貧しいアメリカ2007:3,730万人が貧困ライン以下
米国勢調査局が今月26日に発表した最新統計報告によれば、2007年度にアメリカ合衆国では平均世帯収入が前年比で1.3%上昇したものの、貧困率は12.5%で、2006年度から変化はなかった。貧困ライン以下の生活をする国民は3,730万人で、2006年度の3,650万人から増加している。
米国勢調査局が今月26日に発表した最新統計報告によれば、2007年度にアメリカ合衆国では平均世帯収入が前年比で1.3%上昇したものの、貧困率は12.5%で、2006年度から変化はなかった。貧困ライン以下の生活をする国民は3,730万人で、2006年度の3,650万人から増加している。
まずは明るいニュースから。米国勢調査局(U.S. Census Bureau)が8月28日に発表した年次報告によれば、2006年度にアメリカ合衆国の世帯収入は2年連続で上昇し、貧困率は前年よりも減少したという。報告にあわせてブッシュ大統領は「2006年度の所得増加は大幅なもので、全ての所得部門まで広範に及んでいる」「貧困率は著しく改善した」と高らかに宣言した。
もっと明るいニュースもある。米国の民間調査団体、公正経済連合(United for a Fair Economy)と政策研究協会(Institute for Policy Studies)が8月30日に発表した共同調査報告「Executive Excess 2007」によれば、2006年度におけるフォーチュン誌認定上位500社CEOの平均年収は1,080万ドル(約12億5,020万円)で、一般労働者の年収に比較して364倍だった。2004年度の数値(431倍)に比較すれば、所得格差はかなり縮小している!ちなみに2006年度、米企業CEOの稼ぎ頭はメリルリンチのスタンレー・オニール氏で、年収は9,100万ドル(約105億3,236万円)だった。
加えて、すばらしいニュース。世界経済を牽引する超実力社会アメリカでは、大企業CEOは努力・能力ナシでも報われるようになった。2006年度、ヨーロッパ地域では上位20人の企業CEOの平均年収は1,250万ドル(約14億4,712万円)で、米国の上位20人の企業CEOの平均年収に比較すると1/3に過ぎない。一方で、ヨーロッパ側CEOが経営する企業20社の合計売上高は、アメリカ側のそれに比較して190億ドル以上多かった。
さらにパワフルなニュース。米国で活躍するトップクラスのヘッジファンドマネージャー20人の2006年度平均年収は6億5,750万ドル(約761億1,220万円)で、一般労働者の平均年収2万9,544ドル(約342万円)に比較して2万2,255倍多く稼いでいた。まさにアメリカン・ドリームだ!USA!USA!ゴッド・ブレス・アメリカ!
・・・さて、悪いニュース。アメリカで仕事に就いている男女の平均賃金は3年連続で減少した。医療保険に加入していないアメリカ人は前年比で5%増加し、4,700万人になった。貧困層に属するアメリカ人は現在3,650万人で、ブッシュ政権がスタートしてから490万人も増加した。そして、緊急食糧支援に頼るアメリカ人は毎年2,300万人にものぼるという。
「私は皆さんが思っているよりもずっと良く眠っているんですよ。」
(I'm sleeping a lot better than people would assume.)ジョージ・W・ブッシュ大統領、2006年12月14日に行われたインタビューで発言(source)
ボブ・ハーバート最新コラム集『Promises Betrayed: Waking Up from the American Dream
』
今回はニューヨークタイムズ紙の人気コラムニスト、ボブ・ハーバートの最新コラムを翻訳して掲載。
今回のコラムで指摘されているとおり、ハリケーン・カトリーナ被災地の復興は停滞している。その一方で、イラク戦争で米国政府はこれまでに3,500億ドル(約41兆5,992億5,000万円)を支出しており、アフガニスタン戦争その他テロ戦争費用を合計すると、米国の戦争関連支出は5,000億ドル(約59兆4,275億円)を超えているという。さらに先週、米国防総省はイラク・アフガニスタン戦争追加予算として997億ドル(約11兆8,498億4,400万円)を要求している。
