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2007/08/05

CNN・YouTubeディベート:バラク・オバマの欺瞞

7月23日に開催されたCNN・YouTube主催の民主党大統領候補者ディベート大会で、ド根性大統領候補マイク・グラベルは、政治的には対極に位置するバラク・オバマ上院議員に対して、またしても以下のような興味深い論争を挑んで見せた:

マイク・グラベル:
「彼ら(民主党候補者)の誰が選出されようが、たいした違いはないだろうな。私達が一致団結していると言われたが、団結などしちゃおらん。私は多くの点で彼らとは団結しておらんのだ。・・・ここで少しバラク・オバマに伺いたいが、彼はロビイストから金を受け取っていないと言ってる。でもな、彼は134人もバンドラー(献金まとめ役)がついてるんだ。それを彼はどう考えてるのかね?それに加えて、彼はUBSアメリカ銀行の経営者、ロバート・ウルフから19万5,000ドルほど献金を受け取っているが・・・」
司会者(アンダーソン・クーパー):
「時間です」
グラベル:
「・・・あれは外国の銀行じゃないか。」
司会者:
「オバマ議員、あなたからの返答をおねがいします。」
バラク・オバマ:
「いいとも。ええとですね、私は政治団体からもロビイストからも献金は受け取っていないんです。バンドラーについては・・・マイク、誰が私に献金したのかあなたが知ってる理由は、私がこれまでの議会でバンドラーを公開するよう求める法律を押し通したからですよ。私は州議会議員時代から、そういうリーダーシップを発揮しているんです。それこそ、私が合衆国大統領になった暁にもそうしたリーダーシップを示すつもりなのです。」(会場、拍手)
グラベル:
「ちょっと待てよ・・・」
司会者:
「次の質問はバイデン議員宛です。・・・」

Democratic presidential candidates

CNN・YouTubeディベート大会の候補者集合写真。グラベルがフレームアウトされているのはなぜだろう?

バラク・オバマは巧みに議論をスピンさせ、グラベルの提示する嫌疑-アメリカ政治の“不都合な真実”-から逃げつつ自画自賛してみせた。会場の聴衆は拍手したが(これが噂のカリスマ性か?)、事実確認をすれば、オバマの姿勢が欺瞞だらけであることは明白だ。(ちなみにオバマ議員は「献金者を公開するよう求める法律を押し通した」と発言しているが、彼の言う法律が効力を発揮するのは2008年大統領選挙終了後なので、その主張は明らかにミスリードだ。現在公開されているバンドラー情報は、各候補者が自主的に公開しているだけなのである。)


金で買えるアメリカ民主主義

アメリカの大統領選挙では、大統領候補に個人名義で献金できる額は2,300ドルまでという上限規制がある。バンドラー(bundler)というのは、独自の人脈を活用し、個人名義の政治献金を大量に束ねて、大統領候補者の資金集めを支援する役割を担う人のことで、たいていはロビイストか、大企業の重役、各州の有力者がその役割を担っている。

例えば2004年大統領選で、ブッシュの共和党陣営は、個人献金を20万ドル以上束ねた者に“レンジャー”、10万ドル以上束ねた者に“パイオニア”という称号を与え、大統領当選後には外交官等の公職に特別雇用するなど特権を与えている。つまり、政治献金によって米政府内のポジションを買うわけだ。実例として、駐フランス米大使、駐ドイツ米大使、駐イギリス米大使、駐イタリア米大使は、いずれもブッシュ陣営の献金まとめ役(バンドラー)出身の企業人である

さて、2007年8月時点で、バラク・オバマのバンドラーは、グラベルの指摘した人数を越える262人で、民主党トップである。一方、デニス・クシニッチやマイク・グラベル陣営にはバンドラーはゼロ。グラベルの批判には充分な説得力がある。

しかも、オバマのために献金をまとめている連中は公開されているだけでもこんな面々である

  • ウィリアム・ケナード(カーライルグループ常務・NYタイムズ役員)
  • マーク・ハント(カーライルグループ通信メディア投資ファンド代理人)
  • ロバート・ウルフ(UBS銀行米国CEO)
  • リード・ハント(前FCC委員長、ブラックストーングループ関係者)
  • ブルース・ハイマン(ゴールドマンサックス常務)
  • デビッド・ヘラー(ゴールドマンサックス常務)
  • ルイス・サスマン(シティグループ副会長)
  • マイケル・フローマン(シティグループCOO)

アレ?ブッシュ人脈?・・・どうやらオバマはウォールストリート筋から強固な支持を得ているらしい。実際、オバマ陣営は東部の超金持ち層を集めて献金パーティを開催し資金集めをしている。さらに、ロビイストからの献金を受け取らないと言いながら(矛盾を指摘されてからロビイストからの献金を一部返金したこともある、実質ロビー活動をしている弁護士やコンサルタントからの献金は遠慮なく受け取っている

