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01/12/2008

米マクラッチー紙報道:「北朝鮮のドル紙幣偽造」はガセネタ?!


まさか、そんなことがあるのだろうか??

米国の有力新聞マクラッチー紙が、2008年1月10日付紙面で大変なことを報道している。曰く、米国政府側が主張する「北朝鮮政府が米ドル紙幣を偽造している」という疑惑の情報源はかなり怪しく、噂の超精巧偽札「スーパーノート」は、実際のところ“ホンモノ”じゃないかというのである。同紙はこの報道で、大量の関連記事、資料を掲載して、疑惑を検証している。

マクラッチー紙といえば、例えばイランの核兵器開発疑惑について、米政府の国家諜報評価がそれを否定する1ヶ月前に、「ブッシュ政権の唱えるイラン核兵器開発の根拠は政府内でも疑問視されている」という暴露記事を、政府内部の諜報関係者の証言を元にサラリと報道してみせるなど、米国大手報道企業としては、特に外交政策分野で突っ込んだ報道姿勢を貫いているメディアとして知られている。特に同紙イラク支局はその正確さにおいて評価が高く、同支局女性取材チームは2007年度国際女性メディア基金の『勇気ある報道』賞を受賞している

問題となっているマクラッチー紙の1月10日付け記事:『U.S. counterfeiting charges against N. Korea based on shaky evidence(米国の対北朝鮮紙幣偽造嫌疑は曖昧な証拠に基づく)』を翻訳すると、以下のような感じである:


2年前、北朝鮮の独裁政権を徐々に孤立化させ、経済的にも追い込むために、ブッシュ大統領は北朝鮮政府がニセ米国ドル札を製造しているとして批判した。

「我が国の紙幣を偽造する者がいるならば、止めていただきたい。北朝鮮に対して我が国は積極的にそう伝える。我が国の紙幣を偽造するなと。」2006年1月26日、ブッシュはそう宣言した。

しかしながら、マクラッチー紙の10ヶ月に及ぶ3大陸を跨いだ調査で判明したところでは、ブッシュ氏の主張を裏付ける証拠とされるものは良く見積もっても曖昧であり、ニュース等で引用された北朝鮮からの亡命者の主張は疑わしく、おそらく偽証である。主要捜査機関であるスイス連邦犯罪警察は、北朝鮮の紙幣偽造技術を疑問視しており、偽造100ドル紙幣“スーパーノート”は、目に見えない一部の付加点を除き、ほとんど完全な紙幣であるとしている。

北朝鮮政府を巡る一連の紙幣偽造疑惑の情報源としてブッシュ政権が依存する情報源の多くは、米国他外国紙のために北朝鮮からの亡命者たちとのインタビューを手配した韓国在住の“北朝鮮専門家”達である。その報道は議会や調査関係者、ブッシュ政権幹部ら北朝鮮に圧力を加えようとする人々によって引用されてきた。

例えば、2006年7月23日付けニューヨークタイムズ・マガジン誌報道に引用された亡命者たちの説明によれば、北朝鮮が精巧な100ドル札“スーパーノート”を製造しているとされていた。

しかし、マクラッチー紙の調査によれば、そうした情報源を疑うに足る事情が明らかになった。いくつかの報道で引用された情報源の1人、自称化学者のキム・ドン・シクは、消息が不明となり、以前ルームメイトだったムーン・クーク・ハンの話では、キムはお金のために嘘を言っており、米国紙幣についての知識も乏しく、100ドル紙幣に印刷された人物の名前(ベンジャミン・フランクリン)さえ知らなかったという。

シークレット・サービス、米連邦準備制度理事会、米財務省はこの件に関するインタビューを辞退している。

米国政府の主張が国際社会で最初に考査されたのは2006年7月で、ブッシュ政権の要求によって、国際警察機構インターポールは中央銀行関係者、警察機関、紙幣産業関係者等を召集し、米国政府の北朝鮮政府に対する疑惑が説明された。

フランスのリヨンで開催されたその会議は、アメリカ政府の要求によって2005年3月にインターポールが公布したオレンジ警告に続くものだった。オレンジ警告とは、関係各国に紙幣製造機器や紙、インクを北朝鮮へ販売することを禁止させる呼びかけである。

しかし、60人以上の専門家を召集しながら、紙幣偽造取締を担当する米国の主要捜査機関であるシークレットサービス側は、証拠資料の詳細について提出しなかった。その代わりに持ち出したのは“諜報”で、召集された関係者に対してはブッシュ政権側の主張を信用してほしいと言うのみだった。

「笑ってたのか眠ってたのか憶えてないね」その会議に出席していた関係者の1人が、匿名を条件に取材に応じて言った。彼はシークレット・サービス側と実際に接触している人物である。

インターポールの事務局長はアメリカ人で、1993年から1996年までシークレット・サービスに勤務したロナルド・K・ノーブル。彼は、前職で得た機密情報について守秘誓約があるので、スーパーノートの詳細について話すことは辞退している。ノーブルによれば、シークレット・サービス側は、入手した情報について「その全てを自由に共有できるわけではない」と明言したという。

疑惑に関するもっとも決定的な反応は、2007年5月にスイスのBundeskriminalpolizei-偽造紙幣捜査を担当し、過去に米国財務関係者と緊密に活動したスイス政府機関からもたらされた。それによれば、スーパーノートの背後に北朝鮮が関与しているのは疑わしいとのことだった。

