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2007/03/19

イラク戦争4年後の泥沼:武装勢力の新たな戦術

「ワシントンはますます大変なことになってますね。ハリー・リード議員(民主党)の“イラク戦争は合衆国史上最悪の失敗だった”という批判に、本日ホワイトハウス側は反論しました。ホワイトハウス側はこう言ったんです:“ブッシュ大統領にはまだ2年任期が残っていることを国民は理解すべきだ”。」

コナン・オブライエンのジョーク

米軍のイラク侵攻から4年。米軍兵士3,254人がすでに戦死し、2万3,924人が戦傷を負っているGlobalSecurity.orgの調査。イラク市民の犠牲者数は最大6万5,121人iraqbodycount.orgの調査国連人権委員の報告によれば、2006年だけでイラク市民3万4,452人が殺害され、3万6,000人以上が負傷したという)。イラク国内では駐留連合軍、シーア派武装勢力、スンニ派武装勢力による内戦状態が拡大している。

一方でイラク北部では、クルド自治政府(前クルド愛国同盟)の代表を務めるクバド・アル=タラバニ氏(ジャラル・タラバニ前イラク大統領の息子)が米国ワシントンDCでロビイングオフィスを開設し、米実業界に投資を呼びかけながら自治権拡大をPRしている。しかし北部でのクルド人勢力拡大に反対するスンニ派武装勢力は、北部でも攻撃を行っている

シーア派民兵軍(ムクタダ・アル・サドル氏率いるマフディ軍など)の勢力拡大が伝えられると、シーア派と連携するイランの影響力拡大を懸念するサウジアラビア王家は、昨年暮れにチェイニー副大統領をわざわざサウジへ召還し、「米軍が増派しないのなら我々はスンニ派武装勢力への支援を拡大するぞ」と警告し、着任して1年早々の駐米サウジ大使を急遽帰国させたチェイニーのサウジ訪問は、当初は定例の石油産出国訪問とアピールされていたが、ポスト紙が暴露するように、サウジ側がブッシュ政権側に“すぐ顔を出せ!”とばかりに呼びつけたものであったらしい。)

サウジ王家のスンニ派武装勢力支援宣言は、ブッシュ政権にとって非常に厄介な問題のはずだった。なにしろイラクのスンニ派武装勢力にはアル・カイダ系グループも含まれているというし、911テロの首謀者の多くはサウジ出身で、サウジ王家とビン・ラディン家は深い関係にある。しかも、イラク駐留米軍への致命的攻撃の大部分はスンニ派武装勢力によるものだ。しかし、サウジの支援によってシーア派武装勢力とその背後にいる(?)イラン政府に打撃を与えたいブッシュ政権は、米国への宣戦布告にも等しいサウジの行動を黙認しただけでなく、サウジ王家の意向に沿うように、議会の承認もないまま米国民の税金を密かにスンニ派武装勢力(アルカイダ系含む)に提供し始めたというシーモア・ハーシュの報道

つまり、イラク駐留米軍への攻撃が激化し、米兵戦死者が急増する原因の一端は、ブッシュ政権とその友人であるサウジアラビア王家ということになる。そしてブッシュ側は、イラク内戦激化の原因がイランのシーア派支援にあると主張し、イラン侵攻へと歩を進めつつある。今のところ米大手メディアはイラク戦争よりもアンナ・ニコル・スミスの突然死に5倍から10倍の報道時間を割いて国民の目を逸らしているが、ブッシュとサウジによる米国への裏切り行為が知れ渡ることになれば、アメリカ国民も黙ってはいないだろう。

ともかく、二大軍事大国の支援を受けたイラクのスンニ派武装勢力は、当然の帰結として攻撃手法が益々洗練・高度化されている。外交専門誌FOREIGN POLICYの報道によれば、最近の米軍に対する攻撃には以下に要約したような新たな戦術が見られるという。

戦闘ヘリへの攻撃
スンニ派武装勢力は戦闘員同士が高度に連携し、複数の兵器-地対空ミサイル、重機関銃、RPG(携行式ロケット弾)、無誘導ロケットを組み合わせて、米軍の戦闘ヘリを撃墜し、さらに撃墜現場に急行した米軍部隊に対して、あらかじめ設置された路肩爆弾等で待ち伏せ攻撃を仕掛けている。

これら新手の攻撃手法により、今年1月から現在までに9機のヘリが撃墜され、30人以上の兵士・市民が死亡している。過去3ヶ月間のヘリ撃墜数は2006年度全体の撃墜数を超えた。

武装勢力が台頭し始めた頃、戦闘ヘリに対する攻撃は小火器が中心だったので、米軍パイロットは高度を上げて飛行すれば負傷を避けることができた。しかし高高度での飛行は地対空ミサイルの標的になりやすい。新たな連携攻撃手法の前には、戦闘ヘリはあらゆる高度で飛行が危険になり、路肩爆弾を避けるため航空輸送に傾倒する米軍にとって痛手となる。また待ち伏せ攻撃の増加は、米軍の飛行ルートが知れ渡っていることを示している。

塩素ガス爆弾
スンニ派武装勢力はトラックの荷台に大量の爆薬と塩素缶を積んで爆破活動をしている。この新たな爆弾製造手法により、一回の爆破でより大きな被害が見込まれ、ガスによるパニックも引き起こされる。
米軍施設への直接攻撃
米軍施設に対して、迫撃砲、路肩爆弾、狙撃などが頻繁に行われるようになった。また米軍服を着た英語を話すゲリラ兵が米軍兵を誘拐・殺害している。3月にはモスルにある刑務所をアルカイダ系ゲリラが急襲し、140人の囚人を一時的に解放した。軍事専門家によれば、米軍施設への直接攻撃は武装勢力の自信を示しており、またイラク治安部隊と米軍の溝を拡大させる効果を狙っているという。
爆発成形弾の増加
通常の路肩爆弾に加えて爆発成形弾(EFPs)が増加し、米軍各部隊に致命的な打撃をもたらしている。駐留米軍の報告によれば、2006年度に爆発成形弾による攻撃は前年までのそれに比較して2倍に増加したという。

これだけ事態が深刻化しているのに、未だに米国議会はブッシュ政権の暴走を止められないらしい。民主党の愚かな大統領候補ヒラリー・クリントンは、自分が大統領になったら駐留米軍兵力を削減しつつも、反米勢力の攻撃から“石油産出地区の利益”、さらに”イスラエルの利益”を保護するために、永続的にイラクに駐留させると宣言している。今や90%以上のイラク国民が外国軍の駐留に反対しているというのに。

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