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カテゴリー別過去記事:テロの脅威、テロ対策の脅威


2009/01/24

「我々は拷問をしない」合衆国大統領がお約束

1月22日、オバマ米大統領は、ブッシュ前大統領の推進した悪名高きテロ戦争の遺産の象徴ともいえるグアンタナモ刑務所の1年以内閉鎖と、CIAが全世界に張り巡らせた強制収容所ネットワークの閉鎖を命ずる大統領令に署名した。

カメラの前で、オバマは宣言した。「我々は拷問をしない」。ホワイトハウス入りして2日で、新大統領は重要な公約のひとつを果たす姿勢を見せ、世界中に拡大したオバマ支持者を大喜びさせた-ああ、やっぱりアメリカ合衆国は世界のモラル・リーダーなんだ!人権が最も尊重される自由の国なんだ!これこそ国民が信ずる変革だ!USA!USA!

・・・いや、ちょっと待てよ。・・・・

我々は拷問をしない。

-ジョージ・W・ブッシュ大統領、2005年11月7日の記者会見で発言

拷問はしないが、情報を得るために尋問はする。

-ジョージ・W・ブッシュ大統領、2006年9月6日付CBS放送の独占インタビューで発言

オバマ、声が変わっただけで、言ってることは前任者と似すぎていないか?

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2007/02/13

米メディア:アル・カイダが神奈川で活動?

2月12日日午後11時頃に、神奈川県座間市の米陸軍キャンプ座間の近所にある県立座間谷戸山公園で、ゲリラ事件らしき出来事が発生したそうである。

読売新聞の見出しは『米軍キャンプ座間に飛しょう弾?過激派のゲリラ事件か』となっている。以下に記事を引用すると:

12日午後11時ごろ、神奈川県座間市入谷3、県立座間谷戸山公園で、「バーン」と2回、大きな爆発音がしたのを近所の住民が聞き、110番通報した。

座間署で公園内の林を調べたところ、飛しょう弾の発射装置とみられる金属製パイプ(直径6センチ)2本や三脚が見つかった。周囲には下草が燃えたあとがあり、火柱が見えたとの目撃情報もあったという。(以下略)


朝日新聞の見出しは『ゲリラか、公園で2回の爆発音 神奈川・座間』。同記事によれば、「谷戸山公園では02年11月にも、キャンプ座間を狙ったゲリラ事件が起きている。」ということだ。

なーんだまた過激派の事件か・・・日本人ならおそらくそれくらいの反応だと思うが、これがアメリカではどういう形で報道されているかというと、例えば米ABC放送のニュース速報ブログではこんな見出しになっている:『日本で最初のアルカイダ攻撃事件発生か?

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2007/01/06

覗き見司令官ジョージ・W・ブッシュ

合衆国大統領は米国民の郵便物を令状なしに覗き見する権利がある・・・最新の郵政改革法に署名するにあたって、ブッシュはそういう内容を大統領特記事項として書き加えた。1月4日付け報道で、ニューヨークデイリーニュース紙が伝えたスクープである。署名したのは昨年12月20日-民主党が議会で多数を占める直前に、大急ぎで大統領の特権を拡大しておいたことになる。

President George W. Bush signs H.R. 6407, the Postal Accountability and Enhancement Act, Wednesday, Dec. 20, 2006, at the Eisenhower Executive Office Building in Washington, D.C.

大統領は法案署名時に自由に法律に例外を設けることができる・・・?!

既存の法律でも、緊急時において政府機関は裁判所の令状なしに郵便物開封を伴う捜査権が認められている。(ただし、事後に令状申請が義務付けられている)したがって、NSA盗聴問題同様に「令状申請手続きが捜査を停滞させる」という言い訳は本来通用しない。にもかかわらず大統領が特記事項を加えた動機は、ブッシュ政権側の実施する“テロ対策活動”の中身をおそらく議会にも裁判所にも知らせたくないのだろう。

そんなわけで2007年のアメリカでは、大統領の気分次第で、あらゆる電話は盗聴され、手紙も盗み見されることになったわけだ。

かつて個人の自由を護るために戦ったはずのアメリカ人たちは、今ではホワイトハウスとその周辺人物達のエゴを護るために、言葉もわからない遠くの国で戦わされている。しかもそれを憲法も議会も止めることができない。

それでも、現政権に対する怒りは拡がりつつある。以下に紹介するシアトルタイムズ紙の社説もその一例だろう。

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2006/01/02

「新ニクソンとしてのジョージ・W・ブッシュ」byジョン・ディーン

ブッシュの違法盗聴問題を語る場合、ジョン・W・ディーン以上の適任者はいないだろう。法律学者である同氏は、ニクソン大統領の法律顧問を務め、ウォーターゲート事件ではホワイトハウスによる捜査妨害に加担し、有罪を宣告され4ヶ月の禁固刑を受けた人物である。

合衆国史上最初の大統領弾劾劇の渦中に居た当事者として、また合衆国法の専門家として、ディーンはブッシュの弾劾を確実視し、ブッシュ政権に法律上のアドバイスをする司法省職員ジョン・ヨーの能力を疑問視している。今回は法学情報サイトFindLawに2005年12月30日付で掲載されたジョン・W・ディーンのコラムを以下に全文翻訳した(法学者であるヨー氏は、チェイニーやラムズフェルドも所属した極右シンクタンク・AEI(アメリカン・エンタープライズ研究所)に客員学者として所属し、ブッシュ政権のテロ容疑者拷問戦略のために独自の法解釈をアドバイスしている。)



さて、2006年になって、ブッシュ政権は年初からいよいよ窮地に陥るだろう。下院院内総務でブッシュの親友トム・ディレイ議員が起訴された『共和党スーパーロビイスト』ジャック・エイブラモフ事件の捜査は、主犯のエイブラモフ氏が司法取引に応じ事件の詳細を証言することになり、捜査は米議会全体に拡大される予定だ。大学時代から共和党活動を通してエイブラモフと知り合った親友カール・ローブにとっても困った事態になるだろう。

2006年は上院・下院議会選挙の年だが、エイブラモフ事件との関わりが注目されるランディ『デューク』カニンガム事件(国防企業と議会の賄賂スキャンダル)捜査の拡大も共和党には大打撃となるだろう。(ところで、エイブラモフ事件と911テロ主犯モハメド・アッタには意外な接点が見つかっている。なんという偶然!)

ヴァレリー・プレイム事件(プレイムゲート)捜査も、大統領側近の起訴へと近づいている。同事件の捜査継続により、イラク戦争の開戦口実をめぐるブッシュ政権の情報操作疑惑(ダウニングストリートメモ事件)の調査を求める声はより大きくなるだろう。2004年大統領選挙におけるオハイオ州不正調査も含め、疑惑の追求を続けるジョン・コンヤーズ米下院議員の努力が報われる時期がくるかもしれない)

スキャンダル捜査でがんじがらめのブッシュ政権は、どのような脱出策を用意しているだろう?・・・仮に国内テロ事件が再び発生したら、違法盗聴は正当化され、政府内の内部告発者は全て処罰対象となり、支持率を回復したブッシュはテロ発生の責任をイラン・シリアに擦り付け、次の戦争を開始するだろうか?・・・そんな最悪のシナリオが実現することのないように祈りたい。

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2005/12/26

ジョージ・ブッシュのスパイ大作戦(1)「令状なし盗聴で安心できる社会を!」

「もしこの国が独裁政権で、私が独裁者なら、物事はもっと簡単になるだろうね。」

ジョージ・W・ブッシュ、2000年12月18日のCNNインタビューでの発言

2005年12月16日、ニューヨークタイムズ紙は1年以上暖めていたスクープ記事をようやく公開した。同記事によれば、911テロ事件から数ヵ月後に、ブッシュ大統領は密かに、NSA(国家安全保障局)に対して、通常の国内盗聴に必要な裁判所の令状なしに、合衆国内に住む国民及び外国人の盗聴を命じており、現在もその違法な隠密作戦は進行しているという。

遡ること2004年4月20日、合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは、政府のテロ対策に関して以下のように国民に説明している:

合衆国政府が盗聴する際には、常に裁判所の令状が必要です。それは変わりありません。テロリストを追い詰める場合、あらかじめ裁判所の令状が必要なのです。国民の皆さんに理解していただきたいのですが、愛国法を考慮に入れても、国家防衛に必要な行為であっても、憲法上の保障がなければいけません。なぜなら、我々は憲法を尊重しているからです。」

---ジョージ・W・ブッシュ、2004年4月20日の発言

つまり、ジョージ・W・ブッシュは単に法を無視しただけでなく、無視したことについてウソをついていたわけだ。しかもこの独裁志願大統領は、「国民の命を護るため」今後も国民の盗聴を続けると堂々宣言している。「死にたくなかったら盗聴させろ!」というわけだ。

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2005/10/26

ブッシュ政権とテロ警報:14番目の事例

ブッシュ政権下のアメリカでは、悪いニュースはテロ警報とセットでやってくる・・・・その14番目の事例が10月25日に発生したようだ。

今回のテロ警報は西海岸発だった。「サンディエゴ国際空港で爆弾の部品を発見!」というニュースだ。サンディエゴ空港の他にも、西海岸の2つの空港で、爆破を仄めかす脅迫電話があったらしい。しかし、発見から数時間後には、爆弾の部品と騒がれた物質の正体はおもちゃとクッキーの入った鞄であると判明している。

西海岸のテロ騒ぎがあったのは10月25日早朝。一方の東部では、ニューヨークタイムズ紙が10月25日付の記事でこんなスクープを伝えている:

CIA工作員について補佐官に教えた当事者はチェイニー副大統領:弁護士の談話
(Cheney Told Aide of C.I.A. Officer, Lawyers Report)


副大統領の首席補佐官であるルイス・スクーター・リビーが最初にCIA工作員の情報を知ったのは、2003年にCIA工作員名の漏洩が明らかになる数週間前に、副大統領と交わした会話の中であると、事件関係者の弁護士は月曜日に話している。・・・(以下略)

これはブッシュ政権にとって大変都合の悪いニュースだ。もっとも、米国2大メジャー紙であるワシントンポスト紙とNYタイムズ紙は、お互いにスクープ記事について(紙面がかぶらないように)毎日情報交換していたりと、かなりいいかげんな編集体制なので、ホワイトハウス側もあらかじめ記事の出るタイミングを知っている可能性が高い。(そうでなければ、今頃チェイニーの心臓は停止してるだろう。)

ところで10月25日には、さらに悪いニュースも配信された。CNN放送は伝えている:「新イラク憲法が賛成多数で可決される見通しとなった本日、イラク駐留米軍の戦死者数が、ついに2,000人を超えました。

もちろん全ては偶然なのだろう。結局のところ、サンディエゴ空港の爆弾騒ぎは、米国民の視線を2,000人の兵士の遺影から逸らすことはできなかったはずだ。

2005/10/17

ブッシュ政権とテロ警報

ブッシュ政権は、合衆国政府のスキャンダルが発覚する度に、国民の視線を逸らせるためにテロ警報を発令している?---米MSNBC放送の人気アンカー、キース・オーバマンが、同局のニュース番組『カウントダウンwithキース・オーバマン』10月12日放送分で、ホワイトハウスのテロ警報ヤラセ疑惑を報道している。非常によくまとまっているので、以下に放送内容を要約して掲載した。(ビデオはCrooks and Liarsでダウンロード可能。文中リンクと注釈は訳者による)

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2005/10/06

自由なアメリカ:反ブッシュ写真の現像をウォルマートに持ち込んだ高校生、店員に密告されシークレットサービスから尋問

ザ・プログレッシブ誌2005年10月4日付け記事を以下に全文翻訳して掲載。

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2005/08/17

アメリカ国内線で「テロ容疑者」と似た名前の幼児が「搭乗拒否」される事件が頻発

AP通信2005年8月15日付け記事を以下に全文翻訳して掲載。(記事中リンクと写真コメントは訳者による)

ブッシュ政権下の間抜けなテロ対策が、あいかわらず威力を発揮しているということだ。幼児をテロリスト扱いする一方で、米運輸保安局は新たに、5インチ以下のナイフ等刃物の機内持ち込みを解禁する計画を発表している。911テロでは、実行犯達は刃物で添乗員を刺し殺してハイジャックを実行したのだが、米政府は事件の詳細を忘れてしまったのだろうか?

なお、以下の記事でも言及されているアメリカ自由人権協会(ACLU)の活躍については、新刊書『アメリカ発グローバル化時代の人権:アメリカ自由人権協会の挑戦』(明石書店)に詳しい。

『飛行禁止リスト』の混乱に巻き込まれた幼児達(Babies Caught Up in 'No-Fly' Confusion)

by レスリー・ミラー記者:AP通信2005年8月15日付け記事


合衆国政府の管理する『飛行禁止リスト(no-fly list)』に掲載されたテロ容疑者と同姓同名、あるいは単に名前が似ているだけで、アメリカ国内の航空機に幼児達が乗れなくなる事態が発生している。

まるで冗談に聞こえるかもしれないが、子供のパスポートと必要書類を慌ててファックスする両親にとっては笑っていられない事態である。

イングリッド・サンディンさんの1歳の娘は、感謝祭でワシントンに帰郷する際に、フェニックスの空港で、搭乗を拒否された。

「テロとの闘いという状況は充分に理解しています。航空機の安全を確保したいという考えにも賛成です」サンディンさんは言った。「しかし、標的をもう少し絞ってくれたほうが、公的資源をより有効に使えると思うんです」

搭乗拒否された女の子

イングリッド・サンディンさんと娘さん。米政府機関によれば、『飛行禁止リスト』に名前が掲載されていたこの女児は、フセイン政権同様『差し迫った脅威(imminent threat)』に見えたらしい。

航空機への搭乗を拒否されたり、搭乗前に特別調査を必要とされる「要注意人物」リストの政府による使用が顕著になったのは、911同時多発テロの直後からである。アメリカ自由人権協会(ACLU)などの批判派の話によれば、そうした『飛行禁止リスト』に誰が掲載されているのかについて、政府は充分な情報提供を行っていないので、リストに掲載された人物とたまたま同名である無実の人々が、保安捜査のために拘束されることがあるという。

そうした事態は、サンディンさんの娘の例のような、幼児に対しても発生している。(2歳以下の幼児は通常搭乗チケットを必要とされないが、サンディンさんは娘が座席を確保できるように一枚購入していた)

「変な話ですよ」サンディンさんは言う。「当時の私は妊娠してお腹が大きかったんですが、『大変な脅威』と思われていたんです」

サラ・ザポルスキーさんと彼女の夫も、先月ダラス国際空港から出発する際に、同様の経験をした。チケット窓口担当者の話では、生後11ヶ月になる夫妻の子供が、政府の提供する『飛行禁止リスト』に掲載されているとのことだった。

窓口担当者が、子供のパスポートをファックスして書類手続きを30分ほどで処理してくれたおかげで、夫妻は予定どおり搭乗することができた。

「セキュリティが重要だってことはわかります」ザポルスキーさんは言う。「しかし、生後11ヶ月の乳児がテロリストじゃないと証明するために、パスポートを渡さなきゃならないなんて、時間の無駄だと思います」

他にも、エドワード・ケネディ上院議員(マサチューセッツ州・民主党)や、ジョン・ルイス下院議員(ジョージア州・民主党)、ホームコメディ『オジーとハリエットの冒険』のスター俳優デビッド・ネルソン氏等の有名人でさえ、『飛行禁止リスト』に同じ名前が掲載されているという理由で、空港で搭乗を拒否されている。

911テロ以降、合衆国政府は搭乗客の検査プロセス改善を図ってきた。政府の当初案は、個人情報へのアクセスが過剰すぎるとの恐れから敬遠された。現在、『Secure Flight』と呼ばれる新たな政府案が作成途上にあるという。

しかし今のところは、航空各社は政府から配布されている『飛行禁止リスト』と乗客を照合する義務がある。そうした照合業務は非常に困難になりつつあるという。この問題に詳しい航空業界関係者の話によれば、911テロ以降、『飛行禁止リスト』に掲載された人数は10万人を超えているからだ。リスト掲載者の正確な人数は機密事項であるため、この情報を提供した人物は匿名を希望した。

