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01/25/2006

ペンタゴン、軍人家族に『笑顔』を提供

笑顔の国防総省長官会見

「愛国的アメリカ人なら笑って笑って!」

イラク駐留米軍兵の戦死者はすでに2,200人を超えた。

イラク駐留米軍基地で兵士の洗濯・入浴用に使用されている水は、ユーフラテス川の水に比較して2倍ほど汚染されているという事実を、水を配給しているハリバートン子会社ケロッグ・ブラウン&ルート社は黙っていた。(汚染の事実は元従業員の内部告発で発覚した。)

「ブレアに騙された」と怒る英軍イラク帰還兵達は、女王から授与された戦時勲章をイーベイで売り出している

ノーベル経済学賞を受賞した経済学者ジョセフ・E・スティグリッツは、米国政府がイラク戦争で将来抱える総費用は2兆ドル(約229兆1,170億円)を超えるだろうと警告している

CBSニュースの元名物アンカーで『アメリカの良心』と呼ばれるウォルター・クロンカイト氏は、ベトナム戦争時代と同じように、イラクからの即時撤退をテレビで呼びかけている

・・・2006年になっても、イラク戦争に関する暗いニュースが続いているが、USA TODAY紙の報道によれば、悪い報せに怯える軍人家庭のために、米国防総省は風変わりな対策を開始しているらしい。それを伝えるUSA TODAY紙2006年1月12日付記事を以下に抜粋する:

ペンタゴンから軍人家族へ:「さあ、笑って!」(Pentagon to families: Go ahead, laugh)

by グレッグ・ゾロヤ記者:USA TODAY紙2006年1月12日付記事


イラク戦争のストレスが深刻化する現在、ペンタゴンは兵士の家族に奨めている。「笑い方を学習してください。」

州兵の家族達は、国防総省の笑顔教官の指導に従って、ペンギンのように歩き、ライオンのように笑い、「わっはっはっは」と声に出す訓練をしている。

これはジョークではない。

「機会があるごとに笑いますよ」元陸軍大佐で笑顔教官を務めるジェイムズ「スコティ」スコット氏は言う。「私がペンタゴンで歓迎されてるのは、あそこで生きるにはおおいに笑いが必要だからです。」

57歳のスコット氏は、医療としての笑いを推進するオハイオ州の『世界笑い振興会(World Laughter Tour)』から『笑い訓練スペシャリスト』の認定を受けている。同団体は、笑いを声に出すことは身体の免疫システムを向上させ、ストレスホルモンを減少させるという科学的研究を宣伝している。

国防総省広報官エレン・クレンキ中佐の話によれば、ペンタゴンは同研究に取り組んでおり、スコット氏の技術を評価している。「訓練に彼を派遣しています」中佐は言う。

笑いの訓練プログラムはスコット氏のアイデアによるものだ。同プログラムは米軍にとって実質的に何の費用も生じていない。というのも、スコット氏はすでに軍家族支援政策の責任者として、全米を巡業しているからである。

スコット氏は、これまでにアラスカ、カンサス、オクラホマ、テキサス、アイダホの州兵家族会で訓練を実施しており、今後もミシガン、ペンシルバニア、フロリダ等で同様の業務をする予定であるという。もう1人の笑いの訓練士も、ノース・カロライナで訓練に取り組んでいる。
(中略)


「笑う門には福来る」とペンタゴン関係者が本気で信じているのかどうかは不明だが、『笑いの訓練』の評価は上々らしい。同記事は以下のように伝えている:

「理由なしに笑うというのが指導方針です。それが、この訓練プログラムが軍人家族に非常に効果的な理由のひとつです」スコット氏は言う。「家族の方々は多くの心配事や、多大な不安にさらされてますからね」

スコット氏が言うには、参加者達が可笑しさを感じる中、訓練を止めた参加者はわずかに1人だけいて、その海兵隊上級曹長は、スコット氏言うところの『不快な笑い』を残して教室を去ったという。

