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2006/08/15

クルーグマン:「恐怖への期待」

経済学者ポール・クルーグマンのニューヨークタイムズ紙2006年8月14日付掲載コラムを以下に全文翻訳。(文中リンク・脚注は訳者による)

恐怖への期待(Hoping for Fear)

by ポール・クルーグマン:ニューヨークタイムズ紙2006年8月14日付コラム


9/11同時多発テロ事件から二日後、議会の職員の話から、共和党議員達がすでに悲劇に乗じて企業と富裕層向け減税法案を推進させるつもりでいることを知った。次の日、私はそのことをコラムで「星条旗に身を包み、党派的な議題を執拗に追求する政治家達は真の愛国者ではない。」と警告した。

読者からの反応は凄まじいものだった-政治家達への憤怒ではなく、政治家への怒りを示唆した私に対する憤怒である。「幼い息子にどう説明すればいいのか?」そういう記者もいた。

今頃、あの記者は息子に何と説明していることだろうか。

今では、ブッシュ政権と議会の仲間達は、テロの脅威を、対処すべき問題としてではなく利用すべき政治的機会と早い時期から捉えていたことは誰の目にも明らかだ。最新のテロ計画の発覚は、ブッシュ政権のテロに対する無責任さと皮肉さをより鮮明にしている。

無責任:実際にテロの脅威から米国本土を防衛する場合、ブッシュ政権は常に予算を渋っている。テロ対策専門家達が液状爆発物の危険性について随分前から認知していた件は今や誰でも知っているが、ブッシュ政権は現在に至るもその脅威に全く対処しておらず、その脅威から国民を護る代わりに資金を他に流用させている。AP通信によれば、「英国でテロ計画が進行する頃、ブッシュ政権は密かに新型爆発物の探知技術開発に割り当てた予算600万ドルを却下しようとしていた。」

皮肉:共和党員はいつも政敵がテロに対して弱腰であると主張している。2002年のテレビCMで、ジョージア州のマックス・クリーランド上院議員(民主党)に対してオサマ・ビン・ラディンとサダム・フセインの写真を並べて表示していた件はご存知だろう。訳注1現在では、ディック・チェイニーがコネチカット州民主党予備選挙の投票者は「アルカイダの類に」支援と慰問を与えたと仄めかす発言をしている。彼等のいつものやり方だ。訳注2

さらに無責任でたぶんもっと皮肉な事:NBCの報道によれば、最新のテロ計画捜査で、英国側と米国側では逮捕の時期を巡って論争があったという。まだ容疑者が実行の準備もしていない段階で-容疑者は航空チケットを入手しておらず、一部の容疑者はパスポートも取得していない-英国側捜査陣は証拠集めのためにさらなる監視を求めていた。しかしNBCの報道によると、アメリカ側は早い時期での逮捕を要求したのだ。

嘘つき大統領のデタラメ経済

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嘘つき大統領のアブない最終目標

嘘つき大統領のアブない最終目標

Without Precedent

「事件の調査は当初から失敗へ向かっていた」・・911テロ政府調査委員会の内幕を委員長自ら暴露した問題作『Without Precedent: The Inside Story of the 9/11 Commission

ブッシュ政権が政治的動機により逮捕を急いだという疑惑については、2年前の記憶を呼び起こせばより鮮明になる。民主党全国大会の直後に国土安全保障省がテロ警報を発令したことで、世間の注目をジョン・ケリーから逸らした結果、パキスタン諜報部関係者の証言によれば、アル・カイダ内部に潜入したスパイの正体が暴露されてしまった。

しかし、最新のテロ警報のタイミングについて疑惑があろうがなかろうが、ブッシュ政権の恐怖戦術がうまくいくかどうかは疑問だ。最新の世論調査で判明したことといえば、共和党は少なくとも下院で多数派の立場を失う恐れがあり、ニューズウィーク誌の最新世論調査によれば、「テロ対策と国土防衛以外の全ての政策課題で民主党が勝っている。」テロで追い上げるという土壇場の努力は、果たして選挙の惨事を回避できるだろうか?

多くの政治アナリストはそうなると思っている。しかしテロ対策に関してすら、最新の報道でも、共和党の得た強みは僅かである。そして、民主党側は随分前にやるべきだった事をようやく実行に移している。テロ脅威を利用して党派的利益を目指すブッシュ政権の姿勢を批判しているのだ。

土曜日のラジオ演説で、ブッシュ大統領が自身を擁護せざるを得ないと感じた事も特筆すべきだが、大統領の基本的な自己防御-「我が国が直面する危機に対し意見の不一致があってはならない」という主張も、非常に弱々しくなってきた。

なによりもまず、911テロ以降に国民が託した信頼をブッシュ氏が乱用することの限界を、今では多くのアメリカ国民が理解している。すでに2004年から多くの人がそうだったように、大統領が国民の安全に関して信頼に足る人物でないことをアメリカ人は知っている。ハリケーン・カトリーナに対する惨めな対応やイラクでの大災難から学んだのだ。

ブッシュ氏と彼の政党が今できることは、反対派を悪魔と見なすことくらいである。私の推測では、国民はそれに従わないだろう。アメリカ国民は、恐怖以外に何も期待できない指導者にウンザリしているのだ。
(以上)

訳注1:ベトナム退役軍人で民主党の有力議員だったマックス・クリーランドは、911テロ後からブッシュ政権がテロ対策の名を借りて権力を乱用していると批判。すると2002年議会選挙で、共和党側は現職のクリーランドをテロ支援者とみなすテレビCMを大量配信する中傷キャンペーンを展開。その結果、クリーランドは共和党の候補者に敗れた。)その後もブッシュ批判を止めないクリーランドは右翼タレントから根拠のない中傷を受けている。)

訳注2その後の報道で、共和党側は英国内でテロ計画暴露が近日中にあることを捜査関係者を通じて予め密かに知っており、民主党がテロ対策に弱腰であると逮捕発表直前にメディアで中傷するという入念なメディアキャンペーンを展開していたことが判明した。)

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