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09/25/2006

石器時代から来たアーミテージ

大手メディア各社の報道によれば、911テロ直後に当時国務省副長官だったリチャード・アーミテージが、パキスタン政府に対して「米国に協力しなければ爆撃して石器時代に戻してやる」と脅迫した、とパキスタンのムシャラフ大統領が記者会見で語ったとのことだ。

不思議だ。なぜ今頃、そんなことが重大ニュースであるかのように報道されているのだろう?

テロ戦争と無関係の他国を実際に爆撃し、石器時代よりも悲惨な惨禍をもたらしている国家を指して、引退した政権幹部の言葉遣いの乱暴さを批判するとは全くナンセンスだが、アーミテージの「石器時代」発言は2年前に既に報道されているアジア・タイムズ・オンライン2004年4月8日付記事を以下に引用する:

・・・パキスタン諜報筋がアジア・タイムズ・オンラインに語ったところによれば、911テロ当日午後、さらに9月12日、13日にかけて、アーミテージは(ISI:パキスタン軍統合情報部長官の)マフムードと会見し、厳しい選択を迫った:「米国の対アルカイダ戦争を支持しなければ、パキスタンは爆撃され石器時代に逆戻りになる」と。コリン・パウエル米国務長官は、米国側の7つの要求事項を示す形でパキスタン側に最後通牒を提示した。パキスタンは申し出の全てに同意した。ムシャラフに対する要求項目のひとつには、マフムード長官をカンダハルに再度送り込み、タリバン側にビン・ラディンを引き渡すように説得することが含まれていた。ムラー・オマル師がその要求を拒否することは、マフムード長官にはわかっていた。しかし、長官がカンダハルに行くと、タリバンの指導者は、アメリカ側がビン・ラディンが911テロの首謀者であることを証明すれば、要求を受け入れると言った。そのような証拠はなく、アフガニスタンは結局爆撃されることになった。政策はずっと以前に決定済みだった。(以下略)

アジア・タイムズ・オンライン2004年4月8日付け報道(ペペ・エスコバル記者)

アーミテージ氏は当該発言について否定しているが、その弁明に用いた説明は、ワシントンポスト紙編集主幹からブッシュ政権非公式広報官に出世したボブ・ウッドワード氏のベストセラー著作『ブッシュの戦争』(Bush at War)に書かれている通りである。以下に同書から引用:

威厳のある風貌のパキスタン軍統合情報部(ISI)長官マフムード・アフマド将軍が、たまたまワシントン滞在中だった。CIAを訪れたマフムードは、タリバンの最高指導者ムハンマド・オマル師は信心深く、人道主義的な性向で、けっして暴力的な男ではない。むしろ、地方の軍事指導者たちに弾圧されてきたのだと、テネット長官や幹部局員たちに語った。

「やめろ!」ジム・パビット工作本部長がいった。「いいかげんにしろ。オマルはアメリカがタリバンに軍隊を向けることを望んでいるか?あなたはそれを望んでいるか?オマルがそれを望むわけがないだろうが。帰国してきくがいい。」

アーミテージは、マフムードを国務省に招いた。

合衆国がパキスタンになにを要求するかはまだ明瞭ではないが、とアーミテージは切り出した。だが、要求はおそらく、「パキスタンに極度の自省を強いるものになるはずだ。パキスタンは、われわれの側につくのか、つかないのか、という明確な選択を迫られているのだ。黒白いずれかの選択で、灰色はない」

マフムードは、過去にも厳しい選択を迫られたことがあるが、パキスタンは大国でも強国でもない、といった。

パキスタンは重要な国なのだ、とアーミテージが口を挟んだ。

マフムードは過去の話題に戻った。
「未来は、今日始まる」アーミテージはいった。パキスタン大統領ムシャラフ将軍に伝えてほしい-われわれの味方になるのか敵になるのか、と。(以下略)

-ボブ・ウッドワード著(伏見威蕃訳)『ブッシュの戦争』62ページ:2006年9月12日の出来事)

一方で、同時期にブッシュ政権内部に居たテロ対策大統領特別補佐官リチャード・クラーク氏の著作『爆弾証言-すべての敵に向かって』に登場するアーミテージは、いかにも「石器時代」発言をやりそうな雰囲気である。以下、同書から抜粋:

危機管理室では話し合いが次の段階に入った。「よし」と、わたしは始めた。全員がアルカイダの犯行であることを知っている。FBIとCIAが真相を明らかにして、間違いはないか確認してくれるだろう。知りたいのは真実だ。だが、さしあたりアルカイダだと想定しよう。次は?」わたしはテレビ会議に問いかけた。

「聞いてくれ」リッチ・アーミテージが応じた。「わたしたちはタリバンに向かってはっきりと、こういうことが起こったらおまえたちは破滅だと通告した。もはやタリバンとアルカイダに違いはない。どっちも潰してやる」タリバンは、アフガニスタンを制圧している過激派のイスラム集団だ。

「それで、パキスタンはどうする?」わたしは尋ねた。

「邪魔をするなと言っておけ。聖域はなくすしかない」アーミテージは熱くなっていた。もしパキスタンが協力しなければ、核兵器で武装したイスラム国家との間に大きな問題を生じることになる。(以下略)

-リチャード・クラーク著(楡井浩一訳):『爆弾証言-すべての敵に向かって』43ページ

ところで、アーミテージ発言の真偽はともかく、米政府がパキスタン政府を脅迫したという報道は、ブッシュ政権と与党・共和党にとって損にはならない。威圧的なアメリカと従順なパキスタンという構図は、「外交面では強い態度で臨む」というアメリカ人の夢見るリーダー像をブッシュ政権が体現しているかのようなポジティブな印象を自国民に与えるだろう。(一方でパキスタン国民は米国側の態度とムシャラフ政権の弱腰に激怒しており、現在パキスタン国内ではムシャラフ政権打倒を狙うクーデター発生が危ぶまれている

それにしても、11月の議会選挙を前に、中東における親米派を体現するムシャラフ大統領が、わざわざ自著の宣伝のためにアーミテージ発言をマスコミに語ったり、同じく親米派のサウジアラビア諜報部からオサマ・ビン・ラディン死亡説が発信されたことにより、選挙の争点がまたしても共和党お得意の「テロとの戦い」に傾倒しつつあるのも興味深い現象である。ちなみに、米保守派メディアは先週半ばに「カール・ローブが共和党幹部に議会選挙前のオクトーバーサプライズを約束した」「今年のオクトーバーサプライズは一つもしくは二つあるとローブは話している」と報じている

今のところ小粒のサプライズしかないように見えるが・・・投票日(11月7日)の2週間前からは要注意期間となるだろう。

オクトーバーサプライズ関連過去記事

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09/20/2006

ラムズフェルド:「もしフセイン体制が続いていたら今頃彼は大金持ちだ」

2006年9月11日、シカゴのラジオ番組に出演したラムズフェルド国防長官は、イラク戦争の新しい口実を国民に説明してみせた

ラムズフェルド:「重要な事実として-もしサダム・フセインが今もイラクで権力の座にあったとしたら、石油で大儲けしてるだろうね。今の石油価格を考えてみてくれ。フセインは大金持ちになっただろう。そして、イランの核開発や、北朝鮮の核開発を見ながら、自分にもできないわけはないと言って開発を始めるだろう。だから、サダムがいなくなって我々は本当に幸運なのだよ。」

ラミー!その通りだよラミー!米軍のイラク侵攻がなければ石油価格上昇もなかったなんて野暮なこと、愛国的市民なら決して口にしないさ!

ラミーとサダムの握手

1983年12月、運命的な出会いをした二人。当時のラミーはレーガン大統領特使としてサダム相手に武器セールスをする立場だった。ラミーの営業スマイルに注目(source)一方でレーガン政権は、イラクと戦争状態にあるイランにも武器を売っていたんだからスゴイ商売上手だ。(クリックで画像拡大可)

ラミーの言うとおりだ。サダムがいなくなって本当に良かった。おかげでイラクの天然資源は全て合衆国政府が支配できるし(おおっと失礼、正確に言うとイラクは“民主化”され、天然資源等の国有資産は“開放”され、“自由市場”になったんでしたね)、サダムが稼ぐはずだった石油の売り上げは、石油メジャーの財布に無事収まったんだからね。イラク侵攻から3年以上経過して、石油業界の好景気は今でも天井知らずだ。以下の最新売り上げ報告を見てくれ:

  • エクソン社の本年度第二四半期(2006年4月1日から6月末までの3ヶ月間)純利益は103億6,000万ドル(約1兆2,162億8,524万円)で、前年同期比36%アップ急上昇。エクソン社は世界企業史上最高額の純利益記録を2005年第4四半期に更新したが(107億ドル1,000万ドル)、今年はさらに記録更新しそうな勢いだ。(エクソン社CEOのリー・レイモンド氏は2005年分だけで役員報酬1億4,000万ドルに加え退職金4億ドルを受け取って昨年末に引退した。日本円に換算すれば、レイモンド元CEOの個人収入は2005年だけでおよそ634億円ということになる)
  • シェブロン社の本年度第二四半期純利益は43億5,000万ドル(約5,105億6,060万円)で、前年同期比18%アップ
  • コノコフィリップス社本年度第二四半期純利益は51億8,000万ドル(約6,080億9,720万円)で、前年同期比65%アップ
  • ロイヤルダッチシェル社本年度第二四半期純利益は73億2,000万ドル(約8,593億1,882万円)で、前年同期比40%アップ
  • BP(ブリティッシュ・ペトリアム)社本年度第二四半期純利益は72億7,000万ドル(約8,537億7,230万円)で、前年比30%アップ(ところでBP社は少々変わった会社だ。同社がアラスカに所有する油田のパイプラインは数年前から激しく油漏れを起こしていたのに、地元の苦情を無視して放置し続け、結果としてアラスカからの原油輸送を今年8月初旬に突然停止する羽目になった。エネルギー需要が最も増大する真夏にパイプライン停止とくれば、(中東の政情不安も手伝って)当然原油市場価格は急上昇。結果として同社に思わぬ利益が転がり込むことになった。BP社は2004年冬に北米プロパンガス市場価格を不正に操作した疑いで現在訴追されている最中だ。)

こんなに売り上げ・純益が急上昇している業界をさらに元気づけるために、昨年ブッシュ政権と米議会はエネルギー業界向け大型減税法を通過させた。同法案によれば、今後10年間で石油・天然ガス等のエネルギー業界は総額145億ドル(約1兆7,042億円)もの減税を受けられることになる。“盗人に負い銭”だって?とんでもない!これはチェイニー副大統領の中東最終戦争計画チーム(おおっと失礼、“エネルギー対策作業部会”でしたね)参加した企業に対するホワイトハウスからのささやかなプレゼントさ。なにしろブッシュ政権や愛国的アメリカ国民の説明によれば、アメリカの経済は依然として信じられないほどパワフルなんだ。・・・ナニ?3,700万人のアメリカ国民が貧困ライン以下の生活?さらにその43%は貧困ラインの半額以下の収入しかない『超貧困層(deep poverty)』だと?ニューヨークだけで120万人が日々の食料すら買えない貧困状態??それはほら、アレだ・・コミュニストの仕業に決まってるだろ!

サダムがいなくなって本当に良かった。おかげで、イラク復興事業を請け負ったチェイニー米副大統領の古巣、ハリバートン社は未曾有の好景気だ。チェイニーがホワイトハウス入りしてから、同社の公共事業受注額は6倍に増加して、チェイニー氏が保有する同社のストックオプション評価額は2004年だけで30倍以上も上昇したんだぜ。自分の資産のあまりの増加ぶりに興奮した副大統領は思わず友人に発砲したけれど、もちろんチェイニー個人が責任に問われる必要はないさ。2005年にアメリカでは銃による犯罪が増加に転じてるからね。チャールトン・ヘストンが引退したくらいじゃ、止めようがないさ。(噂じゃ、次の全米ライフル協会会長はこれまたハリウッド俳優のトム・セレックらしい

FOXニュースのイラク内戦解説

イラク内戦にポジティブな解説を試みるFOXニュース。「イラク内戦の良い点?」「イラク内戦:良いことでは?」(赤い下線は訳者による:source)(クリックで画像拡大可)