退役軍人を夫にもつメアリー・フランセス・ブースは、昨年に笑いの訓練を受け、今では熱心な愛好者である。

メアリーの夫は、民間請負業者として働くためにアフガニスタンに旅立っていった。日曜日に夫をボイシ空港で見送った時、彼女と二人の娘、10歳のメーガンと8歳のサラは泣き崩れていた。その後、メアリーは笑う訓練のひとつを娘達に呼びかけた。

「娘達は“ママはまた笑う練習してるわ”と思って、私に呆れたでしょうね」メアリーは言う。「でも、それで少しは気が晴れたんですよ。」
(以上)

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01/16/2006

ベトナム、イラク、そしてヒュー・トンプソンの死

ベトナム戦争時に米軍が行ったソンミ村虐殺事件で、同僚の砲火から住民を救った米軍兵士、ヒュー・トンプソン氏が死去した。今回は、訃報を伝えるAP通信2006年1月7日の記事以下に全文翻訳して掲載した。

米軍による市民虐殺を命がけで止めた米陸軍兵ヒュー・トンプソン氏は、戦場から帰還し故郷に戻ってからは、見知らぬ米国市民からの殺人脅迫電話に怯えることになった。自宅玄関にバラバラにされた動物の死骸が置かれることもあった。客で一杯の店に行けば、5分後には彼とバーテンダーの二人きりになったという。2004年5月のCBS放送『60ミニッツ』で、トンプソン氏は虐殺事件で生き残ったベトナム住民と対面を果たしている)

サイゴン陥落から30年以上経過した現在も、ベトナム戦争関係の報道は続いている。今年始めには、ラオスの共産勢力パテト・ラオと敵対したモン族を支援し、終戦後からラオス政府にずっと拘束されていた4人のCIA工作員が、ようやく釈放されたという報道があった。

昨年末には、40年前にベトナム従軍を逃れ軍を脱走し、偽名を使ってフロリダ州で中古車販売業を営んでいた元海兵隊員が、『米軍脱走兵逮捕部隊』によって拘束、起訴されている(一方で、ホワイトハウスに居る脱走兵についてはお咎めナシということだ)

さらに、ベトナム戦争激化のきっかけとなったトンキン湾事件---停泊中の米軍艦が北ベトナム軍により攻撃されたという騒動---が米国側による捏造であったという疑惑は、昨年機密解除された公式文書により正式に確認されている。具体的には、当時北ベトナム軍の通信を傍受していたNSA(米国家安全保障局)が、傍受内容を意図的に歪曲していたというのが真相であると、2001年にNSAの極秘内部調査を担当した歴史家が明かしている

NSAによって歪曲された情報は、当時の大統領リンドン・ジョンソンによって議会に提示され、ベトナムへの積極軍事介入の口実となり、米国は泥沼の戦争に嵌っていった。

一方で、ジョンソン大統領がベトナム戦争を拡大させる以前、前任者であるケネディ大統領は、1962年から63年にかけて、北ベトナム側と第三国を通じて連絡をとり、外交手段による紛争解決の道を探っていたという歴史秘話も、新たに公開された文書で明らかになっている

1963年11月、ケネディは暗殺された。

ケネディの後任となったジョンソン大統領は、出身地テキサスの軍事兵站企業ブラウン&ルート社から選挙資金を現金で受け取っていたという。そのブラウン&ルート社は、現在ではチェイニー副大統領がCEOを務めたハリバートン社の子会社として、米政府のイラク戦争兵站業務を大量受注している。

開戦の口実から泥沼化、背後に蠢く組織まで、ベトナム戦争とイラク戦争はとても似通っているわけだ。

ベトナム戦争では、22万4,000人の南ベトナム軍兵士、110万人の北ベトナム軍兵士、200万人のベトナム市民が死亡したと言われている。米軍の戦死者数は5万8,245人で、米軍兵士1,800人以上が現在も『戦闘中行方不明(MIA)』。