リストに掲載された人物情報の全てが、より正確に容疑者として特定するための身体的特徴を記されているわけではない。そうした事情が、「T・ケネディ」や「デビッド・ネルソン」のような名前の人たちが搭乗予約をする際に問題を生じさせている。

アメリカ自由人権協会の弁護士、ティム・スパラパニ氏の話によれば、『飛行禁止リスト』によって幼児が搭乗できなくなる事態は、同リストが役に立たないという事実を示しているという。

「掲載されている内容についての監査は行われていないのです」スパラパニ氏は言う。「掲載名が急増しているのは知っています。名前だけのシステムでは、個別の情報内容に注目できません。容疑者と似た名前に注目するだけになってしまいます」

『飛行禁止リスト』を管理する米運輸保安局(TSA)は、航空各社に対して、12歳以下の子供がリストに掲載されていても、搭乗拒否したり特別なセキュリティ検査をしてはならないと指導している。

しかし、そういう事態は結局のところ現実に発生している。地域航空協会会長のデビー・マクエルロイ氏は言う:「業界内の情報によれば、そういう問題はあらゆる空港で起きていますよ」

米運輸保安局の『旅客苦情処理係』では、間違って名前が掲載された人たちの申し出を個別に調査している。米運輸保安局広報担当官ヨランダ・クラークの説明によれば、今までに89人分の子供の名前が調査申告されているという。その内14人は、2歳以下の幼児であった。

苦情処理係が特定個人について拒否対象者でないと決定すれば、『飛行禁止リスト』に追加の個人情報が記載され、次回からは空港で呼び止められることがなくなる。

クラーク氏によれば、たとえ問題を抱えていても、『飛行禁止リスト』は航空機を利用する人々の安全を守るために不可欠であるとのことである。
(以上)

2005/08/08

毎年恒例?「アルカイダのナンバー2」ザワヒリのビデオ出演

「ビン・ラディンとは、西側防衛網によるとてつもない計算違いの産物であった。80年代のビン・ラディンは、CIAによって武装され、サウジアラビアによって資金を得て、ロシアのアフガニスタン占領に対して聖戦を遂行する任務を担っていた。アル・カイダとは、事実上は『データベース(the database)』であり、元々はロシア人達を打ち負かすためにCIAの援助によって召集され、軍事訓練を受けた何千ものムジャヒディンの情報が記録されたコンピュータファイルのことだった。どういうわけか、ワシントンはその惨憺たる結果に気がつかなかったらしいが、ロシアが脱落した後に、ビン・ラディンの組織は注意対象を西側社会に転換したのであった。」

ロビン・クック元外相

---英国元外相ロビン・クック、ロンドン地下鉄同時テロ直後の7月8日に英ガーディアン紙に寄稿した「テロとの闘いは軍事的手段では勝てない」より(強調は訳者による)。8月6日、ロビン・クック元英外相はスコットランド北部のベンスタック山(標高721メートル)で山登り中に昏倒し、死亡した(享年59歳)
尚、アラビア語であるアル・カイダ(Al-Qaeda)の文字通りの意味は『拠点、基地、基点』とされている


2005年8月4日、「アル・カイダのナンバー2」アイマン・アル・ザワヒリの最新ビデオがアルジャジーラで放送された

テープの中で、ザワヒリは「ブレアの政策がロンドンテロを呼び起こした」と英国政府を批判し、米国政府に対しては「ベトナムで味わった経験を忘れさせるほどの恐怖に直面することになる」と威圧し、中東から英米軍が撤退しないかぎり今後もテロ攻撃を起こすと宣言している。

「ナンバー2」氏を侮辱するつもりはさらさらないが、私的な感想を言わせて貰えば、わざわざ危険を冒してビデオ出演したにしては、今回のザワヒリ氏の文句は少々陳腐すぎるのではないか。昨年のオサマ・ビン・ラディンの演説に比較すると、今ひとつレトリックや演出に工夫が足りないように思えてならない。

ひょっとしたらザワヒリ氏は、ロンドンのテロ事件の原因として、泥沼化したイラク戦争に世界の注目が集まることが気に入らず、アルカイダとロンドンテロとの関係をもっと重視して欲しいという気持ちから、(決してブッシュの気持ちを代弁しているわけではありませんよ)ロデオドライブでの買物ついでにリムジンで撮影スタジオに立ち寄ったとも考えられる。
(冗談はさておき、英タイムズ紙の記事によれば、英国情報部では、今回のザワヒリ氏の意図を「アルカイダの役割を強調して、世界に拡大するテロ『フランチャイズ』のひきしめを狙っている」と観測しているという。)

「アルカイダのナンバー2」ザワヒリの大脱走?

911同時多発テロ事件発生後、ザワヒリの消息はオサマ・ビン・ラディン同様全く不明だが、中東地域のニュースには何度も登場している。ザワヒリ関連の過去報道を以下にいくつか並べてみよう: さて、どれがホントの「アルカイダのナンバー2」?

2005/06/06

「アメリカ:何のシンボル?」byボブ・ハーバート

promisesbetrayed

タイムズ紙掲載コラムを集めたボブ・ハーバート氏最新刊「Promises Betrayed: Waking Up from the American Dream

ニューヨークタイムズ紙に連載中の人気コラムニスト、ボブ・ハーバート の2005/05/30付けコラムを以下に全文翻訳して掲載。

アメリカ:何のシンボル?(America, a Symbol of . . .)

by ボブ・ハーバート:ニューヨークタイムズ紙2005/05/30付けコラム

今年の戦没将兵記念日(Memorial Day)は、かつて世界における自由と正義の最も輝かしい希望の灯であったこの国にとって、ふさわしいものではない。

国務省の職員なら、他の誰よりも、合衆国のイメージが世界中でどれほど悪化しているかを知っているだろう。今、米国は、残忍で、威圧的な国家として、拷問を黙認し、キューバのグアンタナモ湾やその他世界各地で恐ろしい捕虜収容所を運営し、そこで囚人をひどく虐待し、陰惨に辱め、殺していると広く認識されているのだ。

先週の、合衆国に対するイスラム教徒の大掛かりで辛辣な抗議活動は、グアンタナモ刑務所での尋問官がコーランを無礼に扱っているという報告に触発されたものだった。しかし、イスラム教徒やその他の人々の怒りと憤りは、長い時間をかけて蓄積されたものであり、アメリカのいわゆるテロとの戦いの名の下に、抑留者やテロ容疑者、負傷した囚人や、全く無実の市民に対する非人道的な対応を示す、疑う余地のない証拠によって増幅されてきたのである。

先週、アムネスティ・インターナショナルは、世界の人権に関する年次報告書の中で、500人以上の抑留者が、容疑も裁判もないままグアンタナモ刑務所に拘束され続けていると指摘した。説明もせずに人々を閉じ込め、無実を証明する機会も与えずにいるとは、世界の自由を推進するにしては奇妙な方法に見える。

今では、グアンタナモ刑務所内や他の何処かに閉じ込められている人の多くが無実であることはよく知られている。抑留者達の有罪を証明できる証拠を保有しているとブッシュ政権は主張しているが、それら証拠のほとんどは秘密事項であり、それ故提示されることがない。

テロとの戦いが、夢の世界を見つけてしまったというわけだ。

ブッシュ大統領の腹心であるカレン・ヒューズは、国務省による国家イメージ向上活動を先導する役割に抜擢された。ブッシュとその仲間は、実質的な政策変更なしには軽減できない破滅的な危険の可能性を否定し、明らかにこの事態を人々の認識上の問題と考えているのだ。

これはイメージ以前の問題なのである。アメリカ人に必須の資質であるべき理念が危機に瀕しているのだ。アメリカ合衆国は、政策方針として(そして、自由の名の下に)拷問技術の発達した国に人々を送致しているのである。

バーモント州のパトリック・リーヒー上院議員は言う。「どうして我が国の国務省は虐待を容認する国家を非難できるというのだろうか?CIAは拘束者を尋問目的で、まさしくそのような国家に秘密裏に送り込んでいるというのに」

3月にヒューズは「ブッシュ大統領の仰る、人間の尊厳という妥協なき要求を支持するために」ベストを尽くすと宣言した。拷問が課せられる場所においては、人間の尊厳はあんまりないと、誰か彼女に教えてやるべきだ。

もしも、テロとの戦いとイラク戦争における尋問と拘束活動の全貌を調査するために、本当に独立した調査委員会が設置されるようなことがあれば、アメリカはその失った尊厳をいくらか取り戻せるかもしれない。その際行われる調査は忘れられぬほど衝撃的なものになるだろう。なにしろ、自分の国が関わって欲しくないと大半のアメリカ人が思っている類の所業が暴露されることになるのだ。しかし長い目で見れば、その調査は大変有意義なものとなる。

アムネスティ・インターナショナルUSA事務局長のウィリアム・シュワルツは、先週のインタビューで、政府上層部で練られた政策が、囚人に対する不当な扱いを導いたことを肝に銘じておくことが大切と語っていた。

「重要な点は、この政策が手の込んだものであるということです」シュワルツは言う。「大統領はゴーサインを出した。国防長官は命令を下した。司法省は理論的根拠を与え、CIAは隠蔽を試みたのです」

911テロ攻撃の直後、道理のかなったテロとの戦いという点で、世界のほとんどの国は米国の味方をする準備ができていた。しかし、ブッシュ政権は、イラク戦争への強い熱情と手続きを無視したがる性向により、抑留者に対する恥ずべき非人道的な行いを通して、その機会を台無しにしてしまった。

世界の至るところで、ブッシュ政権下のアメリカのイメージは、理想的な自由の勝者から、迷彩服を着た重武装の悪党に歪められてしまった。アメリカはますます危険で横暴な軍事大国と見なされており、天罰が下される時期に来ている。そうなれば、カレン・ヒューズに態度を改めさせるよりも、はるかに面倒なことになるだろう。
(以上)

2005/05/16

イラクの自爆テロ実行者、大部分はサウジ出身

ワシントンポスト紙2005/05/15付記事によれば、過去6ヶ月間にイラクで自爆テロを実行した人の内、61%がサウジアラビア出身者で、残りの内25%をシリア人、イラク人、クウェート人が占めているとのこと。また、イスラム過激派により運営されている自爆テロ実行者を賞賛するWebサイト等を調べた結果では、自爆テロ実行者の70%がサウジアラビア人で、その多くが比較的高い教育を受けた20代後半の妻帯者であるという。

ファハド国王死亡説が伝えられるなど、政情不安に怯えるサウジ王家にとって、殉教に燃える若者達は政権転覆の火種になりつつある。そんなサウジアラビア政府に救いの手を差し伸べるのが、自称『任務完了(Mission Accomplished)』大統領、ジョージ・W・ブッシュである。

先月末、ブッシュ家の中東における最大のビジネスパートナー、サウジのアブダラ王子の訪問を受けたブッシュ大統領は(王子にとって真面目な話し相手は副大統領らしいがサウジの原油生産努力の御礼に、テロ対策のため施行していた諸外国から米国へ入国する際の渡航制限を、サウジアラビアに対して大幅緩和する約束をしている。

石油と一緒に自爆テロ志願者が輸出されたとしても驚くべきでない。米国内のテロ危機が高まれば、ブッシュ政権にとっては好都合なのだ。元米国土安全省長官のトム・リッジは、最新のインタビューで、情報部の確証なしに、ホワイトハウスの意向次第でテロ警報レベルが変わることを暴露している。(先日、ホワイトハウスにセスナ機が接近した際に最高度のテロ警報が発令されたが、ブッシュ大統領は郊外でサイクリングを楽しみつづけ、シークレットサービスは大統領に警告すらしなかった。一方で、それより前の4月末にテロ警告が発令された際、シークレットサービスは大統領を地下シェルターに避難させたが、未確認飛行物体の正体は雲だった。この事件により、米国のシークレットサービスは天候の変化に物凄く敏感ということが判明した)

ちなみに、米国が渡航制限の緩和を約束した相手国はサウジだけではない。1年前にはイスラエルに対しても同様に規制緩和を約束している。(米国政府はイスラエルに対して、どういうわけか国防機密情報の『規制緩和』も行っている。)

米国への渡航規制に関しては、日本の外務省も条件緩和を求めているが、さて米国政府の対応は・・・?

2005/05/09

「アルカイダのナンバー3を逮捕」は間違い?

まずは、英BBC2005/05/04付け記事冒頭を以下に翻訳して引用する:

パキスタン政府、アルカイダ幹部を拘束( Pakistan 'catches al-Qaeda chief')

パキスタン政府は、アルカイダ幹部のリビア人、アブ・ファラジ・アル・リビ容疑者を逮捕したと発表した。リビ容疑者はアルカイダのナンバー3と言われており、パキスタン大統領暗殺を企てた件で手配されていた。米大統領ジョージ・W・ブッシュは今回の拘束について「テロとの闘いにおける重要な勝利」と説明した。(以下略)


上の記事から4日後に配信された、英サンデータイムズ紙2005/05/08付けの記事を以下に翻訳引用する(リンク、強調は訳者による)

「拘束されたアルカイダ幹部、身元誤認か」(Captured Al-Qaeda kingpin is case of ‘mistaken identity’)

先週、パキスタン情報部によりアルカイダ幹部とされる人物が拘束された件は、ブッシュ大統領から『テロとの闘いにおける重要な勝利』と歓迎された。しかしながら、欧州の情報専門家によると、拘束されたアブ・ファラジ・アル・リビ容疑者はアルカイダナンバー3などではなく単なる中堅メンバーであり、或る情報筋の言葉によれば『組織における半端者達の1人』に過ぎないとの事である。

先週水曜日にパキスタンで発表されたアル・リビの拘束劇は、合衆国内においては、オサマ・ビン・ラディン捜査における『大きな成果』であると説明されていた。

ブッシュはアル・リビ容疑者を「最高幹部」「アルカイダネットワークのまとめ役で最高計画者の1人」と呼んだ。コンドリーザ・ライス国務長官は同容疑者を「非常に重要な人物」と語った。しかし、ワシントンとイスラマバードで湧き上がった歓喜の声は、欧州のテロ専門家をおおいに驚かせている。専門家によれば、拘束されたリビア人はFBIの最高レベル手配リストには掲載されておらず、米国務省の掲げる『賞金』リストにも存在しなかったという。

一方で、別のリビア人はFBI手配リストに掲載されている。その人物、アナス・アル・リビー容疑者は、1998年の在東アフリカ米大使館爆破事件の容疑で手配されており、米国捜査当局者は二人を混同しているとみられる。当サンデー・タイムズ紙がFBIテロ対策局に、今回拘束された人物について照会したところ、FBIの担当者からは別のアル・リビー容疑者の資料が送付されてきた。

「(ファラジ)アル・リビは単なる中堅リーダーですよ」フランスの情報調査員でテロ資金網の専門家ジャン・シャルル・ブリザール氏は言った。「パキスタンと米国政府当局者は、彼の役割と重要度について完全に過大評価しています。彼はアルカイダ支部とパキスタンの地方イスラムグループのまとめ役以上の人物ではありません」

ブリザール氏によれば、拘束された(ファラジ)アル・リビ容疑者は、ビン・ラディンの側近アイマン・アル・ザワヒリ、911テロの首謀者ハリド・シェイク・モハマド、アナス・アル・リビー等のアルカイダ指導者達への連絡手段を持っていないという。

英国情報部では(ファラジ)アル・リビ容疑者と英国内工作員との電話連絡の証拠を握っているが、同容疑者が欧州でのアルカイダ作戦指令を行っているとはみられていないとのこと。

(ファラジ)アル・リビ容疑者が関与しているとみられる唯一の事件は、2003年に発生したムシャラフ大統領暗殺未遂事件であるという。昨年、同容疑者は、パキスタン政府から最高レベル手配犯として認定され、35万ドルの賞金がかけられていた。

欧州やアメリカの情報専門家達に連絡をとったところ、(ファラジ)アル・リビ容疑者がハリド・シェイク・モハマドの後任として幹部になったというパキスタン情報部の報告を知るものはいなかった。ビン・ラディンと以前親交があり、現在英国に住む或る人物は笑いながら答えた。「彼(ファラジ・アル・リビ容疑者)について憶えている事といえば、コーヒーを入れたりコピーをとったりしてた事ですね」(以下略)

『アルカイダのナンバー3を逮捕』はでっちあげなのか、誤解なのか?今のところ真相は不明である。

ところで、パキスタン情報部がアル・リビ容疑者拘束を発表した直後に、ブッシュ大統領はその成果を強調して以下の声明を世界中に配信した。

「(今回の)逮捕によって、アメリカや他の自由を愛する人々にとって直接的な脅威となる危険な敵は排除された」
(His arrest removes a dangerous enemy who was a direct threat to America and for those who love freedom.)