2003年5月に「イラクでは主要な戦闘は終了した」と宣言したジョージ・W・ブッシュ大統領は、2006年12月になると「我が国は勝っても負けてもいない」と勝利宣言を事実上取り消し、イラク駐留米軍の増強を訴え始めた。(現在ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されているあの悪名高き『トップガン大統領』演説ビデオをみると、いつのまにか『任務完了』の横断幕がフレームアウトされている。『任務完了(Mission Accomplished)』の文字は当時の公式写真にも見当たらない。)
今年の中間選挙で敗北し、政府職員の顔色が気になり始めたブッシュは、米軍兵士を含めた公務員の昇給を求める大統領命令に先日素早く署名した。この法律によって、2008年1月から米連邦政府職員は(兵士も含め)平均で2.2%昇給される。なお、この昇給命令には、米国議員全員及びディック・チェイニー副大統領の昇給(1.7%増)も含まれているという。
クルーグマンがコラムで嘆くように、米国の医療システムは党派に関係なく問題視されており、その改善政策案は2008年度大統領選挙の争点のひとつになると思われる。世論調査によれば、2004年度選挙でブッシュに投票した有権者の内62%が、大統領と議会が現在の医療危機に対応できていないと感じているという。
一方、戦争費用により膨れ上がった財政赤字の削減に取り組むことになったブッシュは、軍事関連では相変わらず太陽系最大の支出を目指しているが、国内医療向け予算については今よりもっと小さな政府を目指すことにしたらしい。ブッシュ政権の2007年度予算案では、国内貧困層向けの各種医療サービスや疾病対策支援予算---例えば、先住民族向け医療サービス、田舎向け医療器具補助、アルツハイマー対策啓蒙活動、さらにはスーパーマン役で名声を博したクリストファー・リーブ夫妻の設立したリーブ財団(クリストファー・アンド・ディナ・リーヴ麻痺資源センター)向け予算まで全額カットされている。(クリストファー・リーブ氏は2004年に死去し、妻のディナ・リーブさんも2006年3月6日に肺がんで亡くなった。ブッシュ大統領が予算案を公表したのは2006年2月6日で、ディナさんが死亡する一ヶ月前だった。)
CommonDreams2005年11月21日付け記事より。経済格差に関する書籍『Economic Apartheid in America: A Primer on Economic Inequality & Insecurity』の内容が紹介されているので、以下に一部を抜粋、翻訳して紹介:
米国の民間調査団体、公正経済連合(United for a Fair Economy)と政策研究協会(Institute for Policy Studies)が8月30日に発表した共同調査報告「Executive Excess 2005」によれば、2004年度のCEOの平均年収は1,180万ドル(約13億677万円)、一般労働者の場合2万7,460ドル(約304万1,934円)で、両者の収入格差は431倍となり、2003年度の301倍から上昇している。
過去を遡ってみると、企業経営者と一般労働者の収入格差は1982年度で42倍、90年では107倍、2001年度には過去最大の525倍であった。
90年代から現在までの米国企業CEOと一般労働者の収入格差の変遷。米国民の二極化はクリントン政権時代から深刻化している(画像クリックで拡大します)source:Executive Excess 2005
2004年度の企業CEO報酬額で特筆すべきは、イラク戦争による経済効果である。2001年から2004年の間に、米企業CEOの平均年収は7%上昇しているが、企業収支が公開されている国防関連企業(ユナイテッド・テクノロジー、テクストロン、ゼネラル・ダイナミクス社など)の経営者の収入は、平均で200%上昇している。
