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2007/12/17

選挙不正大国アメリカ

ニューヨークタイムズ紙が、12月15日付けの報道で、アメリカ国民を慌てさせている。書き出しはこんな感じだ:

シンシナティ発:過去2回の大統領選挙で、ブッシュ大統領陣営に僅差の勝利をもたらしたオハイオ州で使用された5種の電子投票システムの全てが、内部に深刻な欠陥を抱えており、2008年度大統領選挙の整合性を低下させる可能性があると、オハイオ州選挙管理当局が報告している。「予想よりはるかに酷い」調査を率いたオハイオ州務長官ジェニファー・ブルナーは言う。「ひとつぐらいは他より良い結果が出せると望んでいたのですが」(以下略)

タイムズ紙の報道では、問題のある電子投票機械のメーカーとして、Elections Systems and Software(ES&S)社、Premier Election Solutions社、Hart InterCivic社を挙げている。Premier Election Solutions社は、2004年選挙ですでに問題が指摘され、評判を落としたDiebold(ディーボールド社)の新しい社名である。興味深いのは、ライバル社であるはずのES&S社を創業したのは、ディーボールド社元CEOのボブ・ウロセビッチ氏で、ディーボールド社副社長とES&S社の社長は兄弟であり、この2社だけで全米選挙の実に80%を運営しているという事実だ。

このES&S社という企業について、日経ビジネスは先ごろ面白い報道をしている。以下に記事の一部を引用する:

11月13日。来年2月に実施される京都市長選で電子投票の導入を決めた上京区は、システムの入札を実施した。今回は、米ES&S(エレクション・システムズ・アンド・ソフトウェア)と日本の電子投票普及協業組合(EVS)の一騎打ちとなった結果、日本のEVSが受注した。

さて、今回の調査報告で、オハイオ州務長官ジェニファー・ブルナーは、2008年大統領選挙で電子投票システムによる不正が行われる可能性を警告しているわけだが、調査対象となったシステムは、2004年の大統領選挙の際にオハイオ州で使用されたものだ。選挙後に行われた下院調査や裁判過程をみれば、2004年度選挙時に電子投票やそれ以外の手口で不正が行われたのはほぼ確実だが、不正行為の疑いを持たれた地元の選挙管理委員たちが、選挙法に背いて証拠資料のほとんど(88ある選挙区中56区の投票記録)を“ついウッカリ”廃棄してしまったので、2004年度選挙の票集計の再検証は不可能になった(2004年オハイオ州選挙不正調査の過程で、クリーブランドのカヤホガ郡の選挙管理委員二人が投票再集計の不正操作で有罪判決を受けている)

票集計の不正だけが2004年度選挙の全てではない。2007年に暴露され、現在合衆国議会とホワイトハウスを揺るがす巨大スキャンダルとなっているアトニーゲート(AttorneyGate:検事不法解雇スキャンダル)の議会調査で現在までに明らかになったところでは、共和党の主導する「不正投票摘発活動」-実態は、民主党支持の黒人有権者に対する嫌がらせ活動-を支持しない地方検事に対し、カール・ローブ大統領主席補佐官が司法省人事に直接介入し、解雇を指示したことが明らかになっている。(現在も上院司法委員会が調査中だが、ホワイトハウス及びローブは、事件に関わるホワイトハウス通信文書の提出を拒んでいる。)これは単にブッシュ政権による三権分立制違反というだけでなく、2004年選挙時に全米規模で行われた共和党陣営による公民権侵害行為に、ホワイトハウスが直接関わっていたという大事件の発覚を意味する。


選挙後のこうした事情は、全国紙はおろか地元メディアですら、ほとんど報道されることがない。今年タイムズ紙が報じたところによれば、2004年大統領選挙の投票日直後から、オハイオ州の票集計をめぐる問題が明らかになり、不正の危険を感じたエドワーズが現地に調査チームを派遣して徹底的にブッシュ陣営と戦おうとしていた頃、ブッシュと同じ秘密結社出身で、さらに9代前の先祖はブッシュと血縁関係にある民主党大統領候補ジョン・ケリーは、票の再集計を待たず、あっさりとブッシュ家に敗北宣言を伝えていたということだ。過去の失敗をとやかく言うより、前に進もう-これが選挙不正問題に対する米政界の普遍的メッセージなのである。(ケリーの態度に怒ったジョン・エドワーズは、民主党支持者を集めた『残念パーティ』に登場しても“選挙で敗北”とは決して認めず、ケリーとは完全に絶縁したとのことだ。一方で2004年の敗北宣言以降、ジョン・ケリーはこの件に沈黙を保っている。今年、ケリー本人に演説会場で「あんた選挙に勝ってたのに、なぜあんなに簡単に敗北したんだ」と質問した学生は、警備員からスタンガンの返礼を受けた。)