スイス警察機関の抱いた疑問の根拠は、1989年にフィリピンの目利き銀行家が発見して以来、押収された偽造紙幣の量がおよそ5,000万ドル分と少なく、紙や印刷のための機械を購入する金額にもならないということである。

スイス側がさらに疑問視するのは、北朝鮮にそのような高精細偽造紙幣を製造する高度な技術があるかどうかである。

「1970年代まで遡る印刷機を利用しているので、現在の北朝鮮は自国の紙幣すら酷い品質であり、この国が果たして高精度のスーパーノートを生産できるのか疑問視するのは当然である」スイス捜査機関は報告している。

さらに注目されるのは、印刷者が誰であれ、スーパーノートは少なくとも19種の版が存在しており、それぞれが合衆国側の刷版のわずかな変更と一致していることである。

「間違いなく世界でもっとも精巧な偽造技術だよ」ジェイムズ・コルビーは言う。彼は先ごろ引退したアリゾナ州前共和党議員で、シークレット・サービスの活動を監査していた。「どうやってこんなことができるのか、何が起きているのかわからない。北朝鮮がどうやってこのような高度な技術を手に入れることができるのかもわからない。非常に高度な技術なんだよ。」

これまで表沙汰になった証拠としては、2004年度に起訴されたショーン・ガーランドの件がある。彼はアイルランド共和国軍から派生したグループの指導者で、1990年代後半に、モスクワの北朝鮮大使館からヨーロッパへ、100万ドルを超えるスーパーノートを持ち込んだとの疑惑がもたれている。ガーランドは現在アイルランド共和国に在住しているが、アイルランド大使館の話によれば、米国政府は彼の引渡しを要求していないという。

米政府がどのようにして結論に至ったのかについて、北朝鮮に関する疑惑の普及を促した元米政府職員らの見方はそれぞれ異なっている。

国務省で北朝鮮の犯罪活動の詳細を収集していたデビッド・アッシャーによれば、彼のグループは紙幣偽造の証拠を見つけており、“諜報”に依存していたのではないと言う。

現在、ワシントンの保守系シンクタンクであるヘリテージ財団で調査員を務めるアッシャーは、詳細について明らかにしなかった。

しかしブッシュは、北朝鮮が偽造紙幣“スーパーノート”を製造している証拠について2007年8月8日に本紙が質問した際に、「諜報に関しては自由に話せる立場にない」と回答していた。

ブッシュ政権元高官で、北朝鮮に対する最も強硬な姿勢で知られるジョン・ボルトンは、本紙の取材に応えて、北朝鮮政府がスーパーノートを製造している物的証拠を目にしたことはないと語った。しかし彼は、北朝鮮がそうした偽造紙幣を流通させているという証言は、悪行の証拠として充分であると言っている。

米政府諜報機関のトップを務めた或る政府関係者の話によれば、彼は結論に至るに足る充分な情報を目にしていないという。

「独自に判断を下せるだけの諜報を目にしたことがなかった。」カール・フォードは言う。彼は、主として亡命者のニセ情報を元に、イラクの大量破壊兵器保有疑惑を唱えたブッシュ政権側と対立し、2003年度に国務省情報調査局長の職を辞した人物である。北朝鮮の疑惑について、ブッシュ政権側が詳細を明らかにすることを渋るのは「正当性が疑わしい」と彼は言う。

もうひとつの主要な証拠として、中国領マカオの小銀行が北朝鮮の偽造紙幣ロンダリングを支援したという疑惑が持ち上がったが、それもまた疑わしい。米財務省はバンコ・デルタ・アジア銀行をブラックリストに載せ、2007年3月に事実上銀行を閉鎖させることになる決定を下した。

しかし、国際会計監査企業アーネスト・アンド・ヤングがマカオ政府の依頼により実施した監査報告を本紙側が入手したところ、バンコ・デルタ・アジア銀行が関与した偽造紙幣事件はたったの一件だけであった。事件が発生したのは1994年で、偽造紙幣の流通元は北朝鮮ではなかった。銀行側は自ら偽造紙幣を発見し、捜査当局に通報していた。

マカオ政府は同銀行に対する制裁措置を解除したが、米財務省は“諜報”を理由に同銀行を引き続きブラックリストに掲載しながら、この銀行が北朝鮮に2500万ドル送金することを許している。

世界各国の銀行では今でもスーパーノートを押収しているが、ブッシュ政権はもはや公的に北朝鮮を偽造紙幣の件で非難することはせず、北朝鮮政府との核兵器計画交渉では議題に上ることもなくなった、と国務省関係者は語っている。

ブッシュ政権が嫌疑を撤回するのか、あるいは北朝鮮の核兵器計画を止める試みを脱線させないように、確固たる証拠の提示を避けているのかどうかは、疑問が残されたままである。

スーパーノートの流通元についても依然として謎のままだ。産業界の専門家、例えば米財務省印刷局の前局長を務めたトーマス・ファーガソンは、スーパーノートはあまりに精巧なので、米政府の印刷機械にアクセスできる何者かによって製造されたのではないかと言っている。

専門家の中には、イランが紙幣を偽造していると言う者もいる。他にも、ロシアや中国の犯罪組織が関与しているという専門家もいる。

偽造紙幣の件を扱った書籍『Moneymakers: The Secret World of Banknote Printing』の著者であるクラウス・ベンダーによれば、偽造された100ドル紙幣は、「もはやニセ札とはいえない。あれは本物と並行して違法に印刷された紙幣」とのことだ。

