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2007/05/22

共和党大統領予備選ディベートinサウスカロライナ

「大統領は米軍兵士がどれくらいの間駐留していつ撤退できるのか予定表(timetable)を提示することが重要です。」

「勝利とは出口戦略(exit strategy)のことで、大統領は国民に対して出口戦略を説明することが重要なんです。」

-1999年当時のジョージ・W・ブッシュ、クリントン政権のコソボ派兵を批判し、新聞各社のインタビューで発言

2007年5月15日、サウスカロライナ大学で共和党大統領候補者によるディベート大会が開催された。主催は共和党サウスカロライナ支部とフォックスニュースで、司会進行役は同放送網の名物ニュースキャスター、ブリット・ヒュームとクリス・ウォレス。同放送網としては当然ながら、二人とも熱烈なブッシュ政権支持者である。共和党側の候補者討論会はこれで2回目となる。(Transcript

フォックスニュース、ブリット・ヒュームとくれば、モノ凄いコメントが期待できるというわけで、予想どおり特定の観点においては面白いイベントになった。ディベート参加者を選挙資金順に並べてみよう。

候補者名選挙資金状況(2007年3月31日時点)
ミット・ロムニー$20,737,149(25億919万5,029円)
ルディ・ジュリアーニ$14,731,897(17億8,255万9,537円)
ジョン・マケイン$12,992,655(15億7,211万1,255円)
サム・ブラウンバック$1,257,171(1億5,211万7,691円)
トム・タンクリード$1,185,536(1億4,344万9,856円)
ロン・ポール$638,389(7,752万5,986円)
マイク・ハッカビー$544,157(6,584万2,997円)
ダンカン・ハンター$499,874(6,048万4,754円)
トミー・トンプソン$315,036(3,811万9,356円)
ジェイムズ・ギルモア$174,790(2,114万9,590円)

共和党集金力トップのミット・ロムニーは5月16日に行われたニューハンプシャーの大統領候補者支持率調査でマケイン、ジュリアーニを引き離しトップとなっている。

一般的にワシントンでは、候補者は選挙の前年末までに活動資金1億ドル以上を貯めないと、選挙の年に大統領選を継続できないと言われる。したがって選挙資金だけで見れば、共和党はミット・ロムニー、民主党はヒラリーあたりが予備選を勝ち抜きそうだが、実のところ2008年度選挙でホワイトハウスにもっとも近いのは、出馬表明していない最大の大物、マイケル・ブルームバーグ現NY市長ではないかという見方も根強い。(共和党にはもう1人、穏健派の人気者チャック・ヘーゲルが大統領選出馬を狙っており、最新のインタビューで、ブルームバーグと二人で“独立派”として出馬する可能性をぶちまけている。)

マイケル・ブルームバーグは個人資産(55億ドル)から10億ドルを大統領選出馬に拠出すると言われているので、出馬すれば選挙資金面でも共和党・民主党各候補を抑えてトップになるだろう。しかしブルームバーグ自身は、「次の大統領選にはアル・ゴアに出て欲しい」と公的に発言している。一方で、イラク撤退法案をめぐり民主党への失望感は拡大しており、民主党トップのヒラリーはウォルマート問題、オバマはネオコン傾倒問題という大きな弱点を抱えている。

アル・ゴアとブルームバーグのコンビ?共和・民主両党にとって悪夢となる2008年度究極のシナリオだ。しかしありえない話でもない。

そのような背景事情は脇に置くとして、以下にディベート内容を抜粋して茶々を入れていこう:

質問者:
「まずイラク戦争の件から始めましょう。マケイン議員、あなたは合衆国がイラクに関与することを、最後の1人になっても支持すると言ってますね。しかし、再度の政治改革にも関わらず、イラク政府は一定の政治的水準に達していません。イラクの政治家達がほとんど努力していないというのに、なぜアメリカ国民が引き続き戦い、死なねばならないのでしょうか?」
ジョン・マケイン:
「我が国はイラクに関与しつづけるべきです。なぜならば、単にイラク国民の命にかかわるイラク国内治安だけが危機に瀕しているだけではなく、アメリカ国民の安全にも関わっているからです。我が国がイラクで失敗すれば、イラクはアルカイダの中心地になり、混沌と、虐殺が地域を支配し、やがてそれは我が国にも波及します。