ブッシュ大統領は、ブレア首相への疑惑に揺れる英国民を選挙直前に安心させたかったのだろうか?

オサマ・ビン・ラディンひとくちメモ:FBIが公開している国際手配書の説明によると、オサマ・ビン・ラディンの公式容疑は1998年の在タンザニア米国大使館爆破等で、911同時多発テロに関する容疑は書かれていない。・・・ということは、FBIの考えでは、ビン・ラディンは911テロに加担していない?!

2005/03/22

北朝鮮の核物質販売先はリビアではなくパキスタン政府?

ワシントンポスト紙2005/03/20付け記事より。まずは記事冒頭を翻訳して以下に引用する。(記事中リンク及びテキスト強調は訳者による)

米政府、北朝鮮の核物質輸出で同盟国を惑わす(U.S. Misled Allies About Nuclear Export)

北朝鮮が核物質を輸出した相手は、リビアではなくパキスタン(North Korea Sent Material To Pakistan, Not to Libya)

by ダフナ・リンザー記者:ワシントンポスト紙2005/03/20付け記事

今年年頭、北朝鮮への圧力強化を目指すブッシュ政権は、アジア各国首脳に対して、北朝鮮政府が核物質をリビアに販売していたと説明していた。それは重要な新情報であり、北朝鮮が新たな核兵器開発を開発中であるという具体的疑惑を初めて提起するものであった。

しかし、北朝鮮の核物質取引の詳細について知る2人の政府高官の説明によると、それは米国情報機関の報告内容と異なるという。情報部の報告によれば、北朝鮮は、核兵器に転用可能となる六フッ化ウラニウムを、当初はパキスタンに販売していた。米国にとって重要な同盟国であるパキスタンは、その六フッ化ウラニウムをリビアに転売した。政府高官の話によれば、パキスタンが核物質を転売していた事実を北朝鮮が知っていたかどうかについて、米国政府は証拠を掴んでいない。

政府高官が匿名を条件に本紙に語ったところでは、パキスタンが核物質の売り手と買い手の両方の役割を演じていた事実は、アル・カイダ幹部捜索活動の協力者という役割の隠蔽のために秘匿されたという。また、北朝鮮とパキスタンの間でそうした取引が行われていた件は米国政府にとって真新しい事実ではなく、主権国家同士のビジネス関係として、過去数年間見過ごされてきたとのことである。

北朝鮮の核物質取引に関する報告の際、基本的な詳細情報を省いたブッシュ政権の政策は、北朝鮮の孤立化を目的としたが、同盟国をますます懐疑的にさせてしまったと、米政府高官は外交官はインタビューで話している。先月の米国政府の説明に呼応して、北朝鮮は周辺各国協議から離脱を表明した。

関係修復を試みるべく、コンドリーザ・ライス国務長官は現在東アジア各国を歴訪し、6者協議再開のために各国首脳の説得を図っている。(中略)

今年1月末から2月初旬にかけて、米国政府は関係各国に対し北朝鮮に関する報告を行った。それからまもなく、米政府関係者が匿名を条件にワシントンポスト紙に話したところでは、北朝鮮が六フッ化ウラニウムをリビアに販売したとのことだった。その高官の説明では、アジア各国への報告会は、北朝鮮の核開発計画に関する交渉を鑑み、中国、韓国、日本との間で情報交換のために行われたということであった。

しかし最近、別の米政府関係者二人が本紙に語ったところでは、アジア各国への報告会は、中国と韓国が6社協議から突如離脱の意思表明をした直後に、大慌てで設定されたとのことである。報告会は大部分無駄なものであったが、北朝鮮政府との2国間協議を拒否するブッシュ政権は、そうした会談が北朝鮮の核開発を抑止する重大な役割を果たすと主張している。

パキスタンの取引に関する新たな詳細情報に関して、ホワイトハウスは言及を避けている。政権幹部の対応によれば、米政府は「北朝鮮の核拡散活動について、正確な説明を行っている」とのことである。

アジア各国への報告では、パキスタン側の特定人物については言及されていないが、政府関係者の話によれば、パキスタンの原子物理学研究第一人者アブドル・カディル・カーン博士のネットワークが使われたと明言されていたという。しかし報告会では、核物質がパキスタンによって購入され、北朝鮮から輸出される際もパキスタン政府所有のコンテナが使われている件を米国情報部が掴んでいる件は示されなかった。

また、六フッ化ウラニウムが或るパキスタン企業を通じて輸出され、アラブ首長国連合を経由してリビアに持ち込まれた事実についても、米政府は報告していなかった。それら事実は、リビアを独自調査していた国際原子力機関の説明と一致する。リビアは核兵器開発を2003年12月に断念している。

米国政府にとって、パキスタンはアル・カイダ幹部捜索活動において主要な役割を担うようになっているが、カーン博士がかつてムシャラフ政権の閣僚に名を連ね、同国の核開発に協力していた件について、ブッシュ政権はムシャラフ大統領に未だ説明を求めていない。

「米国の利益を損ねている最中のパキスタンに、米政府はやりたい放題させていたんです」2003年8月までブッシュ政権の北朝鮮特使を務めたチャールズ・L・プリチャード氏は語っている。「同盟国はそうした全体像を把握しているので、我が国の信頼性は揺らいでいる」
(記事引用ここまで、以下略)

米情報部と協力してビン・ラディンとアル・カイダ幹部捜索を行っているパキスタン政府機関といえば、パキスタン軍統合情報局(ISI)であることは誰でも知っている。今回のワシントンポスト記事の情報源は、まるでISIが北朝鮮との取引に関与しているとでも言いたげだ。

仮にパキスタン政府関係者、もしくはISI関係者が北朝鮮・パキスタン間の取引にも関与しているとすれば、CIA/ISIのアル・カイダ捜査活動の内実---ブッシュ政権にとって非常に都合悪い情報を含む---が北朝鮮側に漏れている可能性も・・・いや、まさかそんなことはないだろう。ライス国務長官が北朝鮮との2国間協議や経済制裁を避けているように見えるのは、単に慎重に行動しているだけのことだ。

過去に遡ってみよう。911同時多発テロ事件が発生した後、米情報部とISIは共同捜査を行うと宣言したが、直後の10月に、パキスタン側は当時のISI局長ムハマド・アーマッド将軍を更迭した。更迭理由は、ハイジャック犯の1人、モハメド・アッタ容疑者への資金提供疑惑といわれている。(911テロの朝、ワシントンでは上院・下院情報委員会の朝食会が開催されていたが、そこには、上院情報委員会委員長ボブ・グレアム議員と、ISI局長ムハマド・アーマッド将軍、そして偶然にも、当時の下院情報委員会委員長で現CIA長官のポーター・ゴスが同席していた

ビン・ラディン、タリバン、アル・カイダ、ムジャ・ヒディン・・・これらは全て、元々CIAとISIが大切に支援・育成してきた軍事ネットワークである。ISI幹部がアル・カイダと親密だからといって、米政府はそれを簡単には批判できない。ましてやパキスタンのムシャラフ将軍は米国の軍事産業にとって大切なお客様なのだ。

そんなわけで、米国はパキスタンの裏ビジネスに対して、もっとポジティブな態度で付き合うようになったのだろう。“北朝鮮から核物質輸入?うーん、まあいいや。その代わり転売先を教えてくれたら、悪の枢軸国認定作業が楽になるんだけどね”とか何とか。以上、本日の妄想終わり。

2005/03/03

「グラウンド・ゼロで大もうけ」byグレッグ・パラスト

英BBC放送のジャーナリスト、グレッグ・パラスト氏の2005年2月23日付けコラムを以下に全文翻訳掲載。(記事中リンクは訳者による。)(このコラムの原文はInTheseTimes誌2004/05/12付けコラム「Fear for Sale」

金で買えるアメリカ民主主義

文庫本で読めるグレッグ・パラスト氏のベストセラー「金で買えるアメリカ民主主義(The Best Democracy Money can buy)」

以下のコラム中に登場するチョイスポイント社は、今年2月になって、保有する顧客の財務・社会保険番号などの個人情報14万5,000人分を、個人情報窃盗組織に販売していた事実が発覚し、一気に知られることになった企業である。

しかも顧客の個人情報横流しが公表される直前、株価暴落を予測した同社の経営幹部達は、自身が所有する自社株を売り抜けていたことも判明し、批判にさらされている。まさしく、ブッシュ大統領の支援企業にふさわしい振舞いである。



グラウンド・ゼロで大もうけ(Ground Zero as Profit Center)

by グレッグ・パラスト:公式サイト2005年2月23日付けコラム


本日(2005年2月23日)、ニューヨーク市は911同時多発テロ被害者の遺骸の特定作業を停止した。類まれなる惨事の結末を飾るこの悲劇的な物語の中には、テロの恐怖から手っ取り早く金を稼ぎ出す方法を見つけた者達についての記述はない。さあ、金の流れを追うとしよう・・・


2001年9月11日、デレク・スミス氏にとってそれはラッキーな日だった。、DM(マンハッタンの惨事:Disaster Manhattan)と記されたチューブには、辺り一面に散らばった人間の欠片が詰まっていた。スミス氏の会社の仕事は、そのチューブの中身からDNAを抽出し、被害者を特定することであり、ニューヨーク市はその業務に1,200万ドルを支払うことになっていた。

他の多くの人々同様、無実の友人や同胞達が惨殺された事実を前に、スミス氏が悲嘆に暮れ、恐怖に怯え、悲痛な面持ちでいたことは疑うべくもない。1,200万ドルの死体確認料金に関しても、ほんの4年前に設立したばかりで40億ドルの資産を誇るスミス氏の会社、ジョージア州アトランタ郊外アルファレッタに本拠を構えるチョイスポイント社(ChoicePoint)から見れば、たいした額でもない。

合衆国内に流通する生死情報150億件以上の記録を扱うチョイスポイント社にとって、グラウンド・ゼロは、まさしく金に縁取られた利益センターとなった。チョイスポイント社がジョージ・W・ブッシュのために、他の有権者が決してやらないことをやってのけたという事実も、テロとの戦争という熱狂から溢れ出す業務契約を損なうことはない。チョイスポイント社は我が国の大統領を選んだのである。

そのやり方はこうだ。2000年の大統領選挙前、チョイスポイント社の子会社であるデータベース・テクノロジー社は、フロリダ州務長官キャサリン・ハリスの監督の下、400万ドルに及ぶ政府との業務契約を競争入札なしで獲得し、選挙登録人リストに違法登録された重罪犯を特定する業務を行った。チョイスポイント社は総計で94,000人のフロリダ住民を選び出した。後に判明したところでは、その住民リストの中で、実際に重罪犯歴があったのは3,000人以下であり、リスト中の住民のほとんどは投票する権利を保持していたわけだ。権利を剥奪された数万もの市民には、無実である他にも共通項があった:そのリストに掲載された大半の人が、アフリカ系アメリカ人と南米系アメリカ人であり、民主党支持者が圧倒的多数を占めていたのだ。このリストは大統領選挙の勝敗を決定付け、キャサリン・ハリスは、僅か537票差でブッシュを選挙の勝者と宣言したのである。

2億7,000万人の容疑者
しかし、チョイスポイント社の保有するアメリカ市民情報が戦時の武器になる為には、合衆国が過激な変化を遂げる必要があった。その変化はブッシュ大統領により宣言された。9月11日、アメリカ国民は皆、過酷な攻撃の犠牲者となったのである。

しかし9月12日には、国民全員が容疑者になった。

航空機をハイジャックした米国民は1人もいなかったが、ブッシュ大統領とアッシュクロフト司法長官は、米国愛国法(USA PATRIOT Act)に条文化された権力により、米国市民2億7,000万人全てを監視、調査、追跡、観察の対象にしたのである。

チョイスポイント社を単なる“データ”企業として扱ってしまえば、同社のマーケットコンセプトを完全に誤解することになる。彼等は恐怖産業の住人なのだ。秘められた危機があらゆる場所で潜行している。アル・カイダなんて氷山の一角だ。ピザの配達人は怪しくないか?---チョイスポイント社はただちに調査を行い、ピザ配達人の25%が刑務所帰りであると発表した。「あなたの好きなピザは?」スミスCEOは問いかけた。「ピザのお値段は?皆さんはリスクを背負う覚悟がありますかな・・・?」

戦争の熱狂は、恐怖産業に新たな市場をもたらしたのだ。

ハリウッドでは、ジャック・ニコルソンが時代精神を体現してみせた:「もし私がアラブ系アメリカ人なら、自分で当局に申し出るよ。市民権なんて主張してる時じゃないんだ(If I were an Arab American I would insist on being profiled. This is not the time for civil rights.)」I imagined hardened pillboxes on Malibu beach.(訳注:ジョークがうまく訳せないので原文ママ)

ひょっとしたらジャックは正しいのかもしれない:人権なんて放棄しろ、国民は安全が欲しいんだ。

待てよ、ジャック、我々はキューバ危機を経験した年寄りの愚か者じゃないか。1962年、ロシア人たちは我が国に対して“でかい奴”で攻撃するつもりでいた。しかし、我々は心配する必要もなかった。ゴードン先生が教えたとおり、机の下にもぐって、首を隠せばいい。先生が警告したとおり、“閃光を見つめない”限り、全て問題ないということだった。

チョイスポイント社のDNA情報にFBIの“CODIS”ファイル、データ収集に“テロ情報認知システム(Terrorist Information Awareness)”・・・新たな“伏せて隠れろ(Duck and Cover)”作戦というわけである。これで本当にアメリカは安全になっているのだろうか?

