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2006/10/20

ラムズフェルドの北朝鮮コネクション

ラムズフェルド米国防長官

脅威マーケティングの権威ドナルド・ラムズフェルド


ラムズフェルド米国防長官と北朝鮮の核開発事業に関する小さなニュースリンクを以前紹介したが、その後詳細を伝える過去報道を発見したので以下に記事全文を翻訳して掲載する。(以前の記事とは若干報道事実が違っている)今回の記事は、2003年5月当時の米フォーチュン誌に掲載されていたものである。

国防総省の資産管理の大失態、イラク侵攻後の大失態アブグレイブ刑務所の囚人虐待-ラムズフェルドのマネジメント能力は惨めなものだが、クライシス・マーケティング分野(あるいは脅威マーケティング?)では比類なき才があるようだ。しかも、以下の記事からわかるように、「偶然そこに居合わせた」だけではなくて、世間の脅威から最大限の利益を得られるようにむしろ積極的に努力しているらしい

ラミーの北朝鮮コネクション:
ABB社の北朝鮮原子炉開発事業についてラムズフェルドは何を知っていたのか?
なぜ彼は沈黙しているのだろう?

フォーチュン誌2003年5月12日号

記事執筆:リチャード・ベアー 調査協力:ブレンダ・チェリー:フォーチュン誌2003年5月12日号掲載記事

ドナルド・ラムズフェルド国防長官は自らの主張を胸の内に留めておくようなことを滅多にしない人物である。敵に対しても妥協するようなことはない。そして、彼は北朝鮮の共産主義政権について明確に軽蔑している。そういうわけで、合衆国政府が北朝鮮に対して、核兵器開発計画の断念と引き換えに2基の軽水炉建設計画に同意し論議を呼んだ1994年の取り決めについて、国防長官の見解に関する公的記録が全く存在しない事実には非常に驚かされる。さらに驚くべきことは、その北朝鮮の軽水炉建設の設計と基本部位を提供する2億ドルの事業を受注した企業の役員に就いていた事実について、ラムズフェルド氏が沈黙していることである。

その会社は、スイス・チューリッヒを本拠とする巨大企業ABB社で、北朝鮮との契約は2000年に締結されており、ラムズフェルド氏が役員職を辞任してブッシュ政権に入閣するずっと前のことであった。ラムズフェルド氏は、1990年から2001年初頭まで、唯一のアメリカ人役員としてABB社取締役会に名を連ねていたが、当時その会社が北朝鮮の軽水炉開発事業契約受注競争に加わったことを公的には口にしていなかった。フォーチュン誌の調査でも、彼が同事業についてどういう考えをもっていたかについて示した公的記録は一切発見できていない。今年2月、北朝鮮の軽水炉開発について国防長官が果たした役割についてニューズウィーク誌に問われた際、国防長官の広報担当者ビクトリア・クラークは「(役員として)決済が問われた事項ではなく、」彼女の上司であるラムズフェルド長官は「そうした事業がいかなる時点で役員会に提示されたのか思い出せない」と回答した。

ラムズフェルド氏が果たした役割についてフォーチュン誌は詳細な説明を求めたが、同氏は回答を拒否している。しかし、ABB社広報担当者ビョルン・エドランド氏は、フォーチュン誌の取材に対して「役員達は当該事業について説明を受けていた。」と語った。さらに、他のABB社職員の話によれば、そのような巨額の重要な事業の場合は、複雑な法的責任問題も絡むために、取締役会の監査を通さないことはありえないという。「おそらく契約締結前に、事業概要を記した書類が役員会で提示されているはずです。」ABB社米国支社核開発事業部の前社長で、当該事業を指揮したロバート・ニューマン氏は言う。「役員なら当然知っていたはずですよ。」

平壌の開発事業に入札していた頃にABB社の役員を務めていた15人に本誌が問い合わせたところ、1人を除いて全員がコメントを拒否した。匿名を条件に回答したその役員は、当時のABB社会長パーシー・バーネヴィク氏が、1990年代中盤に役員会で北朝鮮の軽水炉開発事業について説明したという。「ABB社にとっては大きな出来事でした」前役員は言う。「それで、大規模な政界ロビー活動が行われたんです。」

前役員は、1990年代半ばにライバルのアメリカ企業が“外資系企業が政府の仕事を受注しようとしている”と不満を表明した件で、ラムズフェルド氏が「ワシントンでABB社のためにロビー活動を行うように依頼された」という話を憶えていた。前役員は詳しく説明できなかったが、1995年までABB社の発電設備事業を指揮していたゴラン・ランドベルグ氏は、「一時期ドン(ラムズフェルド)が関わっていたのは確実ですよ」と語った。ゴラン氏によれば、「合衆国政府との契約が必要な際は」役員の助けを借りて事業を受注することは珍しいことではなかったという。他の幹部経験者達はラムズフェルド氏の関わりについて憶えていなかった。