また、ベトナム戦争退役米軍人の内約85万人が、現在も戦傷障害年金を受け取っており、合衆国政府の負担する年金費用は年間86億ドル(約9,826億円)となっている。

ベトナム・ミライの英雄ヒュー・トンプソン・ジュニア氏が62歳で死去

by ジェシカ・ブジョール記者:AP通信2006年1月7日付記事

ベトナム・ミライ地区(ソンミ村)の大量虐殺事件で、米兵の虐殺行為からベトナム市民を救った元陸軍ヘリコプターパイロット、ヒュー・トンプソン・ジュニア氏が1月6日早朝に死去した。62歳だった。

1968年に発生した同虐殺事件で、トンプソン氏が果たした役割は長い間知られずにいた。トンプソン氏は米ルイジアナ州アレクサンドリアの退役軍人医療センターで死亡したと、同病院のジェイ・デワース広報官は伝えた。

トンプソン氏の伝記作家で近親者であるトレント・アンガーズ氏の話では、トンプソン氏の死因はガンであったという。

「彼等は助けを求めて私を見つめていた。背を向けて去ることはできなかった。」AP通信が1998年に行ったインタビューで、トンプソン氏は当時を振り返って話している。

1968年3月16日の早朝、ベトナム・ミライ地区の村落で、トンプソン氏と、同乗していた射撃手ローレンス・コルバーン氏、グレン・アンドレオッタ隊長の3人は、米軍兵が地元市民を虐殺している場面に遭遇した。

トンプソン氏らは、米軍兵の砲火の前にヘリコプターを着陸させて、ベトナム市民を避難させ、虐殺を止めさせるために、米軍の地上部隊へ銃を向けた。

コルバーン氏とアンドレオッタ隊長は、米軍地上部隊の指揮官に向かって行くトンプソン氏を援護した。トンプソン氏は地下壕に隠れた市民を説得して避難させ、負傷した子供を病院に運ぶために再度ヘリコプターを着陸させた。トンプソン氏らの行動により、ミライ地区に休戦命令が発令されることになった。

1998年、米陸軍は、戦闘行為以外の勇敢な行いに対する陸軍最高位の勲章である「軍人勲章」を、トンプソン氏ら3人に贈呈し栄誉を讃えた。ミライの虐殺事件から3週間後に戦闘で死亡したアンドレオッタ氏は、死後に叙勲することになった。

「彼等の行為を導いたのは、自らの身を危険に晒しても正しいことをするという能力である」1998年の勲章授与式でマイケル・アッカーマン陸軍少将は言った。「(3人は)全ての兵士が従うべき基準をもたらした。」

虐殺を指揮したウィリアム・L・キャリー小隊長は、有罪判決を受け終身刑を宣告されたが、当時大統領だったニクソンの恩赦により、3年間の執行猶予に減刑された。

セイモア・ハーシュ記者は、フリーランスのジャーナリストとして1969年に虐殺事件を暴露しピューリッツア賞を受賞した。ミライの虐殺事件は、合衆国内で反戦気運が湧き上がる契機となる重要な出来事となった。

ハーシュ氏はトンプソン氏について「善人の1人」と評した。

「どれほどの勇気が彼をその行為に駆り立てたのか、想像もできない。」ハーシュ氏は言った。

ハーシュ氏の報道においてトンプソン氏の物語は重要な部分を占めており、議会でも証言したが、ミライの虐殺を終わらせる際にトンプソン氏が果たした役割については、ドキュメンタリー作品中のインタビューを観たクレムソン大学名誉教授のデビッド・イーガン氏が、1980年代後半に署名運動を率いて1998年の叙勲を導くまで、ほとんど知られることがなかった。

「彼こそ、勇気ある行動によって米軍に道徳と威厳を与えた人物なのです。」チューレーン大学歴史学教授ダグラス・ブリンクレイ氏は評した。

トンプソン氏は、彼を非国民と見なす人々によって、長い間酷く冷遇されてきた。「ミレイ虐殺で唯一罰せられるべき兵士はトンプソン自身だ」という怒れる議員の発言を、トンプソン氏は回想していた。