チョイスポイント社のスミス氏が忠告するとおり、9月11日、空港に彼のデータベースが導入されていたなら、実名を使っていたハイジャック犯達は、搭乗を拒否されたことだろう。しかしながら、専門家の話によれば、オサマ・ビン・ラディンは、マイレージサービスが無駄になったとしても、もはやチェックイン時に“ビン・ラディン”とは名乗りそうもないということだ。

それでもなお、我等が大統領が言うには、全アメリカ国民とベネズエラ国民の精子サンプルを収集し、空港で靴を脱いで、誰が拘束されて収監されているかという質問をせず、あるいは契約金額についても決して疑問を持たずにいれば、サウジ人ハイジャック犯からも、赤ん坊泥棒からも、他の連中・・・それが誰であろうと、我々は安全に暮らせるらしい。

憶えておこう。閃光を見つめてはいけない!(以上)

2005/02/14

ハリバートンから政府捜査機関へ:「ウチの放射性物質、4ヶ月前にデリバリー途中で失くしちゃったんだけど・・・捜してくれる?」

ダウ・ジョーンズ2005/02/10付け記事によると、かつてチェイニー副大統領がCEOを務め、今でも報酬を受け取っていることで有名なハリバートンが、ロシアから輸入した放射性物質(アメリシウム)を昨年10月に紛失しながら、4ヶ月間ほど捜査機関に連絡せず、放置していたことが判明したという。

問題の放射性物質はテキサスのハリバートン本社宛てに輸送されたが、誤ってマサチューセッツ州ボストンの貨物倉庫に送付され、保管されていたところを、2月9日に無事発見されたとのこと。

国土安全省とFBIは、2月になってから初めて紛失の連絡を受け、捜索を開始していた。報告によれば、問題の物質はロシアからアムステルダム経由で輸送され、昨年10月9日にニューヨークのJFK空港に到着したが、その後行方がわからなくなっていたという。

ハリバートンが紛失したアメリシウムは、取り扱いを誤ると“永久損傷(permanent injury)”を受ける可能性があるため、機密扱いとされていた。

ところでハリバートンといえば、ブッシュ政権言うところの“悪の枢軸”国家であるイランと、子会社を通じて堂々とビジネスを行っていることでも有名だが(2003年度のイランからの売り上げは8,000万ドルだった)、アメリカ国内でも批判の声が大きくなったので慌てて取引中止を発表。しかし実際には、ハリバートンはイラン・テヘラン市内のオフィスビル10階にコッソリ支店を構え、2009年までイランとのビジネスを継続するということだ。

ハリバートンの交渉相手でイラン政府の役人を務めるシラウス・ナセリ(Sirous Naseri)氏は、イランでの核施設建設プロジェクト(ヨーロッパ企業と共同)に関わる人物でもある。米政府は特殊部隊を密かにイラン国内に侵入させたり、無人偵察機でイラン国内核施設を探っているというが、わざわざ自国兵士を危険にさらしたりハイテク兵器を自慢するのは止めて、ハリバートン支店に電話で問い合わせれば事足りるのではないか。

2004/12/15

ペンシルベニア州:小学4年の10歳少女、「ハサミを所持していた」容疑で逮捕

フィラデルフィアの新聞phillynews.com2004/12/11付け記事より。

ペンシルベニア州フィラデルフィア北東部にあるホルム小学校の持ち物検査で、かばんの中に8インチ程度(20センチ)のハサミを“隠し持っていた10歳の女の子が、学校長の通報により、手錠をかけられ地元警察署に連行された。

地元警察署の広報担当者の話では、学校への武器持込を禁止する州の法律に従っただけで、逮捕手順に一切問題はないという。

捜査当局は少女を武器持込容疑で5日間ほど調査し、ついに少女がハサミを学校に持ち込んだ動機を解明した。担当刑事の話では、少女は他人をハサミで脅す意図は全くなく、単に新しく購入した音楽CDを開封するためだったという。

警察から逮捕の知らせを聞いて、少女の両親は驚愕した。「娘は泣き続けました。何が悪いことだったのか理解できません。あまりにも厳しすぎます」通報した学校長に対しても、「まず両親に連絡すべきだ」と怒っている。

母親の話によれば、少女は容疑を否定し、こう主張したという:「ハサミなんて学校で誰でも使ってるのに・・・」

2004/12/11

ケリック元NY市警本部長、国土安全省長官の座を辞退

ワシントンポスト紙2004/12/11付け記事より。

つい先日ブッシュ大統領から国土安全省長官に使命されたばかりのバーナード・ケリック元NY市警本部長が、なんと長官の座を辞退すると発表した。

本人の弁では、「違法難民を家政婦として雇い入れており、税金を支払っていないため」というのが辞退の理由とのことである。

だが、実のところ、市警時代の賄賂の件や、911テロ事件後、ケリック氏自身が役員を務めるセキュリティ装備企業テイザー・インターナショナル社(Taser International、スタンガンのメーカー)を国土安全省取引企業に推し、同社の株を売り抜け620万ドルの利益を得ていることなどスキャンダルだらけの経歴に米捜査当局が関心を示すことを恐れたとの見方が有力のようだ。

今回の国土安全省長官辞退の件を端緒に、ジュリアーニ元NY市長の数々の悪辣な所業、あるいは911テロで多大な利益を手にしたブッシュ家の面々にもっと注目が集まることを期待するが・・・

2004/12/09

バーナード・ケリック国土安全省新長官の経歴と背後

「とにかく、奴(オサマ・ビン・ラディン)が何処にいるかは知らないんだ。正直言って、奴のために多くの時間を割くわけにはいかないんだよ」

(So I don't know where he is. You know, I just don't spend that much time on him, Kelly, to be honest with you. )

----2002年3月13日、公式記者会見で、記者にオサマ・ビン・ラディン捜査について問われた際の、ブッシュ大統領の発言(source

2004年12月3日、ブッシュ大統領は、トム・リッジ国土安全省長官の辞任を受けて、後任に元ニューヨーク市警本部長バーナード・ケリック氏を任命すると発表した

共同通信の記事では、ケリック氏は「米中枢同時テロで救出・復旧作業の陣頭指揮に立った」と爽やかに紹介されている。しかし、同氏の経歴のあまり注目されたくない部分を見れば、リッジ前長官ならただちに国内テロ警戒レベルを「赤」に引き上げるにちがいない。(例えば911テロ調査委員会のジョン・リーマン氏はケリックを評して「ボーイスカウトほどの能力もない」と批判しているらしい)

以下にバーナード・B・ケリック国土安全省新長官の略歴を並べてみよう:

1974年-76年(ケリック氏19歳-21歳):
米軍憲兵として韓国に赴任。まもなく韓国人女性との間に女の子が生まれ、その娘をリサと命名。その後1年で娘と母親を韓国に残してアメリカに帰国。(2002年、26年ぶりに再会を果たす)

1982年-84年(ケリック氏27歳-29歳):
サウジアラビア・リヤドのファイサル王特別病院でセキュリティ責任者に就任。主な任務は病院スタッフの生活監視。元病院関係者ジョン・ジョーンズ氏の証言:「(ケリック氏について)ならず者でした。まるでゲシュタポのように、私の生活をだいなしにした」

1985年-1987年(ケリック氏30歳-32歳):
ニュージャージー州パセーイク郡刑務所長を経験後、ニューヨーク市警の警官としてグリニッチ・ヴィレッジに暮らすが、クレジットカードの使いすぎで自己破産。破産時の負債額は12,000ドル。

1994年-2000年(ケリック氏39歳-45歳):
ニューヨーク市警の麻薬捜査チームで潜入捜査官として活躍。コロンビアの麻薬組織カリ・カルテル撲滅に尽力。ジュリアーニ市長(当時)が組織した賭博監査委員会の委員長に任命される。後に、ニューヨーク市警矯正サービス局局長代理に就任。この時、ケリック氏自身の経営する会社を経由し、タバコ企業から100万ドルの賄賂を受け取る。そのお返しにケリックは、自身が管轄する刑務所内で販売されるタバコの価格を高額に設定し、タバコ会社の売り上げ増加に貢献した。そうした功績が認められ、2000年にはジュリアーニ市長(当時)の推薦により第40代ニューヨーク市警本部長に抜擢される。

2001年-2003年(46歳-48歳):
NY市警退職後、ジュリアーニ元NY市長の設立したジュリアーニ・パートナーズ社(セキュリティコンサルティング・投資企業)上級副社長になる。2003年5月には、イラク内務省上級補佐官に任命されたが、2003年9月に退任し、帰国。(この期間にイラク暫定政府内で石油売上金の大量紛失事件が発生している)

ケリックとブッシュ

ブッシュ再選キャンペーンで応援演説するケリック氏。ジョージは自分の会社をいくつも破綻させたが、ケリックは警官時代に自ら自己破産した人物。


以上のように、ケリック氏の2000年以降の経歴を見れば、ブッシュ大統領による国土安全省長官任命劇の背後には、ジュリアーニ元NY市長の口利きがあったことは容易に想像できる(実際、本人も否定していない)。

ジュリアーニ氏が自らのビジネスパートナーをテロ対策省長官に推薦した理由は言うまでもない。2003年度に、国土安全省が外部セキュリティ企業と行った年間取引総額は67億3,000万ドル(約7,000億円)。新長官ケリック氏の最初の仕事はこれら取引の監査と見直しである。国土安全省が新たに契約する企業の出資元にジュリアーニ・パートナーズ社の名前が輝いているとしたら、それは決して偶然ではないということだ。

実際、ケリック氏の国土安全省長官任命の発表があってから、ジュリアーニ・パートナーズ社には顧客が殺到しているという。つまり今後は、国土安全省がテロ警戒宣言を発表するたびにセキュリティ関連企業の売り上げは急上昇し、国土安全省長官を部下に抱えるジュリアーニ元NY市長は、2008年度大統領選挙出馬のための資金を、存分に集めることができるわけである。

対テロ政策という名目で、ブッシュとその友人たちが国民の恐怖を扇動しながら金を稼ぎ出す方法について優れた才能を発揮していることは理解できた。しかし、肝心のテロリスト追跡はどうなっているのだろう?ホワイトハウス、CIA、FBI、NSA、DIA、DHSその他捜査当局者にあらためて尋ねてみたい。オサマ・ビン・ラディンは今何処に?

はっきりしていることは、大統領選挙が終了した現在、オサマ・ビン・ラディンはもはやホワイトハウスの関心を惹かないということである。ホワイトハウスは、カメラの前ではパキスタン政府と協力してオサマ拘束に尽力しているように見せているが、実のところアメリカ政府当局者もパキスタン軍事情報部も、オサマ・ビン・ラディン拘束について「優先事項ではない」と捜索を諦めている状態なのだ

パキスタンのムシャラフ大統領に至っては、「オサマが何処に居るのか全く知らない」と堂々宣言している。この不真面目な説明に対し、なぜかアメリカ政府は10億ドル分の武器供与でムシャラフ大統領の功績を讃えている。ここでもまた、ビジネスがテロ対策に優先したというわけだ

オサマも側近のザワヒリも、あれだけプロモーションビデオで華々しくアピールしたのに、このアメリカ側の冷たい対応は・・・オサマは怒っているに違いない。3,000人ものアメリカ人を殺して見せたのに、ブッシュはもう振り返ってはくれない・・・一体どれだけアメリカ本土を攻撃すれば、ビン・ラディンはブッシュのハートを捉えることができるのだろう?

2004/11/19

コロラド州:シークレットサービスが、学校でボブ・ディランの反戦歌を歌った女子高生を調査

The Progressive誌2004/11/15付け「マッカーシズム・ウォッチ」記事、コロラドのローカル新聞「デイリーカメラ」紙2004/11/13付け記事より。

11月11日、コロラド州のブールダー高校にシークレットサービスの捜査官が現れた。学校の芸能大会でボブ・ディランをカバーした学生バンドの調査に訪れたというのだ。

ボブ・ディランの「Masters of War(戦争の親玉)」を演目に掲げた「Coalition of the Willing(意思連合)」という高校生バンドが、リハーサルで「ブッシュ、あんたには死んで欲しいんだ〜(George Bush, I hope that you die. . . .)」と歌詞を変えて歌っていたという情報を、匿名の学生が地元のトークラジオ局に通報した。ラジオで流れたその情報が、シークレットサービスの注意を惹いたのだ。

バンドのリードボーカルを務めるアリッサ・ワタニック・ワトソン(16歳)は「大統領を侮辱したことはありません」と容疑を否定している。校長のロン・カブレラ氏も「根拠のない誤解」と彼女の擁護に懸命だ。

学校内を歩くアリッサには「共産主義者め!」と怒号が飛び、マスコミの取材チームが詰め掛けた。学友の1人から「シークレット・サービスが君を探してたよ」と囁かれ、アリッサは信じられない思いがしたという。

シークレットサービス捜査官ロン・ガーナーは、地元新聞社「デイリーカメラ」の取材に応じ、学生達の調査が進行中であることを正式に認めている。「基本的人権は尊重しますが、脅威の疑いがあれば何であれ調査する必要があるんです。」

「全くバカバカしいわ」プログレッシブ誌の取材に、アリッサが答える。「大袈裟すぎる反応よ。何を騒ぎ立てる必要があるというの」しかし彼女は、少々被害妄想気味になったという。「国土安全省のバンが自宅前の通りを巡回してるのを見たの。尾行されているのかしら」

アリッサのバンドがボブ・ディランの曲を選んだのは、メンバーの1人、フォレスト・オングストローム(16歳)の祖父---退役軍人で、2年前に他界し、反戦家だった---を追悼するためであるという。

13日に行われたブールダー高校芸能大会で、アリッサと彼女のバンドは予定どおりパフォーマンスを披露し、学友達の喝采を浴びた。シークレット・サービスの捜査官は現れなかったとのこと。

2004/10/30

オサマ・ビン・ラディンの最新声明(英訳版)を翻訳

アルジャジーラが10月29日に放送したビン・ラディン演説ビデオでの声明内容(英語訳)を全文翻訳して以下に掲載。英BBC掲載版米RadiofreeUSA版の英文を元に翻訳)

全文を通じて西欧風レトリックを感じるのは英訳文のせいだろうか?あるいは、噂にあるとおり、アルカイダに通じたアメリカ人ブレーンが声明文を書いているのかもしれない。いずれにしろ、この演説映像が本当にオサマ本人の行っているものであるならば、テロとの戦いに負けたブッシュは、演説でもオサマに負けている感じである。



オサマ・ビン・ラディンの演説(2004/10/29アルジャジーラ放送分)


アメリカの人々よ、あなた方への私からの言葉は、戦争やそれに至る動機と結果によるさらなる衝突を避ける最良の手段となるであろう。私の言いたいのは、安全とは人間らしい暮らしをする上で大切な柱となるということだ。そして自由な人々は自らの安全を放棄しない---このことは、我々が自由を憎んでいるというブッシュの主張とは相反する。

例えば、私達がなぜスウェーデンを攻撃しなかったのか、ブッシュは私達に説明すべきなのだ。周知のごとく、自由を憎む人々は、神に召された19人のような気高い魂を持たぬ。我々があなたがたと戦うのは、我々は自由な民である故、抑圧に直面して沈黙するつもりがないからだ。あなたがたが私たちの安全を脅かすなら、我々はイスラム国家の自由を取り戻すために、あなたがたの安全を脅かすだろう。

私はあなた方に驚いている。911テロ事件から4年目に至り、ブッシュは今でも事実を歪曲し、あなた方を誤った方向に導いており、事件の本当の理由を隠蔽し、それゆえ以前と同じことが繰り返される動機も存在し続ける。これら事件の本当の理由を、あなた方に話しておくとしよう。

決断に至る状況について、正直に話そう。元々タワーを攻撃するつもりはなかった。しかしアメリカとイスラエルの連合軍がレバノンとパレスティナで行っている抑圧にうんざりし、攻撃を思いついた・・・直接私を怒らせたのは、1982年から始まった一連の事件に遡る。米国が第6艦隊の支援によりイスラエルのレバノン侵攻を支持した際のことである。

そうした悲惨な出来事は、私にとって説明しようのない多くの意味を持つことになり、やがて抑圧に抗うという一般感情と、抑圧者を罰するという激しい決断を私にもたらしたのだ。レバノンの崩壊した建物を見ながら、抑圧者を同じように罰し、米国の建物を破壊して、レバノンの人民と同じ苦しみを味あわせ、我々の世界の女子供を殺戮することを止めさせようと思い立ったのだ。

ブッシュや彼の政権と渡り合うのは困難なことではなかった・・・我々の国々(訳注:おそらくビン・ラディン家のあるサウジアラビアの事)とブッシュの体制は似通っているからだ。軍事態勢が国家の半分を支配し、残り半分は大統領や王家の息子達により支配されているという体制は、我々も長く経験してきたことだ。両国とも横柄で、強情で、貪欲で、何の権利もなしに人民の金を取り上げる。

もっとも似通っているのは、ブッシュ(訳注:父ブッシュを指す)が我々の国々に訪問する間、我々側の人民は米国に好印象を持ち、彼等の訪問により自分達の国に影響を及ぼすと期待する部分だ。実際には、ブッシュはむしろ訪問先の国々の体制、軍事、王家の影響を受けているのである。そしてブッシュは、(サウジアラビア王家が)権力の座に何十年も君臨し、誰の監視も受けずに国家の財産を収奪していることを羨んでいたのだ。ブッシュは(サウジアラビアで学んだ)自由への抑圧体制と専制政治を自分の息子に託し、それを愛国法と名づけテロとの戦いと称している。ブッシュは狡猾にも自分の息子達を各州の知事にして、重要な場面で利益を得られるよう、我々の国々の支配体制を真似て、周到にフロリダの虚飾に満ちた選挙システムに導入したのだ。