サダムがいなくなって本当に良かった。合衆国ご自慢の民主化政策が功を奏して、今やイラクはどう定義しても内戦状態だ。バグダッドの死体安置所に運ばれる銃殺死体の数は、2002年(米軍侵攻前)には月間平均15体だったが、今年8月には月間1,536体に急増している。イラク保健省は大慌てでバグダッドに2軒の死体安置所を増設すると決定したばかりだ。米軍はイラク西部アンバル地方の統治をすでに絶望視しているらしい。誤解しないで欲しいが、国防長官と同じく“愛国的”なアメリカ人なら、これを「良いニュース」と感じてるはずだよフォックスニュースも特集してるように内戦にはポジティブな要素が一杯あるからね。偉大なる合衆国だって、内戦(南北戦争)で18万人以上の国民が死んでるんだけど、つい先日にはライス国務長官も「南北戦争をしなければ黒人奴隷解放はなかった」と言ってイラクの内戦突入をポジティブに評価してるじゃないか。だいいち、イラク内戦で長期化・増員した駐留米軍は、そのままシリア・イラン侵攻に転用できるんだぜ。

ところで肝心のイラク復興の具合は?ローラ・ブッシュ大統領夫人が旗振り役となって約束したあの「バスラ児童病院」はもう稼動してるのか?「この国に近代的な病院が建設された暁には、イラクの子供達の人生はどんなに変わることでしょう」なんてファーストレディがアロガントエレガントな南部訛りで2005年10月に発表したアレだ。・・・まあ、病院建設以前にイラクの子供達の人生はものすごく変わっちまったんだけどな・・・エッ?アレは発表しただけ?あの病院計画は未だに予算すら調達の目途が立たない?ハテ?妙だな・・・「イラクの復興事業はイラクの石油で賄える」とウォルフォウィッツ世銀総裁(当時は国防副長官、現在世銀内部で愛人と楽しくお仕事中は言ってたけど、一体イラクの資産はどうなったんだろう?まあいいや。サダムの懐に入るよりマシさ。なにしろ奴は、金があるとすぐ大量破壊兵器を買いに走るからな。エ?サダムに武器を売ってきたのはアメリカ政府?おいおい、駐留米軍がつい先月にも「イラクのポジティブな報道」のために2,000万ドルも追加投資してるって時に、ネガティブな話はしないでくれよ。

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09/12/2006

ブルックリンから世界のために

9/11テロ事件から5年が経過した。あの事件で2,973人の犠牲者を出したアメリカ合衆国は、アフガニスタンとイラクに戦争を仕掛け、その結果として2,974人以上の米国人が米軍兵士としてすでに戦死している

英インディペンデント紙は9月10日付け報道でこう伝えている:「テロリストによる犠牲者を含め、『テロとの戦争』を直接原因として、現在までに少なくとも6万2,006人が死亡し、450万人が難民となり、アメリカ合衆国は地球上のあらゆる貧困国家の債務を完済できるほどの金額を戦争費用として支出している。」

同紙の発表した独自集計結果をみれば、5年間の『テロとの戦い』というものが何だったのか、少しは理解しやすくなるかもしれない。:

  • 2001年9月から2006年9月9日までの期間で、アフガニスタンでは4,541人~5,308人の市民が死亡し、連合軍兵士385人が戦死。イラクでは、5万100人の市民が死亡し、連合軍兵士2,899人が戦死。この間に、世界中で4,081人がテロで死亡している。
  • アフガニスタンの難民キャンプで死亡した市民数は8,000人から2万人と推定され、220万人が難民としてアフガニスタンから脱出し、15万3,200人が国内で避難している。
  • イラクでは88万8,700人が国外に避難し、国内では130万人が避難中。また、中流家庭の40%がイラクを離れたとみられている。
  • アメリカ合衆国がテロとの戦争に費やした費用は、2006年7月の時点で4,370億ドル(約51兆7億1,600万円) 。貧困対策団体「Make Poverty History」によれば、地球上の貧困国家の借金総額は3,750億ドル
  • イギリス政府はイラクとアフガニスタンに45億ポンド(約9,798億円)を支出している。

地球上のほとんどの人々は、これらの数字に悲劇を感じるはずだ。しかしアメリカ国内の一部の人々には、こうした数字に米国経済の活況を感じているかもしれない。例えば、米国内の軍事関連企業上位34社の経営者の1人あたりの平均報酬額は、9/11テロ以前には360万ドル(約4億2,331万円)だったのが、9/11テロ以降には720万ドル(8億4,664万円)に上昇している。これら軍事企業のCEO達34人が9/11テロから昨年までに懐に入れた報酬総額は9億8,400万ドル(約1,157億2,900万円)で、これはイラク国民100万人分の年収よりも多い金額ということだ。

