カテゴリー

アクセスの多い記事

« 「生ける者達を見よ」byボブ・ハーバート | トップページ | ブッシュ地帯を行く(2)NYタイムズ紙のユタ州訪問記 »

2006/06/10

ブッシュ地帯を行く(1)英ガーディアン紙のアイダホ州訪問記

日本人が知らない、アメリカ最深部ブッシュ地帯に関する報道がイギリス・アメリカのメジャー紙で相次いだのでご紹介。今回は、英ガーディアン紙2006年6月3日付け記事を全文翻訳して掲載した。(記事中リンクは訳者による)

アイダホ州、ワイオミング州、ユタ州等の『ブッシュ地帯』では、有権者が政策よりも好感度で政治家を選択する傾向が一層強いらしいが、日本ではどうだろうか。

ブッシュ地帯の中心を旅する:広大なアイダホの地に反戦気分の入り込む余地はほとんどない

by オリバー・バークマン:英ガーディアン紙2006年6月3日付記事


アイダホ州知事で、愛想の良い牧場主であるジム・ライシュ氏は、椅子に座って体を伸ばし、ここ数年間のアメリカについてもうひとつの歴史を語ってくれた。「ハリケーン・カトリーナか・・・連中は全部ブッシュに押し付けたんだ」アイダホ州都ボイシ、乾いた熱風の吹く午後、シャツ姿のライシュ氏は言った。

「アイダホ州の人間から見ると、連邦政府がやってきて何かしてくれるのを座って待ってるのが理解できなかったね。ここでも1976年にダム決壊があったけど、私達は泣き言なんか言わなかった。自分達で道具を持ち寄って、道路を改修して、植樹をやり直して、生活を続けたんだ。それがこの土地の文化さ。水を飲むのに連邦政府の助けなんか待っていられない。アイダホなら、飲料水を売る起業家が登場するだろう。」

これはもちろん、昨年ニューオリンズを襲った災害に関するアメリカ国民大半の見方とは違う。しかしアイダホ州は、左派系ブログで人気を博した呼び名を使うなら、『ブッシュ地帯(Bushlandia)』-山々の連なる西部で、ブッシュ大統領支持率が今でも50%以上ある土地なのである。最新の世論調査では、アイダホ州のブッシュ支持率はトップの52%、ご近所のユタ州、ワイオミング州はそれぞれ51%と50%ということで、ライシュ氏はこれら地域におけるいわば事実上のリーダーなのである。「ブッシュ大統領は歴代で最も偉大な大統領の一人であり、最も勇敢な大統領でもある。」州知事は言う。「国民は彼のハートを心得ているんだ。」

合衆国両岸のリベラル派から見れば、アイダホ州は田舎者の土地で、有名なのはジャガイモ産業と白人至上主義だけである(すでに解散したアーリア民族軍は、同州北部に2001年まで本拠を構えていた。)最近も「家畜との性的関係は今でも頻繁にある」とネイション誌に書かれた。アイダホ人はたくましい独立精神を強調したがるが、田舎者と呼ばれることも気にしないという。「私達の平穏な生活を台無しにするような他所者が来なくなるなら、(悪く言われるのは)大歓迎だよ。」元牧師のブライアン・フィッシャー氏は言った。現在の彼は、熱烈な右翼団体であるアイダホ価値同盟を率いている。

同性婚に反対か、あるいは、特にイラク戦争を支持するという人にとっては、アイダホ州には友人が大勢いる。「或る日、我々の同盟に入りたいという男が居てね。この土地に来るのは初めてということだった」フィッシャー氏は言う。「私は彼の出身地を尋ねた。すると彼はカリフォルニアから来たと言うんだ。なにがアイダホ移住に駆り立てたのか尋ねると彼は言った:“カリフォルニアさ”。」

アイダホ州住民の35%はどの政党も支持しないと回答しており、過去には民主党員を知事に選んだこともある。しかし、民主党の大統領候補については、リンドン・ジョンソン以来支持していない。「そんな昔のことじゃないだろう。」レンタカー店の従業員は冗談半分に言った。「もしこのあたりで民主党に投票したら、撃たれるかもな。」

ブッシュ地帯と他の州との違いは、-あるいはもっと一般的に言うと、熱心な大統領支持層と他の人の違いは-ささいな政策上の違いによるものではない。これは二つの相容れない世界観であり、ひとつの事実についても両者では全く違う意味を持つのである。アイダホ州共和党員にとって、イラクで拡大する暴力は、まさしく同地の苦難の大きさを示すものであり、結果として忠誠度は深まっている。一方で、ブッシュ氏の失敗は、辞任論の論拠となるものではなく、彼の人間的側面を示すにすぎないという。「イラクのような問題に関われば、誰でもその後の展開など予想できないだろう」ライシュ知事は言う。「世間では、国民を拷問したサダムは悪い奴だと言い、今じゃイラク侵攻をしたブッシュを酷いという。さあて、あなたはどちらがいいね?」