ベトナム戦争に敗北した後、我々は国に戻ったが、(ベトナム戦争が)国内にまで波及することはなかった。ザルカウィや、ビン・ラディン、アル・カイダについて皆さんもご存知でしょうが、彼らは我が国にも進撃すると言うでしょう。(以下略)」

ディベートの最初からアルカイダのご登場である。共和党、フォックスニュースとアルカイダはもはや切っても切り離せない間柄のようだ。

2000年大統領選挙でブッシュと予備選を争い、ブッシュ側の中傷キャンペーンに敗北した共和党の有力者で、ホワイトハウスに最も近いと言われるジョン・マケインだが、この人は支持者を笑わせることはできても信頼させることはできない。

まず第一に、マケインは選挙活動中は議会をサボるクセがある。今期上院議会でマケインは表決の半数を欠席している

第二に、あまりにも短気だ。最近珍しく議会に顔を出したマケインは、違法移民制度改正案をめぐり同僚のコーニン議員(テキサス州共和党)から「あんた大統領選で忙しくて議会を休んでばかりじゃないか」と批判された。するとマケインはコーニンに向かって「クソッタレが!(Fuck You!)俺は他の誰よりもこの問題に詳しいんだ!」と激昂して顰蹙を買っている。

第三に、2000年大統領選で事実無根の汚い中傷キャンペーンを仕掛けられ、蛇蝎の如く嫌っているはずのジョージ・ブッシュに媚びて、彼の支持層を引き継ごうとしている。(マケインは今年になってブッシュの背後で活躍した中傷キャンペーン専門家を自陣に雇い入れている。)そのために、かつてマケインの売り文句だった「ストレート・トーク」もすっかり勢いがなくなった。

テレビで喋らせると面白い人物だが、支持者を前に「イランを爆撃しろ♪」なんて危ない替え歌を披露したり主張をコロコロ変えたり(わずか47秒で主張を変えたこともある、共和党の重鎮らしからぬ軽さのおかげで、共和党支持層での人気は下降気味だ。資金集めにも苦労している。

ところで、チェイニー副大統領、国家安全保障問題担当副補佐官エリオット・エイブラムス(ライス国務長官直属の部下)、ザルメイ・ハリールザード前駐イラク米大使、サウジ国家安全保障担当官バンダル・“ブッシュ”サルタン王子を含めた『ブッシュ政権裏外交グループ』はイラク、レバノン、シリアで台頭するシーア派を弱体化するために、米議会に内緒で合衆国政府の中東支援金とサウジ王家の金を使ってスンニ派のアルカイダ系組織を支援し、シーア派勢力へ攻撃をさせている。シーモア・ハーシュの報道イラン・コントラ時代とまるきり同じ裏外交をしているのだ。

アメリカ国民の税金は、一方でマリキ首相のイラク政府(シーア派系)に投資され、その一方でイラク国内の反政府勢力(スンニ派武装勢力・アルカイダ系含む)にもコッソリ投資されている。イラク国内のシーア派武装勢力は政府からコッソリ支援をうけてスンニ派市民を民族浄化し、スンニ派武装勢力はチェイニー率いる『ブッシュ政権裏外交グループ』から金を得てシーア派攻撃と共に米軍兵士への攻撃を実行している。そんな背景により、国家としてのイラクは、英シンクタンクの言葉どおり、「崩壊に瀕している」。米政府は駐留米軍の増派を継続させて、そうした混沌を長引かせているわけだ。

マケイン上院議員の言うとおり「イラクはアルカイダの中心地になり、混沌と、虐殺が地域を支配し」やがてそれはアメリカ本土に波及するだろう。なにしろ、それは元々アメリカ生まれ(Made in U.S.A)なのだから。