我々はモハメド・アッタの行為に同意する・・・彼に神の祝福があらんことを・・・ブッシュと彼の政権が気づく前に、彼は全ての計画を20分間で達成したのだ。

米軍の最高司令官が、大いなる脅威に直面しながら、2つのタワーに居た5万人もの市民を、緊急な対処が必要なときに、そのまま放置しているなどとは、我々にも思いがけないことだった。

なぜなら、航空機が高層ビルに突入していく重大事態に集中するよりも、大統領は子供の話すヤギの物語に夢中になっていたように思われるからだ。

そのおかげで、作戦遂行のために必要な機会を3回も与えられたのである。全ては神の思し召しであろう。

あなたがたの安全は、ケリーや、ブッシュや、アル・カイダの手に委ねられているわけではない。あなた方の安全は、あなた方自身の手中にある。全ての状況が我々の安全を脅かすものでなくなった時、あなた方の安全も確実なものになるだろう。

2004/08/04

恐怖による統治:3年前の情報で今頃厳戒態勢のニューヨーク

ワシントンポスト2004/08/03付け記事より。

米国土安全保障省が、ワシントンの世界銀行やニューヨーク証券取引所などの金融関連施設の警戒レベルをオレンジに引き上げた件で根拠となった情報は、9/11テロ以前の古い計画に関するものであったことが判明。ワシントンポストの取材した複数の情報部関係者によれば、「今のところ新しいテロ計画が進行中という情報はない・・・なんで今になってこんなに危険レベルを上げるのか、さっぱりわからない」と話しているという。

国土安全保障省の制定したテロ警戒カラーコード

国土安全保障省の制定したテロ警戒カラーコード。(source)この警戒コードの基準についてはすでに政府内でも疑問視されている

つまり、ブッシュ政権は、これまで無視し続けてきて、各情報局に山積にされた過去のテロ計画情報に、情報入手から3年経過してやっと対応しはじめたわけである。この調子では、CIAやFBIの引き出しの奥から、埃をかぶったアルカイダのテロ計画情報が見つかる度に、ニューヨーク市街は厳戒態勢になってしまう可能性がある

米国土安全保障省のトム・リッジ長官は、実のところ米国のテロ対策が全くダメな状態であることを自覚し、そのプレッシャーに耐えられないと弱気になっている。国内テロ対策チームを率いた前任者リチャード・クラークの著作によれば、業務引継ぎの際に、トム・リッジは新ポストに乗り気でない旨が書かれているが、それを裏付けるかのように、今回のテロ警告の直前(7月30日)、トム・リッジ長官はブッシュの再選如何を問わず辞任するつもりであることをうっかり漏らしている

トム・リッジ長官は、FBI、CIA、NSA各情報組織の調整役という重責に加えて、薄給(年間17万5,700ドル)という現在の立場では、二人の子供(トミーとレスリー)を大学に入れられないと愚痴をこぼしているらしい。(リッジと同じレベルの米政府高官は、年間100万ドル程度稼いでいる)

ところで、ニューヨークにテロ厳戒態勢を敷いた日は、偶然にもブッシュ再選キャンペーン開始と重なっている。国内テロ対策はブッシュ再選の売り文句のひとつであり、9/11調査委員会最終報告の直後に情報組織の再編政策をいち早く打ち出すなど、ブッシュは、あたかもテロ対策に真剣に取り組んでいるかのように振舞っている。そんな時にテロ警告で厳戒態勢になれば、誰でも次期大統領のテロ政策に注目するというものだ。(皮肉なことに、ブッシュが新たに打ち出した情報組織再編案は欠陥政策としてすでにタイムズ社説で批判されている)

今回のニューヨーク厳戒態勢はトム・リッジ長官が辞任前にブッシュに宛てた「サンキューレター」の意味合いが強いのかもしれない。テロ警告を出した次の日に、トムは国民に向けて以下のように呼びかけている

「アメリカらしさを継続しましょう。仕事に行ってください。追って施行される安全対策があなたを守ってくれることでしょう。さあ、仕事に戻りましょう

国土安全保障省のテロ警告なんて深刻に考えないでくださいね、私もいずれ転職しますから・・・という意味では決してないのだろうが・・・

2004/08/01

7月のサプライズ:パキスタンが予定どおりアルカイダ幹部を拘束

デモクラシーナウ2004年7月30日付ニュースより。

前もって予告されていたとおりパキスタン政府がアルカイダ幹部を拘束というニュースが世界を駆け巡った。拘束されたのは、ケニアとタンザニアの米大使館同時爆破事件(98年)の主犯とみられる人物、アフメド・ハルファン・ガイラニで、FBIの掲げる22人の国際指名手配テロリスト中、最重要人物の1人として、ビン・ラディンと同じ額の2,500万ドルの賞金がかけられていた。

アフメド・ハルファン・ガイラニの拘束が発表されたタイミングは、民主党大会でジョン・ケリーが指名受諾演説を始める数時間前。しかし同容疑者が実際にパキスタン現地で拘束されたのは公式発表の4日前というから、ホワイトハウスの注文どおりの演出が行われた可能性は高い。ビン・ラディンが拘束されなかったのは、「お楽しみはこれから」というパキスタン軍事情報部の巧みな交渉術によるものかもしれない。

こうなると、いよいよ今年のオクトーバーサプライズの噂が現実味を帯びてくる。すでに11月の大統領選挙時に大規模テロが発生する可能性があると予告し、選挙の延期手順を模索しているブッシュ政権。ワシントンポスト紙の7月14日の調査では、米国民の55%がブッシュ政権のテロリズム対策を支持し、51%がテロ対策に関してケリーよりもブッシュを信用しているというから、10月にテロが発生すればブッシュ政権再選に有利に働くことだろう。

2004/07/02

アッシュクロフト司法長官は「スパイだーマン」

「市民の自由が失われるかのように錯覚させ、平和を愛する人々を怖がらせている者に対して、申し上げておきたい。 そのような考えはテロリストを助けるだけだ」 ---2001年12月6日、上院司法委員会におけるアッシュクロフト司法長官の発言---

市民団体「Alliance for Justice」が、アッシュクロフト司法長官の辞任を求める運動の中で、「アッシュクロフトはスパイだーマン」(注:苦しい訳で申し訳ない)という楽しいアニメ広告を掲載している。映画「華氏911」で自慢のノドを披露しているアッシュクロフト氏が嫌われる理由のほんの一部をちょっと解説してみよう。

熱心な聖書原理主義者であり、「史上最悪の司法長官」と評判のジョン・アッシュクロフト氏は、史上最大の権力を許された司法長官でもある。全ては911テロ直後のドサクサに紛れて成立した、米愛国者法のおかげである。(the USA PATRIOT Act:正式な法案名はUniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism)

米上院議会での同法案可決時に、反対票を投じたのはウィスコンシン州のラス・フェインゴールド議員だけだったということで、「議会の誰も法案書類を読まずに賛成した」と映画「華氏911」作品内で揶揄されている米愛国者法。この法律が実際に効果を発揮した事例は限りないが、例えば以下の事件がある:



2003年2月15日、ニューヨーク大学は、同校で開催される「哲学と政治」講演会での記念スピーチのために、ギリシャのアテネ国立工科大学のユージーン・アンゲロプロス教授を招待した

アンゲロプロス教授は、米ケネディ空港に到着するとすぐに、ニューヨーク大学の出迎え挨拶の代わりに、米捜査当局によって手錠をかけられ、身柄を5時間に渡り拘束された。教授と捜査官の間ではこんな会話が交わされたという:

教授:
「私に手錠をかけるとは、何か容疑があるんでしょうな」

捜査官:
「いちおう規則なので、悪く思わないでください。あなたは戦争に反対ですか?

教授:
「それが手錠をかける理由なのかね?」

捜査官:
「質問に答えろ!戦争に反対なのか?」

教授:
「もちろん反対だよ」

捜査官:
あなたは反アメリカ主義ですか?

教授:
「なんだって??何が言いたいんだ?私は戦争には反対だよ、他の人だって反対だろう。それが反アメリカ的かね?」

捜査官:
「(メモを書きながら)“教授はイラク戦争に反対している”・・・」

アンゲロプロス教授が、独立系放送局デモクラシー・ナウ!で、この馬鹿げたやりとりを暴露してから、ニューヨークのホテルに戻ると、FBIから電話メッセージがあった。「“邪魔が入らない環境で”もう一度会見したい」という申し出だった。アンゲロプロス教授はギリシャ大使館に連絡し、大使館はFBIに教授の無実を訴えた。ニューヨークでの講演を終えた教授は、大使館の専用車に守られながら、早々に米国を離れたという。

上記の事件でギリシャ政府を怒らせてから、アメリカ政府は何を学んだだろうか?

2004年6月21日、米最高裁は、路上で捜査官が米国市民に名前を名乗るよう要求した場合、米国市民はこれを拒否してはならないという判断を下した。この決定により、刑事映画でよく見られるような「あなたには黙秘権がある(You have the right to remain silent.)」という逮捕シーンの決まり文句は省略できることになったわけである

ところで、アッシュクロフト司法長官とブッシュ政権の見解では、国家に対する最大の脅威はテロリズムであるが、テロ行為の定義には何が含まれるのだろうか?この質問には、カレン・ヒューズ---ブッシュ選挙チームの広報担当顧問を務める女性で、911テロ直後に、ブッシュ大統領が最初に相談した相手---が丁寧な回答を用意していた。

2004年4月25日、ワシントンで115万人ほどの男女が妊娠中絶の権利を求めてデモを行った際、「ホワイトハウスでのブッシュの母親役」と呼ばれるカレン・ヒューズは、CNNのインタビューで以下のように話している。(注:ブッシュ政権は、母体が危険になる場合を除き、全ての妊娠中絶手術(レイプによる妊娠を含む)を原則禁止する法の制定を目指している)

「911テロ以降、アメリカ国民はより一層生命を重んじるようになり、全ての生命の尊厳を重んじる政策が必要であると悟ることになりました。

ブッシュ大統領が仰るように、分別ある行動を心がけましょう。生命を大切にしましょう。中絶を減らすために努力しましょう。養子縁組を増やしましょう。そうした考えこそ、アメリカ国民が支持すべき政策だと思いますね、特に敵と戦っている時代にあっては・・・

それに、私たちと(敵である)テロリスト組織との基本的な違いは、私たちは全ての生命を重んじるということです。それはわが国の基本信念であり、創造主によって与えられた不可分の権利であり、人生と自由と幸福を追求する権利なのです。

あいにく、我々の敵であるテロリスト組織においては、ニュースでもご覧のとおり、無実の者だけでなく、自分たち自身に対しても生命が重んじられていないのです。」


つまり、カレン・ヒューズはこう言いたいのである:ブッシュ政権は妊娠中絶をテロリズムとして認識している

彼女の発言に女性団体が抗議したのはいうまでもない。しかし、アッシュクロフト長官はこの「テロリズム」の捜査のために、米国内の病院の妊娠中絶患者のリストを入手し、蓄積しようとしている。この目論見は医師側の提訴によって一端は止められたが、愛国者法の下では、FBIは捜査令状なしで監視、盗聴、個人情報へのアクセスが認められ、捜査情報は非公開にできるので、その後の展開は明らかでない

合衆国が世界に誇る情報公開法も、司法省相手には役にたたない。アッシュクロフト氏は、かつて公開されていた政府文書を極秘扱いに変更して「公開したくない」とダダをこねているし、市民団体が司法省に対して情報公開を求めた最新事例では、「データを引き出せばコンピューターが壊れる」という珍妙な言い訳で拒否されているのだ

「アメリカはより安全になった」とブッシュは言う。しかし、スピーチが苦手な大統領の言葉よりも、NBCの人気司会者ジェイ・レノのジョークのほうが、傾聴に値すると感じるアメリカ人は多い。以下にその最高傑作を引用しておこう。

「イラクの憲法策定の話ばかりだけど、わが国の憲法をまるごと譲っちゃえばいいんじゃないか?大勢の賢い連中が書いたんだし、200年もうまく機能してきたんだからね。それに、もう使われてないわけだし。」
"They keep talking about drafting a Constitution for Iraq. Why don't we just give them ours? It was written by a lot of really smart guys, it's worked for over 200 years, and well, we're not using it anymore"
---「トゥナイト・ショー」2004年3月28日放送分でのジェイ・レノのジョーク---

2004/06/24

「スパイ貸し出し中」byジェームズ・バムフォード

ニューヨークタイムズ2004/06/14付けコラムより。(ABC-CBSNEWS.com転載

諜報機関の専門家、ジェームズ・バムフォード氏の最新コラムを以下に全文翻訳して掲載。(文中リンクは訳者による)

バムフォード氏は、最新著作「A Pretext for War: 9/11, Iraq, and the Abuse of America's Intelligence Agencies」の中で、911テロ事件直後に、チェイニー副大統領が隠れていた場所「サイトR(メリーランド州とペンシルバニア州境にある極秘の地下軍事拠点)」の場所と施設概要を暴露、話題となっている。当然ながら、ホワイトハウスはこの暴露に激怒しているようだ



「スパイ貸し出し中」(This spy for rent)

by ジェームズ・バンフォード


米中央情報局(CIA)にとって、スパイ人材の査定、育成、採用は重要な業務である。しかし今、CIA職員自身が---時には、情報局の食堂で---査定され、育成され、採用される対象となりつつある。政府との契約をとりつけるために、いくつかの私企業が、政府の情報局から高度に訓練された職員を積極的に採用しており、それが国家の諜報機関で高度な訓練を受けた情報部員の流出を引き起こし始めているのだ。

今週、ジョージ・テネットのCIA長官辞任に加えて、911超党派調査委員会の最後の公聴会により、この10年間で最初の、情報組織大改革の条件は整えられた。組織の移動や「情報専門家」の創出が議論される中、スパイの民営化問題は大部分がずっと忘れられたままである。

911テロ後の予算増加によって、CIAにはお金が有り余っている。しかし組織の将来が不確実であることから、新世代スパイとアナリストの採用、教育、人材開発は大幅な遅れに直面している。そこで、情報部員の確保を「情報複合企業」に依存する状況が発生している。

これら企業は、フォーチュン500企業のブーズ・アレン・ハミルトンノースロップ・グラマンのような巨大企業から、元CIA職員で構成された、バージニア州マクリーンのアブラクサス社のような小さな企業までさまざまだ。例えば、アブラクサス社のエキスパート、メアリー・ナヤックは、元々は南アジア圏の情報活動を指揮していた人物だ。現在、彼女はコンサルタントとして、CIAの911テロ再調査グループで働いているという。

私企業は、かつては高度に訓練された組織従業員のしていた仕事を引き継いでいる。世界中で秘密工作を管理していた局地事務職員、危機管理センターで24時間職員を監視していた者、大量の諜報データを精査していたアナリスト、対諜報活動工作員で、海外の工作員と現地スパイのやりとりを監督していた人物、局地ではエージェント間の連絡員として振る舞い、本部ではアナリストとして勤務していた報告担当者等々。

情報組織と緊密に活動する私企業との間には本質的な間違いはないものの、監視がないかぎりトラブルが起こる可能性は常にある。業務内容はCIAの秘密の下に隠されているので、議会ですら費用や人員について正確な情報を知ることは困難である。しかし組織の内外の専門家たちは、何億ドルもの金と何千もの取引先が絡んでいると察知しているようだ。

アブグレイブ刑務所のスキャンダルによって、慎重を要する情報活動に私企業が絡むことが災難を生む可能性があることが明白になった。現地の情報部員だけの時ではなく、彼らの上司と監督者が私企業の勤務者である場合には、災難の可能性はより高くなる。

