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01/12/2008

米マクラッチー紙報道:「北朝鮮のドル紙幣偽造」はガセネタ?!


まさか、そんなことがあるのだろうか??

米国の有力新聞マクラッチー紙が、2008年1月10日付紙面で大変なことを報道している。曰く、米国政府側が主張する「北朝鮮政府が米ドル紙幣を偽造している」という疑惑の情報源はかなり怪しく、噂の超精巧偽札「スーパーノート」は、実際のところ“ホンモノ”じゃないかというのである。同紙はこの報道で、大量の関連記事、資料を掲載して、疑惑を検証している。

マクラッチー紙といえば、例えばイランの核兵器開発疑惑について、米政府の国家諜報評価がそれを否定する1ヶ月前に、「ブッシュ政権の唱えるイラン核兵器開発の根拠は政府内でも疑問視されている」という暴露記事を、政府内部の諜報関係者の証言を元にサラリと報道してみせるなど、米国大手報道企業としては、特に外交政策分野で突っ込んだ報道姿勢を貫いているメディアとして知られている。特に同紙イラク支局はその正確さにおいて評価が高く、同支局女性取材チームは2007年度国際女性メディア基金の『勇気ある報道』賞を受賞している

問題となっているマクラッチー紙の1月10日付け記事:『U.S. counterfeiting charges against N. Korea based on shaky evidence(米国の対北朝鮮紙幣偽造嫌疑は曖昧な証拠に基づく)』を翻訳すると、以下のような感じである:


2年前、北朝鮮の独裁政権を徐々に孤立化させ、経済的にも追い込むために、ブッシュ大統領は北朝鮮政府がニセ米国ドル札を製造しているとして批判した。

「我が国の紙幣を偽造する者がいるならば、止めていただきたい。北朝鮮に対して我が国は積極的にそう伝える。我が国の紙幣を偽造するなと。」2006年1月26日、ブッシュはそう宣言した。

しかしながら、マクラッチー紙の10ヶ月に及ぶ3大陸を跨いだ調査で判明したところでは、ブッシュ氏の主張を裏付ける証拠とされるものは良く見積もっても曖昧であり、ニュース等で引用された北朝鮮からの亡命者の主張は疑わしく、おそらく偽証である。主要捜査機関であるスイス連邦犯罪警察は、北朝鮮の紙幣偽造技術を疑問視しており、偽造100ドル紙幣“スーパーノート”は、目に見えない一部の付加点を除き、ほとんど完全な紙幣であるとしている。

北朝鮮政府を巡る一連の紙幣偽造疑惑の情報源としてブッシュ政権が依存する情報源の多くは、米国他外国紙のために北朝鮮からの亡命者たちとのインタビューを手配した韓国在住の“北朝鮮専門家”達である。その報道は議会や調査関係者、ブッシュ政権幹部ら北朝鮮に圧力を加えようとする人々によって引用されてきた。

例えば、2006年7月23日付けニューヨークタイムズ・マガジン誌報道に引用された亡命者たちの説明によれば、北朝鮮が精巧な100ドル札“スーパーノート”を製造しているとされていた。

しかし、マクラッチー紙の調査によれば、そうした情報源を疑うに足る事情が明らかになった。いくつかの報道で引用された情報源の1人、自称化学者のキム・ドン・シクは、消息が不明となり、以前ルームメイトだったムーン・クーク・ハンの話では、キムはお金のために嘘を言っており、米国紙幣についての知識も乏しく、100ドル紙幣に印刷された人物の名前(ベンジャミン・フランクリン)さえ知らなかったという。

シークレット・サービス、米連邦準備制度理事会、米財務省はこの件に関するインタビューを辞退している。

米国政府の主張が国際社会で最初に考査されたのは2006年7月で、ブッシュ政権の要求によって、国際警察機構インターポールは中央銀行関係者、警察機関、紙幣産業関係者等を召集し、米国政府の北朝鮮政府に対する疑惑が説明された。

フランスのリヨンで開催されたその会議は、アメリカ政府の要求によって2005年3月にインターポールが公布したオレンジ警告に続くものだった。オレンジ警告とは、関係各国に紙幣製造機器や紙、インクを北朝鮮へ販売することを禁止させる呼びかけである。

しかし、60人以上の専門家を召集しながら、紙幣偽造取締を担当する米国の主要捜査機関であるシークレットサービス側は、証拠資料の詳細について提出しなかった。その代わりに持ち出したのは“諜報”で、召集された関係者に対してはブッシュ政権側の主張を信用してほしいと言うのみだった。

「笑ってたのか眠ってたのか憶えてないね」その会議に出席していた関係者の1人が、匿名を条件に取材に応じて言った。彼はシークレット・サービス側と実際に接触している人物である。

インターポールの事務局長はアメリカ人で、1993年から1996年までシークレット・サービスに勤務したロナルド・K・ノーブル。彼は、前職で得た機密情報について守秘誓約があるので、スーパーノートの詳細について話すことは辞退している。ノーブルによれば、シークレット・サービス側は、入手した情報について「その全てを自由に共有できるわけではない」と明言したという。

疑惑に関するもっとも決定的な反応は、2007年5月にスイスのBundeskriminalpolizei-偽造紙幣捜査を担当し、過去に米国財務関係者と緊密に活動したスイス政府機関からもたらされた。それによれば、スーパーノートの背後に北朝鮮が関与しているのは疑わしいとのことだった。

