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04/20/2007

ボブ・ハーバート:『キレる若者、屈辱、そして銃』

Virginia Tech students and supporters lifted thousands of candles to a sapphire sky to remember the 32 people killed by a campus gunman.

ヴァージニア工科大虐殺事件発生から1日たった17日夜、1万人以上がキャンドルを手に被害者を追悼した。(Think Progress


ヴァージニア工科大で発生した恐るべき銃乱射事件。米マスメディアは“虐殺”事件と呼び、犯人のPRビデオは全米で放映された。暴力、恐怖、攻撃心を2億人以上でほぼリアルタイムに共有できるようになったこの国では、物事を再考するヒマも場所もなくなりそうである。満員電車にムリヤリ押し込まれたような世界だ。今頃は、銃規制強化の呼びかけの裏で、全米各地で銃の売り上げが急増しているかもしれない。

一方で日本でも、長崎で市長が銃で殺害されるという惨劇が起きた。大手マスコミは揃って大声で“民主主義に対する重大な攻撃だ!”と繰り返している。民主主義への攻撃!?その通りだよ!今度から国会で強行採決があるたびに、政治家が回答を拒否するたびに、今と同じくらい皆で怒鳴ってやろうじゃないか・・・ところで、選挙直前に候補者が殺されたのに、誰も犯人の背後関係を疑わないのだろうか?

そんなわけで、今回はNYタイムズ紙の良心と呼ばれる名物コラムニスト、ボブ・ハーバートの最新コラムを翻訳して掲載。

キレる若者、屈辱、そして銃(A Volatile Young Man, Humiliation and a Gun)

by ボブ・ハーバート:NYタイムズ紙2007年4月19日付けコラム


“おまえらを殺すのが待ち遠しいぜ。”
-コロンバイン高校事件の犯人エリック・ハリスのウェブサイト上の言葉


1966年8月1日月曜日の夜明け前、元海兵隊員でテキサス州オースティンのイーグル・スカウトを務めるチャールズ・ホイットマンは、ベッドで妻を刺し殺した。その日の前の夜には、彼は街のはずれにある母親のアパートまで車で乗りつけ、母親を殺していた。

朝になると、ホイットマンは食料、水、弾薬、ライフル2丁、ピストル2丁、カービン銃とショットガンを担いで、テキサス州立大学のキャンパスにある名物の30階建タワーを昇っていった。

まぶしい日差しの下、気温が30度を超えて上昇し始める頃、ホイットマンは銃撃を開始した。最初の標的は10代の妊婦だった。その後警官に射殺されるまでのおよそ80分間で、彼は14人を殺害し、30人以上を負傷させた。

それから40年以上が経過し、安全と思われた場所で断続的に発生する殺人的暴力事件を目の当たりにし、我々は未だに途方に暮れている。まるで悪魔そのものが突然登場したかのように、我々はただ愕然としている。今回は、32人の罪なき人々が、バージニア工科大学のキャンパスで虐殺された。なぜこんなことが起きたのだろう?全てが説明不能のようにみえる。

しかし、アメリカで起きる殺人的暴力事件のパターンを注意深く観察すると、個別の残虐行為が発生しているようでも、いくらかの一貫性が垣間見えるのである。相次ぐ事件で、年月を重ねても、殺人者になる人物は恥と侮辱に悩む若い男性で、しばしば女性と同性愛者を激しく嫌悪し、自らの揺らぐ男らしさを立て直し、ずっと拒絶されてきた尊厳を取り戻す方法として、外に出て人を殺すと決心する傾向にあるようだ。

マサチューセッツで刑務所の精神分析医として長年暴力を研究し、ハーバード大とニューヨーク州立大で教授を務めるジェイムズ・ギリガン博士によれば、女性嫌悪と同性愛嫌悪の複合化した衰弱要素が、ほとんどでないにしろかなりの割合で、我が国で起こる暴力の最悪の形態の中核を占めているという。

「殺人者やレイプ犯、様々なタイプの暴力犯罪者を長年研究してきた結果として私が結論づけると、」博士は言う。「ある程度の度合いでほとんどの事例に存在する潜在的要因は、男らしさを証明するという感覚であり、それを実現するために、失われた尊厳を取り戻すために、暴力行為に走るというものです。」

