・ローブ弁護指南メモを党内で配布していた。保守派にとって不幸なのは、そのメモもまたメディアに漏洩されてしまったことだ。(このメモの漏洩元はローブではないらしい)メディアに登場する共和党関係者は、まさしく指南メモの内容どおりにローブ弁護活動を行っている。(一方で、共和党側の弁護内容に対抗して、リベラル系ブログネットワークはローブ問題の争点を整理して公開している。)

共和党全国委員長ケン・メルマンは『ローブは機密漏洩などしていない。悪いのは(リベラル系サイトの)MoveOnと民主党だ。ローブ批判は、怒り狂った左翼の中傷キャンペーンだ』とテレビで言い放った

MSNBCのニュース番組「スカボロー・カントリー」に登場した共和党下院議員ピーター・キング(ニューヨーク州)は、放送中に必死の形相で以下の発言をした

「ジョー・ウィルソン(漏洩事件の被害者ヴァレリー・プレイムの夫で元駐ガボン米大使)文句を言う権利などないし、奴等に好き放題言わせているティム・ラセール等メディアの人間は、全員撃たれるべきだ。(悪いのは)カール・ローブではない。そりゃ、カール・ローブだって完璧じゃあない。しかし我々は皆不完全な世界に生きてるじゃないか。私はローブの根性を賞賛するよ。」

こうした発言を聞くと、国民の分裂を図り、国家の安全を脅かしている張本人は誰なのかという問題を米国民も再考せざるを得ないだろう。共和党のローブ弁護キャンペーンは、むしろブッシュ政権擁護派にとって逆効果となっている。

ウィルソン夫妻

ヴァレリー・プレイムとジョセフ・ウィルソン夫妻。カール・ローブの機密漏洩によって、ヴァレリーの勤務するCIAフロント企業名もバレてしまった。それにしてもヴァレリー、ちょっとカッコつけ過ぎだよ


カール・ローブはこの先どうなる?


サンフランシスコクロニクル紙の解説記事によれば、1982年発動の諜報員身分保護法(The Intelligence Identities Protection Act)により、工作員名を記した機密情報にアクセス資格がある者が政府諜報員の本名を漏洩した場合は10年以下の禁固刑、一般的な機密情報にアクセス資格がある者による諜報員名の漏洩では5年以下の禁固刑とされている。

同記事によれば、過去にこの法律に基づいて罰せられた人物で、公的に知られているのは、ガーナで活動していたCIA職員のシャロン・スクレイナージで、彼女はガーナ人男性の恋人に同僚の工作員の名前を教えた件で1985年に有罪となり、5年の禁固刑を宣告されたという(実際に収監されたのは8ヶ月間)。


ブッシュ父はカール・ローブをクビにした・・・情報漏洩疑惑で!


ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(ブッシュ父)は、1992年の再選キャンペーンの際に、ブッシュ父に関するネガティブ情報をマスコミに漏洩した疑惑で、選挙参謀の1人をクビにした。その人物の名はカール・ローブ・・・そしてローブのリーク相手は保守派の有力記者ボブ・ノヴァックであった。

今回の漏洩事件において、ローブの情報を元にCIA工作員名を最初に記事にしたボブ・ノヴァックは、なぜかまだ収監されていない。


毎日が暴発寸前のホワイトハウス定例会見


2003年10月6日のホワイトハウス定例会見より
記者:
「スコット、大統領はCIA工作員名漏洩事件問題の結果を心待ちにしていて、誰が関わっていても大統領は説明責任を果たすと話してますが・・・」

マクレラン報道官:
「そのとおりです。」

記者:
「ところで、ホワイトハウス関係者が機密を漏洩していた場合、それが誰であろうと大統領は解雇すると確約できますかね?」

マクレラン報道官:
「それは先週はっきり言いましたよ。この話題が出た時に言いましたが、機密の漏洩元が政権内の人物であった場合、それ以上その人物はこの政権内で仕事はできません。これはきわめて深刻な事件なのです。大統領はつい最近もイーストルーム(ホワイトハウス東棟)で言ってましたが、機密漏洩は深刻な事態なのです。だから大統領は(捜査の)結末が知りたいんですよ。早ければ尚いいです。」

ScottMcClellan

定例会見で疲労困憊のマクレラン報道官。(source)テキサス州有力者の御曹司スコティは前任者アリ・フライシャーのように記者を脅迫できない。ワシントンのロビイストに転職し、すっかり愛想良くなったフライシャー元報道官は、ローブと同じ漏洩元の容疑で捜査対象になっている

カール・ローブが機密漏洩元との報道が配信されてから、ホワイトハウスの定例会見は異常な盛り上がりを見せている。前任者アリ・フライシャー報道官の恫喝姿勢と違い、現在のホワイトハウス報道官スコット・マクレランは、穏やかな口調で滑らかにウソを言い問題を誤魔化す技術に長ける優秀な人物だ。(英語を使って最大限曖昧な表現を試みるとき、マクレラン報道官のテキストほど参考になるものはない)しかしその“テディベア・スコティ”(マクレラン報道官のニックネーム)も、最近では、詰め寄る記者たちを誤魔化すことができず苦戦している。

今週月曜日(2005年7月11日)のホワイトハウス定例会見の様子を以下に抜粋してみよう:

記者:
「大統領は、CIA諜報員名漏洩事件に関わった人物を解雇するという以前の約束を果たしてくれますかね?