スイス警察機関の抱いた疑問の根拠は、1989年にフィリピンの目利き銀行家が発見して以来、押収された偽造紙幣の量がおよそ5,000万ドル分と少なく、紙や印刷のための機械を購入する金額にもならないということである。

スイス側がさらに疑問視するのは、北朝鮮にそのような高精細偽造紙幣を製造する高度な技術があるかどうかである。

「1970年代まで遡る印刷機を利用しているので、現在の北朝鮮は自国の紙幣すら酷い品質であり、この国が果たして高精度のスーパーノートを生産できるのか疑問視するのは当然である」スイス捜査機関は報告している。

さらに注目されるのは、印刷者が誰であれ、スーパーノートは少なくとも19種の版が存在しており、それぞれが合衆国側の刷版のわずかな変更と一致していることである。

「間違いなく世界でもっとも精巧な偽造技術だよ」ジェイムズ・コルビーは言う。彼は先ごろ引退したアリゾナ州前共和党議員で、シークレット・サービスの活動を監査していた。「どうやってこんなことができるのか、何が起きているのかわからない。北朝鮮がどうやってこのような高度な技術を手に入れることができるのかもわからない。非常に高度な技術なんだよ。」

これまで表沙汰になった証拠としては、2004年度に起訴されたショーン・ガーランドの件がある。彼はアイルランド共和国軍から派生したグループの指導者で、1990年代後半に、モスクワの北朝鮮大使館からヨーロッパへ、100万ドルを超えるスーパーノートを持ち込んだとの疑惑がもたれている。ガーランドは現在アイルランド共和国に在住しているが、アイルランド大使館の話によれば、米国政府は彼の引渡しを要求していないという。

米政府がどのようにして結論に至ったのかについて、北朝鮮に関する疑惑の普及を促した元米政府職員らの見方はそれぞれ異なっている。

国務省で北朝鮮の犯罪活動の詳細を収集していたデビッド・アッシャーによれば、彼のグループは紙幣偽造の証拠を見つけており、“諜報”に依存していたのではないと言う。

現在、ワシントンの保守系シンクタンクであるヘリテージ財団で調査員を務めるアッシャーは、詳細について明らかにしなかった。

しかしブッシュは、北朝鮮が偽造紙幣“スーパーノート”を製造している証拠について2007年8月8日に本紙が質問した際に、「諜報に関しては自由に話せる立場にない」と回答していた。

ブッシュ政権元高官で、北朝鮮に対する最も強硬な姿勢で知られるジョン・ボルトンは、本紙の取材に応えて、北朝鮮政府がスーパーノートを製造している物的証拠を目にしたことはないと語った。しかし彼は、北朝鮮がそうした偽造紙幣を流通させているという証言は、悪行の証拠として充分であると言っている。

米政府諜報機関のトップを務めた或る政府関係者の話によれば、彼は結論に至るに足る充分な情報を目にしていないという。

「独自に判断を下せるだけの諜報を目にしたことがなかった。」カール・フォードは言う。彼は、主として亡命者のニセ情報を元に、イラクの大量破壊兵器保有疑惑を唱えたブッシュ政権側と対立し、2003年度に国務省情報調査局長の職を辞した人物である。北朝鮮の疑惑について、ブッシュ政権側が詳細を明らかにすることを渋るのは「正当性が疑わしい」と彼は言う。

もうひとつの主要な証拠として、中国領マカオの小銀行が北朝鮮の偽造紙幣ロンダリングを支援したという疑惑が持ち上がったが、それもまた疑わしい。米財務省はバンコ・デルタ・アジア銀行をブラックリストに載せ、2007年3月に事実上銀行を閉鎖させることになる決定を下した。

しかし、国際会計監査企業アーネスト・アンド・ヤングがマカオ政府の依頼により実施した監査報告を本紙側が入手したところ、バンコ・デルタ・アジア銀行が関与した偽造紙幣事件はたったの一件だけであった。事件が発生したのは1994年で、偽造紙幣の流通元は北朝鮮ではなかった。銀行側は自ら偽造紙幣を発見し、捜査当局に通報していた。

マカオ政府は同銀行に対する制裁措置を解除したが、米財務省は“諜報”を理由に同銀行を引き続きブラックリストに掲載しながら、この銀行が北朝鮮に2500万ドル送金することを許している。

世界各国の銀行では今でもスーパーノートを押収しているが、ブッシュ政権はもはや公的に北朝鮮を偽造紙幣の件で非難することはせず、北朝鮮政府との核兵器計画交渉では議題に上ることもなくなった、と国務省関係者は語っている。

ブッシュ政権が嫌疑を撤回するのか、あるいは北朝鮮の核兵器計画を止める試みを脱線させないように、確固たる証拠の提示を避けているのかどうかは、疑問が残されたままである。

スーパーノートの流通元についても依然として謎のままだ。産業界の専門家、例えば米財務省印刷局の前局長を務めたトーマス・ファーガソンは、スーパーノートはあまりに精巧なので、米政府の印刷機械にアクセスできる何者かによって製造されたのではないかと言っている。

専門家の中には、イランが紙幣を偽造していると言う者もいる。他にも、ロシアや中国の犯罪組織が関与しているという専門家もいる。

偽造紙幣の件を扱った書籍『Moneymakers: The Secret World of Banknote Printing』の著者であるクラウス・ベンダーによれば、偽造された100ドル紙幣は、「もはやニセ札とはいえない。あれは本物と並行して違法に印刷された紙幣」とのことだ。

