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2007/09/05

戦争と格差の先進国アメリカ最新情勢

まずは明るいニュースから。米国勢調査局(U.S. Census Bureau)が8月28日に発表した年次報告によれば、2006年度にアメリカ合衆国の世帯収入は2年連続で上昇し、貧困率は前年よりも減少したという。報告にあわせてブッシュ大統領は「2006年度の所得増加は大幅なもので、全ての所得部門まで広範に及んでいる」「貧困率は著しく改善した」と高らかに宣言した

もっと明るいニュースもある。米国の民間調査団体、公正経済連合(United for a Fair Economy)と政策研究協会(Institute for Policy Studies)が8月30日に発表した共同調査報告「Executive Excess 2007」によれば、2006年度におけるフォーチュン誌認定上位500社CEOの平均年収は1,080万ドル(約12億5,020万円)で、一般労働者の年収に比較して364倍だった。2004年度の数値(431倍)に比較すれば、所得格差はかなり縮小している!ちなみに2006年度、米企業CEOの稼ぎ頭はメリルリンチのスタンレー・オニール氏で、年収は9,100万ドル(約105億3,236万円)だった。

加えて、すばらしいニュース。世界経済を牽引する超実力社会アメリカでは、大企業CEOは努力・能力ナシでも報われるようになった。2006年度、ヨーロッパ地域では上位20人の企業CEOの平均年収は1,250万ドル(約14億4,712万円)で、米国の上位20人の企業CEOの平均年収に比較すると1/3に過ぎない。一方で、ヨーロッパ側CEOが経営する企業20社の合計売上高は、アメリカ側のそれに比較して190億ドル以上多かった。

さらにパワフルなニュース。米国で活躍するトップクラスのヘッジファンドマネージャー20人の2006年度平均年収は6億5,750万ドル(約761億1,220万円)で、一般労働者の平均年収2万9,544ドル(約342万円)に比較して2万2,255倍多く稼いでいた。まさにアメリカン・ドリームだ!USA!USA!ゴッド・ブレス・アメリカ!

・・・さて、悪いニュース。アメリカで仕事に就いている男女の平均賃金は3年連続で減少した。医療保険に加入していないアメリカ人は前年比で5%増加し、4,700万人になった。貧困層に属するアメリカ人は現在3,650万人で、ブッシュ政権がスタートしてから490万人も増加した。そして、緊急食糧支援に頼るアメリカ人は毎年2,300万人にものぼるという。

共働きに長時間労働、企業は従業員向け医療手当てを削減

米国勢調査局の年次報告によれば、2006年度のアメリカ合衆国の実質世帯収入の中央値(メジアン)は48,201ドル(約558万8,234円)で、前年に比較すると0.7%上昇している。しかし国勢調査局の解説によれば、世帯収入増加の主要な理由は賃金上昇ではなく、単に世帯あたりの働き手が増えて、しかも労働時間が伸びたからであり、実質賃金は男女共に前年比で1%以上減少しているという。しかも、実質的に収入が増加したのは白人世帯だけだったそうだ

マイケル・ムーアが『Sicko』で取り上げた医療保険問題はさらに深刻化している。2006年度の医療保険未加入率は15.8%で、実数では4,700万人となっている。ブッシュ政権誕生以来、医療保険に加入できなくなったアメリカ人は850万人も増加した。アメリカ人が急速に健康になっているわけではないらしい。専門家の分析によれば、医療保険未加入者が前年から5%(220万人)も増加した理由は、企業側が従業員向け医療保険の提供を縮小しているからだという。2006年に医療保険から外れた220万人のうち、140万人が世帯収入7万5,000ドル以上の中流家庭に属しており、新たに未加入となった人のうちおよそ120万人がフルタイムで働いている


児童向け医療支援拡大にホワイトハウスは猛反対

全米で最も医療保険未加入率が高いのはブッシュ大統領の地元テキサス州で、住民の24.1%が未加入。もっとも加入率が高いのはミネソタ州で、加入していない住民は8.5%。人種間格差も依然深刻で、ヒスパニック系、アメリカ先住民族系、アラスカ先住民族系アメリカ人は白人に比較して医療保険未加入率が3倍高い。

児童の医療保険状況も深刻だ。医療保険が適用されない児童の人数は870万人で、2005年度の800万人から増加している。経済的事情により民間の医療保険に頼れない家庭の児童は、各州当局の提供する貧困家庭児童向け医療保障サービスに依存することになるが、「思いやりある保守主義」を旗印に登場したブッシュ大統領は、公的医療保障を縮小するために必死で工作しているようだ

