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2008/02/26

大統領選挙とロビイスト:金で買えるアメリカ外交

「われわれは、しばしば、自分より権勢を持つ人々に愛を感じているつもりになる。とはいえ、われわれに友情を感じさせるのは利害関係だけなのだ。われわれは、彼らに何かよいことをしてあげたいから献身するのではない。お返しをしてほしいからである。」

-『運と気まぐれに支配される人たち―ラ・ロシュフコー箴言集 (角川文庫)』-


日本政府首脳がアメリカ政府首脳に会談を申し込む場合、どのような手順を経由するのだろうか?少なくとも政策談義をするつもりなら、ワシントンの流儀に従って、金でアポイントを買うというのが一番確実といえるだろう。

実際に、2002年度、当時のマレーシア首相マハティール氏は、米政府との関係改善を図るため、保守系シンクタンクのヘリテージ財団を通じ、共和党系スーパーロビイストのジャック・エイブラモフ120万ドル支払って、ブッシュ大統領とのホワイトハウス会談を実現させている

一体アメリカの外交政策は、どの程度まで金で買えるだろうか?この疑問に答えるべく、米ABC放送調査報道チームが、2008年2月1日付の報道で、外交ロビイストと大統領候補の蜜月関係を暴いている。非常にわかりやすい情報なので、以下に一部要約してご紹介しよう。

See a chart of presidential fundraisers lobbying for foreign governments.

諸外国と外交ロビイスト、ヒラリー、マケイン、ロムニーの相関図:クリックで拡大(source:ABC放送サイトのFlash画像より


ヒラリー・クリントン:
6人の外交ロビイストが、ヒルレイザー(ヒラリー献金支援者)として少なくとも10万ドル以上の献金を行っている。
アラブ首長国連邦・ドバイ首長は、ドバイで行われているラクダレースの騎手として少年に強制労働をさせているという国際的非難と、これに関連するフロリダ州の裁判を止めさせるために、米ロビー企業DLAパイパー社に所属するロビイスト、ジョン・メリガン氏とマシュー・バーンスタイン氏を雇った。二人のロビイストは、2007年1月に、ヒラリー・クリントン他3人の上院議員と面会し、ドバイ側の主張を伝えた。ドバイ側はこのロビー業務に対し370万ドルを支払った。2007年7月、フロリダの連邦裁判所は、ドバイ首長に対する少年騎手の親たちによる集団訴訟を退けた
トルコ政府は、オスマン・トルコ帝国時代の『アルメニア人大量虐殺』事件を「ジェノサイド」と認定した米下院外交委員会の決議案に対し、ドバイの件と同じロビイスト、ジョン・メリガン氏とマシュー・バーンスタイン氏を雇って、ヒラリー他米有力議員たちに圧力をかけた。2007年10月10日、米下院外交委員会は賛成27票、反対21票で同決議案を可決したが、下院での非難決議案については、決議案提出者である民主党議員4人の申し出により、議論及び採択が延期されている
DLAパイパー社に所属するメリガン氏とバーンスタイン氏の両氏は、ヒラリー・クリントンの大統領選にバンドラーとして25万ドル以上献金している。(DLAパイパー社の2007年度売り上げは1,310万ドル。)
台湾政府は、元上院議員で現ロビイストのロバート・トリチェリ氏を雇った。トリチェリ氏は台湾政府高官とヒラリー・クリントンの会談を実現させ、その際に台湾と米国の自由貿易協定の早期締結を促した。
中国政府は、ビル・クリントンの旧友でクリントン政権時代に駐シンガポール米大使を務めた弁護士ティモシー・コーバ氏(パットン・ボグス社)を雇って、ヒラリー・クリントン他有力民主党議員らにアプローチし、米中関係と貿易問題でロビー活動をしている。(パットン・ボグス社は2007年度に過去最高額4,270万ドルの売り上げを叩き出した。)
ジョン・マケイン:
5人の外交ロビイストから献金を受けている。
マケイン選挙チームの共同委員長トーマス・ローファー氏は、サウジアラビア王家の代理を務めるロビイスト。ローファー氏はサウジ王家から2年で1,100万ドル受け取り、米・サウジ両国の関係改善に務めている。
マケインにアプローチしている外交ロビイストは、サウジの他にドバイ政府香港特別行政区ドバイ・エアロスペース・エンタープライズ社(ドバイ政府系航空関連投資会社)、コロンビア政府ペルー政府クルディスタン自治政府
2007年、ドバイ・エアロスペース・エンタープライズ社は、米カーライル・グループから米スタンダード・エアロ社(空港航空機修理サービス)とランドマーク・アビエーション社(航空機メンテナンスサービス)を19億ドル(約2,051億円)で買収する際に、米議会側の反発を抑えるべく、ロビイストのジュディ・A・ブラック氏(ブラウンシュタイン・ハイアット・ファーバー・シュレック社)を雇ってマケイン議員にアプローチし、買収の支援を求めた。(ブラック氏はブッシュ大統領のパイオニアクラス献金者。ブラウンシュタイン・ハイアット・ファーバー・シュレック社の2007年度売り上げは1,370万ドル。)