「もはや通常の偽札業者の能力を超えている」ベンダーは言う。彼の著作は、北朝鮮のスーパーノート製造はありえないと指摘した最初の文献である。「だいいち、あまりにも念入りで(しかも高額なので)偽造作業のコストに見合わないはずだ。」

ベンダーによれば、スーパーノートはあまりにも高品質で、頻繁に刷新されているので、それを製造できるのはCIAなどの米政府機関しかありえないという。

疑惑は論拠薄弱だが、先例はある。ジャーナリストのティム・ワイナーが著したCIAの歴史にまつわる新著では、CIAがソビエトの経済を弱体化させるためにいかにして偽札を流通させようとしたかについて詳細が書かれている。

高精度の偽造紙幣を限定的に使用することで、諜報機関や捜査機関は、腐敗した社会体制や、テロリストグループ他の不法活動、支払い、資金の流れを把握することもできるという。

「当然ながら我々はそのような主張に対するコメントはしない。いかに馬鹿げた主張であってもね。」CIA広報担当官マーク・マンスフィールドは回答した。
(以上)


さて、これまで北朝鮮のドル紙幣偽造疑惑については、米国では政府発表によって、日本国内ではフィクション小説等によって、「北朝鮮なら偽造してるだろう」という漠然とした印象、あるいはそれが事実であるという認識が持たれていたように思う。しかし、もしも今回のマクラッチー紙による暴露が事実であれば、ブッシュ政権側は北朝鮮の不法行為疑惑について、イラクの大量破壊兵器疑惑と同じように、裏づけ調査をほとんどせず、曖昧な“証拠”を根拠に超高精度偽造ドル紙幣“スーパーノート”の実在を唱えていたことになる。その場合、米国政府の目標は、ドル紙幣偽造疑惑の真偽について白黒つけることではなくて、「北朝鮮がいよいよ危険なことをしている」という悪印象をメディアを通じて広範に伝達させることにあったのだろうか?だとすれば、偽造疑惑を描いた“フィクション”のベストセラー化は、何を意味するのだろうか。

しかし一方で、マクラッチーの今回の報道の信憑性はどうか?今回のスクープが、米国政府の信頼性を損なうために北朝鮮政府によって仕組まれた印象工作だとすれば?・・・もしそうなら、この馬鹿げた騒ぎのために、北朝鮮政府はスイス政府機関を抱き込んで、アメリカ政府の掲げる“証拠”に疑義を唱えさせたことになる。(そういえば、北朝鮮の核施設建設にはスイスの大企業が絡んでいるし、その企業の重役はラムズフェルド国防長官だったという事実がある。)また、北朝鮮非核化交渉のプロセスで、北朝鮮側が対応を遅らせている最中に、米国新聞大手がこうした報道を大々的に行うというタイミングもまた、非常に興味深い。

まあともかく、米政府は北朝鮮がドル紙幣を偽造している疑いがあると言い、マクラッチー紙は偽造疑惑はガセである疑いがあると言い、専門家はそりゃ偽造じゃなくてホンモノだと言う。一方で日本政府の対応は?・・・かねてより福田首相がブッシュ大統領に約束したとおり、日本政府は11日に補給支援特措法を成立させ、インド洋での自衛隊による給油活動再開を決定した。年金問題で国内が騒然としている最中に、えらくあっさり最優先事項に昇ってしまっていたらしい。

結局のところ日本政府は、米国政府の絡む様々な政策について、その中身を一切問わず、どうすれば手放しで支援できるかを24時間365日、年末年始を問わず考えているのだろう。しかしこれではまるで、日本政府は米政府政策の“広告代理店”みたいなものだ。その内容物や表示内容が偽装された米政府発の外交政策を、中身も調べずに商品として大量販売し、消費者たる国民はそれを食べて少しづつ健康を害していく。そしてある日突然、しばしばメーカー側の内部告発によって、消費者はその偽装に気づくのだが、すでに食べてしまったものは返品できないという事実に愕然とすることになるのだ。

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11/26/2007

マクレラン元大統領報道官が回顧録でブッシュ政権を批判

スコット・マクレラン大統領報道官

「私がここから逃げ出したくなったことがあるかって?そんなこと毎日考えてるさ!(笑)」

2004年3月9日、ホワイトハウス定例記者会見で演台に立ったスコット・マクレラン大統領報道官が思わず漏らした言葉。

前任者のアリ・フライシャーが強圧的な態度で不評だったのに対し、人当たりがソフトなスコット・マクレランは“テディベア”と呼ばれ、また苦しい嘘で記者の質問をはぐらかし窮地に追い込まれる毎日から“シンプル・スコティ”とあだ名が付いた。彼はテキサス州知事時代からブッシュを支えた側近中の側近の1人でもある。

母親のキャロル・キートン・ステイホーンは女性初のオースティン市長に選出された地元の名士で、2006年テキサス州知事選挙で保守系独立候補者として立候補した。その際、ホワイトハウスを去ったばかりのスコット・マクレランが選挙マネージャーを務めたが、ブッシュ大統領は共和党公認の現職リック・ペリーを推薦し、マクレランの母親は落選した。ちなみにスコット・マクレランの父親は、ベストセラー書籍『ケネディを殺した副大統領―その血と金と権力』の著者、バー・マクレラン氏。

ブッシュのホワイトハウスに勤務し、マスコミに嘘をつくことを日常業務としていた大統領報道官が回顧録を執筆した。書いたのは嘘?それとも真実?

