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カナダ:穏やかな隣人たち

2005/07/31

カナダを知らない米国人と、金で買えるアメリカ大使

フロリダの地方新聞The Ledger紙の2005/06/30付社説を全文翻訳して以下に掲載。この記事には2つのポイントがある。カナダとアメリカの関係悪化と、海外駐在アメリカ大使という役職の問題である。

アメリカよりもカナダへの帰属を希望する人が多いといわれるヴァーモント州を除外すれば、アメリカ国民は総じて隣国カナダについてあまり関心を持っていないが、そうした米国側の事情がカナダ国民をしばしば困惑させている。

タイム誌特集アンカルター

タイム誌の表紙を飾った極右アイドルのアン・カルター。ちなみに、彼女が書いた最新コラムは盗作であった事実が暴露されている。こんな怪しい『政治批評家』の書いた書物が次々とベストセラーになってしまうのだから、アメリカの右傾化は相当奥が深いのである。ところで、一連のカナダに対する攻撃の成果として、彼女は昨年トップのブッシュ大統領を抑えて、カナダ喜劇人の主催する『世界一の愚か者』大賞に選ばれた。

特に、米国内のブッシュ支持層はカナダを常に敵国扱いしている。例えば「同じ大陸に居られるだけでも有難く思いなさい!等のカナダ攻撃で知られるアメリカ極右のトップアイドル、アン・カルター(コールター)は、イラク侵攻に同意しないカナダを批判し、カナダのテレビで以下の発言をしたビデオ

「昔のカナダは我が国にとってサイコーの同盟国だったのよ。だってカナダはベトナム戦争に派兵したでしょう?ベトナムはサダム・フセインよりも危険でまとめ難い国だったかしら?」
もちろん、のちに彼女も誤りを認めたとおり、カナダ政府はベトナム戦争に戦闘員を派兵したことはない。(とはいえ、ベトナム戦争当時、血気盛んなカナダ人3万人ほどが、自ら志願して国境を渡り米国兵士としてベトナムに行ったのは事実である。ベトナム戦争当時、脱走兵に悩むアメリカ政府は、カナダ人志願兵達に社会保障番号まで与えたが、カナダ人兵士への医療保障は拒否した。戦傷を負ったカナダ人兵士は、ベトナムからカナダへ悲痛な状態で帰還し、その後公に語られることもなかった。こうした歴史事実を元に、アンは「カナダ人がベトナムで戦ったのは事実でしょ!」と苦しい言い訳をしているが・・・)

総じて穏健・寛容で知られるカナダ国民も、アン・カルターやビル・オライリーに代表される米保守層の、誤解に基づくカナダ批判に対しては辟易しているらしく、例えば在米カナダ大使フランク・マッケンナ氏は、米保守派放送網フォックス・ニュースのカナダ攻撃に対して必死の対抗PR活動を展開している。


金で買えるアメリカ大使


駐カナダ米大使に限らず、ブッシュが任命する在外米国大使達は、外交官としての資質がほとんどないということで評判だ。例えばブッシュが2001年に任命した駐フランス米大使ハワード・リーチ氏フランス語が全く話せなかったが、フロリダで投資ビジネスを行うこの億万長者は、2000年度に37万6,859ドルを個人名義でブッシュ選挙チームに寄付した。ブッシュ任命の合衆国大使としては、それで充分な資質となるわけである。

今年初旬に、新たにブッシュ大統領から駐ドイツ米大使に任命されたオハイオ州の実業家ウィリアム・ティムケン・ジュニアは、外交経験がなくドイツ語も全く話せないが、2004年のブッシュ再選キャンペーンに個人名義で20万ドル寄付し、さらに彼の経営する会社は悪名高きブッシュ大統領2期目就任イベント25万ドルを寄付している。これまた合衆国大使の資質充分である。