例えば、防弾ベスト製造で知られるDHBインダストリーズ社のCEO、デビッド・H・ブルックスの場合、2001年度の報酬は52万5,000ドル(約5,820万7,629円)だったが、2004年度には7,000万ドル(約77億6,120万円)となり、増加率は13,349%である。2004年度、ブルックス氏は持ち株1億8,600万ドル分を売却して投資家の動揺を誘い、結果として同社の株価は22ドルから6ドル50セントに下がった。2005年5月、米海兵隊はDHBインダストリーズ社製防弾ベストの防弾性に問題ありとして、同社製品5,000着以上をリコールしたが、その時すでにブルックス氏は2億5,000万ドル以上(約277億754万円)を懐に収めていた。
また、国防関連企業CEOの報酬と、米軍の将軍クラスの収入格差は、2001年の12倍から2004年には23倍に拡大している。ちなみに、キャリア20年の将軍クラスの2004年度の年収は平均16万8,509ドル(約1,867万9,352円)で、2001年度に比較して2万286ドルの増加。一般兵士の場合、戦闘手当や住宅手当等を含めた年収は平均2万4,278ドル(約269万1,119円)で、2001年度から3,520ドル増加している。
イラク侵攻時から米軍の兵站業務を担当しているハリバートン社のCEOデビッド・レサー氏は、2003年から2004年の間に報酬を171%増額させ、1,140万ドル(約12億6,354万円)を受け取った。同じ時期、同社が国防総省に不正請求していた金額は14億ドル(約1,551億8,300万円)に及んでいる。一方でハリバートン社は、イラク駐留米軍の各基地で臨時雇用しているトルコ人やフィリピン人出稼ぎ労働者の食事として、米軍の残飯だけを提供しているという。
米国勢調査局(Census Bureau)が8月30日付けで発表した最新レポートによると、2004年度におけるアメリカ合衆国の貧困率は12.7%で、人数にするとおよそ3,700万人が貧困ライン以下の生活をしている(前年比110万人の増加:AP通信の関連記事)。
ブッシュ政権成立の年から貧困率は継続して上昇しており、ブッシュ大統領就任から4年間で貧困者の数は約590万人増加したことになる。(以下のグラフを参照)
アメリカ合衆国貧困率の変遷(画像クリックで拡大します)(source:US Census Bureau)
人種別でみると、アジア系米国人のみ貧困率が減少しており、2003年度の11.8%から2004年度は9.8%となっている。最も貧困率が上昇しているのは白人層で、2003年度の8.2%から2004年度は8.6%に上昇。なお、ヒスパニック系の貧困率は21.9%、黒人の貧困率は24.7%で、前年に比較して大きな変化はみられない。
また、2004年度における米国民の医療保険未加入率は15.7%で、およそ4,580万人が医療保険未加入であり、前年から80万人ほど増加している。
州別データから、貧困率の高い州、低い州をみると、以下リストのとおりになる。ミシシッピ州、ルイジアナ州は、今回のハリケーン(カトリーナ)により壊滅的被害を受けているので、同地区の貧困層住民にとっては今後さらに困難な生活が待ち受けていることになる。(現在、ルイジアナ州ニューオリンズは戒厳令が敷かれている)
※米国勢調査局による貧困定義基準のサンプル:
4人家族(夫婦+18歳以下の子供二人)の場合、年間世帯収入19,157ドル(約213万円)以下は貧困家庭とされ、貧困者数4人と算定される。
経済学者ポール・クルーグマンがニューヨークタイムズ紙に連載中の人気コラム最新号を以下に全文翻訳して掲載。
by ポール・クルーグマン:ニューヨークタイムズ紙2005/05/20付けコラム
新たに発表された報告書の中で、財務省が中国の通貨政策を非難しているという話題を聞いて、ほとんどの読者の皆さんは「なんで??」と不思議に思うことだろう。率直に言って、この問題には経済の専門家ですら混乱することもある。しかし、何が起こっているかちょっと説明してみたい。