共和党であれ民主党であれ、民主主義のリーダーを自認する米国民は、大統領選挙のたびに全米規模で不正が行われているという事実を決して認めたくはないので・・・不正をやったのはごく一部の悪い人たちだ、と皆が言う・・・選挙システムも改善される様子がない。そして、有権者たちは自国への疑いを心に隠し、次の大統領選挙を迎えようとしている。

選挙不正の実行犯たち

2004年大統領選挙で最も投票トラブルが多かったオハイオ州。当時、オハイオ州の選挙運営責任者だったケネス・ブラックウェル州務長官は、一方でブッシュ再選委員会オハイオ州支部の共同委員長も務めていた。これは、2000年大統領選挙で激戦州となったフロリダ州選挙運営責任者キャサリン・ハリス州務長官が、フロリダ共和党ジョージ・W・ブッシュ選挙活動委員会の委員長を務めたのと同じスキームだ。(しかも、彼女の上司はブッシュ実弟のジェブ・ブッシュ州知事だった。)

2000年大統領選挙当時、キャサリン・ハリスはフロリダ州の有権者リストを悪用し、10万人近くの有権者から公民権を不法に剥奪した。公民権を剥奪された人々の大多数が黒人であり、黒人有権者のおよそ90%は民主党支持であることを充分理解しての行動だが、彼女はそれを「手続き上のミス」と抗弁した。公民権剥奪行為に加えて、民主党支持層の票を徹底的に削減することを狙ったハリスは、18万件近い投票用紙をカウントせずに廃棄した。パンチカード式投票用紙特有の「不完全票」扱いにしたわけだが、廃棄された票の大半は黒人票だった。公式には、ブッシュはフロリダ州選挙で、わずか537票差でアル・ゴアを退けたことになっている。(合衆国選挙で有色人種、貧困層の票が不法に廃棄される仕組みはすでに報道されている

ブッシュ家のために選挙不正を率先して実行したキャサリン・ハリスは、与党・共和党からご褒美として下院議員ポジションへの推薦を勝ち取った。こうして、2000年大統領選挙で公民権剥奪を堂々と実行した人物が、2002年に下院議員に出世するという異常事態が発生したわけだが、9/11テロ以降の合衆国でアメリカ民主主義の正統性に異議を唱える者はほとんどいなかった。

下院議員になったハリスは、後に防衛諜報企業MZM社の防衛汚職スキャンダル(ランディ“デューク”カニンガム事件)に関与し、批判を浴びた。MZM社は、ブッシュ就任以来ホワイトハウスに『家具』や『詳細不明の諜報サービス』を直接提供している噂の企業である。

ブッシュ犯罪家族の実行犯として決定的秘密を握るキャサリン・ハリス下院議員は、その後のブッシュ支持率低下や、2000年度選挙での不正行為が広範囲に知れ渡った世相を読めずに、大胆にも2006年度上院選挙に立候補を表明した。しかし肝心のブッシュ陣営は彼女の上昇志向を嫌っていたらしく、ジェブ・ブッシュとカール・ローブもハリスを推薦しなかった。所属する共和党からも支持を得られぬまま、予備選で敗北したキャサリン・ハリスは、2007年に下院議員を辞職した。ブッシュ家にとって、彼女の役割はとっくに終わっていたのだ。

2000年の選挙トラブルで批判を浴びたキャサリン・ハリス州務長官は、投票集計騒動を逆手にとって、パンチカード式投票システムを廃止し、代わりにタッチパネル式電子投票システムをフロリダ州に導入するよう熱心に活動していた。その最新鋭の電子投票システムは、投票記録を紙に印字しないので、有権者の票が実際には誰に加算されたのか確認することもできず、投票機の票集計結果を検証する手段も持たない。つまり投票トラブルが発生した場合、票集計のやり直しを求める有権者の要求を容易に斥けることができるというわけだ。