先週、駐ポルトガル米大使に任命されたアル・ホフマンはフロリダの実業家で、ブッシュに30万ドル寄付した人物。先月新たに駐イギリス米大使に任命されたロバート・タトル氏は、カリフォルニア州で自動車販売業を営む人物で、無名で売れない俳優レーガンが失業中に同氏から中古車を買った縁で、レーガン政権時に大統領補佐官となった有名人だ。

同じくカリフォルニア州で金融業を営むロナルド・スポグリは、新たに駐イタリア米大使に任命されたが、彼はハーバード・ビジネス・スクール時代のブッシュの級友であった。タトルとスポグリの両氏は、共にブッシュ再選キャンペーンに10万ドル以上寄付している。

合衆国大使のポジションが金で買える?まあ、驚くには値しない。大統領選挙の際、共和党陣営はブッシュ再選キャンペーンへの寄付を募るため「ブッシュに個人献金すれば大使の座を約束する」と堂々宣伝しているし、ブッシュほど露骨でないにしろ、クリントン政権時代にも同様の「政府ポジション大売出し」が行われている。

日本の投資家達も、面倒な国内企業買収よりは、アメリカ政府ポジションの買収を考えたほうが投資効率が良いと気づく日がくるかもしれない。

え?カナダ?(Uh-Oh, Canada?)

The Ledger紙2005/06/30付社説

今週水曜日のオタワにて、新任の駐カナダ米大使デビッド・ウィルキンス氏は、ポール・マーティン首相の下に挨拶に訪れた。カナダ国民もウィルキンス氏との再会を喜んでいるかもしれない。ウィルキンス氏にとって、カナダに来るのは30年ぶりのことであるという。

数週間前に、カナダCBCテレビのインタビューで、ウィルキンス氏はカナダに一度だけ、1970年代の中期に来た事があると回答した。その際にはナイアガラの滝周辺を訪問したと、同氏はインタビュアーに答えていた。

カナダの他の都市に行ったことはと問われたウィルキンス氏は、一箇所も具体的な地名を挙げなかった。さらに促されると、陸軍基地勤務時代に「インディアナ州の奥の方」に行ったことがあると答えたあと、「インディアナ州の上だったかな」と答えた。

CBCニュースは、58歳のウィルキンス氏が、サウスカロライナ州での集会でスタンディング・オベイションを受けたと報道していた。ウィルキンス氏は同州で25年勤務し、最後の10年は下院議員として過ごしている。報道によれば、ウィルキンス氏は聴衆に対して、「友人であり隣国であるカナダに駐在する合衆国の大使として」推薦されたと話した。

CBCニュースの記者は「5分間の演説で、ウィルキンス氏がカナダについて触れた部分はそれだけでした」と加えた。

合衆国にとって最大の貿易相手国へ大使として赴く人物にとって、あまり有望な始まり方とはいえないだろう。ウィルキンス氏は外交の経験は全くなく、彼の故郷であるサウスカロライナ州に対するカナダの影響力も、彼自身にはピンとこなかったらしい。

しかし、カナダ大使館の2003年度の統計によれば、カナダとサウスカロライナ州間の貿易活動は、同州の6万9,000人の雇用を支えているのである。

2003年だけをみても、毎日1,000万ドル相当の製品がサウスカロライナ州とカナダの間で取引されている。同年、サウスカロライナ州は海外向け商品の22%をカナダに輸出しているが、これはカナダが同州にとって2番目に大きい貿易市場であることを示している。

フロリダ州にとっても、カナダは重要である。大使館によれば、フロリダ州とカナダの貿易によりフロリダ州で28万9000人分の雇用が維持されている。2003年度に、カナダはフロリダ産農産物を5億2,800万ドル分購入しており、さらにフロリダ産オレンジジュースと濃縮果汁製品を1億2,600万ドル分購入している。