通例では、暴力とは現代社会における女性に対する敵対心の蔓延と、自分があまり頑健でなく、男らしくない-簡潔に言えば、自分に同性愛的傾向があるのではないかと多くの男性が抱く病的な恐怖心から沸きあがる不安感情に対する防衛機制の方策とされている。

暴力性と男らしさを同等視する過酷な文化においては、「自尊心の感覚を取り戻すための手段として暴力を用いるのはとても魅惑的に映るのです。」ギリガン博士は言った。

ヴァージニア工科大の殺人犯チョ・スンヒは、女学生に付きまとい、テーブル下から女性の不適切な写真を撮影していたと報道されている。以前ルームメイトだった学生がCNNに語ったところでは、チョ氏はキャンパスの女学生の目の中には『淫乱』が見えると主張したという。

チャールズ・ホイットマンは陽気なアメリカ的青年と見られることが多かった。しかし、海兵隊時代に軍法会議にかけられたことで、大学では苦労し、明らかに鬱に苦しんでいた。彼は精神医に父親を嫌悪していると語っていたが、殺戮の開始は妻と母の殺害からだった。

力不足という感情、性心理の不安、容易な銃の入手の合流は、我が国の驚くべき数の殺人事件に結実している。

アメリカ合衆国では2億丁近い銃が市民の手に握られており、毎年3万人以上-イラクで戦死した米国人のほぼ10倍の人数が、銃で殺されている。1966年当時、銃で殺される人数は年間1万7,000人程度だった。当時のタイムズ紙上では、チャールズ・ホイットマンのような“凶暴な”銃撃事件を評してこう書いている:

“動機がどうであれ、いかなる品行も精神状態も問われることなくあらゆる種類の銃が入手できるという現実が、事件を起きやすくしているのは明白であろう。”

我々はこの40年間でほとんど何も学んでいない。
(以上)

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04/17/2007

マイケル・ムーア、次回作で早くも大波乱の予兆

『華氏911』の大ヒット以降、総じて沈黙を保っている米ドキュメンタリー作家マイケル・ムーアが、次回作の公開に向けていよいよ活動を再開したらしい。『Sicko(病人)』という仮タイトルの次回ドキュメンタリーは、今年5月に開催予定のカンヌ映画祭での初公開を目指して編集作業が進められているという。4月20日追記:ムーア公式サイトの最新ニュースによれば、今年のカンヌ映画祭は5月16日-27日、『Sicko』は特別招待作品として上映が決定したとのこと。)

以前から報道されている通り、新たにムーアが取り組む課題はアメリカ医療システム危機問題、特に巨大製薬企業の問題が標的となるとみられている。

米保守派タブロイド紙NYポストによれば、ムーアは911テロ事件現場で救急活動や瓦礫の撤去に携わり、有害な塵を吸い込んで呼吸器官に深刻な障害を負いながら合衆国政府の支援を受けられなかった人々の一部をキューバに連れて行き、キューバ政府が国民向けに無料で提供している医療サービスを受けさせ、その一部始終をフィルムに収めたらしい。ポスト紙上では、ムーア監督からの誘いを断った人や、誘いに応じたものの結局キューバに行けなかった当事者達の怒りの言葉を紹介している。

ムーアの暴走ぶりはともかく、何よりもまず注目されるべき問題は、未曾有のテロ事件に際して身の危険を顧みず救助・復興活動に従事した人々に対する行政府側の処遇である。市街地での超高層ビル崩壊に伴う環境危機に際して、ブッシュのホワイトハウスと当時のNY市長ルディ・ジュリアーニは、何よりもまずNY証券市場の再開を最優先にした。「アメリカは普段通り営業している!」とテレビ画面で胸を張ってみせることでどれほどアメリカ合衆国の評価に貢献したのかは誰も知るよしもないが、有害物質が大量に舞う環境の中で市民に日常生活を続けるよう要求し、結果として呼吸器障害に苦しむことになった人々-救急・復興作業関係者だけで4万人-に対して、政府が医療支援を開始したのは事件から5年近く経過してからであった。テロ事件からわずか6日後にニューヨーク証券取引所が営業を再開したのとはあまりにも対照的である。この行政側の無責任な対応については、ムーアの訴えるとおりもっと周知されるべきだろう。