「もはや通常の偽札業者の能力を超えている」ベンダーは言う。彼の著作は、北朝鮮のスーパーノート製造はありえないと指摘した最初の文献である。「だいいち、あまりにも念入りで(しかも高額なので)偽造作業のコストに見合わないはずだ。」

ベンダーによれば、スーパーノートはあまりにも高品質で、頻繁に刷新されているので、それを製造できるのはCIAなどの米政府機関しかありえないという。

疑惑は論拠薄弱だが、先例はある。ジャーナリストのティム・ワイナーが著したCIAの歴史にまつわる新著では、CIAがソビエトの経済を弱体化させるためにいかにして偽札を流通させようとしたかについて詳細が書かれている。

高精度の偽造紙幣を限定的に使用することで、諜報機関や捜査機関は、腐敗した社会体制や、テロリストグループ他の不法活動、支払い、資金の流れを把握することもできるという。

「当然ながら我々はそのような主張に対するコメントはしない。いかに馬鹿げた主張であってもね。」CIA広報担当官マーク・マンスフィールドは回答した。
(以上)


さて、これまで北朝鮮のドル紙幣偽造疑惑については、米国では政府発表によって、日本国内ではフィクション小説等によって、「北朝鮮なら偽造してるだろう」という漠然とした印象、あるいはそれが事実であるという認識が持たれていたように思う。しかし、もしも今回のマクラッチー紙による暴露が事実であれば、ブッシュ政権側は北朝鮮の不法行為疑惑について、イラクの大量破壊兵器疑惑と同じように、裏づけ調査をほとんどせず、曖昧な“証拠”を根拠に超高精度偽造ドル紙幣“スーパーノート”の実在を唱えていたことになる。その場合、米国政府の目標は、ドル紙幣偽造疑惑の真偽について白黒つけることではなくて、「北朝鮮がいよいよ危険なことをしている」という悪印象をメディアを通じて広範に伝達させることにあったのだろうか?だとすれば、偽造疑惑を描いた“フィクション”のベストセラー化は、何を意味するのだろうか。

しかし一方で、マクラッチーの今回の報道の信憑性はどうか?今回のスクープが、米国政府の信頼性を損なうために北朝鮮政府によって仕組まれた印象工作だとすれば?・・・もしそうなら、この馬鹿げた騒ぎのために、北朝鮮政府はスイス政府機関を抱き込んで、アメリカ政府の掲げる“証拠”に疑義を唱えさせたことになる。(そういえば、北朝鮮の核施設建設にはスイスの大企業が絡んでいるし、その企業の重役はラムズフェルド国防長官だったという事実がある。)また、北朝鮮非核化交渉のプロセスで、北朝鮮側が対応を遅らせている最中に、米国新聞大手がこうした報道を大々的に行うというタイミングもまた、非常に興味深い。

まあともかく、米政府は北朝鮮がドル紙幣を偽造している疑いがあると言い、マクラッチー紙は偽造疑惑はガセである疑いがあると言い、専門家はそりゃ偽造じゃなくてホンモノだと言う。一方で日本政府の対応は?・・・かねてより福田首相がブッシュ大統領に約束したとおり、日本政府は11日に補給支援特措法を成立させ、インド洋での自衛隊による給油活動再開を決定した。年金問題で国内が騒然としている最中に、えらくあっさり最優先事項に昇ってしまっていたらしい。

結局のところ日本政府は、米国政府の絡む様々な政策について、その中身を一切問わず、どうすれば手放しで支援できるかを24時間365日、年末年始を問わず考えているのだろう。しかしこれではまるで、日本政府は米政府政策の“広告代理店”みたいなものだ。その内容物や表示内容が偽装された米政府発の外交政策を、中身も調べずに商品として大量販売し、消費者たる国民はそれを食べて少しづつ健康を害していく。そしてある日突然、しばしばメーカー側の内部告発によって、消費者はその偽装に気づくのだが、すでに食べてしまったものは返品できないという事実に愕然とすることになるのだ。

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12/06/2007

87歳の気骨:ヘレン・トーマスの怒り

ヘレン・トーマスは怒っている。かつてないほどに。

Helen Thomas

ホワイトハウス報道の最長老記者ヘレン・トーマス


Watchdog

ヘレン・トーマス最新著作『Watchdogs of Democracy?: The Waning Washington Press Corps and How It Has Failed the Public

レバノン系アメリカ人のヘレン・トーマス女史は、ケネディ政権時代から現在まで、ずっとホワイトハウス番記者を続けている87歳の名物ジャーナリストだ。ホワイトハウス定例記者会見では、いつも最前列に座って、大統領報道官がもっとも答えたくない類の質問をする。

2007年11月30日のホワイトハウス定例記者会見では、デイナ・ペリノ大統領報道官を相手に、いつもどおりの辛辣な言葉を浴びせた。二人のやりとりを以下に抜粋して翻訳する:

ヘレン・トーマス:
「大統領は任期中に兵を撤退させるつもりはないんでしょうか?私の言ってるのは完全撤退のことですが」
デイナ・ペリノ報道官:
「ええと、5,700人が年内に帰還する予定ですから、兵の一部は撤退するわけです。大統領の意見は、兵員規模は戦地にいる司令官たちの判断次第なので、我々は司令官らと・・・成功裡に帰還できるように話し合います。」
ヘレン:
「なぜそんなことに?米国民が口を出す権利はないと?」
報道官:
「国民の意見はすでに反映されていますよ。国民は最高司令官として現大統領を選出したので、大統領は戦地の司令官の意見に従い決定を下すのです。」
ヘレン:
「アメリカ国民がそれに投票したとでも?」
報道官:
「国民は最高司令官として大統領を選出し、その大統領は戦地にいる司令官の提言に従い、5,700人の兵士を帰還させるのです。将来的にもっと帰還できることを望みますが、それはペトレイアス将軍の報告次第で、将軍の帰国は来年3月ですから。」
ヘレン:
「なぜ将軍次第なの?」
報道官:
「だから、彼が地上部隊の司令官だからですよ、ヘレン。戦況の変化を確認するのが彼の・・・」
ヘレン:
「じゃ、私達はあとどれくらいの人間を殺すつもりなの?」
報道官:
「・・・ヘレン、あなたが記者会見室の最前列に座ることができるのは同僚達の好意のおかげなのに、そのような主張をするとは実に嘆かわしいことですね。この記者会見室に入れることは名誉ある特権であり・・・我々アメリカ合衆国が、罪なき一般人を殺しているなどと示唆するのは、馬鹿げているうえに、非常に無作法ですよ。」
ヘレン:
「イラク戦争が始まってから現在までに、我が国が(一般市民を)何人殺したかわかってるの?」
報道官:
「何人かって?・・・ヘレン、我々は敵を追っているんですよ。無実のイラク国民が殺される事態に限っては、我が国はずっと遺憾の意を表してます。」
ヘレン:
「遺憾って?!そんなことしても命は戻ってきませんよ!」
報道官:
「ヘレン、我々は紛争地帯にいるんです。それでも、わが軍は、誰もが自由と解放、民主主義の機会を確実に得られるように、きわめて困難な任務を遂行しているんです。」
(以下略)

二人の険悪なやりとりは、以下のビデオでご確認いただきたい。ペリノ報道官の暗い視線も味わい深い。

辛辣な質問をするにあたって、ヘレン・トーマスは相手を選ばない。2006年3月21日、脚本ナシの質問を人一倍嫌うジョージ・W・ブッシュが特別記者会見の演壇に立ったとき、この最長老ホワイトハウス番記者は戦時大統領に言った

ヘレン・トーマス:
「私から質問させてください、大統領殿。あなたの決断したイラク侵攻は、多くのアメリカ国民及びイラク国民に死をもたらし、多くの者に生涯癒えぬ負傷を負わせました。開戦前の全ての大義、少なくとも公的に表明された大義は、結局のところ真実ではありませんでした。私の質問ですが、なぜあなたはそんなにも戦争をしたいと思ったのですか?ホワイトハウスに入ったその瞬間から、あなたの政権、あなたの政権の閣僚たち、諜報部門、それ以降・・・本当の理由は何ですか?あなたは石油が理由ではないと言いますが、石油獲得のためではなく、イスラエルのためでもないと・・・では、一体何が理由なのですか?」

2002年、マサチューセッツ工科大で講演を行った際に、若手ジャーナリストへのアドバイスとして、ヘレンはこう言っている:

「政治家を相手にインタビューするなら、彼らが公務員で、あなたが彼らの給料を払ってることを思い出させてやりなさい。常に道理に適った質問をしなさい。そして、諦めないで。必ず内部告発がありますから。国を救おうと努力する人は常に存在するんです。」

定例記者会見でヘレンと毎日対決していた相手の1人、スコット・マクレランもこの言葉には苦笑するに違いない。

それにしても・・・アメリカにはヘレン・トーマスがいる。アイルランドにはキャロル・コールマンがいる。ところが日本では・・・マスコミ業界の秘密結社、『記者クラブ』のおかげで、国民が憂鬱な真実を知って気を病むことがないように、あらかじめ業界側が報道を選別してくれているらしい。

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11/06/2007

米ラジオ局チェーン大手がブルース・スプリングスティーンの最新アルバムをボイコット?

Magic

ブルース・スプリングスティーンの新アルバム『Magic

「俺たちはイラクで自由を根付かせるために戦っているはずなのに、同じ自由を故郷で主張する人々に対して、恫喝したり罰したりする連中がいる・・・」

-2003年4月、全米でディクシー・チックスがボイコットされている件についてブルース・スプリングスティーンが寄せたコメント(source

フォックスニュースチャンネルの報道によれば、米ラジオチェーン最大手クリア・チャンネル社は、米ロック界の大御所、ブルース・スプリングスティーンの新アルバム『Magic』の政治的メッセージが気に入らないらしく、各地のチェーンラジオ局に対して「スプリングスティーンの曲を配信するなら、"Dancing in the Dark," "Born to Run" "Born in the USA"等の古い曲だけにしろ」などという指令を密かに出しているらしい。(もちろん、ディクシーチックスの件同様、クリアチャンネル側は報道内容を否定している

しかし実際には、系列局の一部がオーナー企業の命令を無視して(?)新曲を流しているらしく、“ボス”の声を封じる試みは、ディクシー・チックス全米ボイコット運動ほどには盛り上がっていないようだ

保守系メディア企業は、ブルースの何が気に入らないのだろう?例えば、『Magic』の1曲『Last to Die』の歌詞の一節は、こんな感じである:

後ろの席で子供達が寝てる
俺たちは勘定してるだけ
どれほどの血が流されたのか もう量ることもない
ただドアの外に死体を積むだけさ

過ちで最後に死ぬ奴は誰だ
過ちで最後に死ぬ奴さ
血は流れ 心は傷つき
過ちで最後に死ぬ奴は誰だ

まあ、確かに憂鬱だ。ブッシュのアメリカにはふさわしくないといえるだろう。曲中の“過ち(a mistake)”とはイラク戦争のことだろうが、今年9月の時点で未だに国民の3人に1人は「サダム・フセインは9/11テロに直接関与している」と思ってるこのアメリカで、イラク戦争が過ちだといってもそう簡単に通じるはずがない。

Eagles

イーグルス、会心の2枚組新アルバム『ロング・ロード・アウト・オブ・エデン

さて、ブルース・スプリングスティーンがボイコットされそうな現在のアメリカでは、28年ぶりのフル・スタジオ・アルバムを発表したイーグルスがどんな扱いを受けるのかもおおいに心配だ。ファンなら感泣モノの最新アルバム『ロング・ロード・アウト・オブ・エデン』には、保守派を怒らせる危険なフレーズが一杯詰まっている。例えば、タイトル曲『Long Road Out of Eden』の一節はこんな感じ:

アメリカン・ハイウェイを下っていこう
ゴミと瓦礫と文明の残骸を通り過ぎ
傲慢な権利にプロパガンダ満載
今じゃボーッと泥酔しながらドライブしてるのさ

“泥酔”ドライブ?これは単にアメリカ文化を風刺しているだけでなく、イエール大学時代から現在に至るまでアルコール飲料摂取を趣味とするブッシュ大統領を間接的に馬鹿にしているようにも聞こえる。

さらにイーグルスは、新アルバム中の1曲『Frail Grasp On The Big Picture 』で米キリスト教右派を風刺してこう歌っている

我々は神に祈りを捧げる 我等の知る神はアメリカ人である
神は天から統治し 仲介者を通して我等に話しかける
彼は信徒にとっての羊飼いである
我等は歌い 神を賛美し
戦争では神は我等を支え フットボールでは試合を仕切ってくださる

Eaglesatla

10月18日にロサンゼルス・ノキアシアターで開催されたコンサートに登場したイーグルスの面々。(ティモシー・B・シュミット、ドン・ヘンリー、グレン・フライ、ジョー・ウォルシュ)(source)

10月18日、ロサンゼルス市街に新規オープンしたノキア・シアターで、新アルバムを引っさげてイーグルスがコンサートを開催した。その前座を務めたのは、ディクシー・チックス。どうやら彼らは本気でブッシュ支持層を怒らせたいらしい。

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09/10/2007

米映画界で戦争テーマが復活、話題作が続々登場

9/11テロ以降、愛国の嵐と自主規制の波に押され政府批判を控えていたアメリカ映画業界が、怯えながらも再び地上に姿を現しはじめている。

先週末までイタリアで開催されていた第64回ヴェネチア国際映画祭で、名匠ブライアン・デ・パルマ監督の新作『リダクティッド(Redacted)』が銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞した。これはアメリカ政府にとって非常に都合の悪い評価である。

リダクティッド』は実話を元にした戦争映画で、その実話とはズバリ、イラク駐留米軍兵士による市民虐殺事件である。

『Redacted』

イラク駐留米軍兵士による市民虐殺事件を描くブライアン・デ・パルマの問題作『Redacted

2006年3月12日、バグダッド南部マハムディヤ(Mahmoudiya)で、5人の泥酔したイラク駐留米軍兵士が、一般市民の住宅を襲撃し、14歳のイラク人少女をレイプし殺害、さらに少女の両親と妹も射殺した。犯人グループとされる米軍兵士たちは、ジェシー・スピールマン米陸軍初等兵、ジェイムズ・バーカー初等兵、ポール・コルテス三等軍曹、ブライアン・ハワード初等兵、スティーブン・グリーン初等兵。このうち、ジェシー・スピールマン米陸軍初等兵はすでに米国内裁判で懲役110年の有罪判決を受けて服役する見込みだが、10年で仮出所も可能という条件がついている。また、グリーン初等兵はレイプ直後に少女を射殺し、遺体に灯油をかけて燃やし証拠隠滅を図った件で死刑宣告される見通しである(マハムディヤは戦場ジャーナリストの橋田信介さんが殺害されたといわれる場所でもある)

映画祭で行われたインタビューによれば、デ・パルマ監督は米国大手メディアが現在進行中の戦争の実像をまったく伝えていないと憤慨しているらしい。今回の新作では、そうしたメディアによる『編集済み(Redacted)』のイメージではなく、ネット上で流通する米軍兵士が投稿した戦場風景や動画を作品中に盛り込み、イラク戦争のリアリティを存分に伝える作品に仕上がっているという。

In the Valley of Elah

ポール・ハギス監督の最新作『In the Valley of Elah』ハギスは『硫黄島からの手紙』の製作総指揮でも知られる。

イラク戦争をテーマに選んだのはデ・パルマだけではない。9月14日から全米公開される『エラの谷(In the Valley of Elah』は、イラク駐留米軍兵士としてバグダッドから帰還した直後に行方不明になった息子を、退役軍人の父親が捜しに出かけるという物語で、米軍帰還兵のPTSD問題がテーマになっている。監督は『クラッシュ』のポール・ハギス。主演はトミー・リー・ジョーンズ、他にシャーリーズ・セロン、スーザン・サランドンが共演する注目度の高い作品である。