ブッシュ政権で2003年7月から2006年4月まで大統領報道官を務めたスコット・マクレラン氏が、現在執筆中の回顧録の中で、CIA工作員身元漏洩事件(ヴァレリー・プレイム事件、通称PlameGate)において、ブッシュ大統領が隠ぺい工作に直接関与したことを仄めかし、マスコミをにぎわせている

問題となっている回顧録のタイトルは『WHAT HAPPENED:Inside the Bush White House and What's Wrong with Washington』。同書から、版元によって公開された文章を翻訳すればこんな感じである:

世界最高の権力を持つ指導者たる人物が私に要求したのは、彼の代わりに語り、イラクで大量破壊兵器を見つけられないという大失敗の渦中で失われた信頼を取り戻す手助けをすることだった。そこで私は、ホワイトハウス記者会見室の演台に立ち、カメラのフラッシュを浴びながら、二人のホワイトハウス高官-カール・ローブとスクーター・リビー-の汚名を公的に晴らそうとしていた。

そこにはひとつだけ問題があった。説明は真実ではなかったのだ。

私は知らされぬままに嘘の情報を伝えていた。しかも、私が嘘を伝えるにあたって、政権内で最も高いポジションにある5人の人物が関与していた。ローブ、リビー、副大統領、大統領首席補佐官、そして、大統領本人であった。

United States v. I. Lewis Libby

The United States v. I. Lewis Libby』リビー裁判の全記録。CIA工作員実名漏洩事件捜査の全貌を知るに最適の書籍。


Hubris

Hubris: The Inside Story of Spin, Scandal, and the Selling of the Iraq War』プレイム事件を最もわかりやすく詳細に報告した書籍。


Fairgame

Fair Game: My Life As a Spy, My Betrayal by the White House』身元を漏洩されたCIA工作員ヴァレリー・プレイム本人の回顧録。最終的にCIAの検閲で黒塗りが入った。


The Politics Of Truth: A Diplomat's Memoir: Inside The Lies That Put The White House On Trial and Betrayed My Wife's Cia Identity

The Politics Of Truth: A Diplomat's Memoir: Inside The Lies That Put The White House On Trial and Betrayed My Wife's Cia Identity』ヴァレリーの夫、元駐ガボン米大使ジョセフ・ウィルソン氏の回顧録。湾岸戦争時に駐イラク米大使代理としてサダム・フセインと直接対峙し、父ブッシュから感謝された件など、読ませるエピソード満載。

果たしてマクレラン氏は真実を書いたのか?FBIのこれまでの捜査と、リビー裁判での検察側・弁護側の各証言で得られた情報によれば、ヴァレリー・プレイムの身元暴露作戦に主導的役割を果たしたのがチェイニー副大統領であり、ブッシュ大統領がそれに直接関与した疑いは濃厚だ。

そして、マクレラン元大統領報道官は、回顧録で本人が書いているとおり、ブッシュ政権のウィルソン夫妻攻撃作戦には直接加担していなかったことも捜査で明らかになっている。(前任者のフライシャー報道官は工作員名漏洩に加担していたが、法廷証言と引き換えに起訴を逃れた。)言われるままにコキ使われていたので、回顧録で反撃を試みたわけだ。

同事件では、CIA工作員名を最初にマスコミに漏洩したリチャード・アーミテージ国務副長官は起訴を逃れ(漏洩相手はワシントンポスト紙記者でベストセラー著作『攻撃計画(Plan of Attack)―ブッシュのイラク戦争』執筆に向け取材中だったボブ・ウッドワードだが、彼は結局ヴァレリー・プレイムについて書かなかった)、チェイニー副大統領の腹心であるI・ルイス・リビー副大統領主席補佐官が2件の偽証罪、1件の偽供述、1件の司法妨害により今年3月に有罪判決を受けた。リビー側が上訴を検討する中、7月にはブッシュ大統領自身がリビー被告の減刑を表明している。

リビー裁判に提出された証拠資料(副大統領デスクのメモ)によれば、2003年10月の時点でリビーは、ホワイトハウス定例記者会見でリビー補佐官が機密漏洩に関わっていないと嘘の弁明をするようにスコット・マクレラン大統領報道官に命令して欲しいとチェイニー副大統領に願い出ている。(着任したばかりのマクレラン報道官はカール・ローブとは知己があったが、リビーの件で記者対応するのは嫌がっていた)しかしチェイニーは「1人のスタッフのために大統領のクビを危険にさらすことはできない」と冷たく対応した。(捜査が進展すれば、ブッシュ大統領自身の関与が暴露されるとチェイニーは予測していた?!)哀れ、リビー副大統領補佐官はブッシュとチェイニーの保身のために生贄にされたのであった。有罪になってヤケクソになったリビーが、事件の真相をぶちまけないように、ブッシュは素早く減刑宣言をした・・・あるいは、せっかく米世論がイラン攻撃に夢中になっているのに、「イラク戦争の大義」という過去の出来事に再び注目を集めて欲しくないというところだろう。

注意すべきは、スコット・マクレランの回顧録が、本人の執筆途中でその一部を公開されたという事実だ。刊行予定日が来年4月であることを鑑みると、プロモーションには早すぎる。マクレランは、全てを書き上げる前に、ホワイトハウスの反応を見たかったのだろうか?今のところマクレラン本人はマスコミ取材を拒否しており、回顧録の一部を公開した真意は知ることができない。

漏洩事件で収監されそうになった元タイムズ誌記者マット・クーパーは「リビーとローブがマクレランを騙していることにいつもイライラしていたが、彼もそうだったんだね」と暴露を褒めている