時が過ぎて、トンプソン氏は次世代の兵士達の模範となった・・・米陸軍士官学校で行動科学と指導学部門の責任者を務めるトム・コルディッツ大佐は言う。大佐によれば、年に一度、トンプソン氏は同校で自らの経験を講演していたという。

「トンプソン氏のおかげで生き延びた人は、ベトナム以外にも大勢いるでしょう。彼の話を聞いて、自らの部隊を統制できた者もいるのです。彼が実際にどれだけの命を救ったのか、我々は決して知ることはないでしょう。」
(以上)

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01/02/2006

「新ニクソンとしてのジョージ・W・ブッシュ」byジョン・ディーン

ブッシュの違法盗聴問題を語る場合、ジョン・W・ディーン以上の適任者はいないだろう。法律学者である同氏は、ニクソン大統領の法律顧問を務め、ウォーターゲート事件ではホワイトハウスによる捜査妨害に加担し、有罪を宣告され4ヶ月の禁固刑を受けた人物である。

合衆国史上最初の大統領弾劾劇の渦中に居た当事者として、また合衆国法の専門家として、ディーンはブッシュの弾劾を確実視し、ブッシュ政権に法律上のアドバイスをする司法省職員ジョン・ヨーの能力を疑問視している。今回は法学情報サイトFindLawに2005年12月30日付で掲載されたジョン・W・ディーンのコラムを以下に全文翻訳した(法学者であるヨー氏は、チェイニーやラムズフェルドも所属した極右シンクタンク・AEI(アメリカン・エンタープライズ研究所)に客員学者として所属し、ブッシュ政権のテロ容疑者拷問戦略のために独自の法解釈をアドバイスしている。)



さて、2006年になって、ブッシュ政権は年初からいよいよ窮地に陥るだろう。下院院内総務でブッシュの親友トム・ディレイ議員が起訴された『共和党スーパーロビイスト』ジャック・エイブラモフ事件の捜査は、主犯のエイブラモフ氏が司法取引に応じ事件の詳細を証言することになり、捜査は米議会全体に拡大される予定だ。大学時代から共和党活動を通してエイブラモフと知り合った親友カール・ローブにとっても困った事態になるだろう。

2006年は上院・下院議会選挙の年だが、エイブラモフ事件との関わりが注目されるランディ『デューク』カニンガム事件(国防企業と議会の賄賂スキャンダル)捜査の拡大も共和党には大打撃となるだろう。(ところで、エイブラモフ事件と911テロ主犯モハメド・アッタには意外な接点が見つかっている。なんという偶然!)

ヴァレリー・プレイム事件(プレイムゲート)捜査も、大統領側近の起訴へと近づいている。同事件の捜査継続により、イラク戦争の開戦口実をめぐるブッシュ政権の情報操作疑惑(ダウニングストリートメモ事件)の調査を求める声はより大きくなるだろう。2004年大統領選挙におけるオハイオ州不正調査も含め、疑惑の追求を続けるジョン・コンヤーズ米下院議員の努力が報われる時期がくるかもしれない)

スキャンダル捜査でがんじがらめのブッシュ政権は、どのような脱出策を用意しているだろう?・・・仮に国内テロ事件が再び発生したら、違法盗聴は正当化され、政府内の内部告発者は全て処罰対象となり、支持率を回復したブッシュはテロ発生の責任をイラン・シリアに擦り付け、次の戦争を開始するだろうか?・・・そんな最悪のシナリオが実現することのないように祈りたい。

新ニクソンとしてのジョージ・W・ブッシュ:違法な盗聴、そして弾劾

国家安全のためなら大統領は議会法を違反し得ると両者共に主張

by ジョン・W・ディーン:FindLaw2005年12月30日掲載(commondream転載)


2005年12月16日金曜日、ニューヨークタイムズ紙はジェイムズ・ライセン記者とエリック・リヒトブロー記者の手による重要なスクープ記事を掲載した。同記事によれば、ブッシュ大統領は、外国諜報活動偵察法(Foreign Intelligence Surveillance Act:FISA)で定められた手続きを無視し、国家安全保障局(National Security Agency:NSA)によるアメリカ国民に対する令状なし盗聴を承認したということだ。

