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2008/01/12

米マクラッチー紙報道:「北朝鮮のドル紙幣偽造」はガセネタ?!


まさか、そんなことがあるのだろうか??

米国の有力新聞マクラッチー紙が、2008年1月10日付紙面で大変なことを報道している。曰く、米国政府側が主張する「北朝鮮政府が米ドル紙幣を偽造している」という疑惑の情報源はかなり怪しく、噂の超精巧偽札「スーパーノート」は、実際のところ“ホンモノ”じゃないかというのである。同紙はこの報道で、大量の関連記事、資料を掲載して、疑惑を検証している。

マクラッチー紙といえば、例えばイランの核兵器開発疑惑について、米政府の国家諜報評価がそれを否定する1ヶ月前に、「ブッシュ政権の唱えるイラン核兵器開発の根拠は政府内でも疑問視されている」という暴露記事を、政府内部の諜報関係者の証言を元にサラリと報道してみせるなど、米国大手報道企業としては、特に外交政策分野で突っ込んだ報道姿勢を貫いているメディアとして知られている。特に同紙イラク支局はその正確さにおいて評価が高く、同支局女性取材チームは2007年度国際女性メディア基金の『勇気ある報道』賞を受賞している

問題となっているマクラッチー紙の1月10日付け記事:『U.S. counterfeiting charges against N. Korea based on shaky evidence(米国の対北朝鮮紙幣偽造嫌疑は曖昧な証拠に基づく)』を翻訳すると、以下のような感じである:


2年前、北朝鮮の独裁政権を徐々に孤立化させ、経済的にも追い込むために、ブッシュ大統領は北朝鮮政府がニセ米国ドル札を製造しているとして批判した。

「我が国の紙幣を偽造する者がいるならば、止めていただきたい。北朝鮮に対して我が国は積極的にそう伝える。我が国の紙幣を偽造するなと。」2006年1月26日、ブッシュはそう宣言した。

しかしながら、マクラッチー紙の10ヶ月に及ぶ3大陸を跨いだ調査で判明したところでは、ブッシュ氏の主張を裏付ける証拠とされるものは良く見積もっても曖昧であり、ニュース等で引用された北朝鮮からの亡命者の主張は疑わしく、おそらく偽証である。主要捜査機関であるスイス連邦犯罪警察は、北朝鮮の紙幣偽造技術を疑問視しており、偽造100ドル紙幣“スーパーノート”は、目に見えない一部の付加点を除き、ほとんど完全な紙幣であるとしている。

北朝鮮政府を巡る一連の紙幣偽造疑惑の情報源としてブッシュ政権が依存する情報源の多くは、米国他外国紙のために北朝鮮からの亡命者たちとのインタビューを手配した韓国在住の“北朝鮮専門家”達である。その報道は議会や調査関係者、ブッシュ政権幹部ら北朝鮮に圧力を加えようとする人々によって引用されてきた。

例えば、2006年7月23日付けニューヨークタイムズ・マガジン誌報道に引用された亡命者たちの説明によれば、北朝鮮が精巧な100ドル札“スーパーノート”を製造しているとされていた。

しかし、マクラッチー紙の調査によれば、そうした情報源を疑うに足る事情が明らかになった。いくつかの報道で引用された情報源の1人、自称化学者のキム・ドン・シクは、消息が不明となり、以前ルームメイトだったムーン・クーク・ハンの話では、キムはお金のために嘘を言っており、米国紙幣についての知識も乏しく、100ドル紙幣に印刷された人物の名前(ベンジャミン・フランクリン)さえ知らなかったという。

シークレット・サービス、米連邦準備制度理事会、米財務省はこの件に関するインタビューを辞退している。

米国政府の主張が国際社会で最初に考査されたのは2006年7月で、ブッシュ政権の要求によって、国際警察機構インターポールは中央銀行関係者、警察機関、紙幣産業関係者等を召集し、米国政府の北朝鮮政府に対する疑惑が説明された。

フランスのリヨンで開催されたその会議は、アメリカ政府の要求によって2005年3月にインターポールが公布したオレンジ警告に続くものだった。オレンジ警告とは、関係各国に紙幣製造機器や紙、インクを北朝鮮へ販売することを禁止させる呼びかけである。

しかし、60人以上の専門家を召集しながら、紙幣偽造取締を担当する米国の主要捜査機関であるシークレットサービス側は、証拠資料の詳細について提出しなかった。その代わりに持ち出したのは“諜報”で、召集された関係者に対してはブッシュ政権側の主張を信用してほしいと言うのみだった。

「笑ってたのか眠ってたのか憶えてないね」その会議に出席していた関係者の1人が、匿名を条件に取材に応じて言った。彼はシークレット・サービス側と実際に接触している人物である。

インターポールの事務局長はアメリカ人で、1993年から1996年までシークレット・サービスに勤務したロナルド・K・ノーブル。彼は、前職で得た機密情報について守秘誓約があるので、スーパーノートの詳細について話すことは辞退している。ノーブルによれば、シークレット・サービス側は、入手した情報について「その全てを自由に共有できるわけではない」と明言したという。

