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2005/10/17

ブッシュ政権とテロ警報

ブッシュ政権は、合衆国政府のスキャンダルが発覚する度に、国民の視線を逸らせるためにテロ警報を発令している?---米MSNBC放送の人気アンカー、キース・オーバマンが、同局のニュース番組『カウントダウンwithキース・オーバマン』10月12日放送分で、ホワイトハウスのテロ警報ヤラセ疑惑を報道している。非常によくまとまっているので、以下に放送内容を要約して掲載した。(ビデオはCrooks and Liarsでダウンロード可能。文中リンクと注釈は訳者による)

キース・オーバマンのイントロダクション(番組ブログより):

先週の『カウントダウン』で、最新のテロの脅威---ニューヨーク市街の地下鉄を狙った爆破計画---について、私はそのタイミングについて触れました。ブッシュ大統領の「テロとの闘い」演説が行われた日には、CIA工作員名漏洩事件調査でカール・ローブ大統領主席顧問の起訴の可能性についての報道がありました。

似たような事例は、過去3年間で13回発生しています。現政権の政策が下降線になると、『テロ事件』がそれに続き、警戒レベルが変更されたり、逮捕者が出たり、警報があったりするのです。

私達は、公開情報からそうした『偶然リスト』をまとめてみることにしました。今日の午後の放送では、10件の事例についてご紹介しました。10件のリストの後に、残り3件の事例を新たに時系列を無視して挙げてみましょう。(翻訳では時系列順に修正済み)(中略)これらの偶然について、おそらく最も端的に評する見識は『論理上の誤り』というものです。つまり、Aという事象が発生し、後にBという事象が発生しても、それだけでAがBの原因といえるわけではありません。

しかし、これらの偶然を考慮する場合、1人の当局者が語った内容はとりわけ示唆的といえるでしょう。国土安全保障省長官を辞任したトム・リッジ氏が、自身の監督下においてテロ警戒レベルが変更された件について、5月10日付けインタビュー記事で回想しています。

リッジ氏はこう発言しています。「警戒レベル上昇を最小限にしようとしないどころか、脅威情報の評価に関して意見がわかれることもしばしばでした。情報の信憑性が高くても、警戒レベルを上げる必要はないと思うこともありました・・・(政府内の)一部の人々はテロ警戒レベルを上げることに非常に積極的でしたが、我々は『そんなことで警戒?』と言う事もありました。」

---後は、ご覧になる皆さんがご判断ください。


事例(1)
2002年5月18日、『2001年8月6日付合衆国大統領日報』の詳細が、その報告書タイトル「ビン・ラディンが合衆国本土攻撃を決定」と共に初めて暴露される。同じ日に、別のメモ---FBIがアリゾナ飛行学校で訓練中のアルカイダ工作員関係者について知っていた事実を示すメモの存在が明らかになった(テロリスト容疑者の活動を知りながらFBIは追跡捜査をしていなかった)。その結果、911同時多発テロに関する情報機関の失策が世論を賑わせ始める。
それから2日後の2002年5月20日、モラーFBI長官が、次回のテロ攻撃を「避けられない」と発表。次の日、国土安全保障省が全米の鉄道路線、及びニューヨークの景勝地ブルックリン橋や自由の女神像がテロ攻撃の標的にされるとの警告を発令した。

事例(2)
2002年6月6日、911テロ犯人グループの1人、ザカリアス・ムザウィが飛行訓練を受けている件を上司に警告した元FBI捜査官コリーン・ローリーが議会で証言。FBIがテロ攻撃の計画を事前に摘発できる機会を逃していた件が明らかになる。
それから4日後の2002年6月10日、ロシアを訪問中のアッシュクロフト米司法長官が、合衆国本土で放射能爆弾を爆破させる計画をしていた容疑で、アメリカ人ホセ・パディラ容疑者を拘束中であることを明らかにした。発表時点で、パディラ容疑者はすでに1ヶ月以上拘束されていた。(2005年現在、ホセ・パディラは、逮捕から3年以上経過しても証拠不十分で訴追されぬまま、大統領命令により依然として拘束されているが、FBIによる誤認逮捕の可能性が高いとみられている)

事例(3)
2003年2月5日、パウエル国務長官がイラクの武器隠匿をめぐる国連安全保障理事会で、18箇所の生物化学兵器研究所の存在を示し、国連と米国による軍事行動の正当性を主張。会議に出席した諸外国は疑念を示した。数ヵ月後、米国により指摘された情報のほとんどが虚偽であることが判明。
それから2日後の2003年2月7日、反戦運動が世界各国で盛り上がる中、国土安全保障省のリッジ長官は、アルカイダによる「信憑性の高い脅威」を発表し、テロ警戒レベルをオレンジに上昇させた。続く3日後、米消防庁のデビッド・ポーリソン長官が、放射線や生物兵器から自宅を防衛するためにプラスティック・シートとダクトテープを備蓄せよとアメリカ国民に提言。(この発表の影響で、ホームデポ他生活用品店でダクトテープの売り上げが急上昇した。尚、現在ポーリソンは、ハリケーン・カトリーナ大災害後、ブラウン長官更迭の後釜としてFEMA長官に就任している

