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2008/02/18

2008年アメリカ大統領選挙:最新動向

“初の女性大統領”かもしれないヒラリー・クリントンと“初の黒人大統領”かもしれないバラク・オバマが火花を散らし、候補者選出がいよいよ難しくなりつつある民主党、“ブッシュの正当後継者”マケイン候補で結束しつつある共和党・・・2008年アメリカ大統領選挙の最新情勢を追ってみた。

選挙資金:ヒラリーとオバマの販売競争が激化


2007年12月31日までの選挙資金は以下のとおり。この時点で民主党トップの二人、ヒラリーとオバマの集めたお金はいずれも1億ドルの大台を超えている。円換算すると、ヒラリーは約112億62,00万円、オバマは約109億2,247万円という状況である。

2008年2月現在、報道によればオバマは資金集めでトップに立ったようだ。2008年1月の1ヶ月だけで、オバマが集めた献金額は3,200万ドル(約34億4,272万円)。一方のクリントン陣営の1月献金額は1,300万ドルほどらしく、ヒラリーは自己資金500万ドルをすでに選挙戦に投入している

しかしヒラリー陣営には、最強の支援者である夫ビル・クリントンの集金活動があるので、支持者は資金面ではほとんど心配していない。大統領在任中、合衆国に未曾有の財政黒字をもたらしたクリントン大統領は、モニカ・ルインスキー事件の弁護士費用等で1,200万ドルもの借金を抱えて2001年1月に満期退任したが、その後6年間、ほぼ毎日精力的にこなした講演活動だけで4,000万ドルを稼ぎ出したという(ビル・クリントンがカナダで行った講演では、2回のステージで47万5,000ドル(約5,110万円)という破格のギャラが支払われた。これに気を良くしたヒラリーが、選挙キャンペーンのイメージソングにカナダ人歌手セリーヌ・ディオンを選んだ・・・かどうかは定かではない)

超好景気の民主党に比較すると、今回の共和党はなんとも控えめだ。共和党の指名を受けるのがほぼ確実になったジョン・マケインの資金総額は40億円程度で、手持ちの現金は3億円少々しかない。

史上空前の金権選挙?・・・実のところ、それほどでもない。共和党全盛期だったジョージ・W・ブッシュの再選キャンペーンでは、同時期に約141億円もの資金集めに成功し、手持ちの現金も100億円を超えていたのだ。

民主党候補者選挙資金情勢(2007年12月31日末時点)
候補者名資金総額支出総額手持ちの現金2007年第4四半期
調達額
ヒラリー・クリントン$104,680,022$80,353,785$37,947,874$27,339,347
バラク・オバマ$101,524,154$85,176,289$18,626,248$23,526,004
マイク・グラベル不明(未報告)不明(未報告)未報告未報告

共和党候補者選挙資金情勢(2007年12月31日末時点)
候補者名資金総額支出総額手持ちの現金2007年第4四半期
調達額
ジョン・マケイン$37,036,094$39,145,650$2,948,428$9,969,292
ロン・ポール$28,047,986$20,380,121$7,839,421$19,951,290
マイク・ハッカビー$8,967,869$7,107,365$1,896,446$6,651,957
アラン・キーズ$207,246$196,174$12,622$186,028

著名人と大統領選挙

宗教保守派の強固な支持を得ている共和党大統領候補マイク・ハッカビー。彼の応援団長を務めるのが、『ドラゴンへの道』でブルース・リーと死闘を演じた空手アクションスターのチャック・ノリス。今やジョークの素材としてネットでカルト的人気を誇るノリス氏がハッカビーを応援する理由は、『人類は神により創造された』という強い信仰心によるものらしい

そのチャック・ノリスに「年寄りだ」とバカにされたジョン・マケイン候補は、シルベスター・スタローンの支持を得てから調子に乗って言った:「気をつけろよチャック・ノリス!シルベスターが行くからな。やっつけてやるぞ!逃げてみろチャック!どこにも隠れるところなんかないぞ!」

さて、共和党側が筋肉系有名人の支持にハシャいでいる一方で、民主党側はハリウッドあたりから着々と献金を集めている。ヒラリー・クリントンとバラク・オバマの献金者リストに載っていた著名人をざっと挙げてみよう:

ヒラリー・クリントンに献金した人:
ジョン・ボンジョビ(ミュージシャン)
アレック・ボールドウィン(男優)
ジェイミー・カーティス(女優)
ダニー・デビート(俳優)
ジョディ・フォスター(女優)
ジョン・グリシャム(作家)
トム・ハンクス(男優)
ヒュー・ヘフナー(プレイボーイ誌主幹)
クインシー・ジョーンズ(ミュージシャン)
カルバン・クライン(服飾デザイナー)
ベット・ミドラー(女優・歌手)
ジェリー・スプリンガー(司会者)
マーサ・スチュアート(元祖カリスマ主婦)
バーブラ・ストライザンド(歌手)
ドナルド・トランプ(不動産王)
ウォーレン・バフェット(国際的投資家)
トビー・マグワイア(男優)
ポール・ニューマン(男優)
ベン・スティラー(男優)
バラク・オバマに献金した人:
ジェニファー・アニストン(女優)
タイラ・バンクス(モデル)
ハル・ベリー(女優)
ジャクソン・ブラウン(ミュージシャン)
ケイト・キャプショー(女優)
ジョージ・クルーニー(男優)
シンディ・クロフォード(モデル)
ジェイミー・カーティス(女優・脚本家)
トム・フォード(服飾デザイナー)
ジョディ・フォスター(女優)
ジェイミー・フォックス(男優・ミュージシャン)
モーガン・フリーマン(男優)
キューバ・グッディンバーグ(男優)
トム・ハンクス(男優)
ヒュー・ヘフナー(プレイボーイ誌主幹)
ウォーレン・バフェット(国際的投資家)
アービン・マジック・ジョンソン(プロバスケット選手)
ベット・ミドラー(女優・歌手)
エドワード・ノートン(男優)
スーザン・サランドン(女優)
ウィル・スミス(男優)
スティーブン・スピルバーグ(映画監督)
バーブラ・ストライザンド(歌手)
オプラ・ウィンフリー(司会者・実業家)
スカーレット・ヨハンセン(女優)
ジョーン・バエズ(フォーク歌手)
ハルク・ホーガン(プロレスラー)
マット・デイモン(男優)
ロザンナ・アークェット(女優)
ブルース・ホーンスビィ(歌手)
ポール・ニューマン(男優)
トビー・マグワイア(男優)

リストを見ると、ヒラリーとオバマの両方に献金している人も多く見受けられる。かしこく投資するなら、リスク分散は欠かせないということなのだ。

ちなみに、米ロック界のスーパースターとして老若男女に人気があり、民主・共和両党からその動向が注目されたジョン・ボンジョビは、結局10年来の友人であるヒラリー・クリントン支持に落ち着いた・・・と、ニューヨーク・タイムズ紙がデカデカと報じている


2大政党政治の終焉?評論業界も大混乱

選挙戦当初から「バラク・オバマのミドルネームはフセイン」などと、お得意の中傷攻撃を続けてきたフォックスニュースチャンネルに巣食う共和党系活動家たちは、ジョン・マケインとマイク・ハッカビーが台頭するにつれ、民主党攻撃をしていられなくなった。ブッシュを支持してきた共和党右派にとって、今回は全力で支持する候補者が見当たらないらしいのだ。

“戦争狂”マケインは、国内政策面では中絶容認・環境保護・不法移民容認・テロ容疑者拷問反対等の穏健路線で知られ、共和党右派から忌み嫌われている。マケイン本人はこうした“隠れリベラル”のレッテルを極度に恐れており、つい先日のテロ容疑者拷問禁止法案には反対票を投じて拷問容認派に転身したが、それでも右派の支持獲得には苦しんでいる。

また、元アーカンソー州知事の“牧師ミュージシャン”ハッカビーは、ブッシュ大統領の悪口を言う一方で、同郷(アーカンソー州ホープ)の“サックス奏者”ビル・クリントンとはかなり親しく、しかも州知事時代から増税派として知られており、共和党減税派は警戒を強めている。保守派評論家のボブ・ノヴァックは連載コラムで「マイク・ハッカビーはニセ保守派だ」と批判している。

米右翼タレントのトップで、全米に1,350万人のリスナーを抱えるラジオDJのラッシュ・リンボーは、「俺はオバマ支持も考えてる。奴は中絶反対派で、減税派だ」と冗談を飛ばし、マケインは“保守っぽくない”と批判する。他にも、ローラ・イングラムやアン・カルター等、フォックスニュースで活躍する類の共和党系右翼タレントたちは、いずれもジョン・マケインの選出には否定的だ。アン・カルターは「マケインよりもヒラリーのほうがはるかに保守的。マケインが共和党代表なら、私はヒラリーを応援する!」と言い出して、共和党支持者の失笑を誘っている。

一方で民主党支持層は、ヒラリーとオバマの対立に揺れている。ビル・クリントンのオバマ批判が鎮静化したと思ったら、今度はオバマ陣営によるクリントン中傷キャンペーンの拡大で、両派の溝は深まるばかり。本選挙で共和党のマケインに票が流れる懸念も、いよいよ深まっている。ドロップアウトしたジョン・エドワーズは、どうやらヒラリー支持に固まりつつあるらしいが、支持者からの批判を恐れ表立った主張ができぬまま、結局彼の支持層はヒラリー派とオバマ派に分裂した。18日追加:最新報道によると、17日土曜日、バラク・オバマはノース・カロライナのジョン・エドワーズ私邸を訪れ、推薦について話し合ったとのこと。)

