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2006/06/13

ブッシュ地帯を行く(2)NYタイムズ紙のユタ州訪問記

アメリカ最深部ブッシュ地帯に関する報道第二弾は、ニューヨークタイムズ紙に2006年6月4日付で掲載されたユタ州訪問記。これを読むと、アイダホ州とユタ州の保守層がソックリであることが理解できる。(記事中リンクは訳者による)

全米でもっとも保守的な土地のひとつであるユタ州だが、それでも最近では別の兆候も見られる。例えば、州都のソルトレークシティー市長はリベラル派の有名人で、その反戦主張は全米で話題になっている

支持率に関係なく、ユタ州はブッシュを信ずる

by ティモシー・イーガン:ニューヨークタイムズ紙2006年6月4日付記事

ユタ州プロヴォ:

赤い州の中でも最も赤い街、民主党支持者が魂を抜かれたようにスターバックスに集うこの街では、現在でもほとんどの住民がブッシュ大統領支持を貫いている。

大統領が有権者を憤らせる演説をして冷笑を誘う昨今でも、この土地の人々は違った受け取り方をしている。イラク戦争や不法移民問題では意見が分かれるかもしれないが、人間としてのブッシュには誰も反対しない。

「大統領を見るたびに、正しい心の持ち主であると感じます。」プロヴォ在住で22歳の母親、デリア・ランドールは言う。プロヴォは、2004年大統領選挙でケリー候補に11%しか投票しなかった選挙区の中心地である。「私がブッシュを好きな理由は、彼が信心深い人物だからです。このあたりに住む人たちは皆そう感じていますよ。」

こうした有権者達は、ユタ州においてさえ下がり始めている支持率の回復を目指し、共和党の議会支配を死守し、政策を復活させイラク平常を目指す大統領に力を貸す、献身的なブッシュ支持者達の一部である。

この集団は、ブッシュ支持基盤の中でも極めて濃い人たちで、個別の政策課題や政治傾向よりも、全般的な信条や大統領への好感度がその動機となっている。彼等はブッシュ氏の信心に感銘し、大統領が彼等の人生観や価値感を共有していると確信している。強行な外交姿勢も彼等の好みだ。

こうした支持者達は、ほとんどがユタ州、アイダホ州、ワイオミング州などの、ブッシュ支持率が今でも50%を超える土地に集中しているが、アラバマ州バーミンガム郊外や、ジョージア州北西部、フロリダ州ペンハンドル地区でも小集団を形成している。

「イラク戦争には反対だが、ハリケーン・カトリーナの出来事については、まあ、あの失敗は全員の責任ですよ。」プロボ在住の営業部長、ロン・クラフト氏は言う。彼は敬虔なモルモン教徒で、政治的には独立派の超保守主義者であると自身を評している。「私は人間をその性格で評価する傾向にありまして、ブッシュ大統領はレーガン大統領を連想させる人物です。信条の人ですね。」

イラク戦争やハリケーン・カトリーナ、財政赤字などを含め、ブッシュ政権の失敗と認知されているあらゆる出来事は、この強固なブッシュ地帯では別のフィルターを通して認識されている。クラフト氏にはお馴染みのテーマらしく、ニュース・メディアが提示するブッシュ氏のイメージは信頼できないと言う。「メディアはあまりにもネガティブな面を強調しすぎている。」

ブッシュ氏がよく公的に口にする贖罪の体験-中年にさしかかった頃、酒に溺れていた或る日、神に目覚め、政治目標を掴んだという物語は、この土地では他州以上に共感を呼んでいる。この地の人々が主要な問題に目をつぶり、あるいは失策についてブッシュ氏を非難しないのは、彼等がブッシュ氏の性格を好んでいるからだ。

「彼は強くて、迷うことがない。」18歳のジェイレン・オルセンは言う。ニューヨーク州アルバニー出身の彼は、米国最大の宗教関連大学であるブリガム・ヤング大学の新入生だ。「大統領を好きな理由は、彼は家族を大事にするし、結婚は男性と女性の間に限定すべきとしているからです。イラク戦争については、終わらせなければなりませんね。」

ブリガム・ヤング大学に通う別の学生、1年生のダニエリ・プルサイファーは、大統領を全面的に支持している。大統領の行った事で一番好きな政策は何かを尋ねると、彼女は答えに四苦八苦した。