過去数年間、中国は、自国の事情により、米国の無責任な財政政策とナスダック式の理論マニアの両方に対して鍵を握ってきたが、今回の課題はアメリカの住宅市場が関わっている。今になって、合衆国政府はついに問題があることを認めた。ただし、我が国ではなく、中国が問題だと宣言したのだ。
そして、政府内の誰一人として、喜ばしくない現実を直視しようとする姿勢は未だみられない。今や、合衆国の経済は中国や諸外国からの低利融資に依存しており、その限度が近づくにつれて大きな問題に膨れ上がっているのである。
合衆国と中国の経済がどのように関係しているか示そう。
貿易黒字の急増と西側及び日本企業からの投資急増により、中国にはお金が流れ込んでいる。通常は、この資金の流れは自国で補正される:中国の貿易黒字と海外からの投資額は中国の貨幣である人民元の価値を押し上げ、中国の輸出品は国際競争力を削がれて貿易黒字は縮小していく。
しかし、中国政府は、そうした展開を防ぐために、人民元の価値を低く抑えるために流入する資金をそのまま外国への融資に回しており、大量のドル資産を買いあさっている。2004年度には2,000億ドル、今年はおそらく3,000億ドルほどになるだろう。これは経済的にはひねくれたやり方だ。西側諸国の基準からみると資本に乏しい国家である中国は、巨額の資金を低金利でアメリカ合衆国に融資している。
しかし、合衆国もまた、その歪んだやり方に依存することになってしまった。中国や諸外国によるドル買いにより、米国経済は巨額の財政赤字の影響からなんとか自立性を保っている。こうした海外からの資金の流れにより、財政赤字を補填するために政府が巨額の借り入れをしているにも関わらず、合衆国内の金利は低く抑えられているのである。
低金利は、翻って、アメリカ国内の住宅ブームの鍵を握っている。そして、急騰する住宅価格は単に建設業界の雇用を創造するだけでなく、多くの住宅所有者が、上昇する住宅価値を抵当債務借り換えによって現金化しており、結果として個人消費をも支えているのだ。
ではなぜ、合衆国政府は文句を言っているのだろう?財務省の報告は中国の通貨政策が合衆国にどう影響しているか全く触れていない。国内政策に関しては、いつも通り、ブッシュ政権へのゴマすりしか提示していない。一方で、中国自身のために、中国の政策の不当性について注目しているというのだ。いつからそれが合衆国の心配事になったのだろう?
もちろん現実には、合衆国政府は中国の経済など気にかけていない。ただ単に、中国の貿易黒字に怒る米国内の製造業界からの圧力から、中国の人民元に文句を言っているだけなのだ。全ては政治的動機なのである。そして、それこそが問題なのだ。政策決定が純粋に政治的動機だけで行われると、誰も現実世界の状況に応じた判断をしなくなってしまう。
もし中国政府が通貨政策を変更して、低金利の融資が行われなくなった際にはどうなるか、私の考えを述べよう。合衆国内の金利は上昇する。住宅バブルはおそらく弾けるだろう。建設業界の雇用と個人消費は共に落ち込む。住宅価格が下落するにつれて、自己破産も急増する。そして突然、国民は財政赤字の状態で資金繰りが簡単と誰が考えたのかを不思議がることになる。
言い換えれば、我が国は中国によるドル買い政策の中毒に陥り、それがなくなると禁断症状に苦しむようになってしまったのだ。
私は現状維持しろといいたいのではない。中毒は治療されるべきだし、早いほど良い。結局、近日中に中国はドル買いを控えるだろう。そして国民が何をしようと、やがて住宅バブルは弾けることになる。加えて、長期的に見れば、諸外国のドル買い依存からの脱却により、もっと健全な国内経済がもたらされるだろう。特に、人民元や他のアジア通貨の上昇は、2000年からこれまでに300万人の雇用を失ってきた米国製造業の競争力を、最終的にはより高めることになるだろう。
しかし、中国の通貨政策変更による悪影響はすぐに現れるが、良い影響が実感されるのは何年も先のことになる。私に言えることは、中国が合衆国の要求に応えて人民元の価値を上昇させた場合に、米国民がどうやって状況に対応するかについて、権力の座にある者達が全く考えていないということだ。(以上)
Ohio.com2005/03/21日付け記事より。同記事から面白い(?)雑学をいくつか以下に抜粋。
