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2006/11/17

クルーグマン:『真の庶民派』

米国を代表する経済学者ポール・クルーグマン氏のニューヨークタイムズ紙連載コラム2006年11月13日掲載分を以下に全文翻訳。

真の庶民派(True Blue Populists)

by ポール・クルーグマン:NYタイムズ紙2006年11月13日付コラム(truthout転載分)

バージニア州上院議員、ジョージ・アレンが驚き落胆するのも当然だ。1年前、ナショナル・レビュー誌の表紙で、アレン氏はその“素朴な性格”により“合衆国の次期大統領になる可能性が極めて高い”と評されていた。ところが今、彼の政治生命は終わろうとしている。

アレン議員を台無しにしたのは、“マカカ”や、イラク戦争だけではない。財界エリート達のお気に入りであるアレン氏は、拡大する格差問題を論点にする相手と対決したのである。そして、噛み煙草好きで、フットボールファンで、減税派で、社会保障民営化支持派のアレン上院議員は、真の庶民派に敗北を喫した多くのニセ庶民派の1人にすぎなかったということだ。

保守派運動の下で、共和党は有権者の大多数を犠牲にして、少数の富裕なアメリカ人達のために尽くしてきた。この現実を隠すために、保守派は論点をすり替え課題を変え続け、さらに卓越したマーケティング活動によって、民主党支持派をエリートに、共和党支持派を平均的なアメリカ人の代弁者のように演じさせることに成功してきた。

この巧妙な詐欺の手口は、論点を政策から個人の話題にずらすことだった。ジョン・ケリーはフランス語を話しウインドサーフィンをするということで、富裕層への減税を取り消して収益を医療保障の拡大に充てるという彼の政策には注目が集まらなかった。

しかしながら今年は、アメリカ国民も賢くなったらしい。

例によって、一部の記者達は未だに保守派のスピンにご執心のようだ。モンタナ州上院議員に当選したジョン・テスター氏の写真を掲載しながら、CNNは「保守派のような振舞いをしても、民主党員になれるのか?」と見出しを掲げた。言葉を変えれば、もしも右翼の描くリベラル像に合わない民主党員がいたら、その人物は保守派というわけだ。

しかし、ニューヨークタイムズ紙のロビン・トーナー記者とケイト・ザーナイク記者が昨日指摘したように、民主党の新潮流を形容するには「庶民派経済主義の強いうねり」がふさわしい。

モンタナ州選出の新人議員テスター氏

モンタナ州選出の新人ジョン・テスター氏は共和党現職の強豪コンラッド・バーンズ上院議員を破って当選。過疎化が進むモンタナ州北部に住む農家の3代目で、典型的庶民派として注目されている。(NYタイムズ紙

テスター氏の実際の政策を見てみよう。“最低賃金引き上げに賛成”、“社会保障民営化に反対”、“メディケア(高齢者向け医療保険制度)の負担軽減のために巨大製薬企業と対決し価格交渉をしよう”、“全てのモンタナ州住民が安価な医療保険に加入できるような医療サービス支援のために巨大保険企業と対決しよう”。

本人の角刈り頭は除外するとして、テスター氏のどこが保守的なのか?・・・まあいい、確かに彼は銃の所有に賛成だ。しかし経済政策では、現在の上院議員の基準から見ても、あるいは民主党上院議員達の基準から見ても、明らかに彼は中道左派に属する。同じようなことは、ペンシルバニア州選出のボブ・ケイシーや、ロード・アイランド州選出のシェルダン・ホワイトハウス、オハイオ州選出のシェレッド・ブラウンにもあてはまる。これら候補者達は、ひるむことなく庶民派の立場で立候補し、当選している。

ジョー・リーバマンはどうか?沈没船の瓦礫にしがみつく生存者のように、アメリカ国民の保守化が継続していることを示す証左として、彼の再選を挙げる者もいるようだ。しかし、リーバマン氏が勝利したのは、単に彼が否定と偽証を成し遂げたにすぎない。例えば、かつてイラク戦争とドナルド・ラムズフェルドを熱烈に支持しておきながら、彼は歴史を書き換えている。彼は共和党支持者の2/3の支持を集めて、自身の立場について多くの民主党支持者を混乱させ、まんまと再選を果たしたのだ。

なによりもまず、先週の選挙が見せた庶民派への潮流は、2000年大統領選挙後半でアル・ゴアが気づかされた庶民派への流れを立証している。しかし、この流れは現実の民主党の方向性に反映されるのだろうか?

必ずしもそうではない。相当数の民主党現職議員は、共和党議員同様に、企業の意向に沿った態度を見せている。昨年通過した過酷な破産法案を考慮してみよう。リーバマン氏は上院討議打ち切りに賛成し、議論を止めて法案通過に臨み、それから法案に反対票を投じた。賛成・反対のどちらにも受け取れる無意味な素振りだ。他に13人の民主党上院議員が討議打ち切りに賛成したが、それには大統領選出馬を表明したばかりのジョー・バイデンも含まれている。

民主党の新庶民派指向が問われる最初の大きな試練は、2003年通過の処方薬剤法の改善案だろう。民主党側は、医薬品価格の値引き交渉にメディケア(高齢者向け医療保険制度)向けを除外する条項の撤廃を求めている。しかし、それを実現するための細則こそ重大なのだ。メディケア改革は象徴的な意思表示にすぎないのか、製薬業界と保険業界に対し間接的に巨額の政府助成を与えている現在の制度を撤廃する、真の改革となるのだろうか。

新たな息吹を与えられた民主党員達は、果たしてこの国の方向性に真の変革を迫る用意があるか?今後数ヶ月のうちに、それは明らかになるだろう。
(以上)


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