疑惑に関するもっとも決定的な反応は、2007年5月にスイスのBundeskriminalpolizei-偽造紙幣捜査を担当し、過去に米国財務関係者と緊密に活動したスイス政府機関からもたらされた。それによれば、スーパーノートの背後に北朝鮮が関与しているのは疑わしいとのことだった。

スイス警察機関の抱いた疑問の根拠は、1989年にフィリピンの目利き銀行家が発見して以来、押収された偽造紙幣の量がおよそ5,000万ドル分と少なく、紙や印刷のための機械を購入する金額にもならないということである。

スイス側がさらに疑問視するのは、北朝鮮にそのような高精細偽造紙幣を製造する高度な技術があるかどうかである。

「1970年代まで遡る印刷機を利用しているので、現在の北朝鮮は自国の紙幣すら酷い品質であり、この国が果たして高精度のスーパーノートを生産できるのか疑問視するのは当然である」スイス捜査機関は報告している。

さらに注目されるのは、印刷者が誰であれ、スーパーノートは少なくとも19種の版が存在しており、それぞれが合衆国側の刷版のわずかな変更と一致していることである。

「間違いなく世界でもっとも精巧な偽造技術だよ」ジェイムズ・コルビーは言う。彼は先ごろ引退したアリゾナ州前共和党議員で、シークレット・サービスの活動を監査していた。「どうやってこんなことができるのか、何が起きているのかわからない。北朝鮮がどうやってこのような高度な技術を手に入れることができるのかもわからない。非常に高度な技術なんだよ。」

これまで表沙汰になった証拠としては、2004年度に起訴されたショーン・ガーランドの件がある。彼はアイルランド共和国軍から派生したグループの指導者で、1990年代後半に、モスクワの北朝鮮大使館からヨーロッパへ、100万ドルを超えるスーパーノートを持ち込んだとの疑惑がもたれている。ガーランドは現在アイルランド共和国に在住しているが、アイルランド大使館の話によれば、米国政府は彼の引渡しを要求していないという。

米政府がどのようにして結論に至ったのかについて、北朝鮮に関する疑惑の普及を促した元米政府職員らの見方はそれぞれ異なっている。

国務省で北朝鮮の犯罪活動の詳細を収集していたデビッド・アッシャーによれば、彼のグループは紙幣偽造の証拠を見つけており、“諜報”に依存していたのではないと言う。

現在、ワシントンの保守系シンクタンクであるヘリテージ財団で調査員を務めるアッシャーは、詳細について明らかにしなかった。

しかしブッシュは、北朝鮮が偽造紙幣“スーパーノート”を製造している証拠について2007年8月8日に本紙が質問した際に、「諜報に関しては自由に話せる立場にない」と回答していた。

ブッシュ政権元高官で、北朝鮮に対する最も強硬な姿勢で知られるジョン・ボルトンは、本紙の取材に応えて、北朝鮮政府がスーパーノートを製造している物的証拠を目にしたことはないと語った。しかし彼は、北朝鮮がそうした偽造紙幣を流通させているという証言は、悪行の証拠として充分であると言っている。

米政府諜報機関のトップを務めた或る政府関係者の話によれば、彼は結論に至るに足る充分な情報を目にしていないという。

「独自に判断を下せるだけの諜報を目にしたことがなかった。」カール・フォードは言う。彼は、主として亡命者のニセ情報を元に、イラクの大量破壊兵器保有疑惑を唱えたブッシュ政権側と対立し、2003年度に国務省情報調査局長の職を辞した人物である。北朝鮮の疑惑について、ブッシュ政権側が詳細を明らかにすることを渋るのは「正当性が疑わしい」と彼は言う。

もうひとつの主要な証拠として、中国領マカオの小銀行が北朝鮮の偽造紙幣ロンダリングを支援したという疑惑が持ち上がったが、それもまた疑わしい。米財務省はバンコ・デルタ・アジア銀行をブラックリストに載せ、2007年3月に事実上銀行を閉鎖させることになる決定を下した。

しかし、国際会計監査企業アーネスト・アンド・ヤングがマカオ政府の依頼により実施した監査報告を本紙側が入手したところ、バンコ・デルタ・アジア銀行が関与した偽造紙幣事件はたったの一件だけであった。事件が発生したのは1994年で、偽造紙幣の流通元は北朝鮮ではなかった。銀行側は自ら偽造紙幣を発見し、捜査当局に通報していた。

マカオ政府は同銀行に対する制裁措置を解除したが、米財務省は“諜報”を理由に同銀行を引き続きブラックリストに掲載しながら、この銀行が北朝鮮に2500万ドル送金することを許している。

世界各国の銀行では今でもスーパーノートを押収しているが、ブッシュ政権はもはや公的に北朝鮮を偽造紙幣の件で非難することはせず、北朝鮮政府との核兵器計画交渉では議題に上ることもなくなった、と国務省関係者は語っている。

