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2016/05/28

「歴史的訪問」とオバマ政権の遺産

2016年5月27日、現職の合衆国大統領として初めて、バラク・オバマが広島を訪問した。

平和記念資料館を視察、原爆死没者慰霊碑で献花し、演説した。

被爆者の森重昭さんをハグするオバマをとらえた写真が世界に配信された。

歴史的な1日だったか?それは間違いなくそうだ。

多くの人々に「HOPE」をもたらしたオバマ政権の8年間は、映像だけ見ればヒロシマ訪問で錦を飾ったようにも思える。

しかし実際のところあのHOPEはどうなった?合衆国第44代大統領は8年間で何を成し遂げた?

オバマは演説で「核兵器のない世界」を語った。だが、冷戦後の米国では、核兵器削減のペースはオバマ政権の8年間が最も停滞しており、ブッシュ親子政権のほうが核兵器削減に貢献していたというのだ。それどころか、オバマ政権下で米国の核武装は、今後30年間で1兆ドルの費用をかけて「近代化」されることになった。
(NYtimes, "Reduction of Nuclear Arsenal Has Slowed Under Obama, Report Finds" )

911テロ直後から「戦争大統領」宣言したブッシュは、アフガニスタンとイラクに軍事侵攻し、泥沼の戦争と未曾有の財政危機を米国にもたらした。イラクとアフガンからの撤退を唱えたオバマは、実際にはどちらからも撤退できないどころか、パキスタン、イエメン、ソマリアへと、無人機による空爆でむしろ戦場を増やした。タイム誌にあるとおり、オバマ政権の遺産は終わりなき戦争なのである。
(Time, "President Obama’s Legacy Is Endless War" )

現職大統領として初めてヒロシマを訪問したオバマ大統領は71年前の戦争犠牲者に思いを馳せた。しかし21世紀の戦争犠牲者についてはどうか。28万人以上が死んだと伝えられ、今も犠牲が増え続けるシリア内戦で、虐殺を止めるためにオバマ政権は何をしたのか・・あるいは、しなかったのか?イラクで見つからなかった大量破壊兵器を、アサド独裁体制は自国民に対して何度も使ってみせた。オバマが突きつけた「レッドライン」をアサドが悠々と超えたら、オバマは「私がレッドラインを設定したのではない。世界が設定したのだ」と言ってのけた。(washington post, "President Obama and the ‘red line’ on Syria’s chemical weapons" )

「戦争狂」といわれたブッシュ前大統領は、自分の始める2つの戦争について議会に問い、承認を得た。一方で秘密好きのオバマ大統領は、無人機による全く新しい戦争を始めるにあたり、国民にも議会にも前もって説明したことは一度もない。2009年にノーベル平和賞を受賞した時、既にオバマはブッシュ政権の8年間で実施したよりも多くの無人機による「標的暗殺」を実行していた。
(Time, "President Obama’s Legacy Is Endless War" )

ところで無人機による「標的暗殺」では、作戦ごとに大統領が命令書に署名するという。2009年1月、オバマがホワイトハウスに入って最初に署名した大統領特別命令は「グアンタナモ刑務所の閉鎖」だった。現在、グアンタナモ収容所については、閉鎖するかわりに、テロ戦争で拘束したISIL民兵を閉じ込めてはどうかという案が米議会で検討されている。なにしろ戦争は続くのだから・・・。
(ThinkProgress, "Senate Republicans Further Complicate Obama’s Efforts To Close Guantanamo" )

「HOPE」で始まったオバマ時代は、結局「HOPE」のままで終わりを迎える。そして今、「歴史的」なヒロシマ訪問に湧き上がる夢と、現実世界とのあまりの乖離に、愕然とせざるを得ない。

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