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2008/08/22

ロン・サスカインド新著:ブッシュ政権が諜報資料を捏造?

『The Price of Loyalty(邦訳:忠誠の代償)』『One Percent Doctrine: Deep Inside America's Pursuit of Its Enemies Since 9/11』など、ブッシュ政権の内幕を暴露した著作で知られる調査報道記者ロン・サスカインドが、最新作『The Way of the World: A Story of Truth and Hope in an Age of Extremism』で、イラク戦争開戦前諜報に関するブッシュ政権の新たな犯罪疑惑を暴露し、ホワイトハウスと全面対決の構えを見せている。

サスカインドの調査によれば、ブッシュ政権はイラク戦争の大義を9/11テロに結びつけるために、諜報書類の捏造をCIAに指示したという。政府情報機関を不正に悪用する行為は合衆国刑法上違法であり、事実であれば大統領弾劾要件に値する。

ニュースブログポータルのHuffingtonPostに掲載されたサスカインド本人の言葉から引用すると、告発の要旨は以下のとおりである(一部抜粋):

イラク情報部長官タヒル・ジャリル・ハブッシュ

・・・・(サダム体制下の)ブッシュ政権の名高き指名手配カードに今もダイヤのジャックとして掲載される人物、イラク情報部長官タヒル・ジャリル・ハブッシュは、イラクにおける米政府の秘密情報源だった。ブレア英首相及びブッシュ米大統領政権下の2003年1月、ハブッシュの秘密報告が大西洋両岸の担当者の手元に送られ始めた。報告内容は、イラクに大量破壊兵器は存在せず、体制の弱体化にイラン側が気づくのを恐れたサダムは、恐怖のために異常な行動をするようになったというものだった。2月になると、米情報当局側はその諜報報告を廃棄し、イラク侵攻の間にハブッシュをヨルダン国内の隠れ家に“移住”させて、口止め料とされる500万ドルを支払った。

2003年秋、あらかじめハブッシュが報告したとおり、イラクに大量破壊兵器は存在しなかったと世界が気づいてから、ホワイトハウスはCIAに偽装工作を行うよう命令した。その任務は、ハブッシュ情報部長官からサダム・フセインに宛てた、2001年7月の日付のある手書きの手紙を捏造せよというもので、手紙の中身は(911テロ実行犯の)モハメド・アッタがイラクで軍事訓練を受けたこと、さらにサダムが「アル・カイダ組織の小部隊」の助けを借りて、ニジェールからウランを購入したというものだった。

偽装工作は実行され、捏造された手紙がバクダッドに出現し、2003年12月に世界のニュース配信網を駆け巡った(トム・ブローコウのような立派なジャーナリストさえ騙した)。当該工作はCIAの規定及び1991年に追加された修正条項-米国本土に向けた偽情報活動を禁止する規定に違反している。(以下略)

ブッシュ政権がイラク戦争の大義を誤解させるために様々な情報操作を行った件は、すでに様々な形で告発され、上院の調査でもその詳細が報告されており、それだけでも大統領弾劾の要件としては充分と言われている。しかしこの度のサスカインドの調査報道による告発-開戦前夜の諜報資料を捏造するよう命令を下したとの疑惑が事実であるならば、ブッシュ大統領(チェイニー副大統領?)は間違いなく刑務所行きになるだろう。

ニクソン政権で大統領顧問を務め、ウォーターゲート事件でホワイトハウス側犯人グループの一人として刑務所に収監された経験を持つジョン・ディーンは、今回の疑惑についてインタビューに応え、「もしもホワイトハウスが諜報資料の捏造を指示したことが事実であれば、当該行為は合衆国法典第18編:犯罪及び刑事手続の章第371条(合衆国を攻撃もしくは欺くために共謀した罪)に抵触し、大統領(もしくは副大統領)は重大犯罪を犯したとして弾劾されるべきであると話している

ニクソン政権の高官たちが、ウォーターゲート事件で次々と告発されたとき、その容疑は今回と同じく共謀罪だったが、事態の重大性が違う、とディーンは言う。曰く、「ウォーターゲート事件の時は、ニクソンのいわゆる権力乱用で死人は出なかったし、拷問された者もいなかったんですからね。」


ホワイトハウス、CIA、情報源のいずれも疑惑を完全否定

サスカインドの著作発表に対して、ホワイトハウス側は「ホワイトハウスが手紙の偽造を指示するなどという考えは馬鹿げている」とすぐさま疑惑を否定し、ピューリッツア賞受賞歴のあるサスカインドについて「低俗な報道に手を染めている」と中傷を開始した。

2003年9月にホワイトハウスから手紙捏造の指示を受けた、とサスカインドが言及するジョージ・テネット元CIA長官は、イラク情報部長官と開戦前に接触した件は事実としながらも、手紙の捏造については否定している。

また、サスカインドが取材対象とした二人のCIA職員、ロバート・リッチャー(元秘密工作部副部長)とジョン・マグワイヤー(元CIAイラク作戦グループ長)はいずれも報道内容を否定した

これら政府側の全否定に対して、サスカインドはジャーナリストとしては異例の行動に出ている。CIA職員ロバート・リッチャーへ取材した際の録音記録の一部を自身のサイト上に公開したのだ。この録音記録の中で、ロバート・リッチャーの漏らしている情報から、捏造した手紙の原稿にホワイトハウスのレターヘッドが使用されており、これがディック・チェイニー副大統領のオフィスから下された指令であることが仄めかされている。まさに、議会による追跡調査に値する決定的な証言である。

一方、共和党ロン・ポール議員の外交政策アドバイザーを務める元CIA職員のフィリップ・ジラルディは、政府情報筋の裏づけを引き合いに出し、ロン・サスカインドの著作について、大筋では事実としながら、実際にはCIA側では手紙の捏造を違法として拒否したと見ているという。そして、CIAをアテにしないディック・チェイニーは、手紙の捏造を特別計画室のダグラス・ファイス国防次官に指示し、ファイスは国防総省内部の偽造書類制作センターで手紙を作成させた、とジラルディは書いている


ところで、イラク戦争開戦前の偽造文書といえば、イタリア諜報筋に持ち込まれた「ニジェール偽造機密書類」の件がある。「イラクがニジェールからウランを購入しようと試みた」というブレア首相及びブッシュ大統領の開戦前の主張の根拠となった文書である。文書公開当時からすぐに偽造と見破られたシロモノだが、実際に誰がこの偽造文書を作成したのかは今もって謎のままである(手紙を“入手”した人物が、元イタリア情報機関SISMI工作員ロッコ・マルティノであることまでは判っている)。

イラク戦争開戦大義に関わるこれらふたつの偽造文書の調査で登場するのが、ディック・チェイニーとダグラス・ファイスであるというのは、なんとも奇妙なことだ。

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