現在のラムズフェルド氏は、イラク戦争以来戦勝気分のせいか、北朝鮮の「体制変革」計画について検討していると伝えられている。しかし、原子炉開発をめぐるラムズフェルド氏の沈黙は、彼がABB社役員時代に何をしたのか-あるいは、しなかったのか-について重大な問題を提起している。ABB社の核開発事業に鋭敏な関心を示し、ほとんどの取締役会に出席してきたラムズフェルド氏が、他の役員を相手に自身の見解について示した証拠はない。確かに彼は当該事情を公にしたことがないが、ラムズフェルドを知る多くの人々は、軽水炉から核兵器使用可能な核物質を抽出可能として同氏に批判的な見方をしている。ラムズフェルドの同僚であるポール・ウォルフォウィッツ、ジェイムズ・リレイ、リチャード・アーミテージらは、北朝鮮との軽水炉開発取引に反対していた事実が記録に残っている。かつてラムズフェルドが選挙責任者兼国防アドバイザーを務めた大統領候補ボブ・ドール氏も反対だった。さらに、ラムズフェルド氏が役員に就任した基金から資金提供を受けたシンクタンク『核不拡散政策教育センター』所長のヘンリー・ソコルスキ氏は、1994年の取引に関して反対する急先鋒の1人だった。

ラムズフェルド氏の意図を知るひとつの手がかりとなるのは、1998年にヘリテージ財団で行ったスピーチである。その際、彼は軽水炉開発については触れなかったが、1994年の北朝鮮との枠組み合意は「核の脅威を終結させるものではなく、ただ単に罰を先延ばしするだけのもので、北朝鮮がどれだけの爆弾材料を入手するかについては確約がないままである。」複数の記事データベースを検索して当時の記事を調べた結果、1990年代を通じて、ラムズフェルド氏が北朝鮮の軽水炉を開発した企業の役員であった事実を伝える報道は見当たらなかった。そして、ラムズフェルド氏もそれを表明することはなかったのである。

すでに韓国で8基の原子炉を建設しているABB社は、合衆国政府がスポンサーとなった40億ドルの北朝鮮軽水炉開発事業計画に関して有利な立場にあった。同社は「事業受注は間違いなし」と伝えられていたと、同事業計画の責任者を務めたフランク・マレイ氏は言う。(同氏は、現在ウェイスティングハウス社で同じ役職に就いている。ウェイスティングハウス社は1999年に英国BNFL社に買収された。英国BNFL社はその1年前にABB社核開発部門を買収している。)北朝鮮の原子炉は、もともと韓国と日本の輸出入銀行から資金提供を受け、ニューヨークのKEDO(Korean Peninsula Energy Development Organization、朝鮮半島エネルギー開発機構)によって監査されることになっていた。「えこひいきではありませんよ」1997年から2001年までKEDOの事務局長を務めたデザイク・アンダーソン氏は言う。「単に実務的理由からでした。」

それでもなお、ABB社は同事業への関与を内密にしようと試みている。フォーチュン誌が入手済みの、ABB社からエネルギー省に送られた1995年の或る手紙によれば、同社は北朝鮮への技術供与に対し承認を申請すると共に、その当たり障りのない手紙を機密扱いにするよう求めている。「内密にされる理由は様々です。」ABB社の米国広報担当者ロナルド・カーツ氏は言う。「この巨額の事業は典型的ですが、契約というものはそんなに人目に触れるものではないのです。」

ABB社は事業にあたって目立たぬようにしているが、カーツや他の職員の話では、役員達は事業内容について知っていたはずだと言っている。前ABB社幹部のニューマン氏によると、リスク評価の概要を記した書類がバーネヴィク氏(前会長)宛てに渡っているという。バーネヴィク氏はフォーチュン誌の電話取材に回答しなかったが、チューリッヒ本社勤務でニューマン氏の上司ハワード・ピアース氏は、ラムズフェルド氏についてこう言った。「役員会に居たから、知っていて当然だと思うがね。」

関係者の話によれば、ラムズフェルド氏は実践的な役員だったようだ。かつてABB社世界核開発事業を率いたディック・スレマー氏によれば、ラムズフェルド氏は時々電話で核拡散問題について語ることがあり、その際「正しい方向性を理解させるのに苦労した」という。ピアース氏は、ラムズフェルド氏がABB社の核開発事業受注のために中国を訪問した事を思い出し、「一端思いついたら、考えを変えさせるのが困難な人物だった。彼の意見を変えるには猛烈にやらないといけない。」ABB社米国核開発事業部の前部長シェルビー・ブルワー氏は、コネチカット本社の会議でラムズフェルド氏と会ったことを思い出し、「素晴らしく才気ある人物だと思った。ヨーロッパ連中を相手に熱いナイフでバターを切るみたいにやりあったもんだ。」

