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2007/11/26

マクレラン元大統領報道官が回顧録でブッシュ政権を批判

スコット・マクレラン大統領報道官

「私がここから逃げ出したくなったことがあるかって?そんなこと毎日考えてるさ!(笑)」

2004年3月9日、ホワイトハウス定例記者会見で演台に立ったスコット・マクレラン大統領報道官が思わず漏らした言葉。

前任者のアリ・フライシャーが強圧的な態度で不評だったのに対し、人当たりがソフトなスコット・マクレランは“テディベア”と呼ばれ、また苦しい嘘で記者の質問をはぐらかし窮地に追い込まれる毎日から“シンプル・スコティ”とあだ名が付いた。彼はテキサス州知事時代からブッシュを支えた側近中の側近の1人でもある。

母親のキャロル・キートン・ステイホーンは女性初のオースティン市長に選出された地元の名士で、2006年テキサス州知事選挙で保守系独立候補者として立候補した。その際、ホワイトハウスを去ったばかりのスコット・マクレランが選挙マネージャーを務めたが、ブッシュ大統領は共和党公認の現職リック・ペリーを推薦し、マクレランの母親は落選した。ちなみにスコット・マクレランの父親は、ベストセラー書籍『ケネディを殺した副大統領―その血と金と権力』の著者、バー・マクレラン氏。

ブッシュのホワイトハウスに勤務し、マスコミに嘘をつくことを日常業務としていた大統領報道官が回顧録を執筆した。書いたのは嘘?それとも真実?

ブッシュ政権で2003年7月から2006年4月まで大統領報道官を務めたスコット・マクレラン氏が、現在執筆中の回顧録の中で、CIA工作員身元漏洩事件(ヴァレリー・プレイム事件、通称PlameGate)において、ブッシュ大統領が隠ぺい工作に直接関与したことを仄めかし、マスコミをにぎわせている

問題となっている回顧録のタイトルは『WHAT HAPPENED:Inside the Bush White House and What's Wrong with Washington』。同書から、版元によって公開された文章を翻訳すればこんな感じである:

世界最高の権力を持つ指導者たる人物が私に要求したのは、彼の代わりに語り、イラクで大量破壊兵器を見つけられないという大失敗の渦中で失われた信頼を取り戻す手助けをすることだった。そこで私は、ホワイトハウス記者会見室の演台に立ち、カメラのフラッシュを浴びながら、二人のホワイトハウス高官-カール・ローブとスクーター・リビー-の汚名を公的に晴らそうとしていた。

そこにはひとつだけ問題があった。説明は真実ではなかったのだ。

私は知らされぬままに嘘の情報を伝えていた。しかも、私が嘘を伝えるにあたって、政権内で最も高いポジションにある5人の人物が関与していた。ローブ、リビー、副大統領、大統領首席補佐官、そして、大統領本人であった。

United States v. I. Lewis Libby

The United States v. I. Lewis Libby』リビー裁判の全記録。CIA工作員実名漏洩事件捜査の全貌を知るに最適の書籍。


Hubris

Hubris: The Inside Story of Spin, Scandal, and the Selling of the Iraq War』プレイム事件を最もわかりやすく詳細に報告した書籍。


Fairgame

Fair Game: My Life As a Spy, My Betrayal by the White House』身元を漏洩されたCIA工作員ヴァレリー・プレイム本人の回顧録。最終的にCIAの検閲で黒塗りが入った。


The Politics Of Truth: A Diplomat's Memoir: Inside The Lies That Put The White House On Trial and Betrayed My Wife's Cia Identity

The Politics Of Truth: A Diplomat's Memoir: Inside The Lies That Put The White House On Trial and Betrayed My Wife's Cia Identity』ヴァレリーの夫、元駐ガボン米大使ジョセフ・ウィルソン氏の回顧録。湾岸戦争時に駐イラク米大使代理としてサダム・フセインと直接対峙し、父ブッシュから感謝された件など、読ませるエピソード満載。

果たしてマクレラン氏は真実を書いたのか?FBIのこれまでの捜査と、リビー裁判での検察側・弁護側の各証言で得られた情報によれば、ヴァレリー・プレイムの身元暴露作戦に主導的役割を果たしたのがチェイニー副大統領であり、ブッシュ大統領がそれに直接関与した疑いは濃厚だ。