宗教保守派を中心に急速に支持を拡大している共和党大統領候補マイク・ハッカビーは、意外にもブッシュ政権攻撃側にまわった。彼は言う。「自分がワシントン関係者でなくて良かったといえる事例だ。これは深刻な疑惑だが、私達には真相を知ることができない。この件は徹底した調査によって国民に真実を伝えるべきだ。」

イラク戦争侵攻前の大量破壊兵器問題の取材で悪名を馳せた元NYタイムズ記者ジュディス・ミラーは、プレイム事件ではリビーを庇って収監された唯一の人物。彼女は今回の騒動に関してこう言っている:「この政権じゃ、ワシントンで何が起きようが、私はもう驚かないわ。」

ミラーの予測は当たるだろう。ブッシュ政権の内部にはまだまだスキャンダルが詰まっているはずだ。


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01/25/2007

元CIA工作員E・ハワード・ハントが死去:最後の著作は来月刊行予定

・・・ウォーターゲートのビルで逮捕されたマイアミ組の二人がそれぞれ住所録を持っていた。その住所録には、ハワード・ハントなる人物の氏名と電話番号、「W・ハウス」と「W・H」という小さな記号のようなものが載っているという。ウッドワードは電話のそばの堅い椅子に腰をおろして、電話帳を調べた。ハワード・ハントの電話番号は、メリーランド州ポトマックの部分に載っていた。モンゴメリー郡の豊かな郊外都市である。電話は通じなかった。
(中略)ウッドワードは旧友に電話した。ときどき情報を提供してくれる連邦政府の役人で、職場に電話をかけてくるのを好まない。その友人は、不法侵入事件は「熱くなる」だろうが、理由は説明できないと急いで言うなり、電話を切ってしまった。

-ボブ・ウッドワード&カール・バーンスタイン著『大統領の陰謀―ニクソンを追いつめた300日

AmericanSpy

E・ハワード・ハントの最後の著作は回顧録『American Spy: My Secret History in the Cia, Watergate And Beyond

ニクソン大統領が辞任に追い込まれる契機となったウォーターゲート事件を含め多数の「ホワイトハウス不正工作」を実行した『鉛管工チーム』の中心人物で、謎に包まれた経歴で知られる元CIA工作員E・ハワード・ハント氏が、23日にフロリダ州マイアミの病院で肺炎のため亡くなった。88歳だった。NYタイムズ紙報道ワシントンポスト紙報道

今年2月末には、ハント氏の最新・最後の著作『American Spy: My Secret History in the Cia, Watergate And Beyond』が発売される。ハント氏はこの回顧録の中で、ハント氏自身も関与を疑われたケネディ暗殺事件について、当時の副大統領リンドン・ジョンソンが暗殺計画に関わったのではないかと仄めかしているという。

同著作の内容を伝えるニューヨークポスト紙の記事によれば、ハント氏はこう書いている:「LBJには、金や、ダラスでの計画を操作するための組織もあり、なによりもまずJFKが現場にやってくるように説得できる立場にあった。(中略)彼(ジョンソン副大統領)はさらに、友人のコナリー州知事が危険を避けられるように、JFKの車輌ではなく彼の車輌に同乗できるよう段取りを試みたが失敗した。」

Tramps_1 Tramps

「3人の不審者」写真。JFK暗殺事件調査界には、この3人はCIA関係者であるという疑惑が根強いが、後の調査で写真の3人の所在が突き止められており、CIA工作員説は否定されている。)

さらにハント氏は、同僚のCIA工作員で、カストロ・キューバ議長を毒殺する計画を箴言した人物、ウィリアム・ハーベイとジョンソン副大統領が通じていたと主張し、ハーベイは「冷酷で、CIAでの役職にも給与にも満足できなかった」と評している。「彼(ハーベイ)はCIA長官に就任することを夢見ており、LBJが大統領になればそれが実現できると考えていた。(中略)LBJはハーベイを利用したのかもしれない。」

また、ハント氏は、ケネディ暗殺現場付近で拘束され、警察に連行される写真が有名になった「三人の不審者」の1人がハント氏であるとの疑惑について、回顧録の中であらためて否定している。

「このハントという男、あまりにも深く知りすぎてるな。」ウォーターゲートビル侵入が発覚した後、ニクソン大統領はそう呟いたという。E・ハワード・ハント氏が書き残した回顧録は、果たして真実の吐露なのか、あるいは最期のミスリーディングなのか?

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10/05/2006

ボブ・ウッドワードの新著『State of Denial』にワシントンが騒然

ワシントンポスト紙編集主幹で同社のスター記者、ボブ・ウッドワードの最新著作『State of Denial』が10月2日から発売開始された。版元によれば発売後わずか2日で3刷目、90万部以上出荷という超ベストセラー書籍になっており(彦摩呂風に言えば「ノンフィクション界のハリー・ポッターや!!」)、その流れで他のブッシュ批判ノンフィクション本も次々とベストセラーになりつつあるという。

そして、その書籍の内容をめぐり、米国政界に大激震が走っている

ウッドワードのブッシュ政権内幕本としては、これまでに『ブッシュの戦争(Bush at War)』『攻撃計画(Plan of Attack)』の二冊が刊行されているが、政府の機密情報を暴露しつつも、ブッシュ大統領個人については決断力に富む強力なリーダーシップを持つ人物として常にポジティブに描かれてきた。ブッシュ大統領を含めブッシュ政権幹部もウッドワードの描くブッシュ政権像に大変満足している様子(前二作で、ウッドワードはブッシュ大統領・チェイニー副大統領を相手に、特別扱いとも言える長時間独占インタビューをホワイトハウスで行うことを許されている)ブッシュ本人も著作が刊行されるたびに公の場で推薦してきた。

