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2007/07/14

マイケル・ムーアvs.グーグル?

マイケル・ムーア『シッコ』に対する批評の数々

「“シッコ”はムーアの作品としては最重要作で、最も感動的で、最も刺激的な作品だろう。彼のこれまでの作品に比較しても、かなり趣を異にしている。」
ロサンゼルス・タイムズ紙

「ムーアの最も確かで、最も敵対的でなく、しかもおそらく最も重要な作品。」
ニューヨーク・デイリーニュース紙

「“シッコ”はムーアの最高作であり、今までで最も注目すべき作品で、激怒に満ち独善的すぎる“華氏911”よりもはるかに説得力がある。」
ボストン・グローブ紙

「“シッコ”は人々を恐怖に陥れるだろうが、そうであるべきなのだ。」
サンフランシスコ・クロニクル紙

「説教臭く、映画的悲喜劇に満ちているが、“シッコ”は名作である。」
タイム誌

「“シッコ”はムーアの最高作だ。怒りと、望みと、イカれた行動が絶妙な配分で散りばめられ、医療保障と仕事の関係に深遠な疑問をもたらしている。」
ニューヨーク・マガジン誌

「“シッコ”はムーアの作品としては最も異論を呼ばず、広範に訴求できる作品である。」
ニューヨーク・タイムズ紙

「紳士淑女の皆さん、私達が同意できることが二つあります:アメリカの医療システムは破綻していること。それを修正できる人物はマイケル・ムーアではないこと。」
ワシントン・ポスト紙

アメリカの医療危機問題をテーマにしたマイケル・ムーアのドキュメンタリー最新作『シッコ』が全米公開され、米医療システムへの懸念は業界への怒りに波及し、その影響力が拡大しつつある。しかし、医療保険業界や製薬業界がそうした事態に黙っているわけもなく、すでに業界側からの反撃が大手メディアを通じて開始されている。

ところで、ムーアに対する攻撃は、意外な場所でも起こっていた。ネット検索最大手のgoogle社で、医療業界向け広告枠の販売を手がけるローレン・ターナーという社員は、同社公式ブログ6月29日付のエントリー:『ネガティブな報道でビョーキになる?』で、『シッコ』について書いた。以下に一部引用すると:

「議員も、訴訟屋も、患者団体も活気付いてますが、私達の周辺では不安が広がっています。そりゃそうでしょう?ムーアは医療保険企業や医療サービス、さらに製薬業界に対して、個別の主観的な、システム上最悪の物語を引き合いに出して攻撃しているのです。ムーアの映画は、この業界を金とマーケティング主導の世界と見なし、患者の幸福と治療に対する業界の貢献については示さずにいるのです。」

明らかに、彼女はムーアの姿勢と作品『シッコ』をお気に召さないらしい。それはいいとして、注目を集めたのは投稿の後半部分にある以下の主張である:
「わが社ではテキスト広告、ビデオ広告、リッチメディア広告を、有料の検索結果枠や当社の拡大しつづけるコンテンツネットワーク中の適切なウェブサイトに掲載できます。問題がどうであれ、グーグルは人々を啓蒙し貴社のメッセージを宣伝するためのプラットフォームとしての役割を果たします。」

ローレン・ターナーの主張がおわかりだろうか?ムーアが作品で提起する医療危機問題を単純に業界に対する攻撃と考え、彼女はクライアントである医療業界に対して、googleにもっと広告を出稿すれば市民側の業界批判を抑えられると提案しているのである。どうやらローレンは、医療業界人以外の人々もgoogle社ブログを読むことは想定していなかったらしい。

この投稿に対しては、当然ながら批判が殺到したらしく、慌てた彼女は次の日のエントリーで謝罪することになった。しかしターナー本人は、「投稿内容はあくまで個人的意見で、社の公式見解ではない」旨のお詫びを書きながらも、さらに余分な言い訳を付け足していた。引用すると:

「医療業界がムーア氏の映画に反論したい場合、あるいはムーア氏が医療業界に挑戦したい場合でも、広告はとても民主的で効果的な公開討論への参加手段なのです。」

まあ、ローレン・ターナーは自身の役職に賭ける情熱をアピールしたかったのだろうが、公共政策が関わる問題に対して、いきなり金を払って広告を出せという主張はいかがなものか。これではまるきり、ムーアが作品を通じてずっと訴えている“利益追求企業の貪欲さが人間性を脅かす”実例ではないか。

結局、同投稿に対する批判が収まらないので、google社側の上司が公式に謝罪する羽目になった。googleプロダクトマーケティングマネージャーを務めるミッシー・クラスナーは、google社公式ブログ7月2日付記事で以下のように説明している:

「今回の事態では、弊社ブログでマイケル・ムーアの新作「シッコ」を批判し、騒動に直面する医療業界に対して、弊社の広告プログラムを利用するよう呼びかけました。記事公開前に弊社内で実施する審査の段階では、記事内容がグーグル社の公的立場に帰属すると読者の方々が誤解することを認識できませんでした。これは弊社の失態でした。」

一方、google社のお詫びはエスカレートしていく:
「実際のところグーグル社は、アメリカの医療サービスにおける有効性や費用に関してムーア氏の表明する懸念に多くの点で共感しています。全くもって、私達はこうした問題を重大と考えており、弊社従業員に対してもムーア氏の作品を観るよう薦めたのです(1,000人ほどが作品を観ました)」

あれま、クラスナーさん、それはまた・・・ちょっと書き過ぎじゃないの?(今回のSicko=google騒動についてはNYタイムズ紙ブログで全貌を把握できる)


google社、ワシントンでも活躍中


ワシントンポスト紙の報道によれば、現在のgoogle社は、テクノロジー上の社会的影響力に加えて、ワシントンへの政治的影響力増加を狙い、大量のロビイスト(一般企業の2倍以上)を雇い入れてPR活動(ロビー活動)に注力しているという。

新たにgoogle社に加わったロビイストとして最も注目されているのは、ブッシュ大統領の特別補佐官として議会対策を担当したジェイミー・ブラウンで、彼女は最高裁判事選出の際、ブッシュが推薦した保守系判事サミュエル・アリトとジョン・ロバーツの上院承認に活躍した人物だ。さらに、クリントン政権で安全保障関連補佐官・スピーチライターを務めたロバート・ブースティンもgoogle社ロビイスト軍団に所属している。要するに、google社は共和党・民主党の主流派へのドアを開いたわけだ。google社が先ごろ新たに立ち上げたgoogle公共政策ブログを見ると、次期大統領選の最有力候補マイク・ブルームバーグが同社に訪問した様子が掲載されていたりと、ロビイストの仕事の成果が伺える。(大統領候補としては他にもヒラリー、ビル・リチャードソン、エドワーズ、マケイン候補がgoogle社を訪問している)

こうした政界へのロビー活動の拡大は、来るべきマイクロソフト社及びライバル社との覇権闘争に備えて必要な投資なのだろうが、google社の急速な事業拡大が、ネット界・政界への単なる影響力ではなく、支配力へと方向を変える可能性を考えると、少々不穏な空気を感じるのである。

果たしてgoogleは、急拡大する組織・急速に変化する社風の中で『邪悪なことをしない』という創業以来のモットーを貫けるだろうか?

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