事例(4)
2003年7月23日、「フセインがニジェールからウランを購入」と言及した大統領一般教書演説の1ヶ月前に、CIAが当該情報に強い疑念を持っていた件をホワイトハウスが認める。24日、911同時多発テロに関する議会報告書が公表される。同報告書では、政府のテロ対策を厳しく批判、特にFBIがテロ実行犯二人の近辺に情報源を配していた件を暴露、イラクとアルカイダが無関係であることを結論づけている。報告書中28ページ分は削除されていた。続いて26日、アメリカ兵によるイラク囚人虐待事件が暴露される。
それから3日後の2003年7月29日、米国政府に関するネガティブ情報が溢れる最中に、国土安全保障省が、航空機を使った自爆攻撃の企図があるとしてテロ警報を発令。

事例(5)
2003年12月17日、911同時多発テロ調査委員会委員長トーマス・キーンが、テロ被害は未然に防止可能だったと発言。次の日、米連邦控訴裁判所が、具体的な訴追なしにホセ・パディラ容疑者の拘束を継続するのは合衆国憲法違反と認定。同じ日に、イラクで武器査察官として勤務し、大量破壊兵器は全く発見されないと結論づけていたデビッド・ケイが辞任を表明した。
それから3日後の2003年12月21日、クリスマス直前に、国土安全保障省がテロ警戒レベルをオレンジに上昇させ、航空機による米都市部攻撃の計画があると発表。それに続いて、合衆国内に到着予定の6機の商用航空機が、米政府の保有する『飛行禁止リスト』に掲載された人物が搭乗しているという理由で着陸拒否される。フランス航空は後に米国政府から容疑者と名指しされた客について公表したが、1人はウェールズ出身の保険セールスマン、1人は中国人の老女、1人は5歳児だった。

事例(6)
2004年3月30日、新任のイラク武器査察官チャールズ・ドルファーが議会で大量破壊兵器が発見できないと証言。また、ずっと911委員会での証言を拒否してきたコンドリーザ・ライスがついに証言すると決定。31日、ブラックウォーターUSAの傭兵4人がイラク・ファルージャで殺害され、死体を引き回され公衆の前に晒され、イラクで活動する民間軍事業者の役割への懸念が拡大する。
2004年4月2日、国土安全保障省が、テロリストが小型バッグやダッフルバッグに入れた肥料・燃料爆弾を使ってバスや電車を攻撃すると警告。

事例(7)
2004年5月16日、パウエル国務長官がニュース番組「ミート・ザ・プレス」に出演、ホストのティム・ラセールが、国連でパウエルがフセイン政権に対する疑惑を示した件について質問をすると、補佐官がインタビューを遮ろうとしたが、パウエルは大量破壊兵器情報について「不正確で間違いであり、意図的なミスリーディングもあった」と認める。
2004年5月21日、イラクでの囚人虐待事件に関する新たな証拠写真が公表される。続く24日、AP通信の報道により、米軍が誤って結婚式場を爆撃し市民40人以上を殺害した事実が明らかになる。
2004年5月26日、アッシュクロフト司法長官とモラーFBI長官が、複数の情報源により「アルカイダが合衆国本土に大掛かりな攻撃を仕掛ける計画の詳細」を入手し、「計画は90%まで進行している」と記者会見で警告。しかし国土安全保障省はテロ警戒レベルを上昇させず、リッジ長官は司法省との見解の食い違いを示した。

事例(8)
2004年7月6日、民主党大統領候補ジョン・ケリーがジョン・エドワーズを副大統領候補として指名し、世論調査は好感を示す。メディアが民主党の選挙活動に注目を向け始める。
それから2日後の2004年7月8日、国土安全保障省トム・リッジ長官が、夏から秋にかけてアルカイダによる攻撃の情報ありと警告。続く4日後には、米国選挙支援委員会のデフォレスト・B・ソアリーズ委員長が、リッジ長官へ宛てた書簡で、大統領選挙前にテロ攻撃があった場合、投票を延期すると言及。

事例(9)
2004年7月29日、ボストンで開催中の民主党全国大会において、ジョン・ケリーが大統領選候補として正式選出される。一週間を通じ、民主党大会がメディアの注目を集める。
2004年8月1日、国土安全保障省がワシントン、ニューヨーク、ニュージャージの各金融街のテロ警戒レベルをオレンジに引き上げる。警報の根拠となった書類はイラクの民家で発見されたが、4年以上前に書かれたもので内容も時期外れだった。

事例(10)
2004年10月22日、大統領選挙を妨害するテロ攻撃の可能性を政府が警告してから数週間後、FBI、警察、他合衆国各情報機関はテロ計画の証拠は何も見当たらないと報告。計画を知ると主張したCIA情報源については信頼性なしと判明した。
2004年10月29日、上記から7日後、大統領選挙の4日前、911同時多発テロ以降に撮影されたとされるオサマ・ビン・ラディンの最新ビデオがアルジャジーラで放送される。ブッシュ・チェイニー再選キャンペーン関係者は同ビデオについて「ささやかな贈り物」と評した

