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2006/10/05

ボブ・ウッドワードの新著『State of Denial』にワシントンが騒然

ワシントンポスト紙編集主幹で同社のスター記者、ボブ・ウッドワードの最新著作『State of Denial』が10月2日から発売開始された。版元によれば発売後わずか2日で3刷目、90万部以上出荷という超ベストセラー書籍になっており(彦摩呂風に言えば「ノンフィクション界のハリー・ポッターや!!」)、その流れで他のブッシュ批判ノンフィクション本も次々とベストセラーになりつつあるという。

そして、その書籍の内容をめぐり、米国政界に大激震が走っている

ウッドワードのブッシュ政権内幕本としては、これまでに『ブッシュの戦争(Bush at War)』『攻撃計画(Plan of Attack)』の二冊が刊行されているが、政府の機密情報を暴露しつつも、ブッシュ大統領個人については決断力に富む強力なリーダーシップを持つ人物として常にポジティブに描かれてきた。ブッシュ大統領を含めブッシュ政権幹部もウッドワードの描くブッシュ政権像に大変満足している様子(前二作で、ウッドワードはブッシュ大統領・チェイニー副大統領を相手に、特別扱いとも言える長時間独占インタビューをホワイトハウスで行うことを許されている)ブッシュ本人も著作が刊行されるたびに公の場で推薦してきた。

ところが、今度の新著『State of Denial』刊行に合わせ内容の抜粋が報道され始めると、ホワイトハウス側は「ウッドワード氏の報道姿勢は歪曲している」と批判し始めた。ウッドワードの予告どおり、現在の合衆国政府はまさしくState of Denial(拒絶状態)になったのだ。

ニューヨークタイムズ紙は2006年9月30日付でいち早く書評を掲載している。書いたのは、米国のスター書評家と呼ばれるカクタニ・ミチコ氏だ。彼女の書評の冒頭はこんな感じである:

ボブ・ウッドワードの待望の新著『State of Denial』に描かれるブッシュ大統領は、消極的で、忍耐に欠け、未熟で知的好奇心のない指導者で、著しく機能不全となった戦時閣僚を仕切り、ほとんど宗教的な確信により戦争に至った自分の決断を見直したり再評価する気がない人物として登場する。ウッドワードが2002年の著作『ブッシュの戦争』で描いた賛辞に富む大統領像-ホワイトハウス広報部が伝える表現を使えば、思慮深く毅然とした指導者であり、父親が欠いていたといわれる構想力に富み、国家の舵取りをしっかりとできる人物-とはあまりにも対照的な肖像となっている。

ライスとラムズフェルド

電話で話すこともしないライスとラムズフェルド。二人の関係はまるで小学生のケンカレベル。

以下に、ウッドワードが新著で暴露した主な情報を、報道されている範囲で列挙してみよう:

  • 2003年9月の時点で、国家安全保障会議メンバーでイラク政策顧問ロバート・D・ブラックウィルは、イラク国内で反乱軍が台頭しつつあるので追加派兵が必要になるとホワイトハウス側に警告した。しかしブッシュは反乱の懸念を無視し、戦争に関するネガティブな評価の一切を禁止した。ウッドワードによれば、ブッシュ大統領はこう言っていた:「この政権の閣僚には誰ひとりとして反乱という言葉は使って欲しくない。」
  • ネグロポンテ国家情報長官は「イラクの情勢は極めて悪くなり、今後さらに悪くなる。我々は常に反乱の拡大について誤った判断をしていた。」と内密に語っている(一方で先月、ネグロポンテは最新の米国家諜報評価報告で「イラク戦争がテロの脅威を増加させた」と書かれていることについて「意見の一部に過ぎない」と成功を強調した。)
  • イラク政策をめぐりラムズフェルド国防長官とコンドリーザ・ライス現国務長官は敵対し、電話で話すことすらしない険悪な関係になった。
  • アビザイド米中央軍司令官はラムズフェルド国防長官について「イラク戦争の戦略について長官は全く信頼できない」と2005年秋の時点で友人に語っていた。ウッドワードの弁によれば、ラムズフェルド国防長官は米軍内で全く信頼されていないが、ラムズフェルドを公的に批判し辞任を迫っているジョン・マーサ議員(民主党)は「アメリカ軍人達の魂と良心を代弁している。」
  • コリン・パウエル前国務長官はブッシュ政権2期目の閣僚人事の際、自ら辞任を申し出たのではなく『解雇』された。怒ったパウエルは「私がクビならラムズフェルドもクビにすべきだ」とカード補佐官に詰め寄った。そして2005年暮れにカード補佐官は、密かにラムズフェルドをホワイトハウスから追い出す計画を立て、後任にリーバマン議員(民主党)もしくはマケイン議員(共和党)を推薦するつもりでいた(ブッシュ父は当初からラムズフェルドの国防長官就任に反対だった。ラムズフェルドは内輪でブッシュ父を「軽量級(lightweight)」と馬鹿にしていた。ローラ・ブッシュ夫人もラムズフェルドの無礼な態度を嫌い、カード補佐官にラムズフェルドを追い出して欲しいと頼み、コンドリーザ・ライスもラムズフェルド解雇を密かに望んだ)しかし、これがブッシュ大統領の怒りを買い、カード補佐官は辞任することになった
  • ブッシュ大統領はヘンリー・キッシンジャーを信望しており、現在もキッシンジャーはホワイトハウスに招かれブッシュ政権の外交政策を牛耳っている。キッシンジャーはイラク戦争について、ベトナム戦争時代と同じように「反乱軍に勝利する以外に出口戦略なし」と主張し、イラク撤退論を拒絶しさらに米軍の戦力を中東に注力するようブッシュに指示している