ハリスの望み通り、フロリダ州に新型投票システムが導入された結果、2006年度に彼女の後任となる下院議席をめぐるフロリダ州選挙で、電子投票システムの不具合によるトラブルがまたしても発生した。「キャサリンの呪い」を恐れた(?)フロリダ州選挙管理委員会は、結局タッチスクリーン式投票システムを廃棄し、紙の印字記録が残るスキャン式投票システムに切り替えると発表している

アメリカ国内の電子投票システムの信頼性はこんなものである。それでも、ポンコツ電子投票機の導入を切望する共和党員は後を絶たない。オハイオ州務長官ケネス・ブラックウェルもその1人だ。2004年の大舞台に備えて、ブラックウェルはディーボールド社の電子投票機をオハイオ州選挙用に大量購入する決定をした。ブラックウェル氏は幸運だった。ディーボールド社のシステム導入を決定した当時、偶然にも彼は同社の株を保有していたのだ。熱烈な共和党支持で知られるディーボールド社CEOウォルデン・オディールは、ブラックウェルからの大量購入の知らせに喜び過ぎて、共和党支持者向け献金勧誘文書に「オハイオ州がブッシュ再選をもたらすよう頑張ります!」とウッカリ書いてしまった


ケネス・ブラックウェル州務長官の選挙不正の手口もまた驚くべきものだった。焦点は電子投票システムだけではなかったのだ。州務長官は何よりもまず、新規の有権者登録を最小化する努力を行った。次に彼は、オハイオ州の各選挙区のうち、民主党支持層が多く住む貧困地区の投票所や投票機を極端に削減した。その結果、少数残された投票所前には順番を待つ住民の長い列ができた。雨の中、数時間も待たされるのを嫌い、多くの住民は投票を諦めて帰っていった。そして、毎回全米で行われているとおり、2004年も大量の黒人票が数えられることなくコッソリ廃棄された。加えて、黒人住民に対する脅迫活動が地元共和党系組織によって広範に行われた

キャサリン・ハリスが選挙不正の功績を買われて共和党内で出世したように、ケネス・ブラックウェルも2004年大統領選挙で大量の民主党票を妨害した功績を武器に、2006年度オハイオ州知事選挙に共和党候補として立候補した。州務長官として、オハイオ州知事選挙準備の役割を担うブラックウェルは、その立場を最大限活用して、自身の州知事当選を確実にするため、さらに民主党支持層の票を減らす努力を続けたが、その横暴さが却って有権者の関心を集め、結局のところ民主党候補に大差で敗れた。ブラックウェルの役割もまた終わったのだ。


超大国対抗選挙不正コンテストの勝者は・・・?

2004年大統領選挙当時、アメリカに来た国際選挙監視団-アルゼンチン、オーストラリア、イギリス、カナダ、チリ、ガーナ、インド、アイルランド、メキシコ、ニカラグア、フィリピン、南アフリカ、タイ、ウェールズ、ザンビアからやってきた専門家達-は、フロリダ、アリゾナ、ジョージア、ミズーリ、オハイオの各州を視察した後、さっそくアメリカの選挙システムの問題点(特に電子投票システム)を指摘、「法律改正すべき」と提言していた。また、選挙当日に米国に視察に訪れていたロシア議員たちは、数々の投票問題を目の当たりにし、「これが民主主義国アメリカの選挙なのか」とショックを受けていた

それから3年後の2007年12月2日、ロシアで下院選挙が実施され、プーチン大統領の与党が圧勝した。すると、民主主義のリーダー役を自負するブッシュ大統領は、ロシアの選挙には不正の疑いがあり、懸念を表明する、とプーチン政権を批判した。これに対し、クレムリン広報担当官ドミトリ・ペスコフは、選挙不正疑惑は調査されるだろうと説明し、「総じて公正で民主的な選挙でしたよ」と選挙の正当性を主張した。なんとも滑稽なやりとりである。プーチンもひときわ陰気な笑みを浮かべていることだろう。選挙不正の分野でも、冷戦は再開されているのだ。

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