熱心な支持者達

ボイシ郊外、兵士への支持を示す黄色いリボンの結ばれた郵便受けが並ぶ通りで、ルーモア・ミル製パン店のオーナーが、問題を一言で説明してみせた。トナ・ヘンダーソンさんが言うには、メディアには左翼のバイアスがかかっており、イラクからの良いニュースは報道されないのだという。

別の側面の情報を発信するために、彼女は自分の店-常連には大勢の州兵達がいる-の至るところに、兵士の写真を掲示している。他にも聖書の一節や、米軍戦車の前で微笑むイラクの子供の写真、そして「命、自由、そしてそれらを脅かす全てを追撃せよ」というポスターが窓に貼られている。

「イラクに行った知人達の中で、誤った理由で派遣されたと言う人とは話したことがないの」ヘンダーソンさんは言う。彼女はブッシュ氏の政策の一部について疑義を呈しているが、戦争については支持している。「彼等は皆言うんですよ。“私達は正しい目的で派遣されて、実際役に立てた。何か問題がれば、また行くでしょう”とね。」

兵士は助けるが戦争には反対という姿勢は好まれない。「ばかばかしいね!」ブライアン・フィッシャーは言う。「それじゃまるで、兵隊達が向こうで何か不道徳なことをしてるのに、それを支持しているみたいなもんじゃないか。それじゃ筋が通らないだろう。」

この環境では、民主党支持者は孤独な存在でしかない。「今でもスーパーマーケットで囁きあってることがありますよ」アイダホ民主党事務局長のマリア・ウィーグさんは言う。「心理的なものだからどうしようもありません。誰も“別の立場”の一員にはなりたくないんです。ここでは、共和党は民主党支持者を敵とする戦略に見事に成功していますね。」

しかし、彼女はライバルを冷笑するのは避けた。「この土地の人々は深く根ざした価値感を持っているので、私達もそれを理解するよう努めています。」ウィーグさんは言う。「こうした無骨な普通の人たちの表情をブッシュは持ち合わせているので、アイダホ住民に響くものがあり、彼が自分達の大統領という理由で大統領支持を固持するという風潮が強いのです。」


バンパー・ステッカー

「様々な視点から物事を見るようになるには、多くの時間が必要になります。仕事を三つ掛け持ちしながら4人の子供を育てるとなれば、そんな時間はありません。そんなわけで、バンパーステッカーのメッセージが効果を発揮するんです。」

全米レベルでは、民主党はアイダホ州で行われているような活動を推奨していない。すでに敗北州と諦め、むしろ周辺の州に力を注ぐべきという見方もある。当然ながら、ウィーグさんは別の見方である『50州戦略』の支持者である。『50州戦略』とは、民主党委員長ハワード・ディーンの進める政策だ。同様の政策を先に進めた共和党は、全米レベルの草の根運動で政策の焦点を経済から道徳観に移行させる長期戦略を実行し、その一貫としてアイダホ州を獲得した。これに対抗するには、同様の戦略を民主党が実行する以外に展望はない。

共和党がこの州を失う可能性が全くないということではない。同地の住民は、共和党の2008年大統領選二大候補であるジョン・マケインとルディ・ジュリアニには今のところ静観している。52%の大統領支持率も、以前から見れば下降している。しかし、ブッシュ氏への好感度は今後も維持されるだろう、とジム・ライシュ氏は言う。

「私の思いつく一番良い実例を教えてあげよう」知事は語る。「ビル・クリントンを憶えているだろう。前の合衆国大統領だ。彼は自分のオフィスで部下に性的な嫌がらせをした。全米の女性団体は彼をやっつけるはずだったが、実際はどうだった?連中は断然大統領支持にまわったんだ。なぜか?あれも大統領のハートを知ってたのさ。ハートだよ。」
(以上)

« 「生ける者達を見よ」byボブ・ハーバート | トップページ | ブッシュ地帯を行く(2)NYタイムズ紙のユタ州訪問記 »

選挙」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/1730/10464438

この記事へのトラックバック一覧です: ブッシュ地帯を行く(1)英ガーディアン紙のアイダホ州訪問記:

« 「生ける者達を見よ」byボブ・ハーバート | トップページ | ブッシュ地帯を行く(2)NYタイムズ紙のユタ州訪問記 »

2016年5月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31