ではこれら大量の“裏企業献金”を懐に入れて、バラク・オバマは返礼にどのような仕事をしてくれるのか?バラク・オバマの過去の実績はこんな感じだ:

  • 上院環境公共事業委員会のメンバーであるオバマは、原子力発電が“環境に優しい”ので、合衆国議会は原子力発電を現状のまま選択肢のひとつに維持しておくべきと主張した。この裏には、米国最大の原子力発電企業エクセロン(Exelon)が従業員を束ねてオバマに15万9,000ドル献金した事実が効果を発揮したとみられている。
  • バラク・オバマは、クレジットカード業界ロビイストの助けを借りて政治団体を作り、民主党極右派として悪名高い“イラク戦争推進派”で“ブッシュの盟友”ジョセフ・リーバマン上院議員の再選を背後で支援した
  • オバマは、オーストラリア資本化成企業ニューファームのロビイストの要求に応えて、同社グループのイリノイ州支社が特定の化学原料を輸入する際の関税を撤廃させる各種法律を提案した。同様に、日本の或る製薬企業のイリノイ州支社が雇ったロビイストの要求に応えて、同社の原料輸入関税を免除する法律を通した。(イリノイ州はオバマの地元)こうしたオバマの“関税一時差し止め”活動により、連邦政府の関税収入1,200万ドル以上が失われた(=企業側の利益になった)。ABC放送の報道によれば、こうした企業の従業員名義でオバマ陣営に個人献金が行われているという

何も驚くには値しない。企業が派遣したロビイストに応えて法律を変え、お返しに企業から献金を受け取ったり政党に迂回献金させるのはワシントンではお馴染みの光景である。ブッシュ政権閣僚は皆、様々な業界の支援を得ているし、ロビイストとも仲良しだ。

ジョージ・ブッシュはロビイストや大金持ちや腐敗企業CEOを決して批判せず、むしろ褒め称えてさらに資金提供を呼びかけていた。金満政策を批判されたヒラリー・クリントンは、ロビイストが「真のアメリカ人を代弁している」と堂々宣言し、ロビイストの献金を「もちろん今後も受け取りますよ」と開き直った態度を示している。一方で、バラク・オバマはその“カリスマ性”に憧れる支持者を前に「ロビイストや特定利益団体が、我が国の政治を彼らだけが弄べるゲームにしてしまっている!」と大声で政治腐敗を嘆いてみせながら、ブッシュやヒラリー同様、莫大な選挙資金を富裕層向け献金パーティで集め続けている。

2008年大統領選挙で合衆国の政権交代は実現されるだろうが、民主党トップ連中がワシントン政治に変革を呼び起こすなどと叫ぶ民主党主流派層は、ヒラリーの言葉を借りれば「無責任で、正直なところ無邪気(naive)過ぎる」。


変革は電車でやって来る


CNN・YouTubeディベートのハイライトシーンは、環境保護のために個人でエネルギーをどう節約できるかというテーマの下に、司会者のアンダーソン・クーパーが候補者達に問いかけた以下の場面である(動画リンク):
司会者(クーパー):
「候補者の方々にちょっと質問をしてみましょう。挙手の質問はあまりやらないと申しましたので、今夜はこれきりです。・・・候補者の皆さんの中で、本日この会場に、プライベート・ジェット機もしくはチャーター機で来た人は何人いますか?

(グラベルとクシニッチ以外、全員が恥ずかしげに手を挙げた。リチャードソンは“今日じゃなくて昨日”と馬鹿げた言い訳をした)

司会者:
「グラベル議員?何です?・・・電車で来たんですか!?」
マイク・グラベル:
電車で来たよ!バスにも乗ってる!(会場、拍手)いつか同僚の誰かが(ジェット機に)同乗させてくれることがあるかもしれんな」(会場、笑い)


Amtrak

アムトラック路線図。バージニアからサウスカロライナまでのルートを確認!

自宅のバージニア州からディベート会場のサウスカロライナ州まで電車?・・・グラベルさん、ひょっとしてそれは、アムトラックでしたか?

“民主党の天敵”ラルフ・ネイダーは、マイク・グラベルについて自身のコラムでこう評している:

「まるでアラスカから新たな風が吹くかのように・・・民主党大統領候補の座を目指すマイク・グラベルは、断固たる決意で民主主義の根幹を問う論争を開始させている。」

アメリカ政治を根底からひっくり返す“風”が、バスと電車でやって来る。デニス・クシニッチ以外に同乗者が見当たらないのは残念だが、どうやらこの風は凪ぐことを知らないらしい。

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