雇用対策と戦争:米陸軍で増加する中年の新兵
今回は、NYタイムズ紙2009年6月17日付記事を以下に翻訳。深刻な雇用情勢下、働き盛りの30代後半の人たちが、再就職先として陸軍を選択するケースが増加しているという記事内容である。
米軍兵士の日常を描く2冊

The Long Road Home: A Story of War and Family イラク駐留軍兵士と、その家族たちの日常を綴るドキュメント。
Final Salute: A Story of Unfinished Lives 兵士の家族へ悲報を伝える責務を背負った海兵隊員の活動を追うドキュメント。
イラク戦争が泥沼化していた2004年頃には、全米で兵士不足が深刻化していたが、2008年頃から本格化した住宅市場崩壊・景気後退の影響で、米陸軍、特に州兵への入隊希望者は一気に急増し、結果として現在米陸軍は増えすぎた兵士を削減する方向で動いている。
具体的には、2005年度の州兵入隊者数は募集枠より20%足りなかった。イラク・アフガニスタン+αと複数の戦場が控える中で慌てた米陸軍は、やむなく新兵募集基準を緩和し、重犯罪等の前科がある者も受け入れたり、現金ボーナスの大幅増などで入隊者を誘った。それら規制緩和と景気悪化のおかげで、現在の州兵は人員予算枠35万8,200人に対し36万6,880人と、予定人員数を超過してしまっている。 そこで陸軍は2007年から採用基準を再び厳格化し、ボーナスを削減、新兵の上限年齢枠を42歳から35歳に再び下げ始めた。
しかし、2009年現在で米国内失業率は10%を超え、特に黒人層・ラテン系では失業率は20%近いと見られており、オバマ政権下で雇用が9/11以前のレベル(5%)に戻る見込みについても専門家は悲観的である。すでにミシガン州など地方州では財政難で失業手当の支給が一部止まっている。そんなわけで、定職を無くした30代から、大学卒でも雇用先が見あたらない20代、高校を出て食費に困窮する10代の若者まで、安定収入と医療費無料の特典が得られることで信頼されている州兵への入隊希望者は急増している。