マクレラン報道官:
「ご質問ありがとう。あなたの質問は現在継続中の犯罪捜査に関する報道に関するものだと思います。現時点で、当該捜査は継続中ですね。したがって以前申し上げたとおり、捜査が完了していないので、ホワイトハウスはこの件に関してコメントできません。大統領は捜査に全面協力するよう職員に指示しています。捜査に全面協力するという方針から、捜査中の件に関してはコメントしないように決定したのです。」

記者:
「捜査についての質問じゃないんですけどね。大統領は、2004年7月に、今回の機密漏洩事件に関わった者は誰であろうと解雇すると言ってるんです。だから知りたいんです。大統領は今もその姿勢ですか?」

マクレラン報道官:
「そうですが、あなたの質問は現在継続中の捜査の文脈に絡んだものですから、ホワイトハウスとしては、会見の場において継続中の捜査に関するコメントをしないという方針を貫きたいわけです。捜査を担当する検察官は、捜査協力の一形態として、会見でコメントしないという我々の決定に好意を表明しています。従って、ホワイトハウスとしては継続中の捜査に関するコメントはできないし、それに関係する質問にもコメントできないのです。」

記者:
「スコット、ちょっと指摘させてくれ。君の主張に反して、2003年9月23日まだ調査中の段階で、君はコメントしてるじゃないか。ホワイトハウス内部で事件に関わった人物が居たら、その人物は解雇されると言ったのは君が最初だぞ。その後でも、2004年6月10日に、これも捜査が行われている最中だが、大統領自身も、ホワイトハウス内部で事件に関わる者があれば解雇するとコメントしてるんだよ。これまで、過去に捜査が継続している最中に堂々とコメントしているのに、今になって突然カーテンを閉めて『継続中の捜査に関するコメントはできない』なんて言い出すつもりかい?」

マクレラン報道官:
「ジョン、質問ありがとう。結果を知りたいのはわかります。しかし最も捜査の結果を心待ちにしているのは大統領自身なんです。捜査にもっとも協力的な姿勢を示すとしたら、捜査中はコメントしないことだと思うのです。捜査を担当する人々もそうした姿勢を望んでいます。そういうわけで、その方針を続けているんです。もちろん、以前言ったことはよく憶えていますし、時期が来れば、喜んでそういう話をしたいと思いますが、それは捜査終了後にさせてください。」

記者:
「じゃあ、聞いていいかな?捜査中でも以前はコメントできたのに、いつ心変わりしたのかな?」

マクレラン報道官:
「えーと、会見の冒頭でテリーの質問に対する私の回答をあなたは聞き漏らしていると思うんです。要点は、捜査が継続する間は、捜査担当者達の言うとおり・・・捜査継続中にコメントすることは控えたほうが好ましいのです。そのほうが、捜査への協力姿勢としてもっともふさわしいと思うのです。」

記者:
「スコット、この質問はどうだい?カール・ローブは罪を犯したのかな?」

マクレラン報道官:
「デビッド、もういちど言いますが、その質問は継続中の捜査に関わっていますから、私の答えはすでに申したとおりです。それ以上その件に言及するべきではないと思います。捜査継続中にはコメントはするつもりはないんです。」

記者:
2003年の秋、カールとエリオット・エイブラムズ、スクーター・リビーについて質問された時、あなたは『彼等に聞いたところ、事件には関わっていないと話してくれた』とあなたは回答されましたが、まだあの時の主張を変えるつもりはないですか?」

マクレラン報道官:
「憶えてらっしゃると思いますが、私がそう発言したのは、調査を先に進める助けになると思ったからで、今それにコメントするつもりはありません。それはもう充分説明しましたよ。」

記者:
スコット、こりゃ馬鹿げてるぞ。君が今やろうとしてることは、すでに詳しくコメントしてきた件について、国民の目の前で、どういうわけか話すのを止めたってことになるぞ。公式記録があるじゃないか。過去にここで言った言葉を追認するのか、それとも撤回するのか?」

マクレラン報道官:
「あなた同様、以前何を発言したかは、私もよくわかってますよ。適切な時期になれば、喜んで話したいです。その時期は捜査が・・・」

記者:
(遮って)「いつが適切でいつが不適切なんだい?」

マクレラン報道官:
「終わりまで話させてくれ。」

記者:
だめだ!話すも何も、君は何も答えてないじゃないか!君はその演台で、カール・ローブは関わっていないと言ったんだぞ。それが今になって、ジョゼフ・ウィルソンの奥さんについて話したのはローブだとわかったんだ。だから、アメリカ国民に説明する責任があるだろう?ローブは事件に関わっていたのか、違うのか?君が以前国民に話したのと正反対に、ローブは実際に漏らしていたんだよ。そうだろ?」