関係者の誰も、北朝鮮の事業について話すラムズフェルド氏については記憶にないという。しかし、仮に彼が意見を隠しているとしたら、他の人たちは隠していない。共和党は最初から北朝鮮核開発事業に反対を表明しており、特に1994年に両院を制してからは顕著だった。「枠組み合意は署名して2週間後には政策上の孤児になっていた。」KEDOの初代事務局長で前駐韓国米大使のスティーブン・ボスワースは言う。枠組み合意がなぜ問題なのか理解するのは易しい。北朝鮮はテロ支援国家リストに含まれており、核拡散防止条約にたびたび違反している。1994年の枠組み合意の指揮を執った国務次官ロバート・ガルッチは批判に同意せず、言った。「もし合意がなかったら、北朝鮮は戦争するか核兵器を作るかのどちらかしかなかった。」

複数の専門家が指摘する問題は、軽水炉から兵器への転用可能な核物質を抽出するのは困難だが可能という部分である。「再処理はそれほど大変じゃありません」原子力委員会と原子力規制委員会の上級委員ビクター・ジリンスキー氏は言う。「特別な機材は要りませんよ。KEDOの連中はそこがわかっていない。未だにヘマを続けている。」

軽水炉開発に対する共和党勢の抗議の声を考えると、ラムズフェルド氏の沈黙はほとんど防音装置のようだ。「共和党員のほとんどは文句を言ってましたね」クリントン政権の東アジア・太平洋問題担当国務次官ウィンストン・ロード氏は言う。ロード氏はラムズフェルド氏の主張について憶えていないという。反KEDOを熱烈に唱える国防政策センターのフランク・ギャフニー・ジュニアもまた同じだ。ギャフニー氏によると、ラムズフェルド氏はABB社役員としての立場が議論を巻き起こすことを避けているという。

1998年には、ワシントンで議論が沸騰し、軽水炉開発の遅れは北朝鮮を苛立たせた。兵器査察官はもはや北朝鮮の核物質の在庫を確認できなくなった。それでもマレイ氏によれば、1998年のある時点で、ABB社は公式な「入札の招待」を受けたという。その時ラムズフェルド氏は何処に?その年、彼は下院主催の研究会議で大陸弾道ミサイル危機に関する機密情報を検証していた。その会議では、北朝鮮が合衆国本土を5年以内に攻撃可能になると結論が出た。(報告書が出されて数週間後、北朝鮮は日本に向けて3段ロケットを発射した。)さらにそのラムズフェルド氏の会議では、北朝鮮が核兵器開発プログラムを継続していると結論づけたが、そのようなプログラムを阻止するはずの軽水炉事業の件については巧妙に省かれていた。同会議の報告書に記されたラムズフェルド氏の経歴には、彼がABB社役員であるとの記述もなかった。

ホワイトハウスを去る直前、クリントン大統領は北朝鮮がミサイル開発と核開発を諦める代わりに支援再開と関係正常化を図る大胆な取引を持ちかけるつもりでいた。しかしブッシュ大統領は北朝鮮側の意図に懐疑的で、2001年3月に政策再考を呼びかけた。その2ヵ月後にエネルギー省は、ラムズフェルド指揮下の国防総省と相談した結果、北朝鮮への核開発技術供与の再承認を行った。ウェスティングハウスと北朝鮮高官が出席する起工式は2001年9月14日に開催された-米国本土に対する史上最悪のテロ攻撃が発生してから3日後である。

ブッシュ政権は未だに北朝鮮核開発事業計画を破棄していない。エドワード・マーキーと他の議員達は、ブッシュとラムズフェルドに対し、彼等が「核爆弾製造工場」と呼ぶ軽水炉事業への支援を取りやめるよう手紙で要請した。それにもかかわらず、コンクリート注入セレモニーが昨年8月に開催され、ウェスティングハウスは北朝鮮に対し10月まで技術訓練プログラムへの支援を行った。その直後に北朝鮮側は極秘ウラン再処理計画を認めて、武器査察官を追い出し、プルトニウム抽出を行うと発表した。ブッシュ政権は核開発技術供与の延長を停止したが、1月に北朝鮮の事業計画に対し350万ドルの予算を承認している。

遅かれ早かれ、率直な物言いで知られる国防長官は自身の沈黙理由について説明してくれるはずだ。

(以上)

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