上院で児童向け医療保険の拡大法案を民主・共和両党が合意して提案すると、ブッシュは大統領拒否権を行使すると脅し始めた。同法案は、今後5年間に児童向け医療保険予算を350億ドル増額し、その財源はタバコ税の増税で賄うというものだ。このアイデアに対して、右派系シンクタンクであるヘリテージ財団は「低所得層の喫煙家に対し不当に税負担を強いる」と主張し、法案成立に強く反対している。貧しい家庭の子供を救うよりも、低所得者にタバコを買わせるほうが公正であるというわけだ。ジャーナリストのエイミー・グッドマンによれば、ヘリテージ財団の資金提供元にアルトリア・グループ:タバコの名門フィリップ・モリス社があるのは偶然ではないらしい)ブッシュ政権の進める公的医療保障制限策に反対する州も増加しており、例えばニューヨーク州知事は合衆国政府を相手に訴訟を起こすつもりであるという


定着する貧困、拡大する戦争

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写真キャプション:ワシントンDCのホワイトハウス前の地下鉄駅構内で、壁にもたれて休む身元不明のホームレス。アメリカ合衆国では国民10人に1人以上、3,650万人が貧困ライン以下の暮らしをしており、中でも児童、黒人がもっとも打撃を受けていることが、米国勢調査局の年次報告で判明している。(source

2005年度、合衆国の貧困率は12.6%だった。2006年度の貧困率は12.3%と減少したが、それでも貧困層に属するアメリカ人は3,650万人。貧困率減少の主な原因は65歳以上の年代で貧困率が減少したせいであるという。

統計によれば、上位20%の世帯が国内総所得の50%超を稼いでいる。一方、下位20%の世帯所得が全体に占める割合はわずかに3%を超える程度であるという。

人種別では、非ヒスパニック系白人の8%以上、アジア系の10%、ヒスパニック系の20%、アフリカ系の24%が「貧困」。ヒスパニック系、アフリカ系アメリカ人の貧困率は白人に比較して3倍高い。

マサチューセッツ州の民間調査機関『全米優先計画(National Priorities Project)』の調査によれば、毎年2,300万人のアメリカ国民が緊急食料援助を必要としているという。カリフォルニア州を拠点とする食料開発政策研究所の調査によれば、アメリカではおよそ1,300万人の児童が、「両親が食料、家賃、暖房、医療、交通費を負担できるほど稼ぐことができないため」次の食事を確保できるかどうか不安があるという。(米政府用語では“食糧確保低下”。)

ハリケーン・カトリーナ大災害から2年、被災した人々のうち13,000世帯が仮設住宅(トレーラー)で暮らしているが、そこでも食料支援の際に行列ができているという。

世界一裕福な国が貧しい国民の救済にそれほど熱心でない理由は、政府が“貧困との戦い”よりも“テロとの戦い”を優先し、大多数の国民がそれを支持してきたからだ。ブッシュ政権はイラク戦争を新商品として国民に宣伝し、売りつけた。日常的に戦争を消費する米国民にとっても、それはあまりにも高い買物だった。

米議会調査部の報告によれば、イラク戦争費用は今年7月までの時点で4,500億ドル(約52兆3,775億円)、10月には5,500億ドルを超える情勢だ。加えて、アフガニスタン駐留費用は1,270億ドル(約14兆7,756億円)、他のテロ戦争雑費用に280億ドル(約3兆2,554億円)、さらに2つの戦争で使途不明金が50億ドル(約5,813億円)ほど発生している。

ブッシュ大統領は必死にイラク駐留米軍の「増派」を主張するが、米軍兵士を戦地に派遣する際、武器弾薬・装備・旅費・食費等の総費用が兵士1人あたり39万ドル(約4,531万円)かかるという。

2008年度の米国通常国防予算はおよそ4,600億ドル(約53兆4,598億円)、加えて審理中のイラク・アフガニスタン駐留予算が1,470億ドル(約17兆877億円)、さらにブッシュはイラク駐留向け追加資金として500億ドル(約5兆8,120億円)を議会に承認申請するつもりらしい

イラク侵攻直後に、当時の米国防副長官ポール・ウォルフォウィッツは「イラクの復興はイラク国内の石油で賄える」と豪語していた世銀総裁をクビになった人物にふさわしく、恐ろしく間違った予測をしたものだ。

2003年3月の侵攻後から、米国政府はイラクの復興資金として445億ドル(約5兆1,766億円)を支出し、そのうち60億ドルほどを費やして、自ら爆撃した石油施設と電力施設を修復してきた。しかし復興までの道はあまりにも遠く、電力施設を修復するために追加で270億ドル、石油関連施設の修復にも追加で200億ドルから300億ドルを支出する必要に迫られている。しかも、それだけ復興費用を追加しても、戦争前のレベルに電気が流通するのは2010年以降、石油施設が完全再開するには2015年まで待たねばならないと見積られている。

そして、アフガニスタンのタリバン司令官によれば、オサマ・ビン・ラディンは今も大変健康で活動的になっているとのことだ。ブッシュ政権は彼の首に5,000万ドルの賞金をかけているが、未だに行方をつかめていない。

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