同記事には、ホワイトハウスの違法行為に関する驚くべき情報が綴られている。それによると、2002年のある時期から、ブッシュは大統領特別命令として、合衆国内と諸外国の間で交わされている電話や電子メールの内、アルカイダと直接的、あるいは間接的に関係していると信ずる通信の探知と傍受をNSAに承認したという。

スクープ公開当初、ブッシュとホワイトハウスは、大統領が法律を無視したかどうかについて口を閉ざし、肯定も否定もせずにいた。ジム・レーラーにインタビューされた際も、ブッシュは話題について話すことを拒否していた。

その後、12月17日土曜日に、大統領ラジオ演説で、ブッシュはタイムズ紙の記事内容が正しいと認めた。そんなわけで、大統領弾劾の要件となる重罪を犯した事実を、彼は認めたのである。

令状なしの盗聴が法律違反であり、弾劾されるべき犯罪であることに議論の余地はない。なにしろニクソンも、違法な盗聴行為によって合衆国憲法第2条にある責任を問われた際、やはり国家安全のための盗聴と主張していたのだ。

こうした二つの違法行為の相似性は、以前に私のコラムで話題にしたように、両政権の憂慮すべき相似性が継続していることをはっきり示している。

実際、今回の件で、ブッシュはニクソンを超えてしまった。ニクソンの違法な盗聴行為は限定的だったが、ブッシュのそれは現在も進行中であり、盗聴範囲もはるかに広範に及んでいる可能性がある。最初のスクープでは、NSAの盗聴対象は国内と国外を結ぶ海外通話に限定されており、一度に500通話を超える盗聴は行われていないとされていた。ところが、最新の報道によれば、NSAは文字通り数百万件の通話を『データ集積』しており、電話会社の協力の下で、海外通話と国内通話の流れを跨って盗聴しているとみられている。

要するにこれは、おおがかりな、ビッグブラザー的電子監視である。

国家安全と密接に関係していることを理由に、タイムズ紙は1年間もこの記事を公開しなかった。そして今、同紙はその記事を解禁し、ブッシュは記事内容を漏洩した情報源の捜査を命じている。大統領は、監視されていないと自信を持っていた人々は、その確信を失い、他の通信手段を模索するだろうと示唆する。暗号化や符号化以外に、どのような方法があるか想定するのは難しい。

そのような情報漏洩元の捜査は皮肉でしかない。情報漏洩の結果として、ブッシュ自身の違法行為が発覚したからだ。犯罪者としていぶり出すことにより、ブッシュは裏切り者を見つけ出そうとしている。


ニクソンの盗聴と議会の対応

ニクソンはFBIを使って、国家安全保障会議メンバーの内5人と、2人の報道関係者、そして国防総省の職員二人を盗聴していた。これらの人々が盗聴された理由は、ベトナム戦争を巡るニクソンの計画(当時は戦争中だった)が、ニューヨークタイムズ紙のトップを飾ったからだ。

盗聴行為についてニクソンは、国家の安全を理由に正当化した。情報漏洩の防止は、国民だけでなく、アメリカの敵も計画を知ることになることを防止できるというのだ。しかし、盗聴から得られた情報の利用は、そうした正当性を超えていた。数件のスキャンダラスな断片情報が、政治目的に利用された。それ故に議会は、そうした盗聴活動が、それにより集積された情報の悪用と一体化しており、弾劾されるべき違法行為とみなしたのであった。

ニクソンの辞任に従い、フランク・チャーチ上院議員は盗聴活動による情報の悪用について調査する委員会を設置した。電子盗聴に関する同議員の報告が契機となって、外国諜報活動偵察法(FISA:Foreign Intelligence Surveillance Act)が提起されたのである。同法により、電子盗聴への制限が生まれ、司法省内に秘密法廷(FISA法廷)が設立され、その秘密法廷は、同法の制限内において、政府機関による盗聴活動申請の許可を行うことになった。

