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2008/04/18

米国カジノ経済が未来に残すものは何か

現在、アメリカ国内の失業率は5.1%。米流通業界では倒産と店舗の大量閉鎖・大量解雇ラッシュが止まらない。あまりにも求人が少ないので、2007年夏まで米司法省長官職を務めたアルベルト・ゴンザレスですら、未だに次の勤務先が見つけられないらしい。(もちろん、これは別の事情によるものだろうが・・・)

フォーブス誌の世界資産家ランキングをみると、上位25位にランクインしたアメリカ人は、2003年度の18人から、2008年度はわずか4人に減少している。「富裕なアメリカ」という神話はいよいよ崩壊し始めているようだ。

ところが、そんな現在のアメリカでも、未曾有の好景気に沸くひとたちがいる。

米ヘッジファンド業界誌アルファマガジンは最新号で伝えている:

「金融恐慌なんて忘れてしまおう。アルファ誌のヘッジファンド業界報酬レポートによれば、投資のプロフェッショナルたちは2007年度に収入を50%も増やしている。個人経営の投資会社では、CEOとCIOの平均年収額はそれぞれ380万ドルと360万ドルになった。」

アルファ誌の発表した米ヘッジファンドマネージャー2007年度年収ランキングによれば、上位5人の年収は以下のとおりである:

  1. ジョン・ポールソン(ポールソン&カンパニー):
    37億ドル(約3,793億円)
  2. ジョージ・ソロス(ソロス・ファンド・マネジメント):
    29億ドル(約2,972億円)
  3. ジェイムズ・シモンズ(ルネサンス・テクノロジーズ):
    28億ドル(約2,869億円)
  4. フィリップ・ファルコン(ハービンジャー・キャピトル・パートナーズ):
    17億ドル(約1,742億円)
  5. ケネス・グリフィン(シタドゥル・インベストメント・グループ):
    15億ドル(約1,537億円)

この業界の競争と成長は凄まじい。今年のアルファ誌のファンドマネージャー年収ランキング上位25位に入るには、最低でも3億6,000万ドル(約368億7,130万円)以上の年収が必要とされるが、これは2002年度に比較して18倍以上の金額であるという。

ところで、上記ランキングのトップを占め、ウォール街史上最高額の儲けを手にしたジョン・ポールソン氏は、世界一事情通の投資アドバイザーを雇っている。アラン・グリーンスパン前FRB議長だ。

グリーンスパン氏の助力は得られなかったとはいえ、ホワイトハウスのコネなら随一のゴールドマン・サックス社も、ファンドマネージャーから見れば地味かもしれないが、がんばって稼いでいる。ゴールドマン・サックス社CEOのロイド・C・ブランクファイン氏の昨年度報酬額は5,400万ドル(約55億2,699万円)だった。

石油価格高騰で沸くエネルギー業界はどうか。石油最大手エクソン社のCEO、レックス・タイラソン氏の2007年度報酬は1,670万ドル(約17億982万円)で、前年比で28.6%増加しているが、ファンドマネージャーにはかなわないようだ。

サブプライムローン問題の真っ只中にいても、一部の当事者はしっかり稼いでいる。米住宅ローン最大手のカントリーワイド社は、サブプライムローン関連の損失懸念により、2007年度2月のピーク時からわずか1年足らずで株価が80%も下落した。しかしその創業者で、現在同社CEOを務めるアンジェロ・モジロ氏は、2007年度に給与190万ドル(約1億9,446万円)に加えて、自社株を売却して1億2,100万ドル(約123億8,436万円)を手にした

2007年に98億ドルもの赤字に陥り、従業員4,000人を解雇することになったメリル・リンチ社のCEOスタンレー・オニール氏は、昨年10月の退職時に1億6,100万ドル(約164億7,835万円)を退職金として受け取った。

2007年第4四半期だけで98億3,000万ドル(約1兆円)の赤字を出したシティグループのCEOチャールズ・プリンス氏は、昨年11月に退職した際に、退職金として1,040万ドル(約10億6,414万円)、さらに恩給として150万ドル(約1億5,348万円)を受け取った。