ところが、今度の新著『State of Denial』刊行に合わせ内容の抜粋が報道され始めると、ホワイトハウス側は「ウッドワード氏の報道姿勢は歪曲している」と批判し始めた。ウッドワードの予告どおり、現在の合衆国政府はまさしくState of Denial(拒絶状態)になったのだ。

ニューヨークタイムズ紙は2006年9月30日付でいち早く書評を掲載している。書いたのは、米国のスター書評家と呼ばれるカクタニ・ミチコ氏だ。彼女の書評の冒頭はこんな感じである:

ボブ・ウッドワードの待望の新著『State of Denial』に描かれるブッシュ大統領は、消極的で、忍耐に欠け、未熟で知的好奇心のない指導者で、著しく機能不全となった戦時閣僚を仕切り、ほとんど宗教的な確信により戦争に至った自分の決断を見直したり再評価する気がない人物として登場する。ウッドワードが2002年の著作『ブッシュの戦争』で描いた賛辞に富む大統領像-ホワイトハウス広報部が伝える表現を使えば、思慮深く毅然とした指導者であり、父親が欠いていたといわれる構想力に富み、国家の舵取りをしっかりとできる人物-とはあまりにも対照的な肖像となっている。

ライスとラムズフェルド

電話で話すこともしないライスとラムズフェルド。二人の関係はまるで小学生のケンカレベル。

以下に、ウッドワードが新著で暴露した主な情報を、報道されている範囲で列挙してみよう:

  • 2003年9月の時点で、国家安全保障会議メンバーでイラク政策顧問ロバート・D・ブラックウィルは、イラク国内で反乱軍が台頭しつつあるので追加派兵が必要になるとホワイトハウス側に警告した。しかしブッシュは反乱の懸念を無視し、戦争に関するネガティブな評価の一切を禁止した。ウッドワードによれば、ブッシュ大統領はこう言っていた:「この政権の閣僚には誰ひとりとして反乱という言葉は使って欲しくない。」
  • ネグロポンテ国家情報長官は「イラクの情勢は極めて悪くなり、今後さらに悪くなる。我々は常に反乱の拡大について誤った判断をしていた。」と内密に語っている(一方で先月、ネグロポンテは最新の米国家諜報評価報告で「イラク戦争がテロの脅威を増加させた」と書かれていることについて「意見の一部に過ぎない」と成功を強調した。)
  • イラク政策をめぐりラムズフェルド国防長官とコンドリーザ・ライス現国務長官は敵対し、電話で話すことすらしない険悪な関係になった。
  • アビザイド米中央軍司令官はラムズフェルド国防長官について「イラク戦争の戦略について長官は全く信頼できない」と2005年秋の時点で友人に語っていた。ウッドワードの弁によれば、ラムズフェルド国防長官は米軍内で全く信頼されていないが、ラムズフェルドを公的に批判し辞任を迫っているジョン・マーサ議員(民主党)は「アメリカ軍人達の魂と良心を代弁している。」
  • コリン・パウエル前国務長官はブッシュ政権2期目の閣僚人事の際、自ら辞任を申し出たのではなく『解雇』された。怒ったパウエルは「私がクビならラムズフェルドもクビにすべきだ」とカード補佐官に詰め寄った。そして2005年暮れにカード補佐官は、密かにラムズフェルドをホワイトハウスから追い出す計画を立て、後任にリーバマン議員(民主党)もしくはマケイン議員(共和党)を推薦するつもりでいた(ブッシュ父は当初からラムズフェルドの国防長官就任に反対だった。ラムズフェルドは内輪でブッシュ父を「軽量級(lightweight)」と馬鹿にしていた。ローラ・ブッシュ夫人もラムズフェルドの無礼な態度を嫌い、カード補佐官にラムズフェルドを追い出して欲しいと頼み、コンドリーザ・ライスもラムズフェルド解雇を密かに望んだ)しかし、これがブッシュ大統領の怒りを買い、カード補佐官は辞任することになった
  • ブッシュ大統領はヘンリー・キッシンジャーを信望しており、現在もキッシンジャーはホワイトハウスに招かれブッシュ政権の外交政策を牛耳っている。キッシンジャーはイラク戦争について、ベトナム戦争時代と同じように「反乱軍に勝利する以外に出口戦略なし」と主張し、イラク撤退論を拒絶しさらに米軍の戦力を中東に注力するようブッシュに指示している

ウッドワードの重大な暴露:911テロの2ヶ月前、コンドリーザ・ライスは脅威が迫っているという報告をCIA長官から直接受けていた

以下に、書籍『State of Denial』からポスト紙に掲載された内容を一部抜粋して翻訳掲載。:

911テロの2ヶ月前、ライスに伝えられた緊急警告

2001年7月10日、世界貿易センタービルとペンタゴンへが攻撃される2ヶ月前に、当時のCIA長官ジョージ・テネットはCIAテロ対策局長コーファー・ブラックと、オサマ・ビン・ラディン、アルカイダ・テロ組織の最新の動きについてCIA本部で話し合っていた。ブラックは状況を説明し、盗聴記録と最新の最高機密諜報報告から、アルカイダがまもなく合衆国を攻撃する可能性が極めて高いと主張した。断片的な情報に過ぎなかったが説得力があったので、テネット長官はブラック局長と共にホワイトハウスに報告すると決心した。