隠れオバマ派と見なされている下院議長ナンシー・ペローシは、今のところ静観を装っているが、彼女の娘クリスティン・ペローシは、民主党スーパー代議員としてリーダシップを発揮しつつある。2006年議会選挙で民主党を大勝に導いたとされる若手実力派議員ラーム・エマニュエル下院議員(イリノイ州・スーパー代議員)は、盟友オバマよりも恩師クリントン家支持に動くとみられているが、ハリウッドでエージェント業を務める弟のアリ・エマニュエルはオバマ支持を主張し「兄貴も含めて、スーパー代議員なんて信用するな」と言っている

ワシントンの派閥争いは、支持者間にも拡大している。民主党支持層の中流家庭では、家族内でオバマ派とヒラリー派に分裂することも珍しくない。

民主党の実力者たちは、アル・ゴアをリーダーとして、「平和的な候補者選出」を試みており、民主党全国委員長ハワード・ディーンもなんとか仲裁しようとしているが、円満決着は無理だろう。


そうした中で象徴的な動きを見せるのが、“リベラルの良心”を唱える経済学者ポール・クルーグマン氏だ。2008年になって、クルーグマン氏はかなり明確にヒラリー支持を打ち出すようになった。

エドワーズ支持だったクルーグマンが反オバマに傾倒した最大のキッカケは、医療制度改革を巡ってオバマ陣営がヒラリー陣営を中傷するために開始したキャンペーンだ。オバマ陣営のばら蒔いたチラシにはこう書かれている:「ヒラリーの医療保険改革案は、家計事情に関係なく全国民に医療保険購入を強制する」。これは、かつてヒラリーの国民皆保険制度政策を潰すために、医療保険業界及び共和党が展開したデマゴーグ活動とまるきり同じだ。(一方で、ヒラリー陣営も相当汚い中傷・妨害キャンペーンをオバマ側に仕掛けている)

オバマ陣営のデマ活動に対抗すべく、2月4日付けのニューヨークタイムズ連載コラムで、クルーグマンはこう書いている(強調は訳者による)

・・・もしもクリントン夫人が民主党の指名を獲得したならば、次の政権で我が国に国民皆保険制度が導入される可能性がいくらか出てくる。オバマ氏が党の指名を獲得したら、その可能性はないだろう。

2月11日付け連載コラムで、クルーグマンはオバマ陣営批判を一層強めて書いている:

・・・(党内対立を煽る)悪意の大半は、自分の候補者以外には誰も支持したくないというオバマ氏支援者から発せられている。オバマの選挙キャンペーンが、危険なほどカルト的性質を帯びつつあると指摘しているのは、私が最初ではない。我々はすでに、ブッシュ政権でそうした危険性を経験してきたのだ-フライトスーツ作戦を憶えておいでだろう?あんなことはもうあって欲しくない。・・・(以下略)


2008年大統領選挙の本質:災いの少ない候補者探し

実力と経験をアピールするヒラリーは、しかし具体的な実績については隠しているものが多い。ウォルマート社を創業したサム・ウォルトンとその重役たちが、従業員の労働組合結成を必死で阻止するために力を尽くしていた頃、ヒラリーは同社の顧問弁護士で、役員でもあった。彼女の演説は退屈で、選挙活動の大半は夫の人気に支えられている。結局のところヒラリーは、特定団体への利益供与を法案に紛れ込ませるのが得意な、ありきたりの利権政治家に過ぎない。

しかし一方で、バラク・オバマが優れた政治家というわけでもない。大手メディアの彼に関する報道は、彼自身のワシントンでの活動同様、全く中身がない。ディベートでは当意即妙な喋りの才能を見せるが、26才のスピーチライターが書いている演説は、単なるサウンド・バイトの寄せ集めで、音声ではなく文字にしてみると、ほとんど中身がないことに誰でも気づくはずだ。日本人から見れば、バラク・オバマの“変革(Change)”連発スピーチは、小泉政権の“改革”連発スピーチと見分けがつかない。

加えて、最近のヒラリー議員とオバマ議員は、地方遊説で忙しいのを口実に、実に8割以上の上院議決を欠席している「税金ドロボー」だ。つい先日の上院で、CIAによるテロ容疑者に対する拷問を禁止する重要法案の採決が行われたが、拷問禁止を主張してきたヒラリー、オバマは、またしても投票を欠席した。賛成であれ反対であれ、票を投じれば政治姿勢上の逃げ道がなくなることを恐れたのだろう。

イラク侵攻に賛成票を投じ、大失敗したにも関わらず上院での経歴を自慢するヒラリーと、経験がない上に政治姿勢が問われる重要法案にことごとく欠席して逃げるオバマ。愚か者と卑怯者がトップ争いをする民主党の惨状に、無党派層が本選挙でどう反応するかが楽しみだ。

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