カテゴリー

アクセスの多い記事

« 「お茶も同情もなし?」byモーリーン・ダウド | トップページ | 全米の「赤い州」が続々と反ブッシュに転向中 »

2005/08/17

アメリカ国内線で「テロ容疑者」と似た名前の幼児が「搭乗拒否」される事件が頻発

AP通信2005年8月15日付け記事を以下に全文翻訳して掲載。(記事中リンクと写真コメントは訳者による)

ブッシュ政権下の間抜けなテロ対策が、あいかわらず威力を発揮しているということだ。幼児をテロリスト扱いする一方で、米運輸保安局は新たに、5インチ以下のナイフ等刃物の機内持ち込みを解禁する計画を発表している。911テロでは、実行犯達は刃物で添乗員を刺し殺してハイジャックを実行したのだが、米政府は事件の詳細を忘れてしまったのだろうか?

なお、以下の記事でも言及されているアメリカ自由人権協会(ACLU)の活躍については、新刊書『アメリカ発グローバル化時代の人権:アメリカ自由人権協会の挑戦』(明石書店)に詳しい。

『飛行禁止リスト』の混乱に巻き込まれた幼児達(Babies Caught Up in 'No-Fly' Confusion)

by レスリー・ミラー記者:AP通信2005年8月15日付け記事


合衆国政府の管理する『飛行禁止リスト(no-fly list)』に掲載されたテロ容疑者と同姓同名、あるいは単に名前が似ているだけで、アメリカ国内の航空機に幼児達が乗れなくなる事態が発生している。

まるで冗談に聞こえるかもしれないが、子供のパスポートと必要書類を慌ててファックスする両親にとっては笑っていられない事態である。

イングリッド・サンディンさんの1歳の娘は、感謝祭でワシントンに帰郷する際に、フェニックスの空港で、搭乗を拒否された。

「テロとの闘いという状況は充分に理解しています。航空機の安全を確保したいという考えにも賛成です」サンディンさんは言った。「しかし、標的をもう少し絞ってくれたほうが、公的資源をより有効に使えると思うんです」

搭乗拒否された女の子

イングリッド・サンディンさんと娘さん。米政府機関によれば、『飛行禁止リスト』に名前が掲載されていたこの女児は、フセイン政権同様『差し迫った脅威(imminent threat)』に見えたらしい。

航空機への搭乗を拒否されたり、搭乗前に特別調査を必要とされる「要注意人物」リストの政府による使用が顕著になったのは、911同時多発テロの直後からである。アメリカ自由人権協会(ACLU)などの批判派の話によれば、そうした『飛行禁止リスト』に誰が掲載されているのかについて、政府は充分な情報提供を行っていないので、リストに掲載された人物とたまたま同名である無実の人々が、保安捜査のために拘束されることがあるという。

そうした事態は、サンディンさんの娘の例のような、幼児に対しても発生している。(2歳以下の幼児は通常搭乗チケットを必要とされないが、サンディンさんは娘が座席を確保できるように一枚購入していた)

「変な話ですよ」サンディンさんは言う。「当時の私は妊娠してお腹が大きかったんですが、『大変な脅威』と思われていたんです」

サラ・ザポルスキーさんと彼女の夫も、先月ダラス国際空港から出発する際に、同様の経験をした。チケット窓口担当者の話では、生後11ヶ月になる夫妻の子供が、政府の提供する『飛行禁止リスト』に掲載されているとのことだった。

窓口担当者が、子供のパスポートをファックスして書類手続きを30分ほどで処理してくれたおかげで、夫妻は予定どおり搭乗することができた。

「セキュリティが重要だってことはわかります」ザポルスキーさんは言う。「しかし、生後11ヶ月の乳児がテロリストじゃないと証明するために、パスポートを渡さなきゃならないなんて、時間の無駄だと思います」

他にも、エドワード・ケネディ上院議員(マサチューセッツ州・民主党)や、ジョン・ルイス下院議員(ジョージア州・民主党)、ホームコメディ『オジーとハリエットの冒険』のスター俳優デビッド・ネルソン氏等の有名人でさえ、『飛行禁止リスト』に同じ名前が掲載されているという理由で、空港で搭乗を拒否されている。

911テロ以降、合衆国政府は搭乗客の検査プロセス改善を図ってきた。政府の当初案は、個人情報へのアクセスが過剰すぎるとの恐れから敬遠された。現在、『Secure Flight』と呼ばれる新たな政府案が作成途上にあるという。

しかし今のところは、航空各社は政府から配布されている『飛行禁止リスト』と乗客を照合する義務がある。そうした照合業務は非常に困難になりつつあるという。この問題に詳しい航空業界関係者の話によれば、911テロ以降、『飛行禁止リスト』に掲載された人数は10万人を超えているからだ。リスト掲載者の正確な人数は機密事項であるため、この情報を提供した人物は匿名を希望した。

リストに掲載された人物情報の全てが、より正確に容疑者として特定するための身体的特徴を記されているわけではない。そうした事情が、「T・ケネディ」や「デビッド・ネルソン」のような名前の人たちが搭乗予約をする際に問題を生じさせている。

アメリカ自由人権協会の弁護士、ティム・スパラパニ氏の話によれば、『飛行禁止リスト』によって幼児が搭乗できなくなる事態は、同リストが役に立たないという事実を示しているという。

「掲載されている内容についての監査は行われていないのです」スパラパニ氏は言う。「掲載名が急増しているのは知っています。名前だけのシステムでは、個別の情報内容に注目できません。容疑者と似た名前に注目するだけになってしまいます」

『飛行禁止リスト』を管理する米運輸保安局(TSA)は、航空各社に対して、12歳以下の子供がリストに掲載されていても、搭乗拒否したり特別なセキュリティ検査をしてはならないと指導している。

しかし、そういう事態は結局のところ現実に発生している。地域航空協会会長のデビー・マクエルロイ氏は言う:「業界内の情報によれば、そういう問題はあらゆる空港で起きていますよ」

米運輸保安局の『旅客苦情処理係』では、間違って名前が掲載された人たちの申し出を個別に調査している。米運輸保安局広報担当官ヨランダ・クラークの説明によれば、今までに89人分の子供の名前が調査申告されているという。その内14人は、2歳以下の幼児であった。

苦情処理係が特定個人について拒否対象者でないと決定すれば、『飛行禁止リスト』に追加の個人情報が記載され、次回からは空港で呼び止められることがなくなる。

クラーク氏によれば、たとえ問題を抱えていても、『飛行禁止リスト』は航空機を利用する人々の安全を守るために不可欠であるとのことである。
(以上)

« 「お茶も同情もなし?」byモーリーン・ダウド | トップページ | 全米の「赤い州」が続々と反ブッシュに転向中 »

テロの脅威、テロ対策の脅威」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1730/5505094

この記事へのトラックバック一覧です: アメリカ国内線で「テロ容疑者」と似た名前の幼児が「搭乗拒否」される事件が頻発:

« 「お茶も同情もなし?」byモーリーン・ダウド | トップページ | 全米の「赤い州」が続々と反ブッシュに転向中 »

2016年5月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31