マクレラン報道官:
「いつか話せる時期が来ると思いますが、今はその時期ではないのです。」

記者:
「今日の君の説明で、国民が納得すると思うのかい?」

マクレラン報道官:
「繰り返しますが、すでにその回答は終わってます。」

記者:
スコット、今日は大変な場所に来ちゃったねえ!」(記者爆笑、以下略)

ところで、報道官はともかく、ブッシュ大統領本人は今、事件をどう考えているのか?7月13日の時点で、記者に問われたブッシュは、以下のように説明している。
記者:
「大統領殿、ローブ氏とはもう話されましたか?・・・バレリー・プレイムについて記者と会話した事実を、ローブ氏はいつ話しました?それに関連して、ローブ氏が当該事件に関わっていないと断言したホワイトハウス広報担当官の発言は適切だったと思いますか?」

ブッシュ:
「エレーン、今は捜査の真っ最中なんだ。これは深刻な捜査なんだよ。それから重要なのは、国民はメディアの報道によって判断を急ぐべきではないということなんだ。繰り返すが、捜査が終了したら、喜んでこの件にコメントをするよ。」

ブッシュ大統領の発言がマクレラン報道官のそれと全く同じに聞こえる?それこそ、カール・ローブが現在も業務を遂行している証拠なのであった。

今のところカール・ローブ本人は、このスキャンダルをまんまと逃げおおせると思っている。ひょっとしたら、ホワイトハウス西棟1階にあるカール・ローブのデスク上には、今頃「ザルカウィ拘束」「オサマ・ビン・ラディン拘束」とラベルのついたファイルが開かれているのかもしれない。

2005/07/08

ロンドン同時多発テロ:事実と怪情報・・・

厳戒態勢のワシントン地下鉄

ロンドンのテロ事件を受け、厳戒態勢のワシントン地下鉄(source

G8会議で厳戒態勢にあるはずのロンドンで、7日朝の通勤ラッシュを襲った地下鉄・バス同時爆破事件は、イラクで行われている自爆テロとは違い、綿密な計画の下に時限爆弾を使って実行されたと見られている。昨年のスペイン・マドリードの列車爆破テロ事件との相似性が指摘される中、あらためて明確になったのは、ブッシュの言葉と正反対に、21世紀になって世界は一層危険になってしまったという事実である。


アルカイダ?どのアルカイダ?

ドイツのスピーゲル誌オンラインは、「ヨーロッパのアルカイダ秘密組織(The Secret Organization of al-Qaida in Europe)」と署名された犯行声明が公開されているとレポートした。しかし、MSNBCの通訳者ヤコブ・カーヤキ氏(Jacob Keryakes)は、掲載された犯行声明文に引用されているコーランの一節が間違っていると指摘し、「アルカイダはこんなミスをしない」として、声明文の信憑性に疑問を呈している

この「ヨーロッパのアルカイダ秘密組織」はその声明文の中で、イラク・アフガニスタン駐留連合軍の撤退を要求しているが、イラク駐留部隊を削減する計画を練り始めたばかりの英国防省が、今回のテロ事件の発生によってその方針を変更するかどうかも注目される。(イラク駐留英軍兵士はもちろんショックを受けている


テロに踊るフォックスニュース

米フォックスニュースのキャスター、ブライアン・キルミード氏とゲストコメンテイターのスチュアート・バーニーは、ロンドンのテロ事件報道を以下のように解説した
ブライアン・キルミード(キャスター):
「・・・さて(ブレア首相は)明らかに震えながら、決意の表情で声明を読み上げました。これは首相にとって2度目の声明です。最初の声明はロンドン市民に向けたもので、G8サミットにおいてですが、同サミットの第一の題目は・・・信じるかどうかはともかく・・・地球温暖化で、二番目の題目はアフリカ支援についてでした。さて、911テロが発生して後、テロリズムこそがナンバーワンの題目であるべきと、今になって彼等(イギリス国民)はようやく知ることになったわけです。彼等にとって重要なのは共闘することです。今回のような事件を(911テロ被害者と同じく)人々が体験することは我々にとって有利であり、西側諸国にとっても有利に働くでしょう。」

スチュアート・バーニー:
「世界中の指導者が集まる場所で、まさしくナンバーワンの問題として取り上げられることになる。地球温暖化問題もアフリカ支援も後回しだ。テロリズムとテロとの戦いが、再び最優先の議題になるさ」


イスラエルと怪情報:何を、いつ知ったのか?