Grace is Gone

ジョン・キューザック主演『Grace is Gone』の1シーン。キューザックは製作者にも名を連ねている。

ジョン・キューザック主演の『Grace is Gone』は、州兵の妻をイラク戦争で失った主人公の主夫(キューザック)が、二人の娘に母親の死を告げられず逡巡するロード・ムービー風ドラマで、戦死する妻をマリサ・トメイが演じている。戦争と死が日常化するアメリカ社会の不安を描き、小作品ながらすでに評判を呼んでいるようだ。

Rendition

CIAの「拷問飛行便」を取り上げた映画『Rendition

『ツォツィ』で知られるギャビン・フード監督の最新作『Rendition』は、CIAの悪名高きテロ容疑者極秘拉致活動をテーマにした問題作。平凡なアラブ系アメリカ人男性が、ある日突然、空港でCIAに拉致され、モロッコの秘密刑務所に収容され、テロ容疑者として拷問を受ける物語で、このような活動がCIAによって実際に世界各地で行われていることが、現在調査報道によって明らかになりつつある。(詳細は書籍『CIA秘密飛行便―テロ容疑者移送工作の全貌』で報告されている)行方不明になった夫を捜索する妻にはリース・ウィザースプーン。拉致を指示する人物をメリル・ストリープが不気味に演じている。共演にジェイク・ギレンホール、ピーター・サースガード、アラン・アーキン。(2007年10月19日全米公開予定)

Lions for Lambs

ロバート・レッドフォード監督・主演『Lions for Lambs』の1シーン。クルーズ演ずる上院議員は民主党大統領候補ジョン・エドワーズにソックリ

“ハリウッドの良心”とも呼ばれる大御所、ロバート・レッドフォードが監督・主演する最新作『Lions for Lambs』はアフガニスタン侵攻作戦に触発されたと思われる大作。ここでもメリル・ストリープが重要な役を演じているが、何と言ってもトム・クルーズが演ずるタカ派の“カリスマ大統領候補ジャスパー・アービング上院議員”に注目したい。「テロとの戦いに勝ちたいか?イエスかノーか?」と迫るクルーズは、民主党大統領候補ジョン・エドワーズ(前上院議員)に背格好から髪型までソックリだ。(2007年11月全米公開予定)

チャーリー・ウィルソンの戦争』は、ソ連侵攻時代のアフガニスタンでムジャヒディンを支援したテキサス民主党議員チャーリー・ウィルソンの実話をベースにした作品。原作は『Charlie Wilson's War: The Extraordinary Story of How the Wildest Man in Congress and a Rogue CIA Agent Changed the History of Our Times』。監督は『キャッチ22』で知られるマイク・ニコルズ、主演にトム・ハンクス、共演ジュリア・ロバーツ。(2007年12月25日全米公開予定)

2007年12月公開予定の『The Return』は、イラクから帰還した3人の米軍兵士が母国で直面する苦悩を描くロード・ムービー風ドラマ。監督はニール・バーガー、主演にレイチェル・マクアダムス、ティム・ロビンス、マイケル・ペーニャ。

2008年3月全米公開予定のキンバリー・ピアース監督新作『Stop Loss』は、イラクへの再度派遣を拒否し軍から逃走する米軍兵士の物語。主演はライアン・フィリップ。

英国人監督ポール・グリーングラスは新作『Imperial Life in the Emerald City』を製作中。オリジナルはワシントンポスト紙記者のベストセラー『Imperial Life in the Emerald City: Inside Iraq's Green Zone』で、イラク駐留米軍と復興請負企業ハリバートンがムチャクチャな占領体制-イラクのアメリカ化を最優先-を敷き、復興計画を頓挫させた件について説明されている。復興資金がいかに無駄使いされていたかを知ることのできる書籍である。

ヴェネチア映画祭で『リダクティッド』を披露したブライアン・デ・パルマ監督は「映画は戦争を止めることができる」と記者たちに語っている。少々遅すぎた感触もあるが、ハリウッドはようやくマイケル・ムーアの偉業を再確認すべき時期に来ているのかもしれない。


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09/25/2006

石器時代から来たアーミテージ

大手メディア各社の報道によれば、911テロ直後に当時国務省副長官だったリチャード・アーミテージが、パキスタン政府に対して「米国に協力しなければ爆撃して石器時代に戻してやる」と脅迫した、とパキスタンのムシャラフ大統領が記者会見で語ったとのことだ。

不思議だ。なぜ今頃、そんなことが重大ニュースであるかのように報道されているのだろう?

