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2006/12/04

クルーグマン:「経済大波乱の兆し」

今回は、米国を代表する経済学者の1人、ポール・クルーグマンの最新コラムを以下に翻訳。


経済大波乱の兆し(Economic Storm Signals)

by ポール・クルーグマン:NYタイムズ紙2006年12月1日付連載コラム

「予測というものは難しい。未来については尚更だ」ヨギ・ベラならそう言っているはずだ。実際、この言葉は経済学者にとっておおいに頷けるもので、現在の状況について予測することですら大変なことがある。今回はそんな苦労のひとつである。

すでに2006年度も第4四半期を3分の2ほど過ぎており、皆さんは経済学者達が今期の状況についてすでに理解しているとお思いかもしれない。しかし、未来の話は別として、米国経済の現況に関して、専門家の評価はかなり混沌としている。

そこで悪いニュースをひとつ。経済の現況に関してこのような混乱が起きる時は、往々にして経済がひとつの転換点にさしかかっていることを示しており、経済は発展期から停滞期に向かいつつある(あるいはその反対)ということだ。このような転換点に際しては、普段は経済の流れを示す様々な指標があちこちを向いており、楽天派と悲観派の双方にとって、自説を裏付けるデータが見つかることになる。

最後にこうした混乱が起こったのは2001年度で、大半の専門家は合衆国経済が停滞期に滑り落ちていることに気づかなかった。不吉の前兆に思えるなら、その通りだ。不景気の予測に役立つ債券市場は、来年度から深刻な経済停滞期に向かうことを示している。

債券市場の指標について説明する前に、なぜ経済が転換点にきているのか説明しよう。

2003年中盤から2006年中盤にかけて、合衆国の経済成長を主に支えたのは巨大な住宅ブームだった。住宅ブームは直接雇用を創出し、消費者は住宅資産評価の上昇を担保に資金借り入れをして、惜しむことなく支出をしてきた。

その住宅ブームが今では駄目になった。しかし、楽天派と悲観派では、住宅ブームがどれくらい駄目になったのか、そしてそれが経済全体にどれくらい影響を及ぼすかについて意見が分かれている。

楽天派の中には、住宅バブルを暴走させた張本人としばしば批判されることもあるアラン・グリーンスパンがいる。火曜日に、ある会議の席上で、グリーンスパン氏は投資家達を前に「住宅販売数は安定化しているようだけれども」と言いつつ、住宅ブーム停滞の最悪期間は終了したと発言している。

しかしその次の日、政府は10月度の住宅販売数に関する憂鬱な統計を発表し、数ヶ月以前の予測を下方修正した。今週発表される様々な経済統計の全部とは言わないまでも、ほとんどの数値は予測よりもかなり悪化している。

悲観派は、減退した数値によって主張が裏付けられたと感じている。住宅ブームが牽引する景気停滞について予測していたルービニ国際経済研究所のヌリエル・ルービニ氏によれば、経済はすでに失速しているという。ルービニ氏は今期についてゼロ成長を見込んでいる。ドイツ銀行の経済学者達も同じことを言っている。

しかし、それはまだ少数派である。ほとんどの経済専門家は、心配いらないと言っている。では誰を頼るべきか?どうすれば自分が信じたいことを信じるという事態を避けることができるのだろう?

最適な回答としては、金融市場をみることかもしれない。株式市場では駄目だ-周知のとおり、株式市場では経済の方向性を見誤ることになる。債券市場が良い。(直近の5つの不景気のうち、株式市場が予測したのは9つだった、とノーベル経済学賞を受賞したMITの経済学者ポール・サミュエルソン氏が揶揄したのは有名だ)

夏以来、住宅ブーム失速が明らかになってから、長期債の利率は敏速に下がった。今では短期公債にはるか及ばない。投資家が今から長期債を買おうとするのは、つまるところ彼らが金利低下を期待している事実を示している。そうなる時とは、経済が弱体化し、連邦準備銀行が金利切り下げに踏み切る場合だけだ。要するに債権の買い手達は、将来経済が停滞することに賭けているのである。

債権市場が予測する経済停滞は、どれくらい深刻なものになるだろう?極めて深刻だ。金利と不景気の歴史的相関性を元にした統計モデルをみても、我が国が正式に不景気に突入しつつある公算は高い。景気停滞が正式な不景気と評価されないことになっても、失業率は急増することになり、ことによると2対1の比率で、2007年は非常に厳しい年になる公算が高い。

幸い、経済の大波乱が迫っていても、我が国には優れた指導者達がいる。ホワイトハウスは思想的に柔軟な人物によって支配されており、彼は様々な視点を受け入れ、政策とは直感的な根性ではなく慎重な分析によって決定されるべきと理解しているからだ・・・あれ?ちょっと待ってくれよ。
(以上)

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