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2005/12/07

ブッシュ大統領、ヤケクソのニュー・スピーク戦略

「ウィンストン・スミスはいやな風を避けようと顎を胸もとに埋めながら、足早に勝利マンションズのガラス・ドアからすべりこんでいったが、さほど素早い動作でもなかったので、一陣の砂ぼこりが共に舞い込むのを防げなかった。」

「彼は棚から無色の液体が入っている瓶を下ろした。白ラベルには勝利ジンとあった。」

勝利シガレットと書いてあるくしゃくしゃになった紙袋から一本の煙草をつまみ出した。」

---ジョージ・オーウェル『1984年

2005年11月30日に行われたブッシュ大統領の演説は相変わらず退屈な内容であったが、その『新戦略』にはある種の工夫が見られた。ニューヨークタイムズ紙2005/12/04付記事はその工夫についてわかりやすく説明している。以下に記事の冒頭を引用する(強調は訳者)

先週水曜日に海軍兵学校で行われたイラク戦争戦略に関する演説において、ブッシュ大統領が提示したテーマについては疑いの余地はないであろう。演説中に、大統領は『勝利』という言葉を15回使用していた。演台には『勝利計画(Plan for Victory)』という文字が詰め込まれていた。そして、同じ言葉は、『イラク勝利への国家戦略』というタイトルの、35ページの国家安全保障会議書類の中にも溢れかえっている。

1984年』に描かれる世界---ファシズムによる究極の洗脳社会---では、国家の報道(プロパガンダ)を統括する機関は『真理省』(これ自体ニュー・スピーク)であった。では、ブッシュ政権の新たな印象操作戦略を担当しているのは、誰か?ニューヨークタイムズ紙では以下のように説明されている(文中リンクは訳者による)

ホワイトハウス側の説明では、多くの連邦政府部局が同書類の作成に貢献しているとしているが、勝利というテーマに執拗に焦点を合わせる内容は、ブッシュ政権内に新たに加わった人物の意向が強く反映されている。その人物とは、デューク大学の政治学者ピーター・D・フィーバー。今年6月に国家安全保障会議に顧問として加わった同氏は、イラク戦争に関する世論の研究に取り組んでいる。

大統領が世論調査を嫌っていることはよく知られているが、2003年と2004年に、フィーバー博士は大学の同僚とイラク戦争に関する世論の分析をブッシュ政権内部で披露している。博士によれば、犠牲者が山積になっていても、アメリカ国民は一定の条件で戦争支持に傾くという。その条件とは、博士の説によれば、最終的に戦争で勝利すると国民が確信できる場合である。

他の政治学者が首を傾げることもあるその研究成果は、ブッシュ大統領の演説や戦略にある勝利というテーマの背後に明確に存在している。戦略を記した書類の目次にも、勝利という文字は6回も登場しているが、これには『米国民の興味の核心はイラクでの勝利』『我が国の勝利戦略は明快』等の章タイトルも含まれている。

「これはテロとの闘いに関わる国防総省の戦略書類とはまったく違うものです」フィーバー博士の大学の同僚で、『戦争犠牲者とアメリカ国民の忍耐に関する研究』の共同執筆者、クリストファー・F・ゲルフィは言う。「国防総省は、大統領に演説をさせたり、テロと戦う方法を記した書類をホワイトハウスのWebサイトに掲載する必要などありません。この書類は、アメリカ国民の世論を焦点にしたものなのです。」

ゲルフィー博士は、同書類についてフィーバー博士とは議論していないという。フィーバー博士はインタビューを辞退している。

43歳のフィーバー博士は、海軍予備役少佐でもあり、これまでに市民と軍部に関する3冊の本を書いている。同氏はクリントン政権時代の1993年から94年にかけて、国家安全保障会議のスタッフとして勤務していたが、クリントン他民主党員に関しては批判的で、ブッシュ大統領寄りの文章をタイムズ紙や他の出版物に書いている。

昨年には、ワシントンポスト紙の論説欄で、イラク侵攻決定が疑念にさらされているブッシュ大統領について、フィーバー博士はこう評している:「決意の固い最高司令官として、政治状況と軍事的抵抗に関わらず、理念と決意を下に行動している。」
(以下略)


つまり、大統領にアドバイスする立場にある専門家は、熱心な大統領支持者でもあるわけだ。果たしてこれで冷静な現状分析が可能だろうか?

ところで、ナイトリッダー紙の最新報道によれば、ブッシュ政権下の米国務省は、世界各地の米大使館が主催するイベント・講演に出席するアメリカ人を、公務員はおろか大学教授等の専門家、その他知識人に至るまで、ブッシュ支持派に限定しているという。まあ、武部幹事長なら大喜びだろうが・・・

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