(西海岸のローカル紙)The Union Democrat紙2005/03/03付け記事より。以下に全文翻訳して掲載。
米退役軍人局は、湾岸戦争症候群に苦しむ退役軍人約20万人の障害年金請求を拒否しつづけている。さらに、ブッシュ政権は財政赤字解消(というよりイラク占領費用捻出のため)退役軍人向けサービスをどんどん縮小しており、2003年度には退役軍人向け医療予算を30億ドルも削減している。
by エイミー・リンドブロム:The Union Democrat紙2005/03/03付け記事
ビルとアンナ・デルーエン夫妻の息子は、目だった戦傷を負うことなく、湾岸戦争からコロンビア(サウスカロライナ州)に帰還した。
骨折もなく、銃創もなかった。容姿も以前と変わらぬままだった。
しかし、ビル・デルーエン三世は傷を負っていた。
1989年、幸福で健康な27歳のビルは、陸軍に入隊した。
1991年、戦場から帰還したビルは、重い頭痛と、慢性的な下痢、原因不明の熱に悩まされていた。彼はうつ状態になり、信じられないほど疲労しており、悪夢のせいで夜寝付くことが出来ない。ひとたび眠れば、シーツは汗でずぶぬれになった。
退役軍人局の精神科医は、デルーエンの症状をPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断した。ビルは、サダム・フセインの共和国防衛隊を攻撃するために編成された陸軍の秘密部隊に所属していたことから、デルーエンの両親は、息子が枯葉剤や神経ガスを浴びたと信じている。
陸軍を退役して13年経過した今、ビル・デルーエンは懲役16年の刑に服している。2001年、彼は覚せい剤を販売していた容疑で有罪を宣告された。両親の話では、ビルは長年の痛みを抑えるために覚せい剤を使用していたという。
このまま何事もなければ、42歳のビル・デルーエンは2013年に出所することになる。
デルーエンの両親は、すでに夫妻ともに70代中盤だが、50歳になった息子が家に戻るまで生きていたいと願っている。
夫妻は、現在のイラク戦争から帰還する兵士達の両親のために、自身の経験が活かされることを期待している。夫妻のアドバイスは警戒を促している:「見えない病気に注視しなさい」
「気をつけて。隠れた兆候を見逃さないで。帰還した兵士達は酷い状態になっているものなんです」アンナ・デルーエンは涙ながらに語った。
デルーエン夫妻はアメリカ人であることに大変な誇りをもっており、1950年代以来の頑固な共和党員である。ベッドルームの壁には、フレームに入ったロナルド・レーガンの肖像とともに、制服を着た息子の写真が飾られている。
ロシア軍とドイツ軍が激突していた頃のハンガリーから、10代のアンナ・デルーエンは母親と一緒に祖国を脱出した。
「ここに居られることは本当に素晴らしいことだし、夫にとっても息子にとっても、アメリカ人であることはとても素晴らしいことです」アンナ・デルーエンは言う。「もしもハンガリーに留まっていたら、こんな素敵な人生を送ることが出来なかったでしょう。あそこでは今でも人々が苦闘しています」
しかし、アメリカへの愛にも関わらず、デルーエン家は半ば政府に裏切られたように感じている。夫妻の話では、湾岸戦争で化学兵器に侵された退役軍人達に、合衆国政府は十分な支援をしていないという。
「私達の息子は、退役軍人局から、汚れたぼろ切れのように棄てられているんです」アンナは言った。
ビルは際限のない下痢に苦しみ、痩せていった。不眠と原因不明の倦怠感から、彼は日中に眠るようになった。簡単な事も思い出せなくなり、全身が痛むようになった、と父親は語った。
デルーエン夫妻は何かがおかしいと感じた。息子はそのような病気に罹ったことがなかったので、夫妻は怖くなった。
「息子はもがいていました。私達も四苦八苦していました」アンナ・デルーエンは言った。
ビルとアンナ・デルーエンは、息子を医者や精神科医に診せ、原因を解明できると期待した。ベイ・エリア病院に向かう途中、病気で息子の内臓が破裂寸前になり、オークデイルまでしか到達できなかった。
湾岸戦争に派遣された兵士達に対する何年もの医療調査の結果、連邦政府はようやく湾岸戦争症候群が実在する問題であると認識することになった。