AP通信の報道によれば、匿名のイスラエル政府高官の談話として、英国保安機関がイスラエル大使館に、テロについて発生直前に警告したとのことだった。しかしこのニュースが配信された直後、イスラエル大使館は声明を発表し、爆破について事前に知らされたとされる報道内容をきっぱりと否定した。また、英国警察側も、事前にテロ情報があったという噂を否定した

イスラエル大使館の説明によれば、ロンドンに滞在中のイスラエル・ネタニヤフ財務大臣は、爆破現場(地下鉄)の地上にあるホテルで開催される経済会議への出席を予定していたが、爆破事件後に英国保安機関から連絡を受けて、外出を急遽取りやめたという。一方、ロンドンでは爆破により電話回線が混乱しており、イスラエル大使館職員のダニー・バイラン氏によれば、大使館の電話回線もダウンしたとのこと。(ネタニヤフ氏と英国政府機関の直通連絡ルートの存在が伺える)

ネタニヤフ氏の側近アミル・ジラッド氏の話によれば、ネタニヤフ氏のチームは英国の保安機関から保安状況の説明を毎朝受けており、テロ発生以降「滞在計画変更を指示されている」という。一方、今回のテロ事件発生前後において、その『英国保安機関』(MI5?イスラエル独自機関?)が、スコットランドヤードと、どの程度連携してきたかは今のところ明らかになっていない。

2005/07/07

チャック・ヘーゲル上院議員インタビュー

ワシントン周辺でにわかに注目を集めているチャック・ヘーゲル上院議員(ネブラスカ州、共和党)のインタビュー記事を以下に全文翻訳して掲載。アメリカも日本も、与党は党内分裂がトレンドらしい。

Fighting Words

チャック・ヘーゲル議員に質問

インタビューbyデボラ・ソロモン記者:ニューヨークタイムズ紙2005/07/03付け記事

チャック・ヘーゲル議員

チャック・ヘーゲル上院議員(共和党・ネブラスカ州)

ソロモン記者:
「ブッシュ大統領のイラク戦争失策を批判する共和党員が最近増加していますが、あなたもそのひとりですね?」
ヘーゲル議員:
「自分の党を支持しないという理由で、私のことを不義な共和党員だと呼ぶ者がいるなら、言わせておこう。戦争は政治よりも大きな問題だからね。」
ソロモン記者:
「上院では、あなたと、ジョン・マケイン議員、ジョン・ケリー議員の三人だけが、ベトナム戦争に従軍しているんですね。」
ヘーゲル議員:
「私がベトナムに行ったのは1967年12月、一緒に出征した兄のトムと私は、2度負傷した。胸にまだ手榴弾の破片が残ってるよ。医者が摘出できなかったんでね。2度目の戦傷で顔を酷く火傷して、両耳の鼓膜が破れたんだ。」
記者:
「では、耳が不自由なんですか?」
ヘーゲル議員:
「鼓膜は治療したけど、いくらか聞こえが悪くなったよ。」
記者:
「戦場では誰かを殺しましたか?」
ヘーゲル議員:
「うむ・・・確かに殺した。」
記者:
「イラクの現況と当時のベトナムを比較すると?」
ヘーゲル議員:
「ベトナム戦争時代、議会は上の空だった。議員はやっかいな質問をしなかったし、結果としてアメリカ国民5万8,000人が戦死して、戦争に負けて、我が国に屈辱を与えた。国が立ち直るのに1世代かかった。私が上院議員でいる限り、そんな事態を避けるために、できることは何でもするつもりだ。」
ソロモン記者:
「大統領にはどのような提案が可能ですか?」
ヘーゲル議員:
「まず第一に、兵士が足りない。しかし国防総省がやっているような、軍部のボーナスを2倍3倍にするということが人員不足解消の回答とは思えない。金を稼ぐために入隊した若者では国に奉公することはできないよ。」
記者:
「多くの若者は、学費を稼ぐためや、キャリア形成のために入隊しています。」
ヘーゲル議員:
「もちろん。しかし、インセンティブだけで誘惑できる類の連中を誘うわけにはいかない。新兵採用をボーナスだけで企画するなら、誤解したままで入隊する人々を増やすだけだ。」
記者:
「一方で、財政赤字が4,000億ドルを超えようとしていますが、すでに資金不足では?」
ヘーゲル議員:
「財政赤字の件では、限度を超えてしまった。わが党も今や民主党同然さ。」
記者:
「ブッシュ大統領を民主党員に喩える見方は聞いたことがありません。」
ヘーゲル議員:
「私の言いたいのはそこだ。その点では、わが党は全く不正直だ。わが党は、共和党政権下ではありえないような巨大な政府を作ってしまった。その点では、民主党員のほうがマシだね、正直だから。連中は取り繕ったりしない。それは褒めておこう。民主党員は言うからな。『お金が欲しい。お金が必要だ』とね」
記者:
「今後、共和党はどの方向に向かうべきでしょう?」
ヘーゲル議員:
「アイゼンハワー、ゴールドウォーター、レーガン時代の共和党に戻すんだ。あの頃はホントにわかりやすい党だった。小さな政府に、財政責任、強力な国防体制に貿易促進外交とね。」
記者:
「それが2008年度大統領選挙に向けてのメッセージでしょうか?」
ヘーゲル議員:
「ええと、まず第一に、私はまだ出馬するとは言ってないよ。」
記者:
「あなたは大統領候補になると噂されています。」
ヘーゲル議員:
「ジョン・マケイン議員が言ったように、医者にかかってない者は誰でも候補者と噂されるんだ。」
記者:
「あなたも立候補できないほど年寄りではありません。」
ヘーゲル議員:
「私は10月で59歳になる。ヒヨっ子だよ。若すぎる。自分としては年齢に満足だが、それだけでは何もできない。」
記者:
「実際、私も2008年について話すのは行き過ぎだと思います。評論家は次の当選者に夢中で、選挙が終わったら忘れてしまいますからね。」
ヘーゲル議員:
「それは、政治がショウビジネス化される昨今の動向によるものだろう。政治はまさにショウビジネス。不細工な連中のショウビジネスだ。綺麗な男女抜きのハリウッドだな。」