質問者:
「トンプソン知事、前回のディベートでは、あなたは「我々のイラク駐留継続を支持するかどうかマーリキーの政府で投票させるよう要求する」と言いましたね。さらに「18の州で地域政府を発足させて石油収入を分割させるよう要求する」とも言いました。しかしイラク政府は自由に選出された政府です。どうしたら彼らに何か行動するよう要求できるというのでしょう?」
トミー・トンプソン:
「アル・マリキ政権が前進して正しい行いをする必要があるのは疑いようもないことです。アメリカ合衆国は4年もあそこに駐留し、多くの国民を失いました。本日までに3400人のアメリカ国民を失っています。5年目も我々が駐留してほしいのか、あるいは帰国してほしいのかどうかをマリキ政権が投票で決定する時期なのです。(以下略)」

トミー・トンプソンは失言癖で常に物議を醸している。前回ディベートで「企業は同性愛者の従業員を不道徳として解雇できるか?」と質問され、「それは個々の経営者次第です。どうするかは企業側が決定すべきでしょう」と回答し、雇用における同性愛者差別を容認する問題発言として批判された。(本人は“質問を聞き違えた”“体調が悪くトイレに行きたかった”“風邪で気管支炎だった”と失言の理由を説明した。自分の脆弱さをアピールする65歳の俳優を、米国民はリーダーとして迎えるだろうか?)先だって4月には、ユダヤ教信者で構成される市民団体『ユダヤ教改革宗教活動センター(Religious Action Center of Reform Judaism)に講演者として招かれ「金儲けはユダヤ人の伝統」という趣旨の失言をして、直後に謝罪している。そんなわけで、今回のディベートでは堅い表情のまま出番も少なかった。

ところで、今年3月に行われたイラク世論調査によれば、イラク国民の78%が米軍の駐留に反対している。イラク議会はすでに米軍増派反対法案を提出していて、大半のイラク議員が署名している。(同法案は米軍の段階的撤退を求めている。)5月の米国世論調査によれば、米国民の54%が2008年中にイラクから撤退させるという民主党の法案に従うようブッシュに要求している。トンプソンさん、これ以上何を知りたい?

質問者:
「ブラウンバック議員、ブッシュ大統領がイラク駐留米軍の増派を宣言した際、あなたは大統領案に反対して、代わりに来年3月までに全駐留軍を撤退させるというイラク研究グループの案を推薦しました。さらにあなたは、共和党と民主党が協調できる方法を探りたいと言いましたね。そこで質問です。ワシントンの政治家達の間で合意を探ることで、テロと戦い勝利できる方策が何かあるのですか?」
サム・ブラウンバック:
「イラクで勝利するためにこの地で協力していくのです。クリス、両党が一緒にやれる方法はありますよ。現政権では、あまりにも多くの分裂を招いてしまっています。(以下略)」

アメリカの代表的な田舎地帯であるカンサス州の農家出身で、最近では日本の米国産牛肉輸入再開に尽力したサム・ブラウンバックは、イラク分割案を提示している。クルド人自治区、スンニ派自治区、シーア派自治区の3分割をして、ゆるやかな連邦政府を形成するという案である。つまり民主党のジョー・バイデン議員に近いポジションだ。
質問者:
「タンクリード議員、あなたは、あなた自身の言葉を借りれば“イラクからの退却”を主張する共和党議員の1人ですね。」
トム・タンクリード:
「そうです。」
質問者:
「あなたは米軍増派に反対ですね。あなたは今年11月を基点として兵士を前線から撤退させると主張しています。これは実質的に、敵に対して退却の予定を告げていることになりませんか?」
タンクリード:
「我々が理解すべきことは、我々はイラク、もしくは、少なくとも周辺地域に長期駐留することになるということです。国益を鑑みればそうなるのです。あの地域から兵士を撤退させるわけにはいきません。その理由についてはすでにこの場で特定されている通りと思います。問題は、どの程度まで我が国が許容できるのか、つまりどれくらいの兵力を温存できるのかということです。(以下略)」