他にも、2003年度にフロリダ州に訪問したカナダ国民は180万人を超え、14億ドルの経済効果を同州にもたらしている。

国務省で2週間のブリーフィングを受けたウィルキンス氏が、カナダの報道陣に対し「知れば知るほど感心させられる」と語ったのも無理はないのである。

カナダ国民は、ウィルキンス氏がカナダの軟材業界を「不公正貿易を行っている」と批判した件を注視している。(サウスカロライナ州は軟材業が盛ん)また、ウィルキンス氏が2003年度の「レンジャー」、つまりブッシュ大統領再選キャンペーンに20万ドル以上の個人献金を行った人物であることも指摘されている。80年代から90年代にかけて、同氏はジョージ・H・W・ブッシュ氏の代理人として活躍している。昨年度は、ブッシュ再選キャンペーンの州代表を務め、2000年度にはサウスカロライナ州ブッシュ選挙チームの共同委員長を務めていた。

カナダ全般に関する知識不足は明白であるにしても、まだ希望はある。例えば、ウィルキンス氏はおおらかな人物で、南部特有の魅力の持ち主だ。前駐カナダ米大使のポール・セルッチ氏とは好対照であろう。セルッチ氏は、カナダが合衆国のイラク侵攻に反対し、ミサイル防衛システムに加盟しなかった件でカナダを批判していた。

一方で、カナダ政府関係者の一部は、ウィルキンス氏がホワイトハウスに近い人物であり、大統領が耳を貸す相手であると見なしている。前ミシガン州知事で、クリントン政権時には駐カナダ米大使を務めたジェイムズ・ブランチャード氏によれば、ウィルキンス氏の政治的背景には「カナダ側の必要とする資質があるよ」とのことである。最も重要なことは、「大統領と通じている」ことであろう。

ウィルキンス氏にとって、前途にある任務は決して易しいものではない。ピュー・リサーチセンターが最近行った世論調査によれば、カナダ国民の59%は合衆国に対して肯定的な見方をしている。しかし2002年度には、その数字は72%だったのだ。

2002年当時、カナダ国民の5人中4人が、アメリカ主導のテロとの戦いを支持していた。今では、それを支持するカナダ国民は半分以下である。

たぶん、ウィルキンス氏はそうしたカナダ世論を変えられるだろう。あるいは、指名直後のウィルキンス氏がカナダCBCラジオ放送で話した内容に、カナダ国民は執着するかもしれない。インタビュアーはこう聞いた:「愉快な事が好きそうな方ですね。カナダに関するあなたの知識をちょっと聞いていいですか?・・・メープル・シロップの原産地は何処でしょう?」

ウィルキンス氏は答えた:「上院で指名が承認され次第、その質問に回答できると期待していますよ。」

かくして、ウィルキンス氏は議会承認された。もしかしたら米国務省は、彼に回答を教えている最中かもしれない。
(以上)

2005/03/09

カナダ王立騎馬警官4人が麻薬密造犯に撃たれ殉職:「1885年以来の惨劇」

Seattle Post-Intelligencer紙2005/03/05付け記事より。以下に全文を翻訳して掲載。(記事中写真は訳者が追加)

危険になりつつあるカナダだが、治安悪化を扇動する警察国家・日本から見ると、彼等の風土を見習いたいような気もする。

騎馬警官達の死に動揺するカナダ国民(Canadians stunned over Mounties killings)

by ベス・ダフ−ブラウン(AP通信記者):Seattle Post-Intelligencer紙2005/03/05付け記事

カナダ王立騎馬警官

トロント---南の隣国よりもはるかに銃犯罪が少ないことが誇りのカナダにとって、4人のカナダ警官が殺害された事件は国家全体を震撼させている。

半旗が舞う金曜日、過去120年間で最悪の、警官に対する攻撃に立ち向かったカナダ人達のために、バグパイプ奏者は“アメイジング・グレース”を奏でた。4人の騎馬警官は、木曜日に西部地方の小集落にあるマリファナ栽培地を捜査している最中に殺害された。