「大統領の行った事についてはよくわかりませんが、私が大統領を好きな理由は彼が信心深いからなんです。それはとても大切なことですよ。」プルサイファーさんは言った。

もっとも信心深い層であっても、全米世論の傾向からブッシュ氏が逃れられるわけではない。

サーベイUSAが5月に公表した全米世論調査は、ユタ州では地元KSLテレビ向けに実施されたが、それによれば、ユタ州住民のブッシュ氏支持率は51%で、46%は不支持だった。(誤差範囲は+-4%)他州で、ブッシュ支持が50%を超える州は、アイダホ州の52%、ワイオミング州の50%である。ロードアイランドやニューヨークでは、ブッシュ支持率は23%まで落ち込んでいる。

2004年度大統領選挙時、ユタ州でブッシュ氏は72%の票を獲得した。それ以降支持率は下降しているが、世論調査によれば、保守派の多くが不法移民問題に憤慨しており、それほどではないにせよ、連保政府の権限拡大を問題視している。

「ユタ州で50%まで支持率が落ちたのであれば、それは共和党にとって危険信号です。」ブリガム・ヤング大学の選挙と民主主義研究センター所長、ケリー・パターソン氏は言う。パターソン氏のオフィスの壁には、民主党がユタ州で勝利した最後の大統領選挙に関する新聞記事が掲示されていた。1964年のリンドン・B・ジョンソン候補勝利の記事である。

それでも、同州の有権者はきわめて信心深く、住民の大半が末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)に所属し、強固な共和党支持層で、ブッシュ氏の票田としては全米のどの土地よりも根が深い。

この地においては、宗教と政治的視点が同一であることは、調査が示している。ユタ州は全米で最も高い出生率を誇り、住民の平均年齢も若い。この州の有権者は概して他州よりも教育程度が高く、毎年およそ6万人がモルモン教布教のために海外に派遣され、別の世界観を獲得することになる。

プロヴォは、ブリガム・ヤング大学周辺に10万人ほどが暮らす富裕な土地で、住民の10人中8人は正式な共和党員である。昨年度、無党派のベイエリア有権者調査センターの調査により、プロヴォは全米で最も保守的な街に認定された。

「ここの住民は信心、家族、自由に傾倒しており、それが一貫したジョージ・ブッシュ支持へと繋がっているのです。」プロヴォ市長ルイス・K・ビリングス氏は語る。

「ここでは皆、ジョージ・ブッシュ氏の仕事振りを非常に評価しています。」ビリングス氏は言う。「大統領の政策はほとんど支持できます-不法移民政策以外はね。」

インタビューでは、有権者達は同意できない政策がありながらも、様々な言葉で大統領支持を主張した。

「私は大統領の正直さが好きなのです。」3人の子を持つ母、アリソン・ウィルキーは言う。

しかし、ユタ州の政治的気質を支配する同じ宗教的視点から、ブッシュ氏に疑問を抱く者もいる。

教会の多い同州では、人々は常に倹約、均衡財政、家族を基にした政策決定の大切さを学ぶことになる。記録的な財政赤字、連邦政府権限の大幅な拡大、「落ちこぼれゼロ法」施行による連邦政府の地方教育介入などの問題により、この国が間違った方向に向かいつつあると懸念する人もいる。

「倹約については、清教徒的気質がありますから、財政赤字解消は大きなテーマとなっています。」ユタ州共和党委員長のジョセフ・A・キャノンは言う。「我々共和党が政府の全てを仕切っているのに、なぜ未だに財政赤字が解消しないのか、皆が不思議に思っていますよ。」

民主党員によれば、今年の世論調査でユタ州ほど票が動いた土地は他にないと言う。今年の春から、ブッシュ氏の支持率は15ポイントも低下しているからだ。ユタ州民主党のウェイン・ホーランド委員長は言う:「この土地の住民は何処よりも大統領に寛容で信心深いですが、一度人気が落ち始めると一気に暴落しますよ。」

それでも、ユタ州の民主党支持者の多くは、自身の政治観を隠しているという。

「政治の話はしませんね。皆偏ってますから。」3人の子を持つ母、サラ・ルーカートは言う。彼女はモルモン教徒で、シカゴ、ポートランド、サン・フランシスコを転々とし、10年ぶりにユタ州に戻ってきたばかりだ。「なにしろ、全員ブッシュ支持ですからね。」
(以上)

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