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2008年大統領選の共和党有力候補ジュリアーニ元NY市長の実像を暴露する問題作:『Grand Illusion: The Untold Story of Rudy Giuliani And 9/11

9/11テロ直後からテレビ画面に頻繁に登場して危機管理リーダーシップをアピールし、2008年大統領選出馬の足がかりを掴んだジュリアーニの危機便乗姿勢もおおいに批判されるべきだ。市長退任後に危機管理マネジメント分野をビジネスにしたジュリアーニは、年間80回の講演でおよそ800万ドルを稼いでいるという。講演テーマのほとんどは、911テロ事件現場でいかに自分がリーダーシップを発揮したかという自慢話だ。例えば2004年末のスマトラ沖大地震被災者のためにカリフォルニア州サンディエゴで開催されたチャリティイベントにスピーカーとして招かれた際にも、専用ジェット機による無料送迎+講演料10万ドルを受け取っている。(チャリティなのに奉仕精神ゼロ?)

93年に最初の爆破事件があって以来、世界貿易センターとその周辺地区がテロの標的になる危険性に気づきながら、ジュリアーニ市長は当局の救急体制を複雑化させ、結果として9/11テロ被害のさらなる拡大を招いたことで関係者達から猛烈な批判を浴びている。大統領選に向けた資金集めには有料講演も大切だろうが、別の分野の活動でアピールすべきではないか。例えば・・・まあ、共和党員にはウケが悪いだろうが・・・ベネズエラ大統領チャベスとの隠れたパートナーシップの件はどうだろう?


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04/13/2007

追悼:ヴォネガットさん、どうか安らかに・・・

“私は、偶然にも、偉大なるSF作家のアイザック・アシモフの後継者として、全く役立たずの立場ながら、アメリカ人道協会名誉会長になってしまったわけです。何年か前にアイザックの追悼行事で、私が喋ることになって、こんなことを言ったんです:「今、アイザックは天に召されています。」人道主義の方々の前で言うには最高に愉快な言葉でしたな。皆さん大爆笑だ。元に戻るまで数分かかりました。あって欲しくないと思いますが、万一私が死ぬことになったら、こう言っていただきたい。「カートは今、天に召されています。」これが私のお気に入りのジョークなんですよ。”

-from 『祖国なき男(A Man Without a Country)』

カート・ヴォネガット氏公式サイト

以下、ワシントンポスト紙2007年4月12日付報道から抜粋:

戦争の不条理と科学の進歩に疑問を唱える風刺小説家として『スローターハウス5』や『猫のゆりかご』等の悲観的なユーモア作品で知られるカート・ヴォネガット氏が、水曜日に亡くなった。84歳だった。

ヴォネガット夫人で写真家のジル・クレメンツの話によれば、ヴォネガット氏は、生涯を通じた喫煙習慣にも関わらず長生きしたことをしばしば驚いていたが、数週間前にマンハッタンの自宅で倒れてから脳損傷を煩っていたという。

Kurt Vonnegut

散歩中のカート・ヴォネガット氏(source


ワシントンポスト紙からさらに引用:

生前のヴォネガットは、死ぬとしたら、飛行機に乗ってキリマンジャロの山頂にぶつかって死にたいと語っていた。また、老いることの難しさを冗談にすることもあった。

「ヘミングウェイが死を選んだ時、彼は人生の最期にピリオドを選択したのだ。老いるには、むしろセミコロンがふさわしい。」2005年、AP通信に対してヴォネガットはそう語っている。

「私の父は、ヘミングウェイと同じように、銃狂いで晩年は機嫌が悪かった。でも、父は自殺しないことを誇りにしていた。私も同じようにしようと思う。子供達に悪い手本を残さぬようにね。」


当サイトの過去記事リンク:

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04/10/2007

SFクロニクル紙:「保険未加入の患者、肋骨骨折で治療費が1万2,000ドル超」

先日も伝えた通り、2008年大統領選挙に向けて、アメリカでは二つの大きな争点が浮上している。イラク戦争と、医療システム危機だ。今回は、アメリカ医療システム危機の具体的な事例をうまく伝えるサンフランシスコ・クロニクル紙に掲載されたコラムを翻訳して掲載。