事例(11)
2005年5月5日、下院議員88人が大統領に「ダウニングストリートメモ」についての調査を書簡で要求。イラクでは、自動車爆弾テロが急増。11日には、ひとつの攻撃で75人以上のイラク人が殺された。
2005年5月11日、午後に、飛行教官と生徒の搭乗した飛行機がワシントンDCの飛行禁止領空に侵入。同様の出来事は年間数百件発生しているが、今回はホワイトハウスの数マイル傍まで接近。ホワイトハウス全館に避難警報発令、副大統領、ファーストレディ、ナンシー・レーガンが地下の避難シェルターに隠れた。しかし、森でサイクリング中だった大統領には、シークレットサービスから警報について知らされなかった。

事例(12)
2005年6月26日、ギャロップの世論調査で、ブッシュ大統領のイラク政策について61%の国民が懸念を表明。28日には、大統領がフォートブラッグ基地で「我々が戦っている理由はテロリストが我が国を攻撃し米国民を殺そうとしているからで、イラクはその本拠地となっている。それゆえイラクでの闘いを継続し、世界中のテロリストと闘い、勝利するまで闘いを続けるつもりだ」と宣言。
2005年6月29日、またしても飛行機が飛行禁止領空内に侵入。ホワイトハウス全館で再度避難警報が発令され、今回は大統領も避難した。

事例(13)
2005年10月6日、東部時間で午前10時、ブッシュ大統領は米国民主主義基金での演説で再度テロとの闘いを強調し、911テロ以降に発覚した10件のテロ計画を殲滅したと主張した
東部時間午後3時、大統領演説から5時間後、CIA工作員名漏洩事件でカール・ローブ大統領主席顧問が大陪審に再度召還され、フィッツジェラルド特別検察官がローブに「訴追されない保証はない」と説明したとAP通信が報道。
東部時間午後5時17分、大統領演説から7時間後、ニューヨーク当局者が地下鉄テロ攻撃の危険性について発表。しかし、国土安全保障省広報官はテロ攻撃の根拠を「信憑性に欠ける」と発言。後に、ニューヨーク市当局は3日前から脅威を把握し、発表の前に地下鉄周辺で警官を増員していたことが判明。地元テレビ局の報道によれば、テロ情報について市当局者は数日前から周知しており、ワシントンとニューヨークの「政府上層部から」発表を遅らせるよう指示されていたと暴露された。(この件でNY在住のボーイ・ジョージが八つ当たり捜査を食った
警告発表から4日後、マイケル・ブルームバーグNY市長が「テロ脅威の時期は去ったので、保安活動を少しづつ緩和させる」と語る。ニューヨークポスト紙からNBC放送まで、警告の元になった情報源の申告がでっち上げであるという関係者の発言を引用して報道、或るテロ対策当局者はNYタイムズ紙に「具体的なテロ情報はなかった」と言っている。

オーバマンの解説とまとめ:
簡単にいって、偶然は偶然でしかありません。テロ事件や警報を、全米各地のウォルマート新規開店日に関連づけることもできるかもしれません。これらの偶然は、脅威が現実化していないという点で、政府の対応が正しく機能しているということになるでしょうか?あるいは、政府が国民に告知するタイミングと方法を未だ会得していないことになるのでしょうか?

戦争の不透明さ(fog of war)に加えて、単に悪意のない『情報の不透明さ(fog of intelligence)』ということなのでしょうか?

しかし、妥当な因果関係が実証できないとしても、連続するこれらの事件はどれも偶然以上に、この国における疑問を深めることになるでしょう---つまり、どこまでが慎重で、どこまでが疑心暗鬼なのか?どれがテロによる死の脅威で、どれが脅威によるテロなのか?


(番組は以上)


オーバマンが指摘するように、合衆国政府のテロ関連情報の告知が、ブッシュ政権の悪意なしに行われているとしたら、その諜報能力は非常にいいかげんなものといえるだろう。実際、米諜報機関のお粗末な最新事例がまたしても発覚している。

先週10月11日に、米国家情報本部(ODNI)のネグロポンテ長官は、「ビンラディンの副官、ザワヒリがイラクのザルカウィ宛てに出した手紙」を華々しく公開した。すると、直後にアルカイダ広報部(?)は、その手紙が米国情報部によるニセモノであると反論した英訳された手紙をみると、「ザルカウィに宛てた」はずのメッセージの終わりに、以下の記述がある。

「ファルージャに行く機会があったら、アブ・ムサブ・アル・ザルカウィによろしくお伝えください」
アルカイダにミスを指摘されて大慌てのネグロポンテは、その後沈黙を保っている。中東の専門家として有名なミシガン大学のフアン・コール教授は、アラビア語で書かれたこの手紙を分析し、「シーア派の人間が書いた偽造文書」と推定している

Newsweek誌のマイケル・イシコフ記者は米軍のアルカイダ追跡作戦報道を評して「アルカイダのナンバー2ってのは何人居るんだ?」と揶揄している。「テロとの闘い」が混迷する中、米国民の中には「誰が誰を騙しているのか?」という疑念が拡大しているようだ。

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