ウッドワードの重大な暴露:911テロの2ヶ月前、コンドリーザ・ライスは脅威が迫っているという報告をCIA長官から直接受けていた

以下に、書籍『State of Denial』からポスト紙に掲載された内容を一部抜粋して翻訳掲載。:

911テロの2ヶ月前、ライスに伝えられた緊急警告

2001年7月10日、世界貿易センタービルとペンタゴンへが攻撃される2ヶ月前に、当時のCIA長官ジョージ・テネットはCIAテロ対策局長コーファー・ブラックと、オサマ・ビン・ラディン、アルカイダ・テロ組織の最新の動きについてCIA本部で話し合っていた。ブラックは状況を説明し、盗聴記録と最新の最高機密諜報報告から、アルカイダがまもなく合衆国を攻撃する可能性が極めて高いと主張した。断片的な情報に過ぎなかったが説得力があったので、テネット長官はブラック局長と共にホワイトハウスに報告すると決心した。

テネットは当時の国家安全保障担当大統領補佐官コンドリーザ・ライスを自動車から電話で呼び出し、すぐ会う必要があると話した。CIA長官の要求をライスが拒否するに足る理由はなかった。

-中略-

テネットとブラックは、自分達の懸念の深刻さを伝えて、ライスが合衆国政府諸機関に対しただちに対策をとるよう促すことを望んでいた。

-中略-

テネットは不意打ちの会見を要求することでライスを動揺させることを狙っていた。テネットと、工作活動に熟練したブラックは、ライスとの会見で二つの重要事項を示すつもりだった。第一に、アルカイダがアメリカ合衆国の資産、ひょっとしたら米国本土への攻撃を目論んでいること。戦略的警告が必要になることをブラックは強調し、事態は極めて深刻なので国家全体での戦略的な対応計画を要求するつもりだった。第二に、外交政策上多大な問題を生じるので、ただちに着手する必要があるということだった。彼等はビンラディンの野望を阻止するために工作活動、軍事活動その他何でも実行する必要があった。

-中略-

テネットとブラックは、ライスが事態を理解していないと感じた。彼女は丁寧だったが、、彼等は拒絶されたと感じていた。ブッシュ大統領は書類を読みたくないと語っていた。

-中略-

テネット、ブラック、ライスが出席した7月10日の会議については、911テロ調査に関する様々な報告書の中には言及されていないが、テネットとブラックの心には、ビンラディンとアルカイダに関してホワイトハウスに与えた最大級の警告として残っている。テロ公式調査委員達には関連書類の閲覧が許可されていたが、ブラックが感じたのは、公式調査委員会が知りたい事実と、知りたくない事実があるということだった。

-中略-

バージニア大学教授で、ライスとはドイツに関する共著も出版している911テロ政府調査委員会の事務局長フィリップ・D・ゼリコウは、7月10日の会議がどういうものだったか知っていたが、「ただちに行動」という言葉が何を意味するのか彼には明確でなかった。2005年、ライス国務長官はゼリコウを国務省主席補佐官に抜擢した。

-中略-

それ以来、テネットはライスとの会議について、911テロ攻撃を阻止する最大の機会が失われた出来事として当時を振り返ることになった。ライスはブッシュを説得することも可能だったが、当時の彼女は事態を理解できなかった、とテネットは考えた。テネットは、自分がきちんと役割を果たし、脅威に対して率直に向き合ったと感じていたが、ライスは迅速に行動しなかった。ライスには組織を率いる能力が不足しており、テネットがCIAでやっていたような、人に行動させることができなかったとテネットは感じた。

ブラックは後にこう語っている。「我々が唯一実行しなかったのは、彼女(ライス)の頭に銃を突きつけて、引き金を引くことでした。」(抜粋以上)

ボブ・ウッドワードの暴露した上記の情報に驚いたマスコミ各社は、慌てて事実確認に奔走し、国務省の公式記録と関係者証言から2001年7月10日にテネットがライスと会見した情報が事実であることが確認された。

つまり、2001年7月10日に、コンドリーザ・ライス国務長官(当時は国家安全保障担当大統領補佐官)と彼女の補佐官達は、テネットCIA長官とテロ対策局長コーファー・ブラックの二人から、アルカイダの合衆国本土攻撃の可能性について詳細に警告を受けたが何もせず、CIA側を呆れさせたのだ。しかも、テネット長官は、ライスに説明して数日後、今度はラムズフェルド国防長官とアッシュクロフトFBI長官にも同じように警告していた事実も明らかになっている。おそらくブッシュ政権閣僚は皆、イラク戦争計画に夢中だったのであろう。

