クルーグマン:「愚か者の大行進」
経済学者ポール・クルーグマン教授のタイムズ紙連載コラム2006年7月17日付記事を以下に全文翻訳して掲載。
愚か者の大行進(March of Folly)
by ポール・クルーグマン:ニューヨークタイムズ紙2006年7月17日付コラム
歴史から学ばない者はそれを繰り返す運命にある-中東危機に関して意見表明している人々の顔ぶれは、数年前からほとんど同じなので、思い出話をするのも良い考えだろう。以下に、そうした人々の発言とその時期を並べてみた:
「(イラク侵攻により)世界経済には素晴らしいことになる・・・石油は1バレル20ドルになるだろう。」
-2003年2月、ルパート・マードック(FOXニュースを抱えるニューズコーポレーション社会長)の発言
「中東紛争により石油が1バレル78ドルと記録的な上昇」
-2006年7月14日のFOXニュース報道
「ブッシュ政権の予算管理担当官が本日公表した見積によれば、イラク戦争費用は500億ドル(約5兆8,185億円)から600億ドル(約6兆9,804億円)の間で収まるもようで、ローレンス・B・リンゼイ前大統領経済顧問の見積もった1,000億ドルから2,000億ドルという金額は行き過ぎであると主張している。」
-2002年12月31日付ニューヨークタイムズ紙報道
「予算管理局の見積によると、2003年3月のイラク侵攻以来、イラク国内の軍事活動に割り当てられた費用は2,900億ドル(約33兆7,386億円)で(中略)追加費用として2007年から2016年の間に、楽観的な予測値では総計2,020億ドル(約23兆5,031億円)、別の予測によれば4,060億ドル(約47兆2,496億円)が必要となるとみられている」
-2006年7月13日、米連邦議会予算事務局の発表
「イラクでの治安活動の必要性はバルカン半島での歴史的経験よりもずっと低いものとなるだろう。ボスニアでは内乱で大量の流血と恒久的な亀裂を生んだが、過去にイラクで民兵同士が争ったという記録はない。」
2003年2月27日、ポール・ウォルフォウィッツ(当時国防副長官、現世界銀行総裁)の発言
「バクダッド西部地区は爆撃と殺戮で馴染み深いが、これまでの抑制は「民族浄化」の狂乱によってすっかり消失してしまった。シーア派民兵はかつてスンニ派が支配した地区を荒らしまわり、スンニ派民兵は復讐の準備をしている。モスクは攻撃対象となっている。無実の市民が多数殺されており、その死体は路上に放置されている。」
2006年7月14日、英タイムズ紙の報道
「今週始めに、私は自由で民主的なイラクの首都、バグダッドを訪問した。」
-2006年6月17日、ブッシュ大統領
「人々の暮らしはサダム時代と変わらないか、悪くなった。(中略)我々がサダムと戦った理由はまさしくそれで、現在はそれと全く同じ状況だ」
-2005年11月、ブッシュ大統領によって選出され、サダム体制崩壊後最初のイラク首相だったアヤド・アラウィ氏の発言
「イラク新政府は優秀な指導者であるマシュハダニ氏を議長に迎えた。彼は政治目的で暴力を使うことを拒否している。新たに結成された政府において傑出した役割を与えられ、その指導力と勇気を示している。」
-2006年5月22日、ブッシュ大統領
「一部の人々は“イラク人は斬首、誘拐や殺戮をしており、女性の誘拐までしている”というが、そうした活動をしているのはイラク人ではない。そういう行いをしているのはユダヤ人か、その息子たちである。」
-2006年7月13日、新生イラク議会議長マフムード・マシュハダニ氏の発言
「国民の皆さん、我々はイラクで勝利できるだけでなく、実際に勝利に向かっているのです。」
-2005年12月18日、ブッシュ大統領
「負けているとは思っていない、と言うことがその回答になると思う。」
-2006年7月14日、ピーター・シューメーカー陸軍参謀総長、アメリカはイラクで勝利できるかどうかを問われた際の発言
「イラクの体制変革は多くの利益を地域にもたらすことになる。過激派はその聖戦政策を再考することになる。穏健派が活気を取り戻し、イスラエルとパレスティナの和平プロセスを前進させる我が国の能力を強化するだろう。」
-2002年8月26日、ディック・チェイニー副大統領
「ブッシュ-彼の眼前で世界が崩壊していく。彼の単純な夢はウィルソン派の災難だ。」
-2006年7月24日号、ニューズウィーク誌
「ブッシュ大統領を信頼しない民主党員は、彼が今後3年間をさらに最高司令官として君臨し、戦争に関しては、我が国が危機にある時に大統領の信頼性を傷つけたと認識すべき時期だ。」
-2005年12月6日、ジョセフ・リーバマン議員(コネチカット、民主党)
「失敗した外交政策は支持できない。和平よりも戦争を起こすほうがしばしば簡単であるとは歴史も示すとおりだ。この政権はまさにそれを学んでいる最中なのだ。」
-1999年4月28日、トム・ディレイ議員(テキサス、共和党)反ミロシェビッチ(当時のユーゴスラビア大統領)大会における発言(当時のクリントン大統領がユーゴスラビア紛争に軍事介入した件を批判したもの)
(以上)
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