退役軍人局のアンソニー・プリンシピ長官が昨年11月に公表した報告によれば、デルーエンが罹っているような症状をさらに調査するために、今後の4年間に毎年1,500万ドルの費用が必要になるとのことだった。
しかし1991年の時点で、退役軍人局の精神科医はデルーエンをPTSDと診断したので、政府は彼に追加の医療手当てを給付することを渋っている。
当時の米国政府は、神経ガスとの関連が懸念される湾岸戦争症候群の存在を否定していた。その代わりに、政府当局者は、兵士達の障害について単に心理的なものと主張していた。
帰還から数ヶ月が過ぎても、ビル・デルーエンの症状が好転する様子はなかった。彼は仕事に就くことができず、痛みが酷いことから普段の生活にも支障をきたしていたと父親は語った。
ビルはソノラを出て、陸軍入隊前に知り合った女性と一緒になるためストックトンに向かった。
アン・デルーエンの話によれば、彼女と友人達は覚せい剤の常用者だったという。
覚せい剤で痛みを紛らわせることを知ったビル・デルーエンは、途端に重度の薬物依存に陥った。
1993年、4件の第一級住居侵入窃盗の罪で、デルーエンは有罪を宣告された。カリフォルニア州におけるスリーストライク法で、ワンストライクにあたる。カラベラス郡判事は、デルーエンを刑務所に収監する代わりに、薬物依存症の治療のために南カリフォルニアのリハビリ施設に送還することにした。
1年の内に、デルーエンは釈放された。しかし、無職の上、頭痛や他の痛みに苦しみ、再び問題を起こすことになる。
2001年、彼はトゥオルミ郡保安官事務所の情報提供者にドラッグを販売した。販売目的でドラッグを所持した容疑で、彼は有罪となった。
1993年の有罪判決と、ストライク法の影響により、判事から16年の懲役刑を宣告された時、デルーエンは事情を知らなかったという。
判決記録によれば、デルーエンは後に、刑務所内で精神科治療を受けられず、明瞭な思考ができないまま罪を認めてしまったと話している。
1994年から施行されたカリフォルニア州のスリーストライク法に、デルーエン家は賛成票を投じていた。それから、昨年、第66提案に賛成を投じた。非暴力犯罪で収監されている囚人をスリーストライク法の例外とする同法案は、否決された。
「息子は過ちを犯しました。彼も私達もそれは理解します」アンナ・デルーエンは言う。「5年の刑期なら我慢できますが、16年というのは度が過ぎています。息子が刑務所に行くことになった理由は、犯罪というよりも病気のためなのです」
デルーエン夫妻は、息子が出所した時の医療援助と生活費を捻出するために、退役軍人局相手に追加の障害年金を要求するべく、新たに弁護士を雇いいれた。
しかし、デルーエンの有罪記録により、ラ・ホーラ郡退役軍人向け弁護グループのマーク・リップマン氏はクライアントの依頼を完全には楽観視できない。
「政府は、国民を入隊させる時には軍部に最大限の賛美を惜しまないが、戻ってきた退役軍人には誠に不親切なのです」リップマンは言った。
刑務所では、ビル・デルーエンはいくらかの精神的支援を得て、頭痛と悪夢に対しても投薬を受けている。
先日、デルーエン夫妻は、事態の改善のために何かできることがあるかどうか、面会の際に息子に聞いてみたところ、息子は泣いた。
「母さん、気分が悪かったり頭が痛いとき、覚せい剤だと具合がいいんだよ」息子が繰り返す言葉を、アンナは話した。
デルーエン夫妻は、今でも信仰を欠かさず、何か息子が救われることが起きるよう祈っている。
退役軍人局に失望したにも関わらず、夫妻は今でも、政府が息子に手を差し伸べてくれると確信しているという。
「息子は祖国のために喜んで身を捧げました。しかし祖国は息子を切り捨てたのです」アンナは言う。「息子が苦しむ姿をみると心が痛みますが、彼は不平を言いません。この国に暮らせることも、アメリカ国民であることも素晴らしいことです。ただ私は、この国の法廷と政府が、息子を救うために変わってくれることを願っているのです」(以上)
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