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2008/05/06

シークレットサービスは大統領を護れるか

“黒人初のシークレットサービス・エージェント”が目撃した疑惑


1959年、イリノイ州の貧しい家庭に生まれたアフリカ系アメリカ人のエイブラハム・ボールデンは、アイゼンハワー大統領によってシークレットサービス・シカゴ支局要員に採用された。1961年、カリスマ的人気を誇る新大統領ジョン・F・ケネディは、ボールデンをホワイトハウス担当要員に起用した。黒人としては初の大統領警護要員の誕生であった。

だが、ホワイトハウス勤務を始めてまもなく、黒人のボールデンが直面したのは、同じシークレットサービス要員である同僚たちの、人種差別に根ざした嫌がらせとあからさまな敵意だった。大統領が南部を訪問する際、彼だけは他のシークレットサービス要員とは別の宿泊設備を利用させられた。

だが何よりもボールデンが懸念したのは、大統領を警護する立場にある同僚たちの、退廃した勤務態度だった。仕事中の飲酒、警護ポジションからの離脱等、そのいいかげんさは目に余るものだった。その怠慢ぶりを上司に報告すると、ボールデンはわずか勤務3ヶ月でホワイトハウス担当を解かれ、再びシカゴ支局に戻された。

1963年10月、シカゴ支局に勤務するボールデンらシークレットサービス要員の下に、FBIから緊急連絡が舞い込んだ。11月2日にシカゴを訪問予定のケネディ大統領を狙い、4人の“キューバ系反体制派”に属する暗殺者が、狙撃を計画しているというものだった。ケネディ大統領はシカゴ訪問を急遽延期した。シークレットサービス・シカゴ支局は容疑者を拘束したが、まもなく釈放した。11月18日には、フロリダ州タンパを訪問するケネディ大統領の車列を狙う暗殺計画の情報が舞い込んだ。

1963年11月22日、ケネディ大統領は、テキサス州ダラスを訪問中に狙撃され、死亡した。

1964年初旬、ウォーレン委員会の調査報告書に、シカゴとタンパの暗殺未遂の件が含まれていない事を不審に思ったボールデンは、ウォーレン委員会主任顧問J・リー・ランキンに連絡した。委員会で証言するためワシントンに向かったボールデンは、到着と同時に収賄の嫌疑をかけられ、逮捕された。シカゴ支局でシークレットサービスの捜査対象となっていたマフィア関係者が、ボールデンが賄賂を受け取ったと証言したのだ。ボールデンは有罪を宣告され、6年間服役する羽目になった。合衆国史上初の黒人シークレット・サービス要員は、同時に最初の政府内告発者となったが、60年代のアメリカ社会はボールデンに冷酷なままだった。

ボールデンを罠に嵌めるために偽証した人物、サム・デステファノは、1973年に殺された。サムを殺したと疑われる人物、リチャード・ケインも後に殺害された。二人ともシカゴの大物マフィア、サム・ジアンカーナの関係者であった。

1992年、ケネディ暗殺真相解明の世論が高まる中、米議会は「JFK法」を成立させ、暗殺事件調査記録の再評価を開始した。1994年、エイブラハム・ボールデンの件が議会で初めて証言された。議会はシークレットサービス側に説明を求めた。するとシークレットサービス本部は驚くべき回答をした。保存命令に反して、暗殺事件当時の調査記録のほとんどを既に廃棄したということだった。

1998年、アメリカ国民がモニカ・ルインスキー事件の推移に釘付けになっている最中に、議会の最終報告書が公表された。この調査過程で多くのCIA文書が新たに機密指定を解除されたが、未だ百万件以上の事件記録が機密のまま保管庫に眠っているという。(2017年に一部が機密解除予定)

2008年、72歳のエイブラハム・ボールデンは、回顧録『The Echo from Dealey Plaza: The True Story of the First African American on the White House Secret Service Detail and His Quest for Justice After the Assassination of JFK』を出版し、名誉の回復を求めて現在も活動している。


シークレットサービスの「過失」再開?

2008年2月20日、テキサス州ダラスで、民主党大統領候補バラク・オバマは遊説を行った。会場となったリユニオン・アリーナには1万7,000人を超える聴衆が集まった。会場入り口で、入場者の所持品検査と金属探知機による保安検査を実施していたダラス警察に対し、オバマ候補の警護を担当するシークレットサービス側から奇妙な命令が下された。「入場者の検査を止めろ」というものだった。入場者チェックを止めれば、会場前の混雑が解消され、入場者は早く着席できる、というのがその理由だった。連邦政府当局の命令に従い、ダラス警察側は所持品検査と金属探知を中止した。会場警護を担当した警察官は、匿名を条件に取材に答え「あんなに大勢が所持品検査無しで入場するのは不安だった」と話した。

ダラス警察の警護責任者は、「保安活動上の過失だった」としながらも、集まった聴衆は皆“フレンドリー”だったので問題はないと言い訳した。セキュリティサービス本部は疑惑を否定し、当初から入場者全ての検査をする計画ではなかったと説明している

シークレットサービス内部の人種差別問題は現在も続いている。2008年4月14日、ホワイトハウス警護を担当するアフリカ系アメリカ人のエージェントが、普段利用しているシークレットサービス専用訓練施設に、首吊り縄がぶら下げられているのを発見した。縄を仕掛けた白人エージェントには、まもなく上司から休暇命令が下されている。シークレットサービスでは、組織内部の昇進プロセスにおいて、人種に根ざした差別待遇が日常的に行われているとして訴訟が起こされ、黒人エージェント60人ほどが、差別経験を記した宣誓供述を法廷に提出している。首吊り縄事件は、シークレットサービス内部の人種差別に根ざした敵対関係の悪化を象徴するものと見られている。

2008年合衆国大統領選挙を前に、米民主党が初の黒人大統領候補を党代表に選出する公算はいよいよ高まっている。果たしてシークレットサービスはその不名誉な伝統を克服できるだろうか?

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