2005/07/04

USAトゥデイ創業者:「ブッシュは嘘つき」

第二次大戦の退役軍人で、米大手新聞社USAトゥデイの創業者アル・ニューハースが、昨年末に引き続き、また紙面で大統領を大批判。以下にそのコラムを全文翻訳して掲載。(参照過去記事:USAトゥデイ創業者:「早急にイラクから撤退せよ」

「イラク問題にもウォルター・クロンカイトが必要だ(What Iraq needs is a Walter Cronkite)」

アル・ニューハース:2005年6月30日付けコラム

今週、ブッシュ大統領はテレビ放送で、またしてもイラクの状況が問題ないと装った。40年前のリンドン・ジョンソンとベトナムを思い出させる事態だ。

イラクとベトナムの最も重大な相似点は、民主・共和両党の大統領が、戦時下で国民にウソをついたことだ。皆さんの記憶を呼び覚ますために、我が国がいかにしてベトナムの泥沼から抜け出したか以下に示そう。

  • CBSテレビのアンカーで、『アメリカで最も信頼された男』ウォルター・クロンカイトが、1968年のベトナム視察を終えて、こう宣言した。「これ以上、この戦争を正当化する理由はない」
  • ジョンソンは嘆きながら側近に言った。「クロンカイトを失うなら、アメリカを失うのと同じだ」ジョンソンは2期目を断念すると表明した。

ベトナムとイラクの致命的な違いは、クロンカイトのような、ブッシュの虚勢を批判する人物がいないことだ。強力で、信頼のおける、党派を超えた意見が欠落しているせいで、あまりにも多くの国民が盲目的にブッシュに追従している。火曜日の全国放送で、執拗にイラクを911テロと関連づけながら、またしてもブッシュは国民の目を塞ごうとしている。そのようなやり方は、サダム・フセインが大量破壊兵器を所有しているという開戦前の不信な主張と同じくらいの偽りに満ちている。

個人的に戦争を体験している我々のような世代の大半は、この偉大なる国家に命を賭ける価値があると強く信ずる。私の机の後ろの壁にある、第二次大戦時代の青銅星章と戦闘歩兵章が、毎日それを思い起こさせてくれる。

それらの記憶は、戦争が地獄であることも知らしめてくれる。それゆえに、我々は兵士達を必死で助けるべきだし、彼等の命を危険にさらすには正直で正当且つ高潔な動機が必要なのである。

以上の理由から、イラクに駐留する兵士を助ける最良の方法は、彼等を故郷に戻すことであると私は確信している。早いに越したことはない。
(以上)

2005/07/03

ブッシュ政権危機がまたひとつ:CIA工作員名の漏洩元はカール・ローブ

カール・ローブ大統領上級顧問は、国家機密漏洩で訴追される可能性がきわめて高くなった。

CIA工作員リーク事件---元米外交員ジョセフ・ウィルソンの妻、バレリー・プラムがCIA職員であることが米政府内の何者かによって3人のジャーナリスト(ボブ・ノヴァック、ジュディス・ミラー、マット・クーパー)に漏洩された国家機密漏洩事件---の裁判で、マット・クーパー記者の雇い主である米タイム社が、政府側の漏洩元(情報源)を記した取材メモを連邦大陪審に引き渡す事態となったが、早くもその真相が漏れ始めた

以前から噂されていたとおりホワイトハウス側の漏洩元の1人は、カール・ローブ大統領上級顧問であった。MSNBCの政治アナリストであるローレンス・オドネル氏と、ニューズウィーク誌記者マイケル・イシコフ氏が、ローブが漏洩元の1人であることを確認したと報道されはじめている

この工作員漏洩事件の捜査で最も奇妙だったのは、実際にCIA工作員名を記事に書いたボブ・ノヴァク(保守派の大物ジャーナリスト)が、今まで追求を免れていたことだった。しかしそのノヴァクも、裁判に出頭して情報源を明かす決心をしたとテレビで語っていた。ブッシュ政権ベッタリのノヴァクも、世論の批判に耐えられなかったというわけだ。