テロ戦争と無関係の他国を実際に爆撃し、石器時代よりも悲惨な惨禍をもたらしている国家を指して、引退した政権幹部の言葉遣いの乱暴さを批判するとは全くナンセンスだが、アーミテージの「石器時代」発言は2年前に既に報道されているアジア・タイムズ・オンライン2004年4月8日付記事を以下に引用する:

・・・パキスタン諜報筋がアジア・タイムズ・オンラインに語ったところによれば、911テロ当日午後、さらに9月12日、13日にかけて、アーミテージは(ISI:パキスタン軍統合情報部長官の)マフムードと会見し、厳しい選択を迫った:「米国の対アルカイダ戦争を支持しなければ、パキスタンは爆撃され石器時代に逆戻りになる」と。コリン・パウエル米国務長官は、米国側の7つの要求事項を示す形でパキスタン側に最後通牒を提示した。パキスタンは申し出の全てに同意した。ムシャラフに対する要求項目のひとつには、マフムード長官をカンダハルに再度送り込み、タリバン側にビン・ラディンを引き渡すように説得することが含まれていた。ムラー・オマル師がその要求を拒否することは、マフムード長官にはわかっていた。しかし、長官がカンダハルに行くと、タリバンの指導者は、アメリカ側がビン・ラディンが911テロの首謀者であることを証明すれば、要求を受け入れると言った。そのような証拠はなく、アフガニスタンは結局爆撃されることになった。政策はずっと以前に決定済みだった。(以下略)

アジア・タイムズ・オンライン2004年4月8日付け報道(ペペ・エスコバル記者)

アーミテージ氏は当該発言について否定しているが、その弁明に用いた説明は、ワシントンポスト紙編集主幹からブッシュ政権非公式広報官に出世したボブ・ウッドワード氏のベストセラー著作『ブッシュの戦争』(Bush at War)に書かれている通りである。以下に同書から引用:

威厳のある風貌のパキスタン軍統合情報部(ISI)長官マフムード・アフマド将軍が、たまたまワシントン滞在中だった。CIAを訪れたマフムードは、タリバンの最高指導者ムハンマド・オマル師は信心深く、人道主義的な性向で、けっして暴力的な男ではない。むしろ、地方の軍事指導者たちに弾圧されてきたのだと、テネット長官や幹部局員たちに語った。

「やめろ!」ジム・パビット工作本部長がいった。「いいかげんにしろ。オマルはアメリカがタリバンに軍隊を向けることを望んでいるか?あなたはそれを望んでいるか?オマルがそれを望むわけがないだろうが。帰国してきくがいい。」

アーミテージは、マフムードを国務省に招いた。

合衆国がパキスタンになにを要求するかはまだ明瞭ではないが、とアーミテージは切り出した。だが、要求はおそらく、「パキスタンに極度の自省を強いるものになるはずだ。パキスタンは、われわれの側につくのか、つかないのか、という明確な選択を迫られているのだ。黒白いずれかの選択で、灰色はない」

マフムードは、過去にも厳しい選択を迫られたことがあるが、パキスタンは大国でも強国でもない、といった。

パキスタンは重要な国なのだ、とアーミテージが口を挟んだ。

マフムードは過去の話題に戻った。
「未来は、今日始まる」アーミテージはいった。パキスタン大統領ムシャラフ将軍に伝えてほしい-われわれの味方になるのか敵になるのか、と。(以下略)

-ボブ・ウッドワード著(伏見威蕃訳)『ブッシュの戦争』62ページ:2006年9月12日の出来事)

一方で、同時期にブッシュ政権内部に居たテロ対策大統領特別補佐官リチャード・クラーク氏の著作『爆弾証言-すべての敵に向かって』に登場するアーミテージは、いかにも「石器時代」発言をやりそうな雰囲気である。以下、同書から抜粋:

危機管理室では話し合いが次の段階に入った。「よし」と、わたしは始めた。全員がアルカイダの犯行であることを知っている。FBIとCIAが真相を明らかにして、間違いはないか確認してくれるだろう。知りたいのは真実だ。だが、さしあたりアルカイダだと想定しよう。次は?」わたしはテレビ会議に問いかけた。

「聞いてくれ」リッチ・アーミテージが応じた。「わたしたちはタリバンに向かってはっきりと、こういうことが起こったらおまえたちは破滅だと通告した。もはやタリバンとアルカイダに違いはない。どっちも潰してやる」タリバンは、アフガニスタンを制圧している過激派のイスラム集団だ。

「それで、パキスタンはどうする?」わたしは尋ねた。

「邪魔をするなと言っておけ。聖域はなくすしかない」アーミテージは熱くなっていた。もしパキスタンが協力しなければ、核兵器で武装したイスラム国家との間に大きな問題を生じることになる。(以下略)

-リチャード・クラーク著(楡井浩一訳):『爆弾証言-すべての敵に向かって』43ページ

ところで、アーミテージ発言の真偽はともかく、米政府がパキスタン政府を脅迫したという報道は、ブッシュ政権と与党・共和党にとって損にはならない。威圧的なアメリカと従順なパキスタンという構図は、「外交面では強い態度で臨む」というアメリカ人の夢見るリーダー像をブッシュ政権が体現しているかのようなポジティブな印象を自国民に与えるだろう。(一方でパキスタン国民は米国側の態度とムシャラフ政権の弱腰に激怒しており、現在パキスタン国内ではムシャラフ政権打倒を狙うクーデター発生が危ぶまれている

それにしても、11月の議会選挙を前に、中東における親米派を体現するムシャラフ大統領が、わざわざ自著の宣伝のためにアーミテージ発言をマスコミに語ったり、同じく親米派のサウジアラビア諜報部からオサマ・ビン・ラディン死亡説が発信されたことにより、選挙の争点がまたしても共和党お得意の「テロとの戦い」に傾倒しつつあるのも興味深い現象である。ちなみに、米保守派メディアは先週半ばに「カール・ローブが共和党幹部に議会選挙前のオクトーバーサプライズを約束した」「今年のオクトーバーサプライズは一つもしくは二つあるとローブは話している」と報じている

