「この会場にお集まりの皆さんはこんなことを言ったら驚くだろうかね・・・お金を持たない者には正義も全く与えられないと言ったら?皆さん、驚きですかな?・・・なんてこった!皆さんが公正さを獲得する唯一の方法は、向き直って一念発起して、議員になってシステムを変えるしかないんだ。なのに今じゃ本当にシステムを変えようという発想はないらしい。相変わらずの政治だな。」
-マイク・グラベル、2007年6月28日、ワシントンDCのハワード大学で開催されたPBS(全米公共放送網)協賛の民主党大統領候補者討論会にて発言。
アメリカ合衆国の大統領選挙は、民主主義の実現というよりはむしろ投資ビジネスに近い。各候補者は全国各地を巡って出資者や支援企業を募り、その資金を元手にホワイトハウスへ敵対的買収を試み、アメリカ株式会社の乗っ取りを図るのだ。資本家から経営を委任されCEO役を買って出た大統領は、乗っ取り後に組織のスリム化を図り、部門によっては海外企業等に売却する。そういうスタイルの成長戦略をとってきたアメリカ株式会社の主な事業は戦争で、その市場は21世紀に入り再び拡大しつつある。ブッシュCEOが社運を賭けて市場に送り出したイラク戦争は不採算事業となった。経営陣の一部、従業員の多数は同事業の縮小を求めているが、一方で執行役員チェイニー副大統領の指揮の下、新商品であるイラン戦争の開発も急ピッチで進められている・・・。
そんなわけで、2008年度合衆国大統領選挙に向けて、米国連邦選挙管理委員会は各候補者の最新選挙活動資金状況を公開した。以下の表で、どの候補者がどれだけ稼いでいるのかを確認していただきたい。(1ドル=122円換算)
民主党大統領候補者政治資金表(2007年6月30日末時点)| 候補者名 | 資金総額 | 資金総額(円) | 支出額 | 手持ちの現金 |
|---|
| ヒラリー・クリントン | $63,075,927 | ¥7,695,263,094 | $17,849,095 | $45,226,832 |
| バラク・オバマ | $58,912,520 | ¥7,187,327,440 | $22,648,832 | $36,263,688 |
| ジョン・エドワーズ | $23,129,158 | ¥2,821,757,276 | $9,785,203 | $13,343,954 |
| ビル・リチャードソン | $13,339,633 | ¥1,627,435,226 | $6,209,949 | $7,129,684 |
| クリス・ドッド | $12,076,091 | ¥1,473,283,102 | $5,697,820 | $6,378,271 |
| ジョー・バイデン | $6,461,745 | ¥788,332,890 | $3,691,828 | $2,772,442 |
| デニス・クシニッチ | $1,117,566 | ¥136,343,052 | $902,355 | $213,269 |
| マイク・グラベル | $238,745 | ¥29,126,890 | $207,604 | $31,141 |
共和党大統領候補者政治資金表(2007年6月30日末時点)| 候補者名 | 資金総額 | 資金総額(円) | 支出額 | 手持ちの現金 |
|---|
| ミット・ロムニー | $44,432,350 | ¥5,420,746,700 | $32,310,796 | $12,121,554 |
| ルドルフ・ジュリアーニ | $35,629,265 | ¥4,346,770,330 | $17,303,045 | $18,326,220 |
| ジョン・マケイン | $25,328,694 | ¥3,090,100,668 | $21,926,631 | $3,224,428 |
| サム・ブラウンバック | $3,321,965 | ¥405,279,730 | $2,861,729 | $460,236 |
| ロン・ポール | $3,009,997 | ¥367,219,634 | $655,142 | $2,354,855 |
| トム・タンクリード | $2,807,879 | ¥342,561,238 | $2,209,606 | $598,451 |
| ダンカン・ハンター | $1,352,941 | ¥165,058,802 | $1,140,014 | $212,927 |
| マイク・ハッカビー | $1,310,753 | ¥159,911,866 | $873,584 | $437,169 |
| トミー・トンプソン | $890,398 | ¥108,628,556 | $768,750 | $121,648 |
| ジム・ギルモア | $391,693 | ¥47,786,546 | $329,928 | $61,765 |
ヒラリー、オバマ陣営はそれぞれすでに70億円以上の選挙資金を集めている。日本の選挙から見ると驚きの金額だが、前回2004年度大統領選挙で、共和党ブッシュ陣営が党大会直前までに2億6,980万ドル(約328億円)、民主党ケリー陣営が2億3,460万ドル(約286億円)稼ぎ出した実績を考えると、まだまだ先は長いのである。
資金力トップは民主党のヒラリー・クリントンだが、4月から6月の3ヶ月間はバラク・オバマが大量の資金(3,280万ドル、約39億円)を集めており、このペースだとオバマが民主党トップを獲得する可能性が高くなった。この状況を注視しているのはおそらくアル・ゴア陣営で、支持者間では早くもゴア大統領=オバマ副大統領の観測が広がっている。(日和見主義の軍人、コリン・パウエル前国務長官も外交政策をネタにオバマ陣営に接近しているらしい。)
「アメリカでは新製品の発表は9月と決まってるんだ」と言ったのはブッシュ政権のカード大統領補佐官だが、そのセオリーどおりであれば、アル・ゴアの大統領選出馬表明はおそらく8月末、ハリケーン・カトリーナ上陸2周年追悼行事の前後に行われる可能性が高い。しかし、息子の薬物中毒問題もあって、ゴアファミリーは選挙に乗り気でないらしい。家族か、ホワイトハウスか・・・アル・ゴアは選択を迫られている。
2008年度大統領選挙は予備選の早期化から、今まで以上に各候補者は地方CM等に早々と大量の資金を投入するようになったらしい。金遣いがもっとも激しいのは共和党のミット・ロムニーで、過去3ヶ月で2,000万ドル(約24億円)以上を支出している。