結局のところ、事件の全体像は、被害者の夫であるジョセフ・ウィルソン元駐ガボン米大使の語っていた内容を裏付けたことになる。つまり、イラクの大量破壊兵器情報の件で、ブッシュ政権が情報操作を行っていたと批判したウィルソン氏に復讐するために、大統領の側近カール・ローブが、ウィルソン夫人の身に危険が及ぶ可能性のある国家機密を友人のボブ・ノヴァックに漏らして、ブッシュ政権批判を封じようとしたわけだ。

クーパー記者の保護のためにタイム社が捜査側に取材メモを明かすという事態は、ローブとノヴァックにとって計算違いだったのかもしれない。二人の記者を収監して事件はお終い!というわけにはいかなくなったのだ。ホワイトハウス側の事件捜査に対する圧力が充分に効果を発揮しなかった理由は、おそらくワシントンの風向きが変わったせいだろう。つまり、カール・ローブは向かい風に向かって唾を吐いてしまったのである。

さて、カール・ローブが機密漏洩をした際、ブッシュ大統領はローブの行為を黙認したといわれている。ブッシュは自分への追求に怯えて、個人的に政府外の弁護士まで雇っているという。ブッシュ家お抱え弁護士ジェームズ・ベイカーはサウジ王家とのビジネスで忙しくて、落ち目になった親友の弁護までは手が回らない。そのサウジ王家も、王位継承をめぐり政変の兆しがある。(在米サウジ大使でブッシュ家の盟友、バンダル“ブッシュ”王子はすでに辞職し帰国すると発表している焦るホワイトハウスは国民の目を逸らせるためにイランとの暗い過去を持ち出しているが、これもブッシュにとって得策ではない。ブッシュ父の絡むオクトーバーサプライズ事件とそれを発端とするイラン・コントラ事件に再び注目が集まってしまうからだ。

まさしく、ブッシュは泥沼にはまり込んでいる。

2005/07/02

ブッシュ大統領「イラク駐留継続」演説の失敗

「明日、大統領は成功戦略について話すでしょう。大統領は今後についてかなり具体的に語るはずです。勝利への確かな道筋です」

「説明したとおり、これは新しい演説です。大統領は、イラクでの成功戦略について、かなり具体的に説明する予定です」

成功への明確な戦略があると思います。大統領はその戦略について、かなり具体的に語るはずです」

---マクレラン米大統領報道官、ブッシュ大統領の演説内容を前日のホワイトハウス通常記者会見で宣伝(2005/06/27




サダム・フセインが911テロ攻撃に関わったという証拠は掴んでいない。

---2003年9月のブッシュ大統領の発言(同時期に、米国民のおよそ70%が『フセインは911テロに直接関わっている』と信じていた




サダム・フセインと仲間達は、911テロ攻撃にきわめて深く関わっていたのです。

---2005年6月29日、ロビン・ヘイズ下院議員(ノースカロライナ州、共和党)、CNNインタビューでの発言。(ヘイズ議員は国家軍事委員会・下院テロ対策小委員会委員を務めている)

フォートブラッグ基地の大統領演説

兵士達が沈黙する中、演説は手短に行われた

6月28日、ノースカロライナ州フォートブラッグ基地でステージに立ったブッシュ大統領を拍手で賞賛したのは、結局のところホワイトハウスから会場に派遣された応援職員だけだった。

イラク、アフガニスタン共に反米武装勢力の拡大が続いており、演説前にアフガニスタンで軍用輸送ヘリ「チヌーク」がタリバンの武装兵に撃墜されというニュース速報が伝わっているせいもあってか(後に米兵士16人死亡と判明、ステージに現れた大統領に対し、聴衆(大部分が基地の兵士)から歓迎の声もないまま、重苦しい雰囲気の中で大統領の言葉が虚ろに空回りしていき、ホワイトハウス側の見積で40分間かかるはずだった大統領演説は、拍手による中断がなかったおかげで、わずか28分で早々と終了した。(同基地からは9,000人以上がイラクに派遣されている。)

使われた言葉、無視された話題・・・
演説中のキーワードと登場回数
source1| source2
その他各種報道から抽出)
テロ、テロリズム、テロリスト
(Terror, Terrorism, Terrorists)
34
自由な、自由
(Free, Freedom)
33
防衛、防御
(Defend, Protect)
15
治安
(Security)
14
選挙、投票、投票結果
(Election, Vote, Polls)
10
任務
(mission)
9
殺人者
(Killers, Murderers)
9
反乱軍、武装勢力
(Insurgents)
6
暴力
(Violence)
6
民主主義、民主的
(Democracy, Democratic)
5
911テロ事件
(September 11th)
5
(イラク)戦争
(War)
4
自由、解放
(Liberty, Liberate)
4
攻撃
(Attack)
4
オサマ・ビン・ラディン
(Osama Bin Laden)
2
サダム・フセイン
(Saddam Hussein)
2
反対意見
(Dissent)
1
失敗
(a mistake)
1
大量破壊兵器
(weapons of mass destruction)
0
出口戦略
(exit strategy)
0
任務完了
(mission accomplished)
0