2007年度、企業CEOの平均収入は、一般労働者のそれに比較して、600倍となった。2006年度の364倍に比較すると、かなり格差が拡大しているのがわかる。ミドルクラス全盛の1980年には、CEOと一般労働者の所得格差は40倍弱だった

昨年末に発表された米連邦議会予算事務局の最新報告によれば、2003年から2005年の間に、アメリカ国民のうちトップ1%の富裕層は、総額5,248億ドル(約53兆7,393億9,000万円)も収入が増加したという。一方で、下位20%のアメリカ国民(貧困層)の2005年度収入総額は3,834億ドル(約39兆2,552億円)。トップ1%の3年間の増収分だけで、貧困層の全ての生活費1年分を賄ったとしてもお釣りがくるわけである。

2005年度の収入額で見ると、上位300万人の富裕なアメリカ人の総収入額は、下層のアメリカ人1億6,600万人分の総収入額とほぼ同額であるという。

「富裕層向けに減税すれば貧困層にも恩恵をもたらす波及効果がある」という“貧乏人は金持ちのお恵みを期待せよ”という理念の下、ブッシュ政権は戦争コストの急上昇も無視して、金持ち減税を繰り返してきた。しかし前述の報告によれば、2003年から2005年の間に、トップ1%の富裕層の平均収入は42.6%も増加しているが、下位20%の貧困層の収入増加率はわずか1.3%。

Disadvantaged Americans queue for aid in New York

ニューヨーク:ボランティアの炊き出しにできた行列。source:英インディペンデント紙の特集記事「アメリカ2008年:大恐慌」


現在アメリカでは、2,800万人の国民が、収入が少なくて食事を買うことができず、連邦・州政府が実施する食料配給制度(フードスタンプ)に依存して暮らしている。ミシガン州では住民の8人に1人、ウェストバージニア州では、住民の6人に1人がフードスタンプ受給者だ。アメリカではこうした食糧配給の構図はあまりにも日常化しているので、その受給者が近年急激に増加しているわりには、たいしたニュースにはならない。

寄付と市民による社会奉仕活動が盛んなアメリカでは、食費を賄えない貧困層住民のために、市民ボランティアが炊き出しを行うことが多い。しかし最近では、そうした活動も壁にぶつかっている。

過去10年でホームレスが倍増したラスベガスでは、公園でそうした飢餓層に食事を与える行為は違法になった。市議会議員の話によれば、公共の場所における市民ボランティアの食料配給活動は、結果としてホームレスの集中を招き、住民の不安が増し「観光都市の景観を損ねる」というのが規制強化の理由らしい。こうしたホームレス締め出しを図る同様の条例を制定する動きは、今後も全米に広がる様相である。

食料支援活動をする市民ボランティア側も近年は困窮している。食料価格高騰により、配給用食料の不足が懸念されるようになったのだ。

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イラク・ティグリス川沿いに建設中の駐イラク米大使館の一部。アメリカ大使館施設として世界最大の規模を誇る。source:AP通信


そんなアメリカ国民の生活事情とは全く無関係に、戦乱で引き裂かれたイラクでは、巨大さで知られる駐イラク米大使館がいよいよ来月オープンする。総工事費7億3,600万ドル、1,000人の国務省職員と数百人分の住居を内部に備え、バチカン市国ほどの広さを持つ「軍事要塞」の維持費用はおよそ年間10億ドル(約1,028億円)。英ガーディアン紙が入手した3月7日付け極秘イラク・米政府合意草案によれば、米軍はどうやらイラクから永遠に撤退するつもりはないらしい。

次期民主党大統領候補のバラク・オバマ、ヒラリー・クリントンの両名とも、イラクからの完全撤退については言明していない。共和党大統領候補ジョン・マケインは、米軍のイラク駐留について「ドイツに60年、韓国に50年駐留してるんだから、何年だろうと私には問題ないね」と語っている。しかしこれまでの数十年間と同じ隆盛を、これから数十年先の未来にまで、果たしてアメリカ合衆国は謳歌できるのだろうか?

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