外国諜報活動偵察法の目的が議会の承認しない盗聴活動の抑制だったことは、同法の成立過程を見れば明らかだ。従って、FISA法廷の許可なき盗聴活動をブッシュが承認したことは、違法なのである。


盗聴の是非については議会次第

活動の目的が問題となっているわけではない。テロの可能性については疑いようもなく、いつ発生するかだけが問題なのだ。そうした攻撃を防止することの重要性についても疑う者はない。

今問題になっているのは、目的達成のためにブッシュの選択した手段である。大統領の決断は、単に議会を迂回しただけでなく、この分野ですでに確立済みの法律に違反しているのだ。

現在の議会は共和党の支配下にある。世論調査によれば、アメリカ国民の大半はテロ防止のためなら人権を諦めると回答している。合衆国愛国法(USA Patriot Act)は多数の支持を得て可決した。ブッシュ大統領は、自身が必要と考えた許可を、なぜ議会に求めなかったのだろう?

その答えは簡単に言って、議会が大統領職を点検する時代に、副大統領ディック・チェイニーはフォード大統領の首席補佐官だった頃から変わりないということのようだ。そしてチェイニーは、大統領特権の行使に際して議会法を無視する権限が大統領にあるという彼の考えを強調したかったのだ。ブッシュはチェイニーの計画に沿って行動しているに過ぎない。

ブッシュほど最高司令官としての権限---合衆国憲法第2条に規定される、国家安全の名の下にいかなる行為も許されうるという立場に積極性を持った大統領は過去に例を見ない。もっとも、私の元上司リチャード・ニクソンも似た姿勢の持ち主だったが。


国家の安全における大統領の権限:ニクソン支持派の視点

国家安全の名の下に大統領が行う行為は、たとえ法律を犯していても違法ではない、というニクソンの辞任後の主張は有名である。

ニクソンの考えは(彼は法に精通していた)、市民戦争時代のエイブラハム・リンカーンの先例によるものである。ニクソンは、リンカーンを引用しながら、インタビューで言った:「憲法違反の恐れがある行為も、憲法と国家の保全を目的に行われた場合は、合法たり得るのです。」

インタビューをしたデビッド・フロストは、ニクソンが違法な盗聴の標的としていた反戦活動参加者達を南軍に喩えるのは無理がある、と即座に反論した。ニクソンはそれに応えて、「ベトナム戦争によってこの国はイデオロギー上分断されており、リンカーン大統領時代に市民戦争によって国が分断された頃に等しいのです。」と反論した。脆弱な答弁だが、彼としては精一杯であろう。

上院政府諜報活動調査特別委員会(委員長に因みチャーチ委員会という呼び名で知られる)において質問された際にも、ニクソンは同様の主張をした。特に、ニクソンが委員会に対して言ったのは、「1969年、私の政権時代、令状なし盗聴は政府が行ったとしても違法ですが、国家安全上の利益のために大統領により決定された場合は合法なのです。それを支持する法的根拠もありまして、例えば、カッツ対合衆国政府の裁判の際、ホワイト判事は同意意見を唱えています。」(カッツ事件により、盗聴行為とは個人の家宅捜査と同様に合衆国憲法修正第4条における『捜索押収』を構成するという意見が確立され、それ故に合衆国憲法修正第4条に規定される令状の要請が、盗聴についても適用されることになる)

さらにニクソンは、まるで予感していたように、そして合理化理由をブッシュに与えるかのように書いている:「現在も、そしておそらく将来も、我が国の安全上の利益のために大統領が合法的に行為を承認できる状況でさえ、人々に承認され、あるいは別の状況で大統領により承認されていても、違法とされてしまう。」