保険未加入の患者、肋骨骨折で治療費が1万2,000ドル超

by デビッド・ラザラス:サンフランシスコ・クロニクル紙2007年3月30日付けコラム

我が国では医療保険に加入していない国民が4,700万人いる。リッチモンドに住むジョーイ・パーマーもその1人だ。

ジョーイは、保険未加入状態がいかに高くつくかを思い知ることになった。軽微なオートバイ事故で肋骨を骨折した後で、サンフランシスコ総合病院の1万2,000ドル(約143万2,098円)を超える請求書に襲われたのだ。

「こんな金額、払えるわけないよ。」32歳のパーマーは私に言った。「俺はホームレスじゃないけど、こんな大金、今すぐには無理だ。こんな金額誰が払えるっていうんだ?」

サンフランシスコ総合病院管理業務部長のイマン・ナゼーリ・シモンズは、パーマーに同情すると言った。

「私達のせいじゃないんです。」彼女は言う。「システム全体がいけないんですよ。崩壊してるんですから。その改善のために、どうしたら道理に適ったやり方で治療を提供できるようになるのか、詳しく調べる必要があるんです。」

パーマーの物語は、合衆国の暴走する医療費をめぐる広範な問題と、数百万のアメリカ国民に独力で生き延びるよう強いているそのシステムを実証している。

それはまた、地域や相手を問わず手の届く金額の医療サービスを保障する公的制度の重要性を明確に示している。それこそ、カリフォルニア州を含め現在の大統領選挙キャンペーンの中核を占める政策課題の最終目標なのだ。

「先進国中、国民皆保険制度がないのは我が国だけです。」都市研究所の上級調査員を務めるスタン・ドーン氏は言う。「しかも、我が国の医療費は他の先進国と比較して最も高額なのです。」

経済協力開発機構の最新統計によると、アメリカ合衆国では2004年度の国民1人あたりの医療保険平均額は6,102ドル(約72万7,849円)であった。

カナダでは国民1人あたり3,165ドル(約37万7,546円)、フランスでは3,159ドル(約
37万6,785円)、オーストラリアでは3,120ドル(約37万2,133円)、イギリスでは2,508ドル(約29万9,191円)である。一方で、合衆国国民の平均寿命はこれらの国より短く、乳児死亡率は高い。

しかし、それらは単なる統計の話。アメリカの医療システム危機を語るなら、実際に人と話してみたほうがいい。パーマーの話は多くを物語っている。

9月19日、パーマーはバイクに乗ってサンフランシスコのプレシディオを走っていた。夕方頃、パーマーはリッチモンドの自宅に帰るために、金門橋方面に向かっていた。

突然ブレーキがロックし、バイクが滑走した。パーマーはガードレールに激突した。体は酷く振り回されたが、ケガはたいしたこともないようだった。

一部始終を見ていた通行人が助けを呼んだ。まもなく救急車が駆けつけた。

パーマーは救急医療士に、肋骨を傷めた感触があり、たぶん骨折しているだろうが、それ以外はOKだ、と説明した。自分の収入レベルを考え、自宅があり、治療費を抑えられる可能性のあるコントラ・コスタ郡で治療を受けたいと説明した。

パーマーは富裕層向けヨットの装飾を専門とする建具職人だ。昨年の収入はわずか7,500ドルで、親類の援助で暮らしているという。

パーマーによれば、救急医療士は彼が身体内部の損傷に耐えられるか懸念し、すぐに近所の病院で治療を受けるよう薦めたという。そこで、彼は救急車で、市内唯一の外傷センターであるサンフランシスコ総合病院に運び込まれることになった。

パーマーは幸運だった。救急車は連邦政府機関であるプレシディオ消防局から来たので、救急サービスに課金されることはない。民間の救急車サービス企業を呼んだ場合、パーマーはおよそ700ドルから1,000ドルの費用を請求される可能性があった。

一方で、パーマーが知らなかったのは、救急医療士が病院側に事故の被害者を運ぶと無線連絡してすぐに、サンフランシスコ総合病院側が、通常の手続きに則り、職員達に外傷警報を発令していた事実だ。

基本的に、そうした事態では医者と麻酔医に待機するようポケベルで連絡され、その連絡だけでパーマーには4,659ドル(約55万6,165円)が課金されたのだ。まだ彼が病院に運ばれる前の出来事である。

実際の病院での体験は、控えめに言っても悪夢だった。様々な検査のために血液が採取され(その内最安値の検査で44ドル、最高値の検査が107ドル課金される)、レントゲン写真も撮影された(423ドル課金)。

その後、パーマーによれば、彼は“酷い幻覚を見ている最中の”麻薬中毒患者が居る患者室に置き去りにされた(2,070ドル課金)。どこか別の場所へ移動してもらうよう願い出たが、空いている部屋がないと言われた。結局、パーマーは廊下で移動ベッドの上に収まった。

そこで彼は5時間待たされた。

パーマーの請求書によれば、待ち時間の間、痛みを抑えるためにヴァイコディン(鎮痛薬)を2度投与されたことになっている(22ドル課金)が、本人によれば薬をもらっていなかったという。

「ようやく職員を見つけたので病院を出てもいいか尋ねたんだ。」彼は言う。「その人の話では、CTスキャンの結果待ちということだった。俺は“CTスキャンなんて受けてないよ”と言ったんだ。結局、連中は俺を検査者リストに入れ忘れてたことがわかったんだ。」

そこで、パーマーはCTスキャン検査者リストに加えられた。そしてまた1時間待った。

ついにCTスキャン検査を受けて(3,334ドル課金)、その後再び一連のレントゲン撮影をすることになった。パーマーの話によると、最初に受けたレントゲン撮影は明らかに失敗していたということだ。

「ようやく医者と向かいあった・・・もう午前2時だ・・・で、医者が言うには、確かに肋骨が骨折しており、いくらか筋肉も損傷を受けたらしかった。」パーマーは回想する。「それだけだ。診察終わり。」

それからすぐに、退院用紙を持った事務職員がやって来て、パーマーに署名を求めた。

「彼女は支払いをどうするか尋ねてきたんだ。」パーマーは言う。「俺は彼女に、医療保険に入ってないと言った。彼女は俺を見て、誰か訴える相手がいるかどうか尋ねてきた。」

数週間後、パーマーは病院の料金として1万1,082ドル(約132万1,870円)、医者の料金として922ドル(約10万9,976円)の請求書を受け取った。

パーマーの医療体験は高額で時間のかかるものだったが、珍しいことではない。多くの国民が、アメリカ医療施設で“救急”医療を受けた際の同じような(同じくらい高額な)経験を挙げるだろう。

「我が国では、医療というものが、大金を稼ぐことが出来るチャンスのように捉えられているんです。」都市研究所のドーン氏は言う。「医療の目標とは人の健康状態の改善にあるべきなんですがね。」

パーマーの冗長な病院滞在について、サンフランシスコ総合病院のナゼーリ・シモンズは、治療記録を見る権利がないのでコメントできないと言った。しかしパーマーが許可を与えたので、彼女はパーマーの請求内容について検討することができた。

「医療市場全体をみれば、この請求内容が突出してることはありません。」ナゼーリ・シモンズは言う。「他所の病院の請求内容に比較して並外れていることもないですね。安いくらいです。」

そうとも限らない。例えば外傷動員料金(Trauma activation charges)は、ベイ・エリアの病院では一般的に2,000ドルから7,000ドルと多岐にわたる。マリン総合病院では、1万2,636ドルという高額ぶりである。

ナゼーリ・シモンズによれば、サンフランシスコ住民なら低所得者向けにスライド制料金が適用されるとのことだ。しかしパーマーの場合、コントラ・コスタ郡の住民なので、その制度は適用されない。

「無保険で年収1万ドル以下なら、支払いは要らないのです。」ナゼーリ・シモンズは言った。「しかし、それが適用されるのは市内とサンフランシスコ郡に住む人だけです。」

請求書を受け取ってから、パーマーは病院に高額請求について苦情を言った。ナゼーリ・シモンズはパーマーの請求に従い請求内容を見直し、「外傷動員料金を免除することにしました。」

それで請求額が4,659ドル削減された。それでもパーマーは、本人の弁によれば実際の治療時間は15分程度なのに、8時間の病院滞在で7,000ドル以上の負担を強いられることになる。

「あのような状況になったのは不運だといえます。」ナゼーリ・シモンズは言った。「しかし、個々の病院に何ができます?病院側が費用を負担せよとでも?」

彼女が言うには、他の先進国にあるような政府が運営する同様の制度では、まちがいなく費用を抑えられるし、(制度内で貧窮化することなく)誰でもサービスを受けられるようにできるとのことだ。

「国民皆保険制度があれば、ジョーイ・パーマーのような患者でも、他所の郡だからといって冷遇されることもないんです。」ナゼーリ・シモンズは言った。

パーマーとしては、病院の請求に対して可能な限り支払いを完済するよう努力するしかないとのことだった。それから、もしうまくやれるなら、国を出るつもりだという。彼は真剣にフランス移住を考えている。

「あちらで病気になったとしても」彼は思いをめぐらせた。「どの病院にも行けるし、大金がかかることもないだろうな。」

静かな不信が込められた口調で、彼はそう言った。
(以上)

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04/09/2007

クルーグマン:『撹乱と公民権剥奪』

米国を代表する経済学者の1人、ポール・クルーグマン氏のNYタイムズ紙4月2日付け掲載コラムを以下に翻訳して掲載。(文中リンクは訳者による)

今回のコラムでは経済格差問題について触れられている。アメリカ国内の格差に関する報道で最近目についたものをいくつか以下に列挙していこう:

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デトロイトで販売されている中古住宅。中古車よりも安い金額で入手可能。


  • 全米労働者のおよそ3人に1人にあたる4,000万人ほどが、医療保険・退職金・病欠手当て・家族休暇等の手当てがない低賃金労働に従事している。(経済政策調査センターの報告
  • 全米各州の都市部ではホームレスが急増しているが、各都市の行政側はボランティアによる炊き出し活動に法的制限を実施するようになった。食料の無料配給を制限すれば、ホームレスの集中を抑えられるという行政側の目論みがあるらしく、当然ながらボランティア団体側は反発している。(USAトゥデイ紙報道
  • 米国内にはホームレスになった退役軍人が20万人ほど居るという(CBS放送)が、イラク戦争から帰還後に退役しホームレスになる若者も急増している。(ワシントンポスト紙
  • 米製造業の衰退を象徴する貧困地区のひとつであるミシガン州デトロイトでは、自動車よりも安い値段で中古の一戸建てが購入できるようになった。米国で一般的なサイズの住宅が300万円くらいで販売されており、特に安い例としては、有名なモータウンレコードスタジオの近所で、寝室が4つある邸宅が7,000ドル(約83万5,000円)で売りに出されているという。(ロイター通信
  • アメリカの自動車産業は衰退しているが、CEO達にはその影響は全くないらしい。2006年度に127億ドル(約1兆5,149億1,900万円)という記録的な損失を出したフォード社の新CEOは、就任してたった4ヶ月で2,800万ドル相当(約33億3,998万円)の記録的な報酬を受け取った。このCEOの巨額報酬の影で、フォードの工場が閉鎖され、3万人の従業員が解雇されたという。(CNNMoney

撹乱と公民権剥奪(Distract and Disenfranchise)

by ポール・クルーグマン:NYタイムズ紙2007年4月2日付けコラム

私はブッシュ政権の権力乱用に関する学説を唱えているが、いよいよそれが明らかになってきた。結局のところ、ブッシュ政権は所得格差の拡大により追い込まれたと私は考えている。

説明させていただこう。

1980年、ロナルド・レーガンがホワイトハウスを勝ち取った時、保守思想は大多数のアメリカ国民に受け入れられた。その頃の合衆国は、まさしく中流層の国家だった。当初からリベラル思想を育くむ原動力となった莫大な格差と社会的不正義は、少なくとも白人有権者にとっては、すでに昔日の出来事に思えたのだ。そのような社会では、“大きい政府”こそが敵であり、他人のための福祉に自分達の税金が使われると多くの有権者に信じ込ませることは容易だった。

しかしその後、我が国は再び深刻な格差社会になってしまった。収入額の中央値は1980年以来たったの17%しか増加していないが、国民の0.1%を占める最富裕層の収入は4倍に増加している。今では、ニューディール政策に向けた政治的結束が形成されていく1920年代のレベルまで、富裕層と中流層の格差は拡大している。

社会が変わってしまったことに有権者は気づいている。所得配分表を詳細に調べなくとも、現代の金持ちが建設する邸宅が、かつて泥棒貴族が建てたものよりはるかに巨大であることを有権者はよく理解している。雇用統計を調べるまでもなく、自分達の給料がたいして増えていないことくらい知っているのだ。ピュー・リサーチ・センターの世論調査によれば、労働者の59%は、20年前もしくは30年前に比べて現代では生活費を稼ぐのがずっと困難になったと考えているという。

ブッシュ大統領でさえも、「国民の中には、ダイナミック経済の煽りで労働者が置き去りにされているという事実を懸念する向きもあるようだ」と今年1月に認めるとおり、拡大する所得格差が認識され、政治課題として浮上しているのはご存知のとおりである。

しかし、現代の共和党では、格差拡大に対して意義ある対応はできない。共和党系団体がそうさせないからである。先週金曜と土曜日に、ほぼ全ての共和党大統領候補者達がフロリダ州パームビーチを訪れ、供給側重視の減税・民営化促進を主張する圧力団体『成長クラブ(Club for Growth)』に敬意を表した事実にも、そのジレンマをみることができる。

共和党は時代遅れの思想に固執し、大きな問題にぶつかった。国民の真の要求に対応できる国内政策を提示できなくなったのである。ではどうやったら選挙に勝てるのか?

その回答は、しばらくの間、国民を撹乱させ、それに公民権剥奪を組み合わせることにあった。

911同時多発テロ事件は、それ自体が壮大で神がかりな民意の撹乱だった。事件の前までは、2000年大統領選挙活動中に見せたほどにはブッシュ氏が穏健でなかったことが悟られ、ブッシュ政権への不満が国民の間に拡がりつつあったのだ。しかもテロ事件は、国民の注意を逸らす多くの機会を提供した。個々の政治課題について議論する代わりに、共和党側は民主党員がテロに弱腰であると非難するだけで済んだのである。2004年の民主党全国大会の直後に、古く不確実な情報を元にテロ警戒レベルが引き上げられた件を皆さんは憶えているだろうか?

しかし、国民の注意を逸らすのもそこまでだった。もう一つの手段は公民権剥奪だ。貧困層に属する国民は、格差是正のために具体的な政策を実施する政党を選択する傾向があるので、投票箱から遠ざけなければならなかったのだ。

公民権剥奪が2000年大統領選挙時のフロリダ州で「重罪犯の排除」という形で登場し、多くの正当な有権者が公民権を剥奪され、それがブッシュ氏がホワイトハウスに到達する第一理由になった件を記憶にとどめておこう。しかも、どうやらこの公民権剥奪こそが、司法省が政治化されることになった目的の中核にあるらしいのである。

解雇された米連邦検事達の中には、『不正投票(voter fraud)』-現在この語句は「黒人なのに投票している(voting while black)」とほぼ同義になっている-を追跡するよう圧力をかけられた者が複数いた。。司法省公民権課の前職員の話によれば、ジョージア州の有権者認定法、トム・ディレイのテキサス州選挙区再分割法など、事実上アフリカ系有権者から公民権を剥奪することになる共和党の政策に意義を唱えると、検事としての活動を封殺されることが度々あったという。

良い知らせは、共和党の総力を挙げた権力乱用をもってしても、2006年の中間選挙には充分ではなかったということだ。そして2008年大統領選挙は共和党にとってさらに厳しいものになるかもしれない。なにしろ、クリントン政権時代に実は庶民派でなかったと富裕層と大企業を安心させてきた民主党陣営は、どうやら時代が変わったと悟っているらしいからだ。

減税政策に忠誠を誓う共和党大統領候補達がフロリダ州パームビーチに群れを成していた頃、民主党側は集結し、国民皆保険制度の確立に献身すると宣言した。共和党陣営が、それに応じて何を提示できるのか、予想するのは難しい。
(以上)

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04/03/2007

テリー・ジョーンズ:「あれで屈辱だと?」

元モンティ・パイソンのテリー・ジョーンズ英ガーディアン紙に書いた、かなり危険な最新コラムを以下に翻訳して掲載

危機的状況にあってここまで辛辣に皮肉を言う人がいるというのも、イギリスのすごいところだと思う。

あれで屈辱だと?(Call That Humiliation?)

被りモノなし。電気ショックなし。殴りもしない。イラン人とは何とも下品な輩だ。

by テリー・ジョーンズ:英ガーディアン紙2007年3月31日付コラム

Terry Jones's War On The War On Terror

テリー・ジョーンズの辛辣なコラム集:Terry Jones's War On The War On Terror(テリー・ジョーンズの“テロとの戦い”との戦い)スティーブ・ベルの風刺画も満載。


領海侵犯の件でイランに非難されている我等が海軍職員の待遇をめぐっては、イギリス国内の新聞各紙が表明する憤怒に私もまた共感する。あれはまさに侮辱だ。人質をあんな風に扱うなんて我々には想像すら出来ない-例えば、人質にタバコを吸わせているが、喫煙が人を殺すのは証明済みなのだ。哀れな兵士の1人フェイ・ターニーは黒いスカーフの着用を強要され、撮影された写真を世界中にばら撒かれた。イラン人たちには、文明的な振舞いという概念があるのだろうか?なぜ彼女の頭に紙袋を被せないのか?!我々がイスラム教徒を拘束した時には、ちゃんとそうしている。息が苦しくなるように、袋を被せたのだ。袋を被せてから写真を撮って世界中のマスコミに配信するのは全く容認できる。そうすれば人質が誰なのかわからないから、哀れな英軍兵士達のような辱めを受ける心配もない。

テレビで、後に後悔するような話を英国人の人質たちにさせるなど、全くもって受け入れ難い。我々が人質たちにやったように、イラン人たちがダクトテープを人質の口に貼ってくれたなら、ひと言も喋ることなどなかっただろう。もちろん呼吸すら困難だとすぐ気づくだろう-特に頭に袋を被っていたら-しかし、少なくとも恥をかくことはなかったのだ。

自宅宛てに無事であると知らせる手紙を人質たちに書かせるなんてどういうつもりだ?そろそろイラン人たちは他の先進国と足並みを揃えるべきだ。人質たちには独房監禁によるプライバシー保護を与えるべきだ。アメリカ合衆国は、グンタナモ刑務所で囚人たちにその特権をきちんと与えたではないか。

文明国には、侵入された現場で逮捕された者たちを慌てて告発しないという指標がある。例えばグンタナモ刑務所の囚人たちは、ほぼ5年以上も最大限のプライバシーを謳歌しているし、最近になってようやく最初の囚人が告訴されたばかりだ。テレビカメラに向かって人質たちを見せびらかすイラン人たちのみっともない行動とは、全く対照的だ。

アブグレイブ刑務所囚人虐待事件

さらに言えば、イラン人たちが英国人の人質たちにまともな運動をさせていないのは明白だ。米軍は、イラク人の囚人には確実に理学療法を受けさせている。囚人たちに刺激的な「緊張姿勢」を行わせて、限界まで我慢させて内蔵やふくらはぎの筋肉を改善させるのだ。普段の運動としては、ボールの上に両足で立たせたり、腿が地面と平行になるよう屈ませたりするものだ。これは激痛を伴い、最終的には筋肉が故障する。これは全くもって健康的な遊びで、囚人たちがそれを克服するために何か白状してくれるというボーナスまである。

そして、ここが私の述べる重要な点なのだが、テレビに映る表情を見る限り、ターニー一等水兵は重圧下に置かれているようだ。新聞各紙は行動心理学者に映像分析をさせているが、学者達は彼女が「惨めでストレスを感じている」と結論づけている。

非常に恐ろしいのは、彼女を「惨めでストレスを感じる」状況に追いやったイラン人たちの陰湿な手口だ。彼女には電気拷問や火傷の跡もなく、顔を殴られた形跡も見えない。これはもはや受け入れ難い。もしも人質が脅迫下にあったなら、例えば不名誉に性的な姿勢を強制されたり、性器を感電させられた場合は、アブグレイブ刑務所のように撮影されて然るべきだ。そうした写真は、さらに世界の文明的な国々へ回覧され、誰もが何が起きたのかを正確に知ることが出来るようにすべきなのである。

スティーブン・グローバーがデイリー・メール紙で指摘したように、我等の兵士達を侮辱したことへの復讐としてイランを爆撃するのはおそらく正しくはないだろう。しかし、イラン人たちを苦しませてやるべきだ-メール紙が提案するように経済制裁を追加するとか、あるいはもっと簡潔に、ブッシュ大統領を急かして侵攻させるとか-どちらにしろ彼はそうするつもりなのだが-そして、民主化して西洋の価値感をイランにもたらすのだ-イラクでやってるみたいに。
(以上)

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