サウスカロライナ州を中心に、白人至上主義と移民排斥で知られる市民団体『南部連合』から熱烈な支持を得ているタンクリード議員は、米国議会の黒人議員連盟やヒスパニック議員連盟を「分離主義を招くので解散すべき」と主張し、投票権法の更新にも反対するなど、自身も認める共和党の“問題児”だ。違法移民の完全追放を唱えて国境監視活動(マシンガンで武装し、カナダ・メキシコからの違法移民を拘束する)を行う市民活動「Minuteman Project」を熱心に支持し、人種偏見を隠さず堂々と話すのが自慢らしい。しかし今回のディベートでは、出番が少くて目立たなかった。

さて、トム・タンクリードが問題児なら、次のロン・ポール議員は共和党の異端児と言えるだろう。

質問者:
「ポール議員、あなたは2002年のイラクに対する軍事力行使権限をブッシュ大統領に与える法案に反対した共和党下院議員6人の1人ですね。」
ロン・ポール:
「その通りです。」
質問者:
「そして今では米軍の撤退を主張していますね。最新の世論調査によれば、共和党支持者の77%が駐留軍撤退の予定表設定に反対しています。あなたは出馬する政党を間違えていませんか?」(会場から笑い)
ロン・ポール:
「だが、昨年度の選挙では戦争政策のせいで共和党の支持基盤が縮小したことを自覚すべきでしょう。したがってその(共和党支持者の)割合が国民全体では少ないわけです。アメリカ国民の65%から70%は撤退を支持しています。国民は戦争を終わらせたいのですよ。(中略)ロナルド・レーガンは1983年に海兵隊をレバノンに派遣し、しっぽを撒いて逃げることはしないと言いました。それから数ヵ月後、241人の戦死者が出て、海兵隊は撤退しました。レーガンは回顧録の中でこの件に触れて「決してしっぽを撒いて逃げることはしないと言ったが、中東政策の不条理について自覚が足りなかった」と言いました。それで彼は政策変更に至ったのです。我々はロナルド・レーガンの勇気を必要としているんです。」

1988年に自由党(Libertarian)から大統領選に出馬したこともあるディープな保守派の雄ロン・ポール議員(テキサス州)は、フォックスニュース主催、目の前にブリット・ヒューム、周りは皆共和党員というある種もっとも危険な環境の中で、痩せっぽちながら堂々と自説を展開できる超度胸の持ち主だ。
質問者:
「ポール議員、イラク戦争に反対し、駐留米軍の即時撤退を主張しているのはこの舞台上であなた1人だと思いますが、党から逸脱していませんか?なぜ党の指名を求めるのですか?」
ロン・ポール:
「あのですね、共和党は道を見失ったんです。共和党の保守派は常に外交不干渉主義を提唱してきたんです。ボブ・タフト上院議員はNATO加入すら反対しました。ジョージ・ブッシュは2000年大統領選挙で、謙虚な外交政策を主張してました。国家建設はせず、国外での警察活動もしない。朝鮮戦争を終結させるために共和党が選ばれました。ベトナム戦争終結のために共和党が選ばれました。共和党には反戦主義の強い伝統があります。憲法上でもその立場です。外交不干渉主義は建国の父たちからの忠告であり、同盟に巻き込まれることなく、世界各国と友好的に接して、交渉し話し合い貿易するのです。

極端な進歩を考えてみればいい。ベトナムとの関係です。あそこで我が国は6万人の兵士を失いました。我々は敗北して帰国しました。今では、我々はベトナムに投資してます。建国の父たちの忠告に従い憲法に従うことにはおおいにメリットがあるんですよ。