9/11 Commission Report

9/11テロ公式調査報告書『9/11 Commission Report

Without Precedent

911テロ政府調査委員会の内幕を委員長自ら暴露した問題作『Without Precedent: The Inside Story of the 9/11 Commission

911テロ公式調査最終報告書では、この2001年7月10日の緊急テロ対策会議について具体的な言及がなく、2004年4月8日に実施された公聴会で宣誓し証人席に座ったライス国務長官は、この2001年7月10日の出来事について質問されることもなかった。

911テロ政府調査委員会のメンバーは何をしていたのか?委員の1人、ティモシー・J・ローマー(民主党)は「全く知らされていなかった。憤慨ものだ」と怒っているが、ワシントンポスト紙の調査によれば、2004年1月28日に調査委員会はCIA本部でテネット長官に聞き取り調査を行い、その際テネット長官は2001年7月10日の事実について委員会に語っていることが判明している。聞き取り調査に参加していたのは政府調査委員会事務局長フィリップ・D・ゼリコウと、委員の1人リチャード・ベン・ベニステ(民主党)だった。つまり、委員会内部の一部は事情を知っていたわけだ。

ウッドワードの記述どおり、フィリップ・D・ゼリコウは911調査委員会の中心的存在で、調査の枠組みからスタッフ人事、レポート作成までを監督している重要人物であることが、先月出版されたトーマス・キーン911テロ政府委員長の調査内幕本『Without Precedent』にも書かれている。ゼリコウが911政府調査委員会の事務局長に就任した際、911テロ被害者遺族会は彼の立場が「利害の衝突」にあたると糾弾した。無理もない。なにしろ、クリントン政権からブッシュ政権に業務引継ぎが行われた2001年当時、フィリップ・D・ゼリコウはライスの下で国家安全保障会議の補佐役を務めていたのだ。(ひょっとしたら、2001年7月10日のテネット氏のテロ警告を、ライスの横で聞いていたスタッフの中には、ゼリコウ氏も含まれているのかもしれない。)

つまり、ボブ・ウッドワードが今回の暴露で示唆しているのは、ゼリコウが盟友ライスのために-あるいは自分のため、そしてブッシュ政権のために-911テロ公式調査レポートの一部を都合良く組み立てたのではないかという疑惑だ。

元CIAアナリストのラリー・ジョンソンも指摘するように、これは疑うに足る理由が充分にある容疑である。そもそも調査対象に属する人物を調査責任者に着任させることで、様々な疑惑と軋轢が生じる懸念があったことが、『Without Precedent』にも書かれている。同書によれば、歴史学者として実績あるゼリコウ氏は、関係各方面から調査責任者に推薦されたと書かれている。その推薦人の中にはホワイトハウス関係者もいたのではないか?

少し歴史を振り返って思い出してみよう。2002年11月27日、実にテロ事件発生から1年以上経過してから、ブッシュ政権は渋々と911テロ政府調査委員会設置を承認した。委員会設置当初の割り当て予算はわずか300万ドル、しかもブッシュ大統領が指名した最初の調査委員長は、ヘンリー・キッシンジャーだった。ケネディ大統領が暗殺された時、ジャクリーン夫人は事件の調査を一年も待てただろうか?クリントン大統領とモニカ・ルインスキーがオーバル・オフィスで行った大惨事の際に、共和党が大騒ぎで主導した大統領の下着の調査費用(ホワイトウォーター疑惑の調査を含む)は6,400万ドルである

911テロ調査委員長トーマス・キーン氏は、内幕本『Without Precedent』の中で、「公式調査の目的は本土防衛に失敗したことの責任追及をすることではなく、事実だけを明らかにすること」と強調している。それは歴史を記録するという面では正しい姿勢かもしれないが(911テロ被害者遺族はそれでは納得しないだろう)、それならば、ブッシュ政権の明確な失敗についての説明責任は、どこで果たされる予定なのだろう?

ウッドワードの暴露を受けて慌てたコンドリーザ・ライス国務長官は、テネットとの会見を最初は否定したが、公式記録で事実と確認されると、『ビン・ラディンが合衆国本土攻撃を決定』というタイトルのレポートを手にした時(2001年8月6日)と同じように「切迫した内容ではなかった」と反論している。しかし一方でライスは、ブッシュ政権二期目スタート時に、辞任の意向を大統領に伝えていたと漏らした。彼女は内心、自らの失敗をおおいに恥じているのではないだろうか。

ところで、退任以来沈黙を保っている元CIA長官ジョージ・テネット氏は、来春刊行予定の回想録を執筆中で、ブッシュ政権に対する復讐を込めた暴露を行うと噂されている

テネットが何か言い出す前に、誰か早くコンディをクビにしてやれ。

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