テネットは当時の国家安全保障担当大統領補佐官コンドリーザ・ライスを自動車から電話で呼び出し、すぐ会う必要があると話した。CIA長官の要求をライスが拒否するに足る理由はなかった。

-中略-

テネットとブラックは、自分達の懸念の深刻さを伝えて、ライスが合衆国政府諸機関に対しただちに対策をとるよう促すことを望んでいた。

-中略-

テネットは不意打ちの会見を要求することでライスを動揺させることを狙っていた。テネットと、工作活動に熟練したブラックは、ライスとの会見で二つの重要事項を示すつもりだった。第一に、アルカイダがアメリカ合衆国の資産、ひょっとしたら米国本土への攻撃を目論んでいること。戦略的警告が必要になることをブラックは強調し、事態は極めて深刻なので国家全体での戦略的な対応計画を要求するつもりだった。第二に、外交政策上多大な問題を生じるので、ただちに着手する必要があるということだった。彼等はビンラディンの野望を阻止するために工作活動、軍事活動その他何でも実行する必要があった。

-中略-

テネットとブラックは、ライスが事態を理解していないと感じた。彼女は丁寧だったが、、彼等は拒絶されたと感じていた。ブッシュ大統領は書類を読みたくないと語っていた。

-中略-

テネット、ブラック、ライスが出席した7月10日の会議については、911テロ調査に関する様々な報告書の中には言及されていないが、テネットとブラックの心には、ビンラディンとアルカイダに関してホワイトハウスに与えた最大級の警告として残っている。テロ公式調査委員達には関連書類の閲覧が許可されていたが、ブラックが感じたのは、公式調査委員会が知りたい事実と、知りたくない事実があるということだった。

-中略-

バージニア大学教授で、ライスとはドイツに関する共著も出版している911テロ政府調査委員会の事務局長フィリップ・D・ゼリコウは、7月10日の会議がどういうものだったか知っていたが、「ただちに行動」という言葉が何を意味するのか彼には明確でなかった。2005年、ライス国務長官はゼリコウを国務省主席補佐官に抜擢した。

-中略-

それ以来、テネットはライスとの会議について、911テロ攻撃を阻止する最大の機会が失われた出来事として当時を振り返ることになった。ライスはブッシュを説得することも可能だったが、当時の彼女は事態を理解できなかった、とテネットは考えた。テネットは、自分がきちんと役割を果たし、脅威に対して率直に向き合ったと感じていたが、ライスは迅速に行動しなかった。ライスには組織を率いる能力が不足しており、テネットがCIAでやっていたような、人に行動させることができなかったとテネットは感じた。

ブラックは後にこう語っている。「我々が唯一実行しなかったのは、彼女(ライス)の頭に銃を突きつけて、引き金を引くことでした。」(抜粋以上)

ボブ・ウッドワードの暴露した上記の情報に驚いたマスコミ各社は、慌てて事実確認に奔走し、国務省の公式記録と関係者証言から2001年7月10日にテネットがライスと会見した情報が事実であることが確認された。

つまり、2001年7月10日に、コンドリーザ・ライス国務長官(当時は国家安全保障担当大統領補佐官)と彼女の補佐官達は、テネットCIA長官とテロ対策局長コーファー・ブラックの二人から、アルカイダの合衆国本土攻撃の可能性について詳細に警告を受けたが何もせず、CIA側を呆れさせたのだ。しかも、テネット長官は、ライスに説明して数日後、今度はラムズフェルド国防長官とアッシュクロフトFBI長官にも同じように警告していた事実も明らかになっている。おそらくブッシュ政権閣僚は皆、イラク戦争計画に夢中だったのであろう。

9/11 Commission Report

9/11テロ公式調査報告書『9/11 Commission Report

Without Precedent

911テロ政府調査委員会の内幕を委員長自ら暴露した問題作『Without Precedent: The Inside Story of the 9/11 Commission

911テロ公式調査最終報告書では、この2001年7月10日の緊急テロ対策会議について具体的な言及がなく、2004年4月8日に実施された公聴会で宣誓し証人席に座ったライス国務長官は、この2001年7月10日の出来事について質問されることもなかった。

911テロ政府調査委員会のメンバーは何をしていたのか?委員の1人、ティモシー・J・ローマー(民主党)は「全く知らされていなかった。憤慨ものだ」と怒っているが、ワシントンポスト紙の調査によれば、2004年1月28日に調査委員会はCIA本部でテネット長官に聞き取り調査を行い、その際テネット長官は2001年7月10日の事実について委員会に語っていることが判明している。聞き取り調査に参加していたのは政府調査委員会事務局長フィリップ・D・ゼリコウと、委員の1人リチャード・ベン・ベニステ(民主党)だった。つまり、委員会内部の一部は事情を知っていたわけだ。

ウッドワードの記述どおり、フィリップ・D・ゼリコウは911調査委員会の中心的存在で、調査の枠組みからスタッフ人事、レポート作成までを監督している重要人物であることが、先月出版されたトーマス・キーン911テロ政府委員長の調査内幕本『Without Precedent』にも書かれている。ゼリコウが911政府調査委員会の事務局長に就任した際、911テロ被害者遺族会は彼の立場が「利害の衝突」にあたると糾弾した。無理もない。なにしろ、クリントン政権からブッシュ政権に業務引継ぎが行われた2001年当時、フィリップ・D・ゼリコウはライスの下で国家安全保障会議の補佐役を務めていたのだ。(ひょっとしたら、2001年7月10日のテネット氏のテロ警告を、ライスの横で聞いていたスタッフの中には、ゼリコウ氏も含まれているのかもしれない。)