今のところ小粒のサプライズしかないように見えるが・・・投票日(11月7日)の2週間前からは要注意期間となるだろう。

オクトーバーサプライズ関連過去記事

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05/09/2006

ザルカウィと呼ばれる男達

Zarqawi

M249分隊機関銃を試射する『ザルカウィ』

2006年5月4日、イラク駐留米軍は武装勢力指導者アブ・ムサブ・アル・ザルカウィのビデオ映像を公開した。映像の中のザルカウィは、M249分隊機関銃を試射し、途中で弾詰まりの処理を部下に任せている。米軍主席報道官リック・リンチ少将は、記者を前に映像を解説しながら、「ザルカウィは銃を撃つにも補佐官の助けが必要で、しかも熱い銃身を握って火傷している部下も居る」と言い、テロ指導者が実際の戦闘には未熟であると皮肉った。

すると意外なことに、現役・退役米軍将校達が、リンチ少将の解説について苦言を呈した。ニューヨークタイムズ紙の報道からそうした反論を一部引用する:

M249分隊機関銃は操作が複雑で、米軍海兵隊の兵士も基本操作手順を何日もかけて習得する。特にザルカウィが使っているのは初期型で、不具合があることで知られている。退役軍人達が言うには、長い間旧ソ連の旧式武器に慣れてきたテロリストが、M249分隊機関銃の操作を知っているとはとても期待できないとのことである。

「連中は小さな出来事を誇張している」イラクのティクリートで第42歩兵師団の作戦指揮を担当し、先月陸軍大佐を退役したマリオ・コスタグリオア氏は言う。

イラクで活動する現役の特殊部隊大佐も、ビデオ映像だけではザルカウィのテロリストとしての手腕を判定できないと言う。「ビデオを観るだけなら、楽しめるだろう。あの手のヘマを見るのは愉快だ。」公的な場での発言を禁止されているため、匿名を条件に語ってくれた特殊部隊隊員は言う。「しかし、軍人としては首を傾げざるを得ない。ザルカウィがあの武器の扱いを知らないのは当然だ。俺たちの武器だからな。皆が言うほど間抜けには見えないね」
(以下略)

こうした現場兵士達の批判はごもっともだが、映像中の人物がザルカウィであることに関しては誰も疑問を抱かないのは奇妙な事だ。マスコミ関係者は過去の報道をまるきり忘れてしまったのだろうか?

例えば、2004年3月4日付けAP通信はザルカウィについて以下のように伝えている。:

『ザルカウィは死亡とイラク武装勢力が主張』

イラク国内で自爆テロを率いていると見られるヨルダン人過激派は米軍の爆撃によりすでに死亡しており、聖戦を扇動する計画を記した手紙は偽物であると、バグダッド西部の武装グループによるとされる声明が明らかになった。

ファルージャで今週配布された、アラー・アクバル・ムジャヒディン指導部の署名が記された声明文によれば、アブ・ムサブ・アル・ザルカウィはイラク北部のスライマニヤ山脈で“米軍の爆撃により”死亡したと伝えられている。(中略)声明文には、ザルカウィが死亡した日時については記されていないが、昨年4月のサダム・フセイン体制崩壊時に、過激派アンサル・アル・イスラムの支配するイラク北部地域を米軍戦闘機が爆撃している。

声明文によれば、ザルカウィは義足のため爆撃を逃れることができなかったとされている。

昨年3月のイラク侵攻が開始される前、コリン・パウエル国務長官は、ザルカウィはアフガニスタンを脱出後にバグダッドの病院で手当てを受けていたと話した。米国諜報筋の話によれば、ザルカウィはその際に義足を装着されたという。
(以下略)


2004年5月12日付けFOXニュースの報道はザルカウィについてもっと強烈に説明している。
ビン・ラディンを凌駕するザルカウィ

米国人人質斬首事件を背後で操った片足のヨルダン人テロリスト、ザルカウィは世界で最も危険なテロリストの地位に浮上し、まもなくビン・ラディンを凌ぐ存在になると見られている。

(中略)米軍のアフガニスタン侵攻の際、ザルカウィは爆撃で重傷を負い、イランに脱出したと言われている。後に、バグダッドに到着したザルカウィは、足を切断してから、サダム体制の下で数ヶ月の療養を許された。(以下略)


歩くザルカウィ

歩くザルカウィ。足元はニューバランス製スニーカー。イスラム戦士は資本主義に毒された?

おわかりだろうか?今回公表されたビデオの『ザルカウィ』は、米軍の追跡から逃れ、数々の戦傷を負い各地を転々とする生活を送っているはずなのに、過去の指名手配写真に比較すると随分肥っているように見える。しかもこの『反米イスラム原理主義者』は、ニューバランス製のスニーカーを履いて、重い武器を担ぎ、大股で自然に歩いている。この奇妙な事実について記者達や軍人達が質問しないのはなぜだろう?

ザルカウィ義足説や重傷説は全て地元武装勢力のガセネタ、と言うならそれもいいだろう。しかし、米軍広報部が発表するザルカウィ脅威情報は、米軍心理作戦司令部のプロパガンダキャンペーンであることはすでにポスト紙が報道している。果たしてザルカウィのウソ情報でイラクの武装勢力は利益を得ただろうか?


ザルカウィはイラク北部で何をしていた?