「カナダ国民はこのような残忍な行為に愕然としており、警官達の死をもたらした暴力行為を糾弾すべく結束している」ポール・マーティン首相は話した。

4人の騎馬警官は、アルバータ州西部の1,300人ほどが住む小集落メイヤーソープにある農場を捜査していた。

広報担当官のウェイン・オークス巡査長の話では、4人の警官と容疑者は、木曜遅くに農場の小屋で発見された。政府当局者がカナディアン・プレスに語ったところでは、容疑者は警官を射殺した後に自殺したとのことである。

「4人もの警官が殉職した事件は近年前例のないものだ」アルバータ州騎馬警官隊のビル・スウィーニィ隊長は言う。「遡ること1885年頃、“ノースウェストの反乱”時代に同じ規模の惨劇があった」

“ノースウェストの反乱”は、ノースウェスト地区で発生し未遂に終わった、先住民による独立戦争のことである。

鮮やかな赤いチュニック(制服)につば広のステットソン帽で知られるカナダ王立騎馬警官は、警察官であり、国家のシンボルでもある。伝説によれば、1873年に設立されたノースウェスト山岳警察がカナダ西部に招聘された際に、先住民達から青い制服を着た米国の騎馬隊と誤認されないように、緋色のチュニックを着たことが発祥だという。

警察の調査によると、容疑者は46歳のジェームズ・ロスコという人物。警察の話では容疑者は多くの犯歴があり、それには違法銃火器の使用や性犯罪も含まれていたとのこと。

リック・オンセク軍曹の話では、木曜日午後に、4人の騎馬警官が無線に応答しなくなったので、2つのSWATチームと周辺地区を管轄する警官達が急行したという。

金曜日、メイヤーソープにあるカナダ騎馬警官隊本部の正面にある旗棒には子供達が花束を供え、バグパイプ奏者の女性は“アメイジング・グレイス”を演奏した。

殉職した警官達が通っていた地元のバーガー・バロン(ハンバーガー店)に務めていたトレイシー・アイサートさんは、花束を供えながら泣いた。「お店で働いていた頃、この人たちを接客してました。ありがとうと言いたかった」彼女は話した。

「ハリウッドならともかく、ここでは滅多にない事件です」アルバート・シャルム市長はCBC放送で話した。「事件は地域を変えるでしょう。カナダの田舎であるこの場所でさえ、人々はより一層ドラッグ問題に注視することになる」

ドキュメンタリー作家のマイケル・ムーアが「ボウリング・フォー・コロンバイン」で指摘したように、この国の大半の地域では、ドアに鍵をかけるような事情は少ない。

連邦政府の統計によれば、2002年度のカナダ国内における銃による殺人事件の件数は152件であったが、同年にアメリカ合衆国では、銃による殺人事件が1万1,829件発生している。カナダの人口はおよそ3,250万人、合衆国の人口は約2億9,300万人である。

カナダで1995年から施行されている銃火器法では、国内の全ての銃火器は登録が義務付けられ、所有するには免許を取得する必要がある。

しかし、近年のカナダは、数百億ドル規模のマリファナ市場を背景に、急増する組織犯罪に取り組んでいる。

「前代未聞であり、言葉にならないほど残念だ」カナダ王立騎馬警官隊のジュリアノ・ザカーデリ長官は声明を出した。「組織犯罪の関与、入手可能な銃火器の拡大、平和と善意に対して暴力と破壊を選択する者たちがもたらす危機により複雑化された深刻な難問を認識しなければならない」

警官達は拳銃のみで武装していた。なぜ警官達がより効果的な支援を得られなかったか、そして4人が1人の容疑者にどうやって殺害されたかを問う向きもある。

殉職した警官は、ピーター・クリストファー・シーマン、アンソニー・フィッツジェラルド・オリオン・ゴードン、リオナイド・ニコラス・ジョンストン、ブロック・ウォーレン・マイロルの4人。

享年29歳のマイロル巡査は、着任してわずか2週間だった。

「彼はカナダ王立騎馬警察とその任務を愛していました」遺族は声明を読み上げた。「我が国は酷く傷ついています。私達は身を尽くして問題に立ち向かった4人の市民を失ったのです」
(以上)

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