『テロとの戦い』は既存の軍事産業を儲けさせただけでは収まらない。9/11テロ以前、米国政府から合衆国本土防衛業務を受注する企業は9社だった。それが2003年度には3,512社になり、現在では3万3,890社に膨れ上がったという。新市場の誕生である。2000年から現在までの6年間に、合衆国政府が本土防衛業務を外注した金額は1,300億ドル(約15兆2,925億8,600万円)、それが2015年には、年間費用として1,700億ドル(約20兆22億3100万円)を支出する計画であるという。(ここまで読んできた読者は、ハリケーン・カトリーナ大災害の被災地復興が進まないのはなぜ?と思われることだろう。ハリケーン災害対策もテロ対策も、同じ国土安全保障省の管轄下なのだが・・・。)

「世界にとってアメリカ合衆国こそが脅威」とのヨーロッパ各国の評価は、決して大袈裟ではない。つい先日も、米議会はクラスター爆弾の製造継続を承認しているし、今月始めに行われた最新世論調査によれば米国民の46%が「サダム・フセインは9/11テロを個人的に支援していた」と今でも誤解している。しかし、多様性がこの国の本質であるとすれば、以下のクリスチャンサイエンスモニター紙の記事(全文翻訳して掲載)は、そのパワーをうまく伝えていると思う。ブルックリン!!

9/11が生んだ絆-イスラム教徒とユダヤ教徒が結束するブルックリン

by アレクサンドラ・マークス:クリスチャン・サイエンス・モニター2006年9月11日付記事

ラビ・ロバート・カプラン氏とモハンマド・ラビ氏

ブルックリンに架かる橋:ラビ・ロバート・カプラン氏(左)とイスラム教徒のモハンマド・ラビ氏。二人は人民組織協議会(Council of People's Organizations:COPO)の活動を通じてブルックリンの地域社会づくりに貢献している。

ニューヨーク:911テロ直後、ブルックリンのコニーアイランド・アベニューは火薬庫になる可能性があった。ユダヤ教徒とイスラム教徒住民が最も密集して暮らす地域であり、それぞれニューヨークで最大のイスラム教寺院と正統派ユダヤ教会が3ブロック離れて存在している。

FBI捜査官と移民局調査員が大勢押し寄せた。イスラム系住民が消えた。政府に拘束された住民もいる。英語も合衆国法制度も理解できない住民は恐れおののき、帰宅するよりも友人やご近所同士で暮らすようになった。

二人の男性-1人はユダヤ教徒、もう1人はイスラム教徒で、全くの赤の他人同士の二人が、互いの共同体を理解し、地域を支配し始めた恐怖を収束させ、あらゆる過激主義と戦うことで本当の安全確保が実現できると決心した。

二人は自らの生き方を転換し、それぞれの家族がアメリカにやって来る動機となった価値感と、各自の信仰を支える霊的価値感を確認すべく献身することになった。やがて二人は親友になり、政治運動家になり、地域協力の促進者になった。

「この国の美しさとはそこです。異なる人種や宗教を超えて人々が集まり、共に働くことができるんです。」現在、人民組織協議会(Council of People's Organizations:COPO)の議長となったモハンマド・ラビ氏は言う。


実業家からイスラム活動家へ

ラビ氏は優れた実業家だった。父親や兄弟と共に、コニーアイランド・アベニューで5軒のお店を経営していた。911テロ事件後、ラビ氏は拘束された人たちの家族を支援した。彼はパキスタン人組織協議会(Council of Pakistani Organizations:COPO)を設立し、近所の人に兄弟、父、従兄弟達が何処に行ったのか捜索し、弁護士の要求や保釈金、法手続きの方法を教えた。同時に、ラビ氏は捜査当局者達に接触し、捜査機関がいかに地域社会に損害を与えているかを知らせようとした。