もうひとつの問題は、納税者に対する費用負担の増加である。儲けに走る企業は、しばしば連邦政府職員の倍以上の給与を(ヘッドハンティングのために)提示することがある。スカウト担当者はセキュリティ上の許可を取得しているので、時にはラングレーにあるCIA本部の施設内部で採用活動をすることもある。そして採用された多くの職員は、結局はかつて働いていたオフィスに戻ることになるのだ---ただし、今度は私企業の社員として。このように、情報部職員になるために何百万ドルもの金が訓練につぎ込まれた結果、納税者は2倍の金を、今度はスパイをレンタルするために支払うことになるのである。

「金というのは不思議なもんだ」海外でスパイを管理していたという、ある情報部の元職員が話してくれた。「組織の職員を辞めてから、(企業に採用され)また元どおり同じ仕事をしているのに、給与は倍になったんだ」しかし、元職員の何人かは、自分たちの才能が洗練されていない業務のために無駄になっていると警告している。「やりっぱなし」状態の仕事が急増するにつれ、情報組織の仕事の質は疑わしいものになっているのだ。「問題は、こうしたやりかたは分別に欠けるということだ」中東で経験を積んで職員から私企業社員になった人物が吐露した。「私たちはただそこに座って、お互いを見つめているだけで、呆れるくらいの大金を稼ぐことになるんだからな」

別の元情報部員が言うには、彼はイラク、アフガニスタン他の国で入手したコンピューターのハードディスクに残った電子メールの解読チームの要員として雇われていたという。「ほとんどのメールはアラビア語だったけど、チームにアラビア語を話す者はいなかった。問題だろ?」彼は言った。「私たちの誰も、自分がやっていることを理解できなかったが、上司連中だって自分が何をしているかわかってなかったんだ」

合衆国がテロとの闘いやイラク戦争に深く関わることになって、ますます私企業のスパイは増加するだろう。悪いことばかりでもない。よく訓練された連邦職員と、役割に拘束されない革新的な企業が一緒になれば、古い問題に取り組むためのより効果的な方法を見つけることができるだろう。

しかし、過失が増えることは深刻な問題である。議会がCIAの契約している企業を知らないというなら、その企業が何をしているか(そしてどれだけの費用が支払われているか)を、一体だれが精査できるというのか?情報活動を立て直すことに決めたのだから、「外套と短剣」を作る者と、それを使う者との間の最適なバランスというものを、我々は見つけなければならないのである。


2004/06/22

ビッグブラザーがアメリカ人を24時間監視する場所

Capitol Hill Blue2004/06/07付けコラムより。記事全文を以下に翻訳掲載しました。(文中リンクは訳者による)


ビッグブラザーがアメリカ人を24時間監視する場所(Where Big Brother Snoops on Americans 24/7)

by テレサ・ハンプトン & ダグ・トンプソン

バージニア州アーリントン、フェアファックス通り3625にあるバンク・オブ・アメリカ支店の客たちは、隣のブロックにいつも駐車しているアーリントン警察の車両を不審に思っていた。客たちは、キャントウェル・セキュリティ・サービスの二人のガードマンが、武装して銀行の前の通りをパトロールし、用心深く通行人を監視しているのも気づいていた。

「通りの向こうで何かあるの?」ある婦人が、前の週に振り込まれた給与を出金するために、銀行窓口の列に並びながら、尋ねた。

「さあね」彼女の前に並ぶ男性が答えた。「何か政府に関連してるらしいよ。警察もガードマンも911テロの後からずっとあそこに居るんだ」

「そう」彼女は答えた。「たいしたことじゃないのね」

もしもご婦人が、フェアファックス通り3625の、その特徴のないビルの中で何が行われているかを実際に知ったなら、おおいに問題があると感じるだろう。そのビルは、ペンタゴンの国防高等研究所計画局(DARPA)の「全情報認知」(Total Information Awareness: TIA)計画---議会が却下したはずの「ビッグ・ブラザー・プログラム」を収容しているのだ。

列に並ぶご婦人が、バンク・オブ・アメリカ支店でお金を引き出すと、通りの向こうにあるオフィスのコンピューターには、瞬時に出金内容が表示される仕組みだ。口座内容も、旅行記録も、他のアメリカ人が日に何百万回も行う個人的な取引内容も同様の仕組みで記録されている。

議会が資金拠出を却下し、計画の中心人物である悪名高き退役司令官、ジョン・ポインデクスターが辞任したにも関わらず、DARPAのTIA計画は未だ実施されており、毎日24時間休みなく、アメリカ国民の個人取引を覗いている。

「議会が資金拠出を却下したとき、国防総省は、長官の承認の下で、単に計画を“秘密勘定”にまわしただけだったんです」DARPAの元職員は明かした。「“秘密勘定”扱いのプログラムは議会の承認を必要としないので、通常の監督体制から除外されているんです」

DARPAはまた、計画を実施するために、私企業を使い、議会の監視を逃れることに一役買わせている。連邦防護局の協力を求める代わりに、キャントウェル社のようなセキュリティ企業と契約し、TIA計画を監視の目から逃れさせているのである。

911テロ事件の直後、ブッシュ政権の要請と愛国法の下にTIA計画は承認され、DARPAはアーリントン郡のビルに移転した。

TIA計画の使命は、銀行取引記録やクレジットカード企業のデータ、航空企業や他の旅行会社データ、信用機関他監視が必要なデータ、金融取引や外国人旅行者のデータを関係機関からリアルタイムで取得することを可能とする巨大なコンピューターデータベースを確立することである。

米国愛国法の規定によれば、銀行や他企業は、通常ならプライバシー違反で退けられるような、DARPAによるデータ参照への協力を強制されている。

2002年、TIA計画が表面化してから、イラン・コントラ事件の中心人物であるポインデクスター氏が責任者として着任すると、市民監視グループや他の議員たちは計画内容を見直し始めた。そして、イラン・コントラ事件の際に議会に嘘をついたポインデクスター氏の辞任を求める騒動から、TIA計画への資金拠出は打ち切られていた。

しかし議会は、TIAの代わりにデータ蓄積を認める調査費用をDARPAに拠出できる抜け道を残しておいたので、ブッシュ政権は国防総省にTIA計画を秘密勘定に移行するよう指導し、議会は計画から締め出されることになったのである。

DARPAの計画管理者であるダグ・ダイヤー中佐は、TIA計画はテロとの戦争における必要な犠牲と擁護している。

「アメリカ国民はプライバシーと安全を秤にかけるべきだ」中佐は語る。「911テロで3,000人が死んでいるんだ。テロ攻撃によって国民全体のプライバシーが影響を受けることを懸念しているのなら、妥協も必要だろう」

その妥協とは、実質的にすべてのアメリカ国民のあらゆる金銭取引が記録され、連邦政府によって監視される社会を意味している。あらゆる銀行取引、クレジットカードの支払いから通話記録、信用調査、旅行記録から健康診断記録までリアルタイムにDARPAのコンピューターに捕捉されることになるのである。

「基本的には、TIAは、銀行に口座を持ち、クレジットカードを使い信用情報を保持するあらゆるアメリカ人をプロファイリングしている」セキュリティ専門家のアラン・バンクス氏は指摘する。「プロファイリングにより、普通の個人の支出と旅行習慣のパターンが解析される。そうすると次にシステムは、通常と違うやり取りを探す出すのだ。例えば、テロ活動に用いられる懸念がある物品の購入や、特定地域への渡航や支出パターンの変化とか」

あらかじめ定義された基準に合致するパターンが発見されれば調査警告が発信され、その個人は司法省と国土安全保障省が言う「要注意人物」と見なされることになると、バンク氏は説明してくれた。

このようなデータ蓄積は「データベースプロファイリング」とも呼ばれ、合衆国憲法修正第4条で保障される個人のプライバシーを侵害するとして禁止されているはず---米国自由人権協会・テクノロジーと自由部門の責任者であるバリー・シュタインハルト氏は指摘する。

シュタインハルト氏によれば、蓄積された情報はすでに「搭乗拒否リスト」として活用されているが、情報内容の正確性に関する保障措置が未整備のままであるという。

「搭乗拒否リストに登録されたら、どうやって削除を依頼したらいい?」シュタインハルト氏は問いかける。

下院の政府技術情報政策政府間関係改革小委員会の少数派に属するミズーリ州議員ウィリアム・クレイ氏は、DARPAが私企業にデータ管理を任せていることにより、法律問題を回避していると疑っている。

「データ管理に属する組織は、プライバシー保護法を回避するために、データを保有していないと主張する」クレイ氏は説明した。その代わりに、組織は私企業にデータを移行し、管理を委託していると彼は指摘している。

「技術的には、そのやり方ならプライバシー保護法には抵触していない」彼は答えた。「もちろん、倫理上は違反しているがね」

2003年に、TIA計画への資金拠出の却下を支持したとき、オレゴン州議員ロン・ワイデン氏のような議員は問題は解決されたと思っていたという。

「法を遵守するアメリカ国民を監視するような仕組みが存在しないように議会は念を押したのだ」ワイデン氏は投票後に言った。

しかしそれは間違いだった。ブッシュ政権は---すでに近代でもっとも秘密を好む政権と広く認知されているが---単に計画をラップに包んだだけで、継続させたのだ。

議会が資金拠出を停止したとき、フェアファックス通り3625の作業は停止され、アーリントン郡は職員を通常業務に戻すはずだった。しかしながら、警官たちはその場所にとどまり、警備は一層強化されることになったのである。

アーリントン郡のビルと地域事務所の建設記録によれば、18ヶ月間で20以上の高速回線が設置されたという。マイクロ波通信アンテナも屋根に設置された。

国防総省の広報官は、「国土の安全に関わる」という理由から、ビルで何が行われているかについて説明を避けている。

TIA計画が問題にされた初期の頃、DARPA幹部はデータ被害に対する防護策があることを主張したが、記録は別の事実を伝えている。

「軍部によるプライバシー侵害の名残があるから、そんな曖昧な保障はさっぱり慰めにならない」ワシントン・ケイト研究所の上級編集者ジーン・ヒーリーは語る。

「第一次大戦時代、ドイツの破壊工作員への懸念から、米陸軍情報部は国内監視を無制限に拡大してきた」ヒーリー氏は語る。「陸軍スパイは破壊分子の可能性がある個人の情報の集めることに支配権を持ち、特別警察官として逮捕権も与えられることがあった。場合によっては、公的機関の職員を装うための偽職員証を持ち、西部情報局員がそれを手配することもあった。標的の居るオフィスや住居に入り、データを取得するためだった」

著作「Army Surveillance in America」の中で、歴史家のジョアン・M・ジェンセンは強調している。「敵側工作員から政府を保護するためのシステムとしてスタートした仕組みは、法を遵守しながら戦時政策や戦争そのものに反対する市民を監視する諜報システムに変化したのだ」

陸軍の最近の大失策であるイラクでの囚人の扱いは、アメリカの軍事システムが、自身を監督する能力も制限もないことを露呈している。

「この国には長きにわたる軍部諜報問題の歴史がある」ヒーリーは付け加えた。「歴史は私たちに、国防総省が個人情報にアクセスすることを嫌悪すべきであると教えてくれている」

TIA計画が政府にアメリカ市民の監視を許している状況にあって、データ管理の専門家は、それがテロ対策には役に立たないと言っている。

「テロリズムは順応性がある」データ管理会社Two Crows社の社長ハーブ・エデルシュタイン氏は語る。「次のテロ攻撃でも(以前と同じ)航空機ハイジャックとビル突入が起こる可能性は低い」

「Database Nation: The Death of Privacy in the 21st Century」の著者、サイモン・ガーファンクル氏もそれに同意する。

「データの蓄積は、売り上げ増進や売り場管理目的には威力を発揮するが、その効果はテロリストの行動分析とは全く異なる」ガーファンクル氏は言う。

他の専門家も失敗の可能性が高いことを指摘している。

「有意なパターン分析をもってしても、推測から生じる失敗の規模は大きい」情報企業グロクス社役員で「The Ecology of Commerce」著者のポール・ホークン氏は語る。「たったひとつの正しい予測のために、間違い情報を何千も監視することで莫大な犠牲が生じるだろう」

DARPAはグロクス社にTIA計画への参加を促したが、計画の実効性と倫理性の欠如を考え、同社は申し出を辞退した。ホークン氏によれば、倫理上の懸念から、NSA職員でさえTIA計画への参加を拒否した人物も居るという。

TIA計画の危険性は思わぬ副産物も生み出している。米国自由人権協会は、保守派のフィリス・シュラッフリー氏が主催するイーグル評議会やヘリテージ基金と協力して、TIA計画以外にも、愛国法による他の人権侵害に対抗している。保守派の扇動者であるボブ・バー元議員も活動に参加している。

しかし、これらの注意にもかかわらず、TIA計画は今でも存在し、アーリントンのフェアファックス通りのビルから、24時間365日、アメリカ国民を監視している。そのビル内に勤務する職員は、勤務事実を秘密にしているはずだが、DARPAのID証を誇らしげに首からぶら下げながら、ビル近所のレストランで日常的に食事を楽しんでいる。バッジをぶら下げる紐にも「DARPA」の文字は大きくプリントされているのだ。

「ああ、連中はそこのビルで働いているスパイだよ。」フェアファックス通り3701傍の食料品店の店員、アーニーが教えてくれた。「連中はあれで秘密を守ってるつもりなんだから、オレたちは心底不安になるよ」


2004/06/20

「アッシュクロフトは史上最悪の司法長官」byポール・クルーグマン

ニューヨークタイムズ2004/06/15付けコラムより。

人気経済学者ポール・クルーグマンのニューヨークタイムズ連載コラム最新版を以下に全文翻訳掲載しました。(文中リンクは訳者による)



歪曲された司法(Travesty of Justice)


by ポール・クルーグマン


もはや疑問の余地はない。ジョン・アッシュクロフトは史上最悪の司法長官だ。

今回は、アッシュクロフト氏のテロとの闘いについて焦点をあわせてみよう。911テロ事件以前、彼はテロの危険についてほとんど関心を示していなかった。2001年5月の司法省の優先事項に関するメモによれば、テロ対策について言及することさえなかった。911テロ独立調査委員会が彼にそのことを尋ねたところ、アッシュクロフト氏はクリントン政権を非難し、委員会のメンバーに対して個人攻撃を試みた。

アッシュクロフト氏の911テロ以降の政策が、テロリズムから合衆国を守ることになっているかどうかを直接判断することはできない。しかし多くの証拠から、それを推測することはできる。

まず第一に、大きな訴追がひとつも成功していない。重大にみえたテロ嫌疑訴訟も---「デトロイトの三人組」の件である---検察の違法行為に対する批判を巡り崩壊寸前だ。(訴訟を台無しにしたということで、検察官はアッシュクロフト氏を警告の意味を込めて告訴した。そのお返しに司法省は、検察官への捜査を開始している。復讐?それは読者の判断に委ねよう)

それに、大捕り物が何もない。どこかで、炭素菌事件の犯人は笑っていることだろう。しかし司法省は---皆さんもこれを知ったら嬉しくなるだろうが---ニューヨーク・バッファロー地区の美術教授を、無害のバクテリアがペトリ皿に含まれていたという件で、バイオテロリズム容疑で起訴するかどうか決定しようとしている最中なのだ。

おそらく、アッシュクロフト氏の性質を示すもっとも明白な事例は、仕事振りを批判された際のアッシュクロフト氏自身の対応だろう。彼の最初の行動は、証拠を隠すことだ。そして次に、ドラマティックにテロの危険性を宣言することで、話題を変えようとする。

アッシュクロフト氏が公的な検証を凍結した例として、例えばシーベル・エドモンズの件がある。彼女は元FBIの通訳官で、捜査当局の通訳部門が無能さと堕落に蝕まれていることや、FBIがテロ警告を無視した件で当局を告発した人物だ。2002年に、彼女は組織内部で行われた非公開の聴聞会で証言している。チャールズ・グラスレイ議員は彼女のことを「とても信頼できる・・・なぜならFBI内部の他の職員が彼女の証言の大部分を裏付けているからだ」と評していた。