そして、マクレラン元大統領報道官は、回顧録で本人が書いているとおり、ブッシュ政権のウィルソン夫妻攻撃作戦には直接加担していなかったことも捜査で明らかになっている。(前任者のフライシャー報道官は工作員名漏洩に加担していたが、法廷証言と引き換えに起訴を逃れた。)言われるままにコキ使われていたので、回顧録で反撃を試みたわけだ。

同事件では、CIA工作員名を最初にマスコミに漏洩したリチャード・アーミテージ国務副長官は起訴を逃れ(漏洩相手はワシントンポスト紙記者でベストセラー著作『攻撃計画(Plan of Attack)―ブッシュのイラク戦争』執筆に向け取材中だったボブ・ウッドワードだが、彼は結局ヴァレリー・プレイムについて書かなかった)、チェイニー副大統領の腹心であるI・ルイス・リビー副大統領主席補佐官が2件の偽証罪、1件の偽供述、1件の司法妨害により今年3月に有罪判決を受けた。リビー側が上訴を検討する中、7月にはブッシュ大統領自身がリビー被告の減刑を表明している。

リビー裁判に提出された証拠資料(副大統領デスクのメモ)によれば、2003年10月の時点でリビーは、ホワイトハウス定例記者会見でリビー補佐官が機密漏洩に関わっていないと嘘の弁明をするようにスコット・マクレラン大統領報道官に命令して欲しいとチェイニー副大統領に願い出ている。(着任したばかりのマクレラン報道官はカール・ローブとは知己があったが、リビーの件で記者対応するのは嫌がっていた)しかしチェイニーは「1人のスタッフのために大統領のクビを危険にさらすことはできない」と冷たく対応した。(捜査が進展すれば、ブッシュ大統領自身の関与が暴露されるとチェイニーは予測していた?!)哀れ、リビー副大統領補佐官はブッシュとチェイニーの保身のために生贄にされたのであった。有罪になってヤケクソになったリビーが、事件の真相をぶちまけないように、ブッシュは素早く減刑宣言をした・・・あるいは、せっかく米世論がイラン攻撃に夢中になっているのに、「イラク戦争の大義」という過去の出来事に再び注目を集めて欲しくないというところだろう。

注意すべきは、スコット・マクレランの回顧録が、本人の執筆途中でその一部を公開されたという事実だ。刊行予定日が来年4月であることを鑑みると、プロモーションには早すぎる。マクレランは、全てを書き上げる前に、ホワイトハウスの反応を見たかったのだろうか?今のところマクレラン本人はマスコミ取材を拒否しており、回顧録の一部を公開した真意は知ることができない。

漏洩事件で収監されそうになった元タイムズ誌記者マット・クーパーは「リビーとローブがマクレランを騙していることにいつもイライラしていたが、彼もそうだったんだね」と暴露を褒めている

宗教保守派を中心に急速に支持を拡大している共和党大統領候補マイク・ハッカビーは、意外にもブッシュ政権攻撃側にまわった。彼は言う。「自分がワシントン関係者でなくて良かったといえる事例だ。これは深刻な疑惑だが、私達には真相を知ることができない。この件は徹底した調査によって国民に真実を伝えるべきだ。」

イラク戦争侵攻前の大量破壊兵器問題の取材で悪名を馳せた元NYタイムズ記者ジュディス・ミラーは、プレイム事件ではリビーを庇って収監された唯一の人物。彼女は今回の騒動に関してこう言っている:「この政権じゃ、ワシントンで何が起きようが、私はもう驚かないわ。」

ミラーの予測は当たるだろう。ブッシュ政権の内部にはまだまだスキャンダルが詰まっているはずだ。


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» 元アメリカ大統領報道官が回顧録でブッシュのCIA工作員身元漏洩事件への関与に言及 [dou]
「暗いニュースリンク」http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2007/11/post_3aab.htmlさんに『WHAT HAPPENED:Inside the Bush White House and What''s Wrong with Washington』という元アメリカ大統領報道官の回顧録の出版に関する記事があったのでやや長いですが引用します。 ――以下引用―― ブッシュ政権で2003年7月から2006年4月まで大統領報道官を... [続きを読む]

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