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2006/09/25

石器時代から来たアーミテージ

大手メディア各社の報道によれば、911テロ直後に当時国務省副長官だったリチャード・アーミテージが、パキスタン政府に対して「米国に協力しなければ爆撃して石器時代に戻してやる」と脅迫した、とパキスタンのムシャラフ大統領が記者会見で語ったとのことだ。

不思議だ。なぜ今頃、そんなことが重大ニュースであるかのように報道されているのだろう?

テロ戦争と無関係の他国を実際に爆撃し、石器時代よりも悲惨な惨禍をもたらしている国家を指して、引退した政権幹部の言葉遣いの乱暴さを批判するとは全くナンセンスだが、アーミテージの「石器時代」発言は2年前に既に報道されているアジア・タイムズ・オンライン2004年4月8日付記事を以下に引用する:

・・・パキスタン諜報筋がアジア・タイムズ・オンラインに語ったところによれば、911テロ当日午後、さらに9月12日、13日にかけて、アーミテージは(ISI:パキスタン軍統合情報部長官の)マフムードと会見し、厳しい選択を迫った:「米国の対アルカイダ戦争を支持しなければ、パキスタンは爆撃され石器時代に逆戻りになる」と。コリン・パウエル米国務長官は、米国側の7つの要求事項を示す形でパキスタン側に最後通牒を提示した。パキスタンは申し出の全てに同意した。ムシャラフに対する要求項目のひとつには、マフムード長官をカンダハルに再度送り込み、タリバン側にビン・ラディンを引き渡すように説得することが含まれていた。ムラー・オマル師がその要求を拒否することは、マフムード長官にはわかっていた。しかし、長官がカンダハルに行くと、タリバンの指導者は、アメリカ側がビン・ラディンが911テロの首謀者であることを証明すれば、要求を受け入れると言った。そのような証拠はなく、アフガニスタンは結局爆撃されることになった。政策はずっと以前に決定済みだった。(以下略)

アジア・タイムズ・オンライン2004年4月8日付け報道(ペペ・エスコバル記者)

アーミテージ氏は当該発言について否定しているが、その弁明に用いた説明は、ワシントンポスト紙編集主幹からブッシュ政権非公式広報官に出世したボブ・ウッドワード氏のベストセラー著作『ブッシュの戦争』(Bush at War)に書かれている通りである。以下に同書から引用:

威厳のある風貌のパキスタン軍統合情報部(ISI)長官マフムード・アフマド将軍が、たまたまワシントン滞在中だった。CIAを訪れたマフムードは、タリバンの最高指導者ムハンマド・オマル師は信心深く、人道主義的な性向で、けっして暴力的な男ではない。むしろ、地方の軍事指導者たちに弾圧されてきたのだと、テネット長官や幹部局員たちに語った。

「やめろ!」ジム・パビット工作本部長がいった。「いいかげんにしろ。オマルはアメリカがタリバンに軍隊を向けることを望んでいるか?あなたはそれを望んでいるか?オマルがそれを望むわけがないだろうが。帰国してきくがいい。」

アーミテージは、マフムードを国務省に招いた。

合衆国がパキスタンになにを要求するかはまだ明瞭ではないが、とアーミテージは切り出した。だが、要求はおそらく、「パキスタンに極度の自省を強いるものになるはずだ。パキスタンは、われわれの側につくのか、つかないのか、という明確な選択を迫られているのだ。黒白いずれかの選択で、灰色はない」

マフムードは、過去にも厳しい選択を迫られたことがあるが、パキスタンは大国でも強国でもない、といった。

パキスタンは重要な国なのだ、とアーミテージが口を挟んだ。

マフムードは過去の話題に戻った。
「未来は、今日始まる」アーミテージはいった。パキスタン大統領ムシャラフ将軍に伝えてほしい-われわれの味方になるのか敵になるのか、と。(以下略)

-ボブ・ウッドワード著(伏見威蕃訳)『ブッシュの戦争』62ページ:2006年9月12日の出来事)

一方で、同時期にブッシュ政権内部に居たテロ対策大統領特別補佐官リチャード・クラーク氏の著作『爆弾証言-すべての敵に向かって』に登場するアーミテージは、いかにも「石器時代」発言をやりそうな雰囲気である。以下、同書から抜粋:

危機管理室では話し合いが次の段階に入った。「よし」と、わたしは始めた。全員がアルカイダの犯行であることを知っている。FBIとCIAが真相を明らかにして、間違いはないか確認してくれるだろう。知りたいのは真実だ。だが、さしあたりアルカイダだと想定しよう。次は?」わたしはテレビ会議に問いかけた。

「聞いてくれ」リッチ・アーミテージが応じた。「わたしたちはタリバンに向かってはっきりと、こういうことが起こったらおまえたちは破滅だと通告した。もはやタリバンとアルカイダに違いはない。どっちも潰してやる」タリバンは、アフガニスタンを制圧している過激派のイスラム集団だ。

「それで、パキスタンはどうする?」わたしは尋ねた。

「邪魔をするなと言っておけ。聖域はなくすしかない」アーミテージは熱くなっていた。もしパキスタンが協力しなければ、核兵器で武装したイスラム国家との間に大きな問題を生じることになる。(以下略)

-リチャード・クラーク著(楡井浩一訳):『爆弾証言-すべての敵に向かって』43ページ

ところで、アーミテージ発言の真偽はともかく、米政府がパキスタン政府を脅迫したという報道は、ブッシュ政権と与党・共和党にとって損にはならない。威圧的なアメリカと従順なパキスタンという構図は、「外交面では強い態度で臨む」というアメリカ人の夢見るリーダー像をブッシュ政権が体現しているかのようなポジティブな印象を自国民に与えるだろう。(一方でパキスタン国民は米国側の態度とムシャラフ政権の弱腰に激怒しており、現在パキスタン国内ではムシャラフ政権打倒を狙うクーデター発生が危ぶまれている

それにしても、11月の議会選挙を前に、中東における親米派を体現するムシャラフ大統領が、わざわざ自著の宣伝のためにアーミテージ発言をマスコミに語ったり、同じく親米派のサウジアラビア諜報部からオサマ・ビン・ラディン死亡説が発信されたことにより、選挙の争点がまたしても共和党お得意の「テロとの戦い」に傾倒しつつあるのも興味深い現象である。ちなみに、米保守派メディアは先週半ばに「カール・ローブが共和党幹部に議会選挙前のオクトーバーサプライズを約束した」「今年のオクトーバーサプライズは一つもしくは二つあるとローブは話している」と報じている

今のところ小粒のサプライズしかないように見えるが・・・投票日(11月7日)の2週間前からは要注意期間となるだろう。

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