しかし、司法省は滅多に使われることのない「国家守秘特権」を行使して、エドモンズ嬢が証拠を提出することを妨害した。そして先月、当局はFBIによって行われた2年前の聴聞に遡り、グラスレイ議員が言及した聴聞会の記録までを極秘扱いにした。

話題を変えるという事例では、ホセ・パディラ事件(アブダル・アル・ムジャヒル事件)を考えてみよう。2002年5月にパディラ氏が逮捕されたことについて公的な報告は何もされていなかった。しかし2002年6月6日、コリーン・ロウレイが議会証言で911テロ以前のFBIの失策について暴露し(アッシュクロフト氏にも報告済みだ)問題になった。4日後、アッシュクロフト氏はドラマティックな記者会見を開き、パディラ氏が国内テロ計画に関わっていたと報告した。ロウレイ嬢の告発の内容が注目される代わりに、ニュース誌は一斉に、アッシュクロフト氏が報告した「ダーティーボマー:放射性爆弾魔」が何千人もの人を放射能で殺す計画を立てていたという話題を報道した。

パディラ氏は「敵戦闘員」として拘束され、全ての権利を剥奪されていた。しかしニューズウィークがレポートしたところでは、「政権内の幹部が認めたところによれば、パディラ氏の拘束された際の容疑は---合衆国内で放射性爆弾を設置する専門家としてテロ組織から派遣されたという容疑---全くの間違いで、法廷にまで持ち込まれることもないだろう」とのことだった。

しかし最も重要なのは、あのメモのことだ。先週、アッシュクロフト氏は、明らかに議会を軽視すべく、2年前に用意されたという虐待に関するメモを公開することを拒否した。あいにく、彼の隠蔽作業は効果がなかった。ワシントンポストがメモのコピーを入手してウェブサイトで公開したからだ。

メモの大部分は虐待を認める内容だった---囚人を苦しめる痛みが「臓器の障害など、深刻な肉体上の損傷を与えるものでないかぎり」それは虐待ではないという内容である。とにかく、メモが表現していることは、虐待を禁じる連邦法は、敵戦闘員の尋問の際には適用されず、最高司令官の指示に従うべきであるということだった。言い換えれば、大統領は法律よりも上位に君臨しているわけだ。

メモの内容は日曜日(6/13)遅くに明らかになった。すると、アッシュクロフト氏は昨日(6/14)、記者会見を開いた。内容は、オハイオのショッピングモールを爆破しようと計画したという容疑で、ある人物を告発したというものだった。そのタイミングは・・・いや、全く、なんという偶然だろう。

2004/05/29

あなたが読んでいる書籍について、政府はもっと深く知りたい・・・

Democracy Now!2004/05/06付放送より。

アマゾンドットコムは購入履歴を蓄積して顧客の読書嗜好を探り、お返しに、お薦めの本を教えてくれる。では、政府が、オンライン書店と同じようにあなたの読書嗜好を探っているとしたら、彼等はあなたに何をしてくれるだろう?

2000年3月、米麻薬取締局(DEA)の捜査官が、覚せい剤製造をしていた4人の容疑者の住居を捜索したところ、覚せい剤製造ノウハウを記した2冊の本「Advanced Techniques of Clandestine Psychedelic and Amphetamine Manufacture by Uncle Fester」「The Construction and Operation of Clandestine Drug Laboratories, by Jack B. Nimble」を発見した。

それらの書籍を販売したのが、コロラド州デンバーの個人書店Tattered Cover Bookstore」であることが判明すると、DEA捜査官は同書店に捜査令状を持って来店し、同書籍の30日分の販売記録や、全ての顧客リストを提出するよう要求した。しかし、書店の女性オーナー、ジョイス・メスキスは、合衆国憲法で保障されている基本的人権、プライバシーの侵害を盾に、DEAへの捜査協力を拒否した。

すると、地方裁判所の判事は書店側に、捜査官から要求された情報をDEAに引き渡すよう命令した。ジョイスは再び命令を拒否し、この「Tattered Cover事件」はコロラド州最高裁判所で争われることとなった。

2002年春、コロラド州最高裁判所は書店側の主張を認め、合衆国憲法の基本的人権として「政府の干渉なしに書籍を購入し、読む自由」を認めた。ケネス・スター検察官がモニカ・ルインスキーの書籍購入記録を要求したときから増加したといわれる、捜査当局による書店の顧客プライバシーの侵害という悪弊は、終わりを迎えたかに見えた。

しかし実際には、新たなプライバシーの危機が始まっていたのである。

テロ対策の大義の下、ブッシュ政権と議会により制定された愛国者法(Patriot Act)によって、アメリカ市民の基本的人権はあらゆる面で制限されることになったが、それは読書習慣にまで及んでいたのだ。愛国者法の第215条により、連邦捜査員は、令状を提示することなく、書店と図書館から顧客情報、購入・利用情報を極秘裏に入手する権限が認められる可能性があるというのである。

愛国者法によって、再びTattered Cover bookstoreは窮地に立たされることになる。オーナーのジョイスはどう対処したのだろうか?Democracy Now!でのインタビューを以下に引用してみよう。

エイミー・グッドマン(番組ホスト):
FBIはTattered Cover書店に接触してきましたか?

ジョイス・メスキス(書店オーナー):
それはありません。もしそうだとしたら(FBIが顧客情報を要求したとしたら)あなたに教えられないと思いますよ。

エイミー・グッドマン:
では、現在あなたは(FBIによって)包囲されていると感じますか?不安ですか?顧客に、監視されている可能性について知らせていますか?

ジョイス・メスキス:
そうですね、今は書店内で顧客に、愛国者法そのものと215条への反対嘆願書への署名をお願いしています。法が改訂されることを願いますが、我々書店オーナーや図書館員たちが、大統領や議員たちに、(愛国者法が)アメリカにふさわしくないということを伝える役割を果たすには、大勢の読者の動員が必要とされていることを強く感じます。
書籍どころか、毎朝の大統領宛て報告書すら一切読まないといわれるブッシュ大統領に、読書家たちの願いが届くかどうかは定かではない。

ともあれ、米国政府は、オンライン書店と同じように、市民の読書嗜好を探ることができるようになった。書店はあなたにお薦め書籍を教えてくれるが、政府はあなたに、焼かれるべき書籍について教えてくれることだろう。

2004/05/21

米国テロ対策事情:2件の最新事例

勤勉な?シークレットサービスの捜査事例

St. Louis Independent Media Center 2004/05/18付け記事より。

ハキム・アジズ氏は、42歳になるアフリカ系アメリカ人のイスラム教徒。妻と二人の子供と共に、ミズーリ州セントルイスに住み、個人で会計サービス事業を運営している。

2004年4月7日の午後10時過ぎ、誰かが執拗にドアを叩き呼び鈴を鳴らすのを不審に思ったアジズ氏は、3階の仕事場から階段を下りて訪問者に対応した。ドアを叩いていたのは二人のシークレットサービスエージェントと4人の警察署員だった。住所の確認に答えたアジズは、銃を所持しているかを尋ねられたので、空のポケットを見せようとすると、署員は銃を抜いて構えた。アジズ氏は手を揚げてポケットナイフを持っていることを署員に告げた。訪問者たちはアジズ氏を立たせたまま、捜査員章を見せてから質問を始めた。

エージェント:
「我々の職務についてはご存知かね?」

アジズ氏:
「もちろん。大統領を守るんだろ?」

エージェント:
「結構。我々がここに来た理由について思い当たることは?」

アジズ氏:
「わからん」

エージェント:
「電子メールを送ったのを憶えてるか?」

その時点で、アジズ氏ははじめてエージェントが何について話したいのか理解したという。
エージェント:
「我々がここに来た理由は、あんたの電子メールを傍受したからだ。その電子メールには“ブッシュ”と“ビン・ラディン”が同じ文章中に記述されていたということだ。そうしたメールを送った覚えは?」

アジズは近所の住人へ送ったメールを思い出した。その相手とはイラク占領体制についてメールで議論していたという。エージェントが指摘したメールの文章はこんな感じだ:「マヌケなブッシュは嫌いだから、シェイク・ビン・ラディン閣下が(ブッシュの)悪党連中を地球上から撲滅したらお祝いしたいものだ。(I hate that imbecile bush so much that I would celebrate if the Honorable Sheik bin Laden succeeded in ridding the earth of his filth.)」
アジズ:
「それがどうしたというんだ?誰かが死んでお祝いしたとしても犯罪じゃないだろ?私が子供の頃は、警官が殺される度にお祝いしたもんだ。警官を憎むのがアタリマエの場所で育ったんだよ」

エージェント:
「1994年にミズーリ州ペリー郡において軽犯罪違反の容疑があるとのことだが、憶えてるな?」

アジズ氏:
「ああ憶えてるとも」

エージェント:
「その容疑に対して召喚状が出てることも知ってるか?」

アジズ氏:
「それは知らない。でもそういうこともあるだろうな」

エージェント:
「その件であんたを引っ張ることもできるんだが、今はやめとこう。我々に感謝してほしいもんだな

そうしたやりとりの後で、エージェントたちはアジズ氏の同意を得て、彼の自宅を(捜査令状なしで)チェックし始めたという。特にエージェントが念入りに検証したのは、アジズ氏の仕事場にある書籍、CD、書類の類だった。アジズ氏はイスラム関係の書籍を多く所有していたのである。また、警官たちは、地元の反戦団体から配布された反戦メッセージのプラカードをアジズ氏が所有しているのを見つけて、「週末に開催予定の反戦集会に参加するのか?」と問われたという。しかし、アジズ氏は地元で反戦集会が行われるということを知らなかった

アジズ氏の見方によれば、エージェント達は、実際には彼の電子メールを専用の監視システムで傍受したのではなく、メール送信相手のタレコミを元に捜索に来たのではないかと考えているという。イラク占領をめぐりメールで議論した相手は地元の共和党員で、前市長選に立候補した人物だった。シークレットサービスの広報担当者トム・カナヴィ氏によれば、エージェントは市民からのタレコミに対しても「傍受」と説明することがあるとのこと。

寛容な?FBIの捜査事例

The Ledger-Enquirer紙2004/05/18付け記事より。

ジョージア州アトランタの貨物駅近くで、発射された後の軍用ロケットランチャーが発見された。FBI広報官のスティーブ・ラザラス氏の説明によれば、発見された武器は、普段は兵士の訓練用に使われるモデルで、航空機を撃墜したり列車を破壊するほどのパワーはないという。

もし訓練用のモデルだとすれば、国内の銃火器店ならどこでも手に入るよ。」彼は付け加えた。

ラザラス広報官の説明によれば、今回の件は一般市民に警報を出すほどのことでもなかったので、市内の列車運行に影響がでることもなかったとのこと。

発見されたのはM136 AT4 というモデルのロケットランチャーで、軽戦車を攻撃する際に使われることもあるという。尚、発見された現場から北に8マイル行った先には、ハートフィールド・ジャクソン・アトランタ国際空港がある

2004/04/09

ライス補佐官、ウソと不誠実な証言をくりかえす

コンドリーザ・ライスは全く謝罪しなかった。誠実でもなく、ウソとスピンで公聴会参加者をウンザリさせた。

Center for American Progressがさっそくライスの証言内容のウソを暴く記事を公開している。これで彼女のキャリアは終わりだろうが、そもそも彼女は年内でホワイトハウスを離れる予定なので、批判されても痛くも痒くもないだろう。(ライス証言ビデオはCspanで観れるが、ハイライトはCBSでも観る事ができる。)

元々ロシア政治の専門家として父ブッシュ政権時代にホワイトハウス入りし、ゴルバチョフと友好関係を築いておきながら、頭角を現しつつあったエリツィンを無視した上に、ソ連が崩壊することを予測できなかったコンディ。(ソ連崩壊を予測し、合衆国がソ連崩壊前に介入すべきと主張してライスと衝突し、政権を去ったのはチェイニーとウォルフォウィツだった。今回、チェイニーはライスを公聴会に押し出して、引き換えに自分の公聴会での証言を免除させた。なんと狡猾な副大統領!)

そんな失敗をしたライスを合衆国防衛の要職に採用したのは、パキスタンのムシャラフ将軍すら知らなかったブッシュジュニアである。こんな連中が世界戦略を話し合っても、マトモな外交政策などできるはずもない。テロ対策と全く関係ないイラク攻撃、テロリストよりも反ブッシュ活動家を監視することに注力する国土防衛策。司法長官のアッシュクロフトに至ってはテロリスト情報よりも中絶した女性の個人情報を収集することにひたすら執着し、その変態的性格を恥じる様子もない。

そんな異常でマヌケなホワイトハウスに追随する小泉政権は、アルジャジーラ無しではイラクで誰が拘束されたかもわからない。(イラク派遣部隊に陸上幕僚監部調査部などの情報部関係者が同行しなかったのだろうか?あるいは自衛隊幹部と官邸の関係が悪いのか)これでは、巨大な防衛費で知られる二つの大国が、お互いを目隠しして、銃を撃ちまくっているようなものではないか。

2004/04/08

米軍、韓国で市街戦の訓練中

Spacewar.com2004/04/06の記事より。

在韓米軍が市街戦向けの戦闘訓練を実施とのこと。Spacewar.comの記事では「北朝鮮の12万2千といわれる特殊部隊との、市街での交戦を想定」という記述があるが、米軍の公式発表記事によるとイラク、アフガニスタン向けの訓練も兼ねているようである。

訓練に参加した第55部隊のマーカス・バートンによると、「北朝鮮の架空の殺人者キム(Kim Murderman)に率いられた小隊クラスのテロリストとの交戦」を想定した訓練のシナリオは、「テロリストは団地を占拠している。味方部隊の攻撃目標はキムの殺害もしくは拘束、住民の巻き添えを防ぎながら団地内のゲリラ掃討を目指す」「しかし、住民の一部は武器を所持し、処刑される恐怖からキムの指示に従い攻撃してくるものとする」という内容らしい。(この内容から推測すると、米軍が訓練のために想定している戦闘エリアは北朝鮮の平壌市街地のようである)

在韓米軍のこうした訓練シーンが、北朝鮮政府を不安にさせる圧力になっているのか、態度を硬化させる原因になっているかはわからない。山タフこと山崎拓氏と平沢勝栄議員の急な行動に関係があるのかもしれない。

2004/03/20

アメリカ市民の生活に忍び寄る軍事社会の影

ウォールストリートジャーナル2004/03/9付け記事によると、米国では、国内の治安活動など従来の警察の役割に軍隊が動員されはじめているとして、その危険性---軍事国家への変貌が危惧されているとのこと。

同記事が実例として挙げている事例では、例えば先月(2月)、テキサス州オースティンの法律学校に陸軍の情報部員が現れ、同校で開催された法律学セミナーの際に「軍の弁護士に対して怪しい発言をした三人の中東系の人物の身元確認」のために、セミナーの録画テープを要求したという。(陸軍側はその件について「調査中」とコメントしている)

昨年には、米国海軍情報部---世界の海上保安の基盤となる組織---は、「テロの可能性がある行為の阻止のため」アメリカ関税局(USCS)の海運取引データベースへのアクセスを要求した。関税局はこの要求に一度は反対ものの、結局大部分のデータへのアクセスを認めることになったとのこと。

さて、ウォールストリートジャーナルの記者は気づいていないようだ。日本人の感覚からすれば、アメリカはすでに息苦しくなるほど軍国主義に侵されているのである。

例えば、オレゴン州の地域新聞の2004/3/7付け記事によれば、オレゴンのLAパイン高校では、ランチタイムになると、校内で陸軍軍曹が積極的に陸軍のマーケティング活動(入隊勧誘)をしているという。政府の後押しもあって、軍隊のスカウト活動は順調らしい。2001年に施行されたブッシュ大統領ご自慢の政策「落ちこぼれゼロ法案(No Child Left Behind Act)」によって、全ての中・高等学校は、軍部の採用窓口から要求があった場合には、生徒の名簿を提出する義務が課せられることになったという。(落ちこぼれたら生き残る可能性がゼロに近づくということだろうか?)