ラビ・ボブの登場

自分の仕事と新たな無報酬活動に明け暮れていた或る夜、友人とCOPO事務所に居たところへ、1人のヤムルカ(ユダヤ教徒が使用する帽子)をかぶった男性がやって来て、自己紹介を始めた。地元ではラビ・ボブという呼び名で知られるラビ・ロバート・カプラン氏は、入り口の看板を見て、隣人達と知り合う時期が来たと決心したのだった。

「リスクを恐れず一歩踏み出すべきです。解決よりも衝突のほうがはるかに起きやすいですからね」ニューヨーク・ユダヤ地域関係協議会に所属する路上の指導者、ラビ・カプラン氏は言う。

二人はすぐに意気投合し、協力することにした。二人は宗教を超えてお互いの共同体に影響する課題についてリストアップした。宗教差別、医療、女性問題と家庭内暴力、教育、そしていわゆるアメリカン・ドリームの実現。二人は共同作業を「我ら皆ブルックリン人(We Are All Brooklyn)」と名づけ、活動を開始した。

10代の青少年のために、彼等は『若者の橋NY(Youth Bridge-NY)』という組織を立ち上げた。異なる地域から民族、人種、宗教的背景を超えて共同作業を行い、リーダーシップ技術を学ぶ活動である。津波被災者、パキスタン地震被災者、ハリケーン・カトリーナ被災者のために、彼等は支援物資を集めた。毎年、彼等は平和行進を組織して、ブルックリンを練り歩く。『エイブラハムの子供達・・・平和のために歩こう』という横断幕を掲げて、数百人がシナゴーグからモスクまで行進するのだ。

「自分が何者であるかは私の魂が告げています。このような連合を率いるからといって、私があなたみたいになるべきとか、あなたが私みたいになるべきということではないのです。」カプラン氏は言う。「ただ、より良い世界を目指すために、私達は力を合わせるべきなのです。」
(以上)


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09/01/2006

クルーグマン:「反故にされた約束」

「連邦政府の対応については私が全責任を負っています。1年前、我々はカトリーナの教訓を活かし、何としても復興を支援すると約束しました。(拍手)当時ジャクソン広場で話した事が現在でも同様に真実であると伝えるために、本日、私はニューオリンズに戻ってきました。」

-2006年8月29日、ニューオリンズのウォーレン・イーストン高校にて行われた、湾岸地区復興についてのブッシュ大統領の演説より


「懺悔するしかない・・・大統領から指名された立場の者は、大統領を擁護するものです。そうすると、全くの真実を伝えるかわりに、(ホワイトハウス側の)主張に従うことになる。今、私が最も後悔しているのはそれです。」

-2006年8月29日、前FEMA長官マイケル・ブラウンのインタビューにおける発言。ブラウン氏はさらに、カトリーナ災害後のホワイトハウス閣僚会議でブッシュ大統領が、「批判の矛先がブラウンに向いてるのはありがたいな。私が非難されずに済む」と発言したと語った

経済学者ポール・クルーグマンのニューヨークタイムズ紙2006年8月28日付掲載コラムを以下に全文翻訳。
(文中リンク・脚注は訳者による)

反故にされた約束(Broken Promises)

by ポール・クルーグマン:ニューヨークタイムズ紙2006年8月28日付コラム

昨年9月、ニューオリンズ市街の、カトリーナ上陸以来ようやく電気が回復したばかりの場所に立ったブッシュ大統領は、「世界でも類を見ない最大の復興努力をする」と約束した。大統領が去ってすぐに、電気は再び消えてしまった。訳注

それから起こった出来事は、ブッシュ氏がイラク復興の名目で議会に180億ドルの予算配分承認を求めた際と同じであった。議会がその予算を承認してから数ヵ月後、イラク訪問から帰国した議員団は、我が国が現地で行っている素晴らしい仕事-例えば、校舎を塗り替えるとか・・・さらに校舎を塗り替えるとか・・・について情熱的に説明した。

しかし、イラクを統治していた連合軍暫定当局(CPA)が9ヵ月で店仕舞いすると、180億ドルの復興予算の内、わずか2%しか復興活動に支出されていないことが判明し、予算で賄うはずの復興計画のうち、開始されていたのはほんの一部でしかなかった。最終的に、アメリカはイラク国内インフラの最も基本的な修復作業すらやり損なった。現在、バグダッドで電気が使える時間は1日あたり7時間以下である。