ところで上記の報道には、現在最有力候補とされるバラク・オバマ陣営に献金したロビイストについては記述がない。これについてABC放送側は、「オバマの選挙チームはロビイストからの献金を受け取らないと宣言している」ので、外交ロビイストも調べていないとしている。しかし市民団体の調査によれば、バラク・オバマ陣営には少なくとも359人がバンドラーとして献金しており、そのうち9人はプロのロビイストである。

小浜市の奇妙なキャンペーンの行方は?


ところで、日本の福井県小浜市では、バラク・オバマ候補の人気に便乗した観光まちおこし活動が活発化しているらしい。小浜市長は、地元名産品を同候補事務所に送ったり、オバマの出身地ホノルルとの友好都市提携も狙っているそうだが、ワシントンのロビー企業に電話で依頼すれば、年間観光予算の範囲内の投資で、あっという間にこんな要求は適う事だろう。

興味深いのは、石油依存の米エネルギー政策を“変革”し、“環境に優しい”原子力発電の普及を唱える大統領候補を、近所に原子力発電所を抱える日本の地方自治体が、「勝手に応援」しているという偶然さである。(日本からの声に気を良くしたオバマ“大統領”が、日本の原子力発電市場の「自由化」と「規制緩和」を日本政府に要求することになったら、小浜市はどうするのだろう?外資系原発企業を誘致して“まちおこし”にするのだろうか?)

2005年12月、米国最大の原子力発電企業エクセロン社は、イリノイ州シカゴ郊外の同社施設で排水システムから放射性物質トリチウムの漏洩を検出したが、健康上の害はない程度と発表した。地元の飲料用井戸水からも微量のトリチウムが検出されていたため、地元住民は「企業側は漏洩を知りながら隠蔽していた」と憤った。

この問題を解決すべく、地元の“カリスマ”上院議員バラク・オバマは、原子力関連施設の規制強化を唱え、2006年3月1日に『Nuclear Release Notice Act of 2006』法案を議会に提出した。当然ながら、この動きに原発業界は反発し、ワシントンでのロビー活動を強化、ほどなくオバマ議員側は法案修正に応じた。オバマ議員はマスコミの取材に「利益団体の圧力に屈することはなかった」と自慢してみせたが、2007年10月にオバマ議員によって再提出された法案の中身は、業界側に大幅譲歩する形に変更されていたということだ

ともかく、原発規制法案の修正問題を通じて、エクセロン社側はオバマ氏の政治手腕に充分満足したらしい。同社会長ジョン・ロウ氏、同じく同社取締副社長フランク・クラーク氏、同じく同社重役ジョン・ロジャースJRは、今ではバラク・オバマ候補の最高額献金者リストに名を連ねている。さらに、エクセロン社コンサルタントの1人デビッド・アクセロッド氏は、バラク・オバマ大統領選挙チームの主席政策担当官も兼務しており、この原発企業と大統領候補はきわめて懇意となったわけだ。オバマ氏同様、企業ロビイストたちも言うだろう:「Yes, we can change!

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