もちろん、生徒の両親は個人情報の提出に対して拒否する権利を留保している。オレゴン州ベンド-LA地区に関しては約10%の両親が子供の情報提出を拒否しているが、オレゴン州全体ではそうした権利について充分に告知されていないらしく、ほとんどの両親は生徒の名簿提出を拒否していないとのこと。

米国の地域経済を支えていた製造業のほとんどがインドや中国に外注され、中流家庭が貧困層へと移行している現在、さまざまな資格と高度な教育設備を提供する陸軍は(裕福でない)米国の児童にとって魅力的な就職口に見えても仕方ないのである。

ところで、「金持ちだけが兵役を逃れるのは許さない」という旧来の保守的なアメリカ市民のために、ブッシュ政権は密かにHR163-S89法案の議会承認を進行中だ。

この法案のサマリータイトルは「通常防衛戦力供給に向けて、全ての若者(女性含む)に一定期間の兵役もしくは公共サービスを義務化し、国防と国土安全を促進する法案(To provide for the common defense by requiring that all young persons in the United States, including women, perform a period of military service or a period of civilian service in furtherance of the national defense and homeland security, and for other purposes. )」となっている。(この件については以前にもちょっと書いてます)

もちろん2004年の選挙期間中にこの「徴兵法案」が話題にのぼって「ベトナムの再来だ!」とリベラルな連中が騒ぎ出すことがないように、(このまま順調に事態が進行すれば)同法案は2005年春から施行される予定である。(この先日本では「駅前留学」の先生たちが、激減することになるかもしれない)

ベトナム戦争時代の徴兵制度により、テキサス州兵に勤務することによって「ベトナム戦争逃れだ」とののしられることになったブッシュ大統領は、これから州兵に応募するアメリカの若者がそのような不名誉な立場にならないように、イラク、アフガニスタン、コソボ、ハイチ、その他世界で活躍する米駐留部隊に、各州兵がローテーションで勤務できるようにキチンと配慮している。(高校を卒業して、はじめての海外旅行が戦場!というわけだ)

徴兵が復活しても、オタク文化に染まってしまって星条旗のお役に立てないと考えている一部のひ弱なアメリカ人の方は、ご心配なく。サンフランシスコクロニクル紙の2004/3/13付け記事によれば、徴兵法案実施に先立って、軍事作戦分野で特に不足しているという、「コンピューター技師」「通訳」等の特殊技能の人材確保のためブッシュ政権はすでに積極的な人材獲得活動を開始しているという。(こうした米軍の徴兵活動を指揮する組織「Selective Service System」の公式ウェブサイトを見ると、「まだ徴兵は始まっていない」と宣言していて、報道内容を否定している。どうやら世間の注目を浴びて迷惑しているようだ)

米国では、徴兵制度の復活は致仕方ないと考える政治家は多い。なにしろ兵士が不足しているのだ。2004年2月3日の時点で、イラク駐留米軍兵の死亡者数は公式には528人とされているが、ジャーナリスト、ジョー・ヴァイアルズ記者の調査によると、公式発表されているのは戦闘で「即死」した人数だけであり、傷病兵として病院に運ばれ、治療中に亡くなる兵士の人数は含まれていないとのことである。(そうした事情により、上記日時での兵士の死亡実数は1,188人と推定されている)

たとえ隊員数に見合う防弾チョッキの支給が間に合わなくても、どんどん兵士を新規採用しなければ、アメリカ合衆国は「自由のための」戦争を継続することができない。

しかも、「イラク勤務が終わっても除隊しないで」という上官の懇願を聞き入れない兵士は多いし、地域新聞デンバーポストの2004/03/17の記事によれば、イラクやアフガニスタンから帰国した特殊部隊のエリート兵士は、軍医のカウンセリングも虚しく、自殺していまうケースが増えているという。(コロラド州だけで少なくとも6人の帰還兵が戦闘による心的障害により自殺している)

帰還を前にしたカウンセリングはそもそも効果がないという意見もある。戦場でどんなひどい目にあっても、兵士は本当の悩み、怒りを人に話せないことが多い。生き残った負傷兵がマスコミに軍部への愚痴をこぼした場合、傷病兵士向けの医療保障を打ち切られることもあるからだ

「ベトナムの英雄」ジョン・ケリーが大統領に当選したら、そんな兵士へのイジメを解消し、悩みを解決して、彼等が安心して戦地に戻れるように、新たな国防政策を打ち出す可能性は高いだろう。「ブッシュよりマシ」と素直に喜べないとしても、うっかりラルフ・ネイダー氏に投票すれば、ブッシュ政権の続投を支持してしまうことになる。結局のところ、ブッシュ大統領のように「脱走」する選択肢は、現在の米国市民にはないのかもしれない。

さて、日本人はアメリカ社会から何か教訓として学んでいるだろうか?

かつて日本でも、80年代には新宿駅や全国の繁華街の、風俗の呼び込みが騒々しい中で、冴えないオジサンたちが「自衛隊入らない?資格なんでもとれるし公務員だから給料高いよ」といって体力のありそうな学生を勧誘していたのを、憶えている方も多いはずだ。(「日本のために死ねるか」などと言わないあたり、当時のオジサンスカウトは現在の政治家よりも、自衛隊に関してはるかに正直だった)

そして2004年。自衛隊は米国のPR手法を取り入れて、スカウトマンよりも効率的な入隊勧誘を目指している。渋谷スクランブル交差点で、明らかにビレッジ・ピープルのヒット曲「In the Navy」の影響を受けたと思われる「踊る自衛隊」広告を、笑って見ていられるうちはまだ大丈夫、と言えるだろうか?

(注:ビレッジピープルは70年代に米国で活躍した男性6人グループ。彼等の特殊な存在感についてはインフォシークミュージックのページでご確認あれ)

2004/02/12

「反戦運動家は搭乗拒否」アメリカのテロ対策(?)事情

日本で反戦デモに参加したことのあるアメリカ人へ警告。故郷へ帰ってはいけない

CBSニュース2004/02/05のレポートから一部を以下に(少し長くなるが)引用する。


これはレベッカ・ゴードンとジャネット・アダムズの話。ボストンに住むゴードンの80歳の父親に会うためにサンフランシスコ国際空港で搭乗チェックインしたところ、係員は警察を呼んだ

「係員は私たちがFBIの“搭乗不可リスト”に載っているといったわ。サンフランシスコ警察に連れて行かれたの。本当にショックだった」アダムは語った。

「警察は私たちを拘留した。完全に拘束状態。水も飲ませてもらえなかったわ」ゴードンは回想する。

なぜ50代の二人の女性---アメリカ市民で、サンフランシスコに家を持ち、長年の平和活動家で犯歴もない人たちが、「テロリスト容疑リスト」に掲載されていたのか?

米国自由人権協会の弁護士は、政府がテロリスト容疑リストに二人が掲載されているかどうかさえ教えてくれないと話している。昨年4月、北カリフォルニアの米国自由人権協会は、運輸保安局とFBIに対して訴訟を起こしている。訴訟内容は簡単な質問への回答を求めるものである。つまり、「テロリスト容疑リスト」には何人が掲載されているのか?誰が掲載されているのか?どうすればそのリストから除外されるのか?

「政府はどのような条件でテロリスト容疑を受けるかについて説明を拒否しました。どうやってリストに掲載されるのか想像もつきません。もし政府がリストを保持しつづけるなら、それが市民生活をどれくらい安全にしているのかどうか定かではありません。わかっているのは、何百人、もしかしたら何千人もの無実の市民が、“テロリスト容疑”で搭乗拒否されることになるかもしれないということです」米国自由人権協会の弁護士、ジャヤシリ・スリカンティア氏は説明した。

市民権活動家は政府が警戒リストを保持することには反対していないが、誰が、何の容疑でリストに掲載されるのかを心配している。

「政府がそんなリストを持っているなんて恐ろしいことだわ。本当に怖い」アダムは話す。

恐ろしいが、現実である。政府は極秘の「搭乗拒否リスト」を保有していることを公式に認めている。さらに、誰を尋問し、拘束すべきかを決定する極秘リストも保有しているという。

両リストとも、搭乗客データベースにインプットされており、チェックイン時に確認される。リストには数千人の情報が含まれており、掲載されている人物は搭乗前に足止めされるのだ。

リスト自体は新しいものではない。1990年からメンテナンスされているが、9/11同時多発テロ以降、大幅に拡張されたのだ。

今では、リストは単にテロリスト容疑というだけでなく、政治的志向によっても掲載されるという。リストには緑の党の会員、イエズス会の平和活動家、市民権擁護弁護士も含まれているといわれている。

ゴードンとアダムの場合、戦争反対とブッシュ政権批判のフリー新聞「War Times」への参加がテロリスト容疑の原因だと見られている。


FBIが反戦活動家の情報集めを実行していることは、2003年11月にニューヨークタイムズ紙上ですでに報道されている。FBIの地道な(間違った)努力は報われているわけである。

米国の捜査機関は、テロリストの捜査よりも反ブッシュ団体の拘束に情熱と税金を注いでいるのだろうか?

現実の事件を見てみよう。アイオワ州で反戦運動をしていた4人の若者は「連邦法違反の恐れ」があるとしてFBIから召喚された。その際、同時に反戦運動を主催したニューヨークの団体「全国法曹組合」の記録を、場所を提供したドレイク大学に対して提出を命じていた。
(この事件は世評の猛烈な反発を招き、結局FBI側は召還を取り下げている。)

2003年11月にフロリダ州マイアミで開催された米州自由貿易(FTAA)反対デモでは、ブッシュの実弟ジェブ・ブッシュ州知事が指揮する反対運動鎮圧作戦で大量の反戦活動家が拘束され、暴行されている。2万から10万人が参加した大規模デモにも関わらず、マスメディアはこのマイアミの惨劇について一切報道していない

そして、イラク駐留軍向けの予算8.5億ドルの一部がこの反戦運動の鎮圧に使われている事実は、ブッシュ政権の「テロとの戦い」が何を目指しているのかをよく表している。

ところで、日本人が新たに米国に渡航する場合、究極の個人情報である生体情報の提出が求められることになる予定だ。(外務省の奇妙に親切な解説ページを参照してほしい)これは思い切った学歴詐称を計画中の方々にとって都合が悪いというでだけなく、土地を貸している日本人としても気分のいいものではないと思うが、いかがだろう。

2004/02/04

MATRIXは実在する(1)

米政府間調査協会のMATRIXプロジェクト公式サイトより抜粋。

MATRIX = Multistate Anti-TeRrorism Information EXchange
(全州対テロリズム情報交換)


「概要」

合衆国司法省司法犯罪抑制計画局は、全州対テロリズム情報交換(MATRIX)と呼ばれる構想検証計画の試験導入を開始した。MATRIXプロジェクトは急増するテロ関連情報の政府機関内での迅速交換の必要性に対応して立ち上げられた計画である。

  • MATRIX試験導入プロジェクトは、地域、州、国家組織間における、重要なテロリズム他犯罪情報の迅速な交換を可能にするシステム構築活動を表す。
  • このプロジェクトは、既存の検証済み技術を最大活用することにより、法執行機関がテロリストや他犯罪行動の察知、早期発見と解析を可能にし、その成果を全国の各捜査機関に対して極秘裏に、迅速に、タイムリーに提供するものである。

以下の州がすでに試験導入プロジェクトへの参加に合意している。

コネチカット、フロリダ、ジョージア、ミシガン、ニューヨーク、ペンシルバニア、オハイオ、ユタ


(続く)

2004/01/27

悪の枢軸国?いえいえ、イランはハリバートンの大事な取引先です

ブッシュ政権に寛容な米CBSネットワークも副大統領には厳しいらしい。同ネットの名物番組「60ミニッツ」がハリバートンのビジネスを特集している。タイトルは「Doing Business With The Enemy(敵国とのビジネス)」何のことかというと、チェイニー副大統領がCEOを務めていた(現在も給与を受け取っている)ハリバートンは、ブッシュ言うところの「悪の枢軸国家」イランに対して毎年約4000万ドル分の事業サービスを行っているという件である。

米国の法律では、米国企業とイラン、シリア、リビアなどの国との商取引は禁止されている。しかし、海外で登記されている子会社に対してはこの法律は適用されないという抜け道がある。ハリバートンはケイマン諸島に(名義上の)子会社「Halliburton Products and Services, Ltd」を持ち、その会社はイランと堂々取引(油田開発)をしているというわけだ。
(いくらハリバートンに子会社が多いといっても、こんなわかりやすい社名を使っていればブッシュでも読めるはずだ。自分の会社名はおろか、得意先まで忘れるとは、本当にチェイニーは出来の悪い営業マンである)

同様の方法で、天然エネルギー開発大手の米Conoco-Phillipsはシリアの天然ガス開発事業、米GEはイランの電気事業に参加している。(このConoco-Phillipsという聞き慣れない企業に注目してほしい。同社の役員リストには、軍事大手ロッキードマーチン、戦闘機開発のUT、キッシンジャー元国務長官の関係者が名を連ねる。しかもConoco-Phillips社の株売買担当は、ハリバートンと同様にテキサスの超名門石油系財閥メロンファミリーのひとつ、メロン投資信託銀行である)

さて、フォーチュン誌名門企業500リストに名を連ね、「テロリスト支援国家」と取引するこれら企業の株に投資しているのが、ニューヨーク年金基金。結局のところ、テロ被害者であるはずのニューヨーク市民の金は(もし本当にイランやシリアがテロリスト支援国家というなら)テロ支援に役立っているということになる。

敵国支援という重い悩み(?)を自分のココロに秘めてじっと我慢して(トボケて?)いるなんて、チェイニー副大統領も水臭いやつだ。イラクの大量破壊兵器を探し疲れたCIA部員がこれを知ったら、感謝するとでも思っているのだろうか?

追記:日本とイランの共同油田開発事業は現在のところ米国政府の圧力によって中断されている

2004/01/11

アメリカでMSフライトシュミレーターを買うとテロリスト認定?

The Register紙2004/01/08付けの記事より。

アメリカ空軍のパイロットをしているジュリー・オセアリックという女性が、マサチューセッツ州のステイプルズ(文具チェーン店)で10歳の息子のためにマイクロソフトフライトシュミレーターを注文したところ、ステイプルズの店員は「10歳の息子が飛行訓練だって???テロリストではないか?」と思い、地元警察に通報。数日後の雨の日の夜に、サーチライトを持った州兵達が、「テロリスト認定された」ジュリー宅に、ガラス戸から急襲したという。ジュリーはステイプルズのお得意さまだった。ステイプルズ側は「政府指示に従っただけ」と話している。アメリカでは、クリスマス時期から、辞書や地図を持った運転手を「テロリスト疑惑」の対象としてFBIが市民に注意を促している。

テロとの戦いで誰が勝利しているのかは誰も知らない。しかし何が敗北したかは誰でも知っている。敗北したのは「アメリカ市民の自由」である。

2004/01/05

アメリカ国内の核兵器研究所で各種キーが紛失中

CBSニュース2004/01/01の記事

アメリカ各地にある核兵器研究所の中で、各種設備で利用できる鍵が200種類ほど紛失中。中には「注意を要する」設備へのアクセスを可能にする鍵も含まれているとのこと。米国エネルギー省が現在調査中。

ほとんど忘れ去られてしまった未解決テロ「炭素菌事件」もアメリカ国内の細菌研究所から持ち出されたものという情報もある。アメリカはカダフィ大佐を見習って大量破壊兵器をキチッと管理してもらいたいものだ。

2003/12/29

バチカンへのテロ攻撃を計画したのは誰なのか

ABCニュース2003/12/27の記事より。イタリアのベルスコーニ首相の主張によると、バチカンを標的にしたクリスマスのテロ計画の実行を、イタリア政府が未然に防いだという。しかしイタリア政府もバチカン広報も、テロ計画に関する具体的な内容については一切公開していない。

果たしてそれは、ベルスコーニ首相の誇大妄想だったのか、あるいは最近の法王の発言が特定のテロリストを怒らせたのか・・・