つまり、ボブ・ウッドワードが今回の暴露で示唆しているのは、ゼリコウが盟友ライスのために-あるいは自分のため、そしてブッシュ政権のために-911テロ公式調査レポートの一部を都合良く組み立てたのではないかという疑惑だ。

元CIAアナリストのラリー・ジョンソンも指摘するように、これは疑うに足る理由が充分にある容疑である。そもそも調査対象に属する人物を調査責任者に着任させることで、様々な疑惑と軋轢が生じる懸念があったことが、『Without Precedent』にも書かれている。同書によれば、歴史学者として実績あるゼリコウ氏は、関係各方面から調査責任者に推薦されたと書かれている。その推薦人の中にはホワイトハウス関係者もいたのではないか?

少し歴史を振り返って思い出してみよう。2002年11月27日、実にテロ事件発生から1年以上経過してから、ブッシュ政権は渋々と911テロ政府調査委員会設置を承認した。委員会設置当初の割り当て予算はわずか300万ドル、しかもブッシュ大統領が指名した最初の調査委員長は、ヘンリー・キッシンジャーだった。ケネディ大統領が暗殺された時、ジャクリーン夫人は事件の調査を一年も待てただろうか?クリントン大統領とモニカ・ルインスキーがオーバル・オフィスで行った大惨事の際に、共和党が大騒ぎで主導した大統領の下着の調査費用(ホワイトウォーター疑惑の調査を含む)は6,400万ドルである

911テロ調査委員長トーマス・キーン氏は、内幕本『Without Precedent』の中で、「公式調査の目的は本土防衛に失敗したことの責任追及をすることではなく、事実だけを明らかにすること」と強調している。それは歴史を記録するという面では正しい姿勢かもしれないが(911テロ被害者遺族はそれでは納得しないだろう)、それならば、ブッシュ政権の明確な失敗についての説明責任は、どこで果たされる予定なのだろう?

ウッドワードの暴露を受けて慌てたコンドリーザ・ライス国務長官は、テネットとの会見を最初は否定したが、公式記録で事実と確認されると、『ビン・ラディンが合衆国本土攻撃を決定』というタイトルのレポートを手にした時(2001年8月6日)と同じように「切迫した内容ではなかった」と反論している。しかし一方でライスは、ブッシュ政権二期目スタート時に、辞任の意向を大統領に伝えていたと漏らした。彼女は内心、自らの失敗をおおいに恥じているのではないだろうか。

ところで、退任以来沈黙を保っている元CIA長官ジョージ・テネット氏は、来春刊行予定の回想録を執筆中で、ブッシュ政権に対する復讐を込めた暴露を行うと噂されている

テネットが何か言い出す前に、誰か早くコンディをクビにしてやれ。

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09/30/2005

ジュディス・ミラー記者、釈放される

CIA工作員名漏洩事件で有罪を宣告され、現在服役中のニューヨークタイムズ紙ジュディス・ミラー記者が、収監されていたバージニア州郊外の「新世代刑務所」アレクサンドリア収容センターから急遽釈放された

実際には記事化しなかったジュディス・ミラー記者と違い、CIA工作員の件を記事で書いたタイム誌マット・クーパー記者の情報源はカール・ローブ大統領主席顧問だったが、ミラー記者は情報源の名を明かし捜査協力することを拒んできた。それはジャーナリストとしてのプライドではなく、全てはブッシュ・ホワイトハウスへの忠誠のためであった。(あるいは、恐怖だ)

捜査を担当するフィッツジェラルド検事の捜査対象には、当時国務次官で現米国連「不良品」大使ジョン・ボルトン副大統領補佐官ルイス・リビー「フェラガモ大好き」現国務長官コンドリーザ・ライス、さらには「半人前」ブッシュ大統領自身も含め、ホワイトハウス関係者のほとんどが疑惑に関わっている執念深く事件を追跡する姿勢から、往年のFBI捜査官エリオット・ネスの再来と持ち上げられているシカゴのパトリック・フィッツジェラルド検事は、本気で大統領の首を狙っていると噂されている。)

ミラー記者が収監中に面会に応じた相手のリストに、現国連大使ジョン・ボルトン等ブッシュ陣営の大物が多数含まれていることは、大変示唆的だ。

実刑判決を受けて収監されてから、ミラー記者は刑務所生活の辛さに態度を変え、司法取引に応じる構えを見せている。イラク戦争開戦前に、ホワイトハウスの「大量破壊兵器プロパガンダ作戦」で重要な先導役を演じたミラー記者は、ブッシュ政権の「情報捏造工作」の秘密の一端を握っていると目されている。

釈放される直前に、ジュディス・ミラー記者はチェイニー副大統領の補佐官ルイス・リビーから電話で何かを耳打ちされている。ずっと法廷での証言を拒否してきたミラー記者が、偽証するにせよ真実を語るにせよ、いよいよ口を開くかもしれない。その際には、CIA工作員の件を最初に記事にしながら、(何らかの司法取引により)未だに罪に問われていない米保守派の大物(カール・ローブの友人)批評家ボブ・ノヴァックの動向も注目されるだろう。

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07/14/2005

CIA工作員名漏洩事件:カール・ローブ暗躍中