そういうわけで、自国の湾岸地区についても同じような事態なのだ。ブッシュ政権は被災地向けに配分された予算金額について話題にしたがり、カトリーナ大災害の被災者支援にすごい仕事(heck of a job)をしていると国民を説得するべくPR活動を思案している。しかし、イラク国民がすでに学習したように、予算を配分することと、それを実際に復興活動に支出することは別の話で、今のところブッシュ政権は、昨年の約束を遂行するためにほとんど何も達成していないのである。

緊急支援と瓦礫の処分に数十億ドルが費やされたのは事実である。しかし、片付け作業すらまだ不完全だ。ニューオリンズでは災害で生じた瓦礫の内およそ3分の1が未だ残されている。そして、片付け作業の後に控える実際の復興作業はわずかに始まったにすぎない。

例えば、住宅所有者への現金支援を最優先事項とするべく、米住宅都市開発省とカトリーナ支援都市開発計画のために、議会は170億ドルの予算を承認したが、先週時点でたったの1億ドルしか支出されていない。ルイジアナ州の住宅所有者で連邦政府の支援金を最初に受け取ったのは、ほんの3日前だ。ミシシッピ州でも同様の計画があるが、支出されたのは未だにわずか数十件分しかない。

消防署や下水道設備の復興支援を受けられるはずの市当局では、実際の支援を受けるところまで事が運んでいない。ナショナル・ジャーナル誌の最近の報道でそのカフカ的状況が説明されているが、連邦支援金を必要とする街や地区は、複雑な手続きを経由するよう指示されており、台風でなぎ倒された街路樹の被害を検算するなどの作業になけなしの金と時間を費やし、さらなる事務処理要求に直面している。

現政権の擁護派は、復興作業の遅れはブッシュ氏の責任ではなく、政府機関が生来持つ非能率的な官僚主義の問題なのだと疑いなく主張する。反政府保守主義者にとってはそれが大切なのだ:統治任務に失敗してもなお、自身のイデオロギーを擁護するのである。

しかし、この件の非能率さに官僚主義を持ち出す必要はない。復興作業の進行が失敗しているのは、トップのリーダーシップが欠如している結果なのだ。

ブッシュ氏は復興の約束を果たすために素早く行動できたはずだ。しかし大統領はそうしなかった。ホワイトハウス側から行動が示されることがないまま月日が無為に過ぎ、復興計画を進行させる切迫感は衰えてしまった。

華やかで精力的な人物を指名して、湾岸地域復興を監査させ、支援を求める被災家族や地域行政の賛同者として活躍させることもブッシュ氏にはできたはずだ。しかし大統領はそうしなかった。復興活動の「帝王」となっているはずの人物の名を、一体何人が言い当てることができるだろう?

ブッシュ氏は自身の身内主義と民営化で破壊させたFEMAを組織として回復させることもできたはずだ。しかし大統領はそうしなかった。現在でもFEMAはやる気がなく、組織を奮い立たせることができないままだ。FEMA職員として任命された者の内、現在残っている人数は84%以下である。

たぶん、湾岸地区に約束された支援は、いつの日か実際にやってくるのだろう。しかしそれでは、たぶん遅すぎる。住民や中小企業経営者の多くは、実現しない支援を待つことに疲れ、他所へ移住するだろう。被災を逃れたり、経営を再開した中小企業も、顧客不足で行き詰まるだろう。イラク同様にアメリカでも、復興の遅れとは復興を拒否されたも同じなのだ。そしてブッシュ氏はまたしても、約束を反故にしたのである。
(以上)


訳注:カトリーナ大災害直後の2005年9月15日夜、ブッシュ大統領がニューオリンズの被災地を訪問する際、ホワイトハウス側スタッフはPR撮影のために訪問場所だけ一時的に街灯を点灯させ、あたかも被災地ですでに電気が回復したかのように演出した。そして大統領のテレビ用撮影が終了すると、すぐに灯りは消された。他にも、大統領が被災地を訪問する度に保安目的で救援物資の空輸を停止させたり、テレビ撮影用に臨時で作業員を集めて堤防修繕作業を演出したりと、ブッシュ陣営は政府対応への批判を実際の救援活動ではなくプロパガンダで対応しようと努めていた。その結果、ホワイトハウスへの批判の声はさらに大きくなった。)

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