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2005/08/04

NYタイムズ紙:「合衆国最果ての地の浜辺では、イラクは夢へと続く道」

「この戦争がそんなに正しいというなら、なんであんたの子供達は入隊してないの!?」

−2004年9月17日、ニュージャージー州ハミルトンで、イラク戦争の重要性を説くローラ・ブッシュ大統領夫人に向かって、『反戦の母(antiwar mom)』スー・ニーダラーが浴びせた言葉。この直後に彼女は逮捕され訴追されたが、担当検察官は彼女の起訴を取り下げた。スー・ニーダラーの息子で陸軍中尉のセス・デボリンは、2004年2月3日にイラクで戦死した。

ニューヨークタイムズ紙2005/07/31付記事を以下に全文翻訳して掲載。

8月3日の時点で、イラク駐留米軍の戦死者数は1,820人を超えている。また、イラク内務省の最新調査によると、2005年度初頭から7月31日までに戦闘で犠牲になった一般イラク市民は2,072人、反乱軍兵士の死者数は855人、イラク人警官の死者は765人、戦死したイラク人治安部隊兵士の数は308人となっている。

合衆国最果ての地の浜辺では、イラクは夢へと続く道(On Farthest U.S. Shores, Iraq Is a Way to a Dream)

by ジェイムズ・ブルック記者:ニューヨークタイムズ紙2005年7月31日付け記事

北マリアナ諸島サイパン---夕暮れ時のヤシの木が繁る白い浜辺でジョギングをしながら、17歳のオードリー・O・ブリシアは、この島で行われるミス・フィリピン大会へ二度目の出場を賭ける以上の鍛錬に励んでいる。彼女は合衆国陸軍の基礎訓練に備えているのだ。

適性試験を待つ入隊希望者達

他の入隊希望者と共に、北マリアナ諸島サイパンの陸軍予備軍センターで入隊適性試験を待つロス・デラローザ(左)

入隊競争で優位に立つために、オードリーは土曜日朝に開催された陸軍入隊適性試験の2日前に席を予約していた。無事着席すると、陸軍のスカウト担当者が、遅れてきた申込者10人を拒否している様子を彼女は見た。10人とも、高校時代の同級生であった。

「イラクに行くのは怖いけど、自分にとってメリットになるから行かなきゃならないの」オードリーは言った。彼女はフィリピン移民の娘で、カリフォルニアの看護学校行きを目指している。

イラク戦争によって合衆国本土で入隊希望者が激減している昨今、米陸軍スカウト担当者は、北米大陸から4000マイルほど西方の、米領サモア首都パゴパゴからミクロネシアのヤップ島まで、高校を卒業したばかりの若者を入隊させるために、太平洋中を探し回っている。

太平洋の貧困な僻地は、陸軍にとって豊かな土地となっている。米領サモアでは、住民1人当たりの年間所得は8,000ドルで、北マリアナ諸島では1万2,500ドル、グアムでは2万1,000ドルとなっているが、これらの土地は全てアメリカ領である。元委任統治領であるマーシャル諸島とミクロネシアでは、およそ2,000ドルとなる。(訳注:米国民1人当たりの平均年間所得はおよそ2万2,794ドルである:source/2002年米国勢調査

米陸軍の入隊時ボーナスは最低でも5,000ドル。海兵隊二等兵の年収はスタート時で1万7,472ドル。教育手当ては7万ドル相当まで支給される。

「マリアナ諸島やミクロネシアあたりでは、募集に困ることはありませんね」オリンピオ・マゴフナ第一軍曹は言う。サイパン育ちの軍曹は、グアムの陸軍基地において太平洋募集活動を監督している。「合衆国本土では、(入隊状況は)本当にひどいみたいですが」軍曹は言った。「しかしここでは、私も毎日ゴルフに行けるくらいですよ」

『アメリカで一番早く日が昇る』この土地で、グアムの米陸軍募集センターは、米陸軍兵士入隊数ランキングトップ12基地の中で、4番目の『生産高』を誇っている。入隊実数では少ないが、グアム、サイパン、米領サモアからの人口当たりの入隊者数は、アメリカ国内で最大である。サイパンでは、アメリカ市民と永住ビザ保有者の総計は6万人ほどだが、その内245人がイラクに派兵されている。

(米領サモアでは、6万7,000人の人口の内、6人が兵士としてイラクで戦死している。最近の例では、サモアのパゴパゴ出身者フランク・F・ティアイ二等軍曹が、今年7月17日に戦死している。グアム出身者は3人戦死し、サイパン出身者は1人が戦死している)