ブッシュ政権が嫌疑を撤回するのか、あるいは北朝鮮の核兵器計画を止める試みを脱線させないように、確固たる証拠の提示を避けているのかどうかは、疑問が残されたままである。

スーパーノートの流通元についても依然として謎のままだ。産業界の専門家、例えば米財務省印刷局の前局長を務めたトーマス・ファーガソンは、スーパーノートはあまりに精巧なので、米政府の印刷機械にアクセスできる何者かによって製造されたのではないかと言っている。

専門家の中には、イランが紙幣を偽造していると言う者もいる。他にも、ロシアや中国の犯罪組織が関与しているという専門家もいる。

偽造紙幣の件を扱った書籍『Moneymakers: The Secret World of Banknote Printing』の著者であるクラウス・ベンダーによれば、偽造された100ドル紙幣は、「もはやニセ札とはいえない。あれは本物と並行して違法に印刷された紙幣」とのことだ。

「もはや通常の偽札業者の能力を超えている」ベンダーは言う。彼の著作は、北朝鮮のスーパーノート製造はありえないと指摘した最初の文献である。「だいいち、あまりにも念入りで(しかも高額なので)偽造作業のコストに見合わないはずだ。」

ベンダーによれば、スーパーノートはあまりにも高品質で、頻繁に刷新されているので、それを製造できるのはCIAなどの米政府機関しかありえないという。

疑惑は論拠薄弱だが、先例はある。ジャーナリストのティム・ワイナーが著したCIAの歴史にまつわる新著では、CIAがソビエトの経済を弱体化させるためにいかにして偽札を流通させようとしたかについて詳細が書かれている。

高精度の偽造紙幣を限定的に使用することで、諜報機関や捜査機関は、腐敗した社会体制や、テロリストグループ他の不法活動、支払い、資金の流れを把握することもできるという。

「当然ながら我々はそのような主張に対するコメントはしない。いかに馬鹿げた主張であってもね。」CIA広報担当官マーク・マンスフィールドは回答した。
(以上)


さて、これまで北朝鮮のドル紙幣偽造疑惑については、米国では政府発表によって、日本国内ではフィクション小説等によって、「北朝鮮なら偽造してるだろう」という漠然とした印象、あるいはそれが事実であるという認識が持たれていたように思う。しかし、もしも今回のマクラッチー紙による暴露が事実であれば、ブッシュ政権側は北朝鮮の不法行為疑惑について、イラクの大量破壊兵器疑惑と同じように、裏づけ調査をほとんどせず、曖昧な“証拠”を根拠に超高精度偽造ドル紙幣“スーパーノート”の実在を唱えていたことになる。その場合、米国政府の目標は、ドル紙幣偽造疑惑の真偽について白黒つけることではなくて、「北朝鮮がいよいよ危険なことをしている」という悪印象をメディアを通じて広範に伝達させることにあったのだろうか?だとすれば、偽造疑惑を描いた“フィクション”のベストセラー化は、何を意味するのだろうか。

しかし一方で、マクラッチーの今回の報道の信憑性はどうか?今回のスクープが、米国政府の信頼性を損なうために北朝鮮政府によって仕組まれた印象工作だとすれば?・・・もしそうなら、この馬鹿げた騒ぎのために、北朝鮮政府はスイス政府機関を抱き込んで、アメリカ政府の掲げる“証拠”に疑義を唱えさせたことになる。(そういえば、北朝鮮の核施設建設にはスイスの大企業が絡んでいるし、その企業の重役はラムズフェルド国防長官だったという事実がある。)また、北朝鮮非核化交渉のプロセスで、北朝鮮側が対応を遅らせている最中に、米国新聞大手がこうした報道を大々的に行うというタイミングもまた、非常に興味深い。

まあともかく、米政府は北朝鮮がドル紙幣を偽造している疑いがあると言い、マクラッチー紙は偽造疑惑はガセである疑いがあると言い、専門家はそりゃ偽造じゃなくてホンモノだと言う。一方で日本政府の対応は?・・・かねてより福田首相がブッシュ大統領に約束したとおり、日本政府は11日に補給支援特措法を成立させ、インド洋での自衛隊による給油活動再開を決定した。年金問題で国内が騒然としている最中に、えらくあっさり最優先事項に昇ってしまっていたらしい。

結局のところ日本政府は、米国政府の絡む様々な政策について、その中身を一切問わず、どうすれば手放しで支援できるかを24時間365日、年末年始を問わず考えているのだろう。しかしこれではまるで、日本政府は米政府政策の“広告代理店”みたいなものだ。その内容物や表示内容が偽装された米政府発の外交政策を、中身も調べずに商品として大量販売し、消費者たる国民はそれを食べて少しづつ健康を害していく。そしてある日突然、しばしばメーカー側の内部告発によって、消費者はその偽装に気づくのだが、すでに食べてしまったものは返品できないという事実に愕然とすることになるのだ。

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