議論上、仮にニクソンの論理を受け入れるにしても、ブッシュが直面している「状況」は令状なし盗聴を正当化できる類のものだろうか?その答えはノーであると私は信じる。


ブッシュの令状なし盗聴行為は正当化されるか?乏しい説得力

もしブッシュが、2001年9月12日に大統領特別命令を発令し、一時的措置として、議会の承認を保留した場合、そうした状況は彼の主張に沿ったものになるだろう。

あるいは、特別に深刻な攻撃の脅威から、特定の捜査において令状なし盗聴を許可する状況にブッシュが追い込まれ、議会の承認を得る時間が持てなかった場合、それもまた正当な事情となるだろう。

しかし、2002年のおおまかな大統領特別命令から数年が経過した現在、その全期間と通して、ブッシュは自身の行為について法的承認の求めを拒否している。さらに、法を無視できるとブッシュが主張するような特殊な状況時における大統領の権限について、議会が明確に制限をしている事実を、大統領が見逃すはずはない。

ブッシュは自身の行為について、ひとつの法的説明を試みているが、お笑い草である。彼によれば、911テロ後に議会が承認したアフガニスタンのタリバンに対する武力行使の権限は、FISA適用の例外に関しても暗黙に許可しているというのだ。

正常な神経を持った議員であれば、軍事行動の承認がそのような許可を派生させるとは信じていない。法科1年目の学生でも間違ってそのような主張を行う者はいないだろう。もはや拡大解釈どころではなく、馬鹿げている。

しかし、ブッシュの自己弁護の核心は、まさにニクソンの主張に依存している。つまり、大統領は単に、憲法第二条に定められた最高司令官としての権限を行使しているに過ぎないというものだ。これもまた、心もとない反論である。その主張を書いたジョン・ヨーは利口だが、未熟で極端に党派的なボールト法科学校の若い教授で、政府機関を頻繁に出入りしている人物である。

ヨーの仕事---最近出版された書籍---に具現化された欠点と誤りを見るには、ジョージタウン大学法科学院教授デビッド・コールの書評にある分析を読めば事足りるだろう。コールは当該分野の法に何年も取り組んでおり、ヨーよりもはるかに深く探求している。

ヨー教授の法的考察がファンタジーに縁取られたものであることがわかったので、コール教授の現実世界的分析の結論にある現実的な指摘には感激した。「マイケル・イグナーティエフは書いている:“ただ単に片方の手を後に縛られるだけでなく、その状態で戦うべきであるというのが、まさに民主主義の本質である。民主主義ではその性質上、民主主義故に敵よりも優勢になれる。”ヨーはブッシュ政権に、拘束を解いて法の支配という制約を破棄せよと説得した。おそらくそれが、我が国が優勢になれない理由であろう。」

私が付け加え、勧めたいのは、ダニエル・ベンジャミンとスティーブン・サイモンによる厄介な報告だ。彼等はテロ対策を専門としており、クリントン政権時代に国家安全保障会議のメンバーを務めていた。両氏は最新の著作『The Next Attack: The Failure of the War on Terror and a Strategy for Getting It Right』の中で、テロリストが大惨事をもたらすために利用可能な制度上の抜け穴を塞ぐことにブッシュ政権は完全に失敗したと書いている。イラク戦争はテロ解決にはならない。むしろ、テロリストを生み出し、アメリカの利益を護るための資金を転用させている。

特にブッシュの令状なし盗聴は、効果がほとんど望めないらしい。私が話した専門家達によれば、ブッシュのやり方は、ことわざにあるように、干草の山から針を探すようなものだという。NSAのような洗練されたデータ集積設備も、例えば、認知しない符号は解読できない。従って、符号で通信するテロリストは、仮にデータ集積が及んだとしても、拘束を逃れることができる。

要するに、ブッシュは幸運を願っているのだ。そのようなギャンブルは、露骨な議会法違反の口実とするには不充分に思われる。議会の承認がないまま行動することで、ブッシュは自身の大統領職が未検査であることを強調してしまった。彼自身も、彼の弁護士の視点でも、これは全くの違法である。今やブッシュは、NSAの恐るべきパワーをアメリカ国民に向けて使っているのだ。彼は次にどういう権力を行使するだろう?その際国民は、そして議会は、大統領が新たな権力を実行している事実を、いつ発見することになるのだろうか?
(以上)

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