「黄色いリボンはそこら中にありますよ」パゴパゴの陸軍募集センターから、レビ・スイアウノア二等軍曹が電話で言った。「ほとんどの通りには『無事帰還せよ』の看板がありますね」

犠牲者の数にも関わらず、貧困と愛国心が入隊を促進させている。

「私自身、少なくとも1人の兵士を埋葬したが、今でも入隊者の数が減ることはないですね」サモアの首都パゴパゴ・カソリック管区のクイン・ワイゼル司祭は言う。「彼等は今でも、合衆国のために何かしたいと思っているのです」

グアムとサイパンでは、ナンバープレートにUSAの文字が装飾されており、まるで旅行者にこの土地が米国領であることを教育しているかのようだ。

「米領の至るところで、愛国精神が強く根付いているのです」諸島関連部次官補を務めるデビッド・B・コーエンは言う。「現職の北マリアナ諸島下院議員で、イラクに1年駐留したレイ・ユムルのような人について、他にどのような説明ができます?彼は生活のために軍隊に入ったわけではないでしょう」

マリアナ諸島では、米国陸軍への従軍の伝統は、日本の占領体制と闘った1944年の夏から、3世代に及んでいる。

「私達は独立記念日と、退役軍人記念日と、国旗制定記念日を支持します」北マリアナ諸島退役軍人局局長ルース・A・コールマンは言う。自身も退役空軍兵である彼女は言う:「私を御覧なさい。父も、夫も、私も従軍してるんです。一番下の息子は憲兵だし、その息子の嫁は憲兵指揮官。真ん中の息子は空軍に居ますよ」

この土地の多くの若者にとって、従軍と経済的成功の関係は明白だ。

「そりゃあ得だよ」アーノルド・バリサリサは語った。彼は入隊適性試験を7月下旬に受けている。時給3ドル25セントのマクドナルドの仕事の休憩中に、彼は話した:「この島に居るよりマシさ。ここじゃ何も始まらないよ。俺は19歳だけど、グアムにも行った事がないんだ」

オードリー・ブリシア

オードリー・O・ブリシア(17)北マリアナ諸島に暮らす彼女にとって、陸軍入隊は看護学校へと続いている


アーノルドの友人ブリシアは、カリフォルニアの高校で1年を過ごしたので、違いがわかっている。

「合衆国本土の人たちは研修でも高給ですから」州立大学に必要な研修制度が低賃金であることを引き合いに出し、彼女は言った。「サイパンの多くの人は、高給・高待遇を求めて陸軍に入隊するんです」

サイパンの将来の経済状況を曇らせるかのように、サイパン観光客の25%を抱えている日本航空が、この10月でサービスを休止させる予定である。アメリカ政府が中国製衣料品の輸入を自由化してから、島の雇用を支える最大産業である衣料業界は、数千人の従業員をレイオフすることになった。

観光客にとって、サイパンは楽園のように見えるかもしれないが、血気盛んな地元の10代の若者にとっては、まるで袋小路のように見えることだろう。タポチャオ山の麓に住む18歳のロス・デラローザは、前庭の近くで牛と鶏の遥か先を眺めながら、野心を燃やしている。

「この島では暮らすのも大変なんだ」デラローザは言う。フィリピン移民の息子であるデラローザは、マリアナ先住民であるチャモロ族とカロリン族が地主や政府の仕事のほとんどを支配する島の現実と直面している。独学で整備士となった彼は言う:「ここでは何を知ってるかではなくて、誰を知ってるかが重要なんだ」

無敵を自負する10代の若者にとって、彼等を抑えるのは母親の仕事だ。ブリシアの母、ミラは、娘のインタビューの最中ずっと腕組みをしていた。

「ジェシカ・リンチの話を聞いてますから、『私の娘が?まさか!』という感じです」侵攻当初に拘束された兵士の件を引き合いに出して、彼女は言った。結局、未成年である娘のために、彼女は陸軍入隊同意書に署名した。

入隊希望者達にとって、決断の際にイラクは重くのしかかっているという。

「怖いのは、イラクに行って、もしも誰かに撃たれたらどうする?ってことだなあ」休憩時間にバリサリサは話した。しかし、まもなく彼は陸軍入隊適性試験を通過したかどうかを心配しだした。オードリー・ブリシアの方を向いて、彼は言った。「(陸軍から)君には電話が来た。なぜ俺には電話が来ないんだろう?」
(以上)

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