肝心の演説の内容は、マクレラン米大統領報道官の前宣伝とは全く違い、国民をテロ恐怖で脅迫する古い手口を踏襲しただけのお粗末な内容。数日前に「ブッシュの頭脳」カール・ローブ大統領補佐官は、演説前の仕込みとして反ブッシュ陣営をテロリストになぞらえようとしたが、逆に軍人層の怒りを誘い失敗。また、大統領演説の直前、英国陸軍特殊空挺部隊(SAS)はアフガニスタンで(ブッシュの親友でCIA長官のポーター・ゴス氏が予告したように)オサマの「隠れ家」を急襲したが、ビン・ラディン氏は不在だった。明らかに、ホワイトハウスは準備不足だったわけだ。


視聴率も最低記録


ニールセンの視聴率調査によると、同時多発テロ直後の2001年9月20日に議会で行われたブッシュの「テロとの戦い」演説では、視聴者数は任期中最大の8,200万人だった。2003年5月1日、サンディエゴ沖に停泊させた空母の艦上で行われた「イラクの大規模戦闘終了」演説では、4,840万人の米国民が、戦闘機から降り立つフライトスーツ姿のブッシュ大統領を観ていたという。

しかし、4つの大手放送局と3つのケーブル放送網で生中継された6月28日のブッシュ大統領演説の視聴者数は2,300万人。ブッシュ大統領演説の視聴率としては、最低記録を更新した。

ちなみに、人気番組「アメリカン・アイドル」シーズン最終回の視聴者数は3,030万人であったという。


2大新聞は演説をどう評価したか


ワシントンポスト紙6月29日付15面
「抜け落ちた進捗報告の実情(A Case for Progress Amid Some Omissions)」

昨夜の演説で、ブッシュ大統領はイラクにおける米国の活動に関して、いくつかの不愉快な事実を無視し、諸外国からの支持拡大についても誇大な主張をした。しかし、手のつけられない反乱に直面しながら創設されたイラク政府の成果については正確に主張した。

大統領はイラク戦争をテロ対策努力の中心であり、合衆国を攻撃するテロリストの避難所として描写した。しかし、イラク侵攻の元々の論理的根拠は、昨夜無視された。ブッシュ政権が確信したのは、サダム・フセイン政権が生物化学兵器を保有し、核兵器を所有している可能性があるというものであった。

実際には、ブッシュ政権が開戦根拠として引き合いに出す国連決議により、専ら大量破壊兵器の廃棄をし損なったイラク側に非があるとしているが---そうした大量破壊兵器は、戦後も全く見つかっていない。ブッシュは、2003年3月19日の侵攻前の演説で、軍事行動は「イラクを武装解除し、人民を解放し、世界を重大な危機から護る」と語っていた。

開戦から2ヶ月半経過して、ブッシュが大規模戦闘終了宣言をした際、(イスラエルとパレスティナの紛争におけるイラクの役割に言及しながら)フセインを『テロ支援の源』として、『いかなるテロ組織もイラク政府から大量破壊兵器の援助を受けられなくなった』ことを理由に、テロとの戦いにおける勝利と言った。

ブッシュはまた、フセインを『アルカイダの仲間』と説明した。大統領はそれを昨夜の演説でも示唆していたが、しかし911同時多発テロ調査委員会は、フセインとオサマ・ビン・ラディンの組織にいかなる連携も存在していなかったと結論づけている。

今では、政権内外の多くのアナリストが指摘しているように、イラクはテロ組織の温床と見なされており、フセイン打倒とイラク占領政策におけるブッシュ政権の失策がその原因の一部を担っている。ブッシュはテロとの戦いにおける成果を強調したが、国防総省の中東地域司令官であるジョン・P・アビザイド将軍が今月明らかにしたところでは、6ヶ月前に比較して、より多くのテロリストが海外からイラクに流入しているとのことである。

演説の他の部分でも、大統領は諸外国からの支援レベルを現実以上に必死に誇張してみせた。『国際社会は一歩前進し、重大な支援を申し出ており』30カ国がイラクに派兵していると言った。また大統領は、武装勢力が『連合軍を大量撤退させることに失敗』していると言った。

しかし、米国主導の連合軍は、かつては36カ国を誇ったが、現在は専ら数カ国のみに依存している。過去数年で、12カ国以上が撤退、もしくは撤退計画を表明している。

イラク侵攻に名を連ねたスペインは、1年以上前に撤退を完了した。ポルトガル、ノルウェイ、ハンガリー、フィリピン、ニュージーランド、タイ、ホンジュラス、ドミニカ共和国、トンガも撤退した。3大派兵国のひとつ、ウクライナとポーランドも今年一杯で撤退すると宣言し、イタリアも今年秋から順次撤退する計画を表明している。

ブッシュは『40カ国と3つの国際的機関がイラク再建に340億ドルの支援を約束している』と宣言しているが、その内200億ドルが合衆国の負担であり、そうした資金のほとんどが治安維持費用に転換されたか、未納となっていることを説明していない。さらに、2年ほど前に諸外国から約束を取り付けた支援金のうち、実際に支払われたのはわずかに20億ドルに過ぎない。

仮に340億ドル全額が最終的に支払われたとしても、2003年度に世界銀行と国連が発表したイラク再建費用の見積額560億ドルには遠く及ばない。(以下略)


ニューヨークタイムズ紙6月29日付社説
「イラクに関するブッシュ大統領の演説(President Bush's Speech About Iraq)」

昨夜、ブッシュ大統領は国民に向かって、イラク戦争は困難であるが、しかし勝てると話した。最初の部分については明らかに真実である。ブッシュ政権職員の陽気な応援にも関わらず、軍事状況は良く見積もっても改善されていない。ブッシュの楽観的な説明とは裏腹に、イラク国軍は、アメリカによるこの先数年の援助なしでは、国内治安を維持できる見込みはない。当初の任務を完遂するには、米軍兵士の数が足りないし、それどころか、この不適切な軍事行動を維持するための負担により、世界中の前線の安全を確保すべき合衆国の能力そのものに多大な犠牲を強いている。

我々は虚報に基づき国民をこの戦争に巻き込んだ件、あるいは軍事行動において政権閣僚の果たした失敗の件で、ブッシュ氏からの謝罪を期待していたわけではない。しかし、テロ攻撃と全く関係のない国との戦争を正当化するために、911テロの旗印をしつこく振り回すような誘惑に大統領が囚われることがないよう願っていた。勝利の定義について国民に話す機会を掴み、国民が目標にどう向き合うかについてくわしく説明することを期待していたのであり---侵攻時と同じ甘いシナリオの繰り返しは克服して欲しかったのである。

悲しいことに、ブッシュ氏は昨夜、そうした機会を台無しにして、誰も尋ねていない質問の答えを繰り返すのみだった。大統領は国民に対し、何度も何度も、イラクの安定化のためには、アメリカ人の犠牲を伴う価値があると主張したが、国民はそうした犠牲が果たしてイラクの安定化と民主化に実際に貢献しているのかどうか、もはや定かでないのである。

この戦争の計画から実行までの仕方を考えると、大統領は他の選択肢を持たないが、もし米軍が撤退すれば、イラクはおそらく内戦に突入し、民兵と無国籍テロリストが苦もなく活躍する無法地帯が拡大することになるだろう。しかし、もしブッシュ氏がこのまま駐留を継続するつもりならば、イラク政府とイラク軍が自立するためにさらに何年も必要になる。最も重要なことは、---武装勢力には『自由の進展は止められない』という、大統領が昨夜言ったような高尚な確約はさておき---これまでの努力と苦労は、結局のところイラク国民同士を反発させ、あるいは米軍兵士が究極の敵であることを決定づけてしまったにすぎないのである。重大な課題は、もしかしたら限界が来ており、アメリカの存在が状況をより悪化させる時期にあるかもしれないことを、冷静に判断することである。(以下略)

歪曲報道を競ったCNNとフォックスニュース

フォックスニュースの名物キャスターでブッシュ大統領の熱烈な支持者であるブリット・ヒュームは、大統領演説の中継で、聴衆から全く無視されたブッシュを擁護するために、放送中に以下のような手の込んだウソをついた:
「(聴衆の)兵士達は大統領に対して(軍隊流の)賞賛の声を上げないように、あらかじめ厳しく指導されていました・・・
このウソを言った直後、ヒュームが中継先のカール・キャメロン記者に画面を譲ると、ヒュームの意図が読めないキャメロンはあっさり真相をバラしてしまった。実際は、基地の兵士達は大統領を賞賛するよう、演説直前にホワイトハウス職員から指導されていたとのことだった。(ヒュームの慌てぶりが楽しい中継ビデオはこちら

一方CNN放送は、演説直後に電話世論調査を行い、ブッシュ大統領演説を観た国民の46%が『とてもポジティブ』、28%が『どちらかといえばポジティブ』な感想を持ったと急いで報道した。これが事実なら、米国民の7割以上が大統領演説を賞賛していることになるが、調査対象となった323人の回答者のうち、50%が共和党支持者、23%が民主党支持者、27%が無党派というわけで、言ってみれば個性的な世論調査結果をテレビで伝えていたことになる。

大統領演説がもたらしたもの

大統領演説の直前に行われたワシントンポスト・ABC共同世論調査によれば、米国民の51%が大統領の仕事振りに不満で、52%が「ブッシュはイラク戦争のために意図的に国民をミスリードした」と考えているとのことだった。

演説直後にゾグビー社が発表した米世論調査によれば、大統領の演説後もポジティブな効果は見られず、42%が「ブッシュがイラク侵攻のために米国民をミスリードしたことが事実ならば、大統領弾劾の手続きに賛成する」と回答している。

ブッシュもそろそろ自身のexit strategyを検討しはじめていることだろう。

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