私の論点は、我が国は不用意に戦争するべきではないということなんです。そうなると、戦争は終わらなくなる。」

質問者:
「ポール議員、あなたは9/11テロ以降それが変わったとは思いませんか?」
ロン・ポール:
「何が変わったと言うんですか?」
質問者:
「外交不干渉主義のことです。」
ロン・ポール:
「いいえ、外交不干渉主義は大事な要因ですよ。なぜ我が国が攻撃されたかご存知ですか?攻撃の理由は我が国が海外に居るからですよ。我々はイラクを10年間も爆撃し続けた。中東にもずっと居る・・・レーガンは正しかったんですよ。

我が国は中東政策の不条理さを理解していないのです。今現在、我が国はイラクにバチカンよりも大きな大使館を建設しています。14の恒久基地を建設してるんです。もしも中国が我が国やメキシコ湾で同じことをやったらどうします?他国が我が国にやったらどうするかという観点で物事を見直すべきなんですよ。」(会場から拍手)

質問者:
「我が国が9/11攻撃を招いたと言うんですか?」
ロン・ポール:
「私が言っているのは、攻撃者達に耳を貸して理由を聞けば、彼らは我が国の派兵を喜んでいて、オサマ・ビン・ラディンの言うように“我々の砂漠に来てくれたおかげで狙い易くなった」と言ってるんですよ。連中はすでに我が国の兵士を3400人も殺しているんですよ。あれが必要だったとはとても思えませんね。」
ジュリアーニ:
「ちょっと意見したいんだがいいかね?これはまた異常な主張だ。異常な主張だよ。911テロを経験したのに、イラクを攻撃したからテロを招いたとはね。そんな主張はこれまで聞いた事がないし、911の説明としてこんな馬鹿げたものはないな。(会場から大きな拍手喝采)ポール議員には、意見を取り消して本音ではないと言ってもらいたい。(会場から拍手)」
質問者:
「ポール議員?」
ロン・ポール:
「CIAがブローバックについて語ったのは正しいと私は真摯に信じています。1953年にイランに介入し、シャーを据えた際、ブローバックがありました。その反応として、我が国は人質をとられ、長引きました。それを無視するというなら、我々自身の危険から目を背けることになる。もしも我々が世界を欲しいままにして嫌悪を引き起こすことがないと思うのなら、それは問題です。彼らが我々を攻撃するのは我々が金持ちで自由だからではないのです。彼らの土地に派兵するから攻撃されるんです。もしも他国が我が国に同じことをしたら、どう思いますかね?」

ジュリアーニのエラソーな横やりにもめげず、ロン・ポールは主張を曲げなかった。ディベート会場を出たらポール議員はメディアから袋叩きだ・・・ディベート直後のフォックスニュースに登場したロン・ポールは、右翼タレントのショーン・ハニティとやり合った。だが驚いたことに、ディベート後の視聴者による電話投票ランキングで・・・

第1位:ミット・ロムニー前MA州知事(29%)
第2位:ロン・ポール議員(25%)
第3位:ジュリアーニ前NY市長(19%)

これは果たしてロン・ポール支持層の底力か、あるいはジュリアーニの不人気ぶりを示すのか?

自称“テロ対策のプロ”ルディ・ジュリアーニは、実のところ“マンハッタンのムッソリーニ(The Mussolini of Manhattan)”とも囁かれる人物だ。NY市民の意識調査によれば、ブルームバーグとジュリアーニではどちらが良いNY市長かという質問に、56%がブルームバーグを支持し、ジュリアーニ支持は29%に留まっている。良い大統領になるのはどちらかという問いでも、ブルームバーグ支持が46%、ジュリアーニ支持は29%。

共和党の大きな支持基盤であるキリスト教右派界の大物、ジェイムス・ドブソンは「ジュリアーニには絶対投票しない」とメディアで宣伝している。これらの事情を鑑みると、いくら実業界で人気があってもジュリアーニは大統領にはなれないだろう。

このディベートの前に、NYタイムズ紙ワシントンポスト紙がそれぞれジュリアーニのもっとも隠したい秘密を暴露している。NYタイムズ紙から引用すると:

・・・当初から、ジュリアーニ氏と彼のチームが悲惨な災害現場を支配していたのは疑いようもない。FEMA(米連邦緊急事態管理局)、陸軍工兵隊、職業安全衛生管理局など、多数の災害対応組織が現場にすぐ駆けつけたが、脇に追いやられた。或る工兵隊員の話によれば、ジュリアーニ氏は「慈悲深い独裁者」のように振舞っていたという。

それら連邦政府の専門家を前にしながら、ジュリアーニ氏はグラウンド・ゼロの瓦礫除去作業を、ほとんど知られていない市の部署である設計建築課に任せた。2004年1月まで同部門の委員を務めたケネス・ホールデンが罷免される際に市側と起こした裁判で語ったところによれば、彼は当初FEMAもしくは陸軍工兵隊が瓦礫除去作業を請け負うと思っていたという。ジュリアーニ氏はそうさせなかった。・・・(以下略)


陸軍工兵隊が請け負ったとしたら30ヶ月ほど要すると見積もられた瓦礫除去作業は、9ヶ月間に短縮された。なぜそんなに短縮できたかと言えば、作業員の安全措置を怠り、アスベストの舞う中でとにかく作業を急がせたからだった。その結果、2,000人以上の消防士、7,000人以上の復興作業員が呼吸器障害に苦しむことになったのである。現場の危険性を充分認識し、作業員達から将来訴えられる可能性を感じたジュリアーニは、市の負担する賠償額の上限を3億5,000万ドルに制限する法案の通過を市議会側に根回しした-とNYタイムズ紙は伝えている。

さらに驚くのはワシントンポスト紙の暴露記事である。「ジュリアーニ・ファイル」という特集記事(Xファイルをもじってジュリアーニの秘密ぶりを揶揄している)から引用すると:

・・・2001年12月7日、テロ攻撃から3ヶ月経過し、国家的英雄として職場を去るまで3週間を残すのみとなった頃、ニューヨーク市長ルドルフ・ジュリアーニは自分を金持ちにするための第一歩を踏み出した。

その日、市の利害対立諮問委員会に宛てた手紙の中で、ジュリアーニは市を去る3人の職員と共にコンサルティング会社を設立するための許可を求めた。彼の説明によれば、その会社は「政府と一般企業にコンサルティングサービスを提供」し、「広範囲にわたるビジネス開拓、マネジメント、金融サービスのため」パートナー探しを行うということだった。・・・(以下略)


ポスト紙の情報源によれば、9/11テロで手に入れた前NY市長の世界的名声を最大の売りにして、その後5年間でジュリアーニの会社は1億ドル以上を稼ぎ出したという。

ポスト紙の報道によれば、かつて腹心だった悪徳警官バーナード・ケーリックに加えて、ジュリアーニの会社のクライアントにはトラブルが多いらしい。例えば、Seisint社はジュリアーニの働きにより国土安全省とFBIにテロリスト監視情報システム『マトリックス(Matrix)』を売り込んだ企業で、ブッシュ政権はこのシステムに1,200万ドルを払うと約束したが、同社を経営するジュリアーニの友人ハンク・アッシャー氏が過去にコカインの密輸入をしていたことが暴露され、プロジェクトは暗礁に乗り上げている。

さて、ジュリアーニの暗部にウンザリした後には、ブリット・ヒュームの脅迫ヴォイスで素敵なおとぎ話をお聞かせしよう:

ブリット・ヒューム:
「今度の質問は架空の出来事を前提としていますが、テロとその対策を考える上でありそうなシナリオを提示します。前提条件は次のとおりです:米国内の主要都市郊外にある3件のショッピングセンターで自爆テロが発生しました。数百人が死亡し、数千人が負傷しました。4番目のテロリストがフロリダの海岸で拘束されたことで次の攻撃は回避され、犯人はグンタナモ刑務所に送致され、尋問されることになりました。政府諜報機関ではもっと規模の大きな攻撃計画があると見込まれ、いつそれが発生するかもしれません。そこで最初に質問ですが、マケイン議員。グンタナモ刑務所にいる囚人たちに、次の攻撃に関する情報入手のために、あなたならどれくらい積極的に尋問しますか?」
ジョン・マケイン:
「そういう情報を囚人たちが持っているのが確かであれば、合衆国大統領として、責任を持たねばならない。100万にひとつのシナリオだろうが、私が責任を負うだろう。

拷問については、世界各国からの信頼を失くすに値するものが拷問で得られることはないだろう。我が国では拷問はすべきではないんだ。

私がベトナムに居た頃、拷問に耐え我々が持ちこたえたのは、もしも立場が変わって我々が拘束する側になったら、捕虜にそうした扱いをすることはないという意識だった。(中略)国家として我々がどうあるべきかが問題なのだ。尋問手続きについては陸軍野外教範に記されている。私が思うに、それでほとんどの事例に対応できるし、もし我々が拷問に同意すれば、国際社会の中で自国を害することになる。」


ベトナム戦争時代に捕虜として北ベトナム側に拘束された経験を持つマケインは、この分野には慎重姿勢を見せている。

しかし共和党支持層がマケインほど慎重でないのは、次の回答者を見れば明らかだ。

ヒューム:
「ジュリアーニ市長、前CIA長官のジョージ・テネット、現CIA長官の両者ともに言ってますが、もっとも役立つ尋問手段のひとつは、強化尋問技術と呼ばれるもので、それには水責め(water-boarding)が含まれます。私の説明したようなシナリオの際に、そのような尋問技術を採用するかどうかについてあなたの見解は?」
ジュリアーニ:
「あなたの言う仮定によれば、次の攻撃が近づいていることを諜報機関の人間もわかっているというなら、尋問を担当する者にあらゆる手段を用いるよう指示しますよ。拷問である必要はないが、考えられるあらゆる手段で・・・」
ヒューム:
「水責めも?」
ジュリアーニ:
「それで・・・まあ、思いつくあらゆる手段ですから、それ(水責め)も支持しますよ。(会場から大きな拍手)ミスをすれば何が起こるか見てきたし、今後3,000人が死ぬような事態はニューヨークでもそれ以外の場所でも起きて欲しくない。」
ヒューム:
「ロムニー知事。この件についてあなたにもお聞きしたいのですが。」
ロムニー:
「ええ、まず第一に、次の大統領を選出する鍵は、そのようなシナリオが起きないようにできる人物を見つけることです。重要なのは防止策ですからね。(中略)さて、犯人はグンタナモ刑務所に送致されると言いましたね。グンタナモに送るのは良いことです。米国本土には居て欲しくないですから。グンタナモ刑務所に送れば、本土の刑務所みたいに弁護士に接見することもないですからね。米国の刑務所には入れてはいけない。グンタナモに居るべきですね。

グンタナモ刑務所を閉鎖すべきという人もいるらしいが、私の考えでは、グンタナモ刑務所を2倍にすべきでしょう。(会場から大きな拍手、以下略)」


グンタナモ刑務所を2倍に拡大?!そりゃ凄い。ロムニーさん、そうすればブッシュとチェイニーのスペースも充分確保できますね!

モルモン教会から初の大統領誕生か?と騒がれるミット・ロムニーは、信仰心よりも高い集金能力によって、ホワイトハウスを充分狙える人物だ。しかし世論調査によれば、共和党支持者の1/3はモルモン教徒に大統領になってほしくないと回答しているので、そもそも共和党予備選を突破できるかどうかは不明である。

なおロムニー本人によれば、愛読書は聖書と「バトル・フィールド・アース」(ロン・ハバード著)とのこと。過去には民主党寄りの活動をしていたりと、やはりこの人物、何かとミステリアスである。

さてまとめよう。この日のディベートでもっとも注目すべきハイライトシーンは?それは、『水責め拷問に賛成!』と候補者が表